麗しき夢   作:六原

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今から3年ほど前に書いた作品をリメイクして投稿してみることにしました。
霊夢さんの過去って創作しがいがありますよね。


二度あることは三度ある

「ねえ、『二度あることは三度ある』って本当だと思う?」

 

私の向かいに立つ親友が問うてくる。

いつになく真剣な瞳。

これが同じ人間なのかと疑いたくなるような人を引き付ける黒い瞳。

 

目が合うと、私はつい、目をそらしたくなってしまう。

見つめていたら引き込まれそうで、それがどこか恐ろしくて。

けれどそらすことは許さないというような強い眼光。

 

彼女と目を合わせる。

私を少し見上げる彼女。

 

「さあ、50%くらいは本当なんじゃない?」と答えてみると、

 

「…やっぱりそう言うと思った」と呆れたように笑う。

 

でも、どうしてそんなことを?

 

「なんか、らしくないね。賭け事でもしてるの?」とからかってみる。

 

違う違う、と笑いながら否定してくるかと思ったら、

 

「まあ、そんなものよ。でも一方的な賭け事だけどね」とどこかここではないところに目線を向けるように笑う。

 

なんというか、消えてしまいそうで、儚い、弱気な笑顔。

 

私はそれに気づかないふりをして、「それって私たちが待ってる人と関係があるの?」ときく。

 

まあ、私はどこかに行こうとしているのに勝手についてきただけで、厳密には彼女が待っている人、なのだけれど。

「そうね」と短い答えが返ってくる。

 

やはり、どこか彼女らしくない。

因みに私達は今、廃ビルの屋上に立っている。

これだけだと先端に立っているみたいだけれど、普通に真ん中らへんに立っている。

ここには私達二人だけ。

あとは幾つかの換気扇くらいかな。

 

つい先ほどから雨がちらついており、地面のコンクリートに跡がつき始めている。

そんなに強い雨ではなく、霧雨程度の雨。

 

「こんな廃ビルに美少女二人を待たせるなんてさ、どういう人なのよまったく」と文句を言うと、

 

「まあ確かにね。なんでいつも屋外なのかしら。待つ方の身にもなってほしいものね」と文句が返って来る。

 

というかいつも?

 

「小さい時から会ってる人ってこと?」ときくと、

 

「う~ん。まあ、そんなところよ」といわれる。

 

これは怪しい。明らかに嘘をついている。

“いつも”ならば、小さい時から会っている以外の答えがある訳ないのに、そんなところ、だなんて。

 

「ねえ、ほかに何か情報とかないの?見た目とかさ」

 

「金髪でロング。詳しい歳は知らないけど私達よりは確実に上」とそっけなく返される。

 

待っている人についてあまり触れてほしくないのだろうか。

と考えていると、彼女が突然瞳を鋭くした。

睨み付けるような視線を扉に向ける。

 

いまさらだが、どうしてこんな場所を彼女は知っていたのだろう。

入り口のドアも屋上のドアも、鍵がかかっているかもしれないのに、開いているのが当然かのようにドアノブに手をかけ、開けていった。

その時は私の知らない彼女に少し動揺したのだけれど、そんなことは今はどうでもいい。

ドアが開くということは待ち人が来たのだろう。

ぼんやりと扉を見ていると、扉は開かれ、『いつも屋外で待たされ、金髪ロングの私達より年上の人』が現れる。

 

 

その人が現れた瞬間、周りの空気が変わった…気がした。

こういう神的なものは私はあまり感じない方だから。

いや、こんな私でも感じられるほどということなのかもしれない。

 

傘を差し、見たことがない服を着ているが、それがとても、彼女に似合っているように感じた。

 

「久しぶりね、霊夢」

 

女の人が笑いながら話しかける。優雅な笑みだ。

それに対して私の親友―霊夢は呆れたように話しかける。

 

「そんなことはいいからさっさと本題に入ってよ。紫」

 

女性はゆかりさんと言うらしい。

この会話は、二人には私と霊夢とは比べ物にならないぐらいの年数の付き合いがあるということを私に感じさせた。

 

…なんというか私は場違いな気がする。

と、ふいにゆかりさんが私を見る。

 

「そちらはどなたかしら?霊夢」

 

「私の親友よ。なんかついてきたの」

 

なんかとはひどいなあ。と思うが、これがいつもの霊夢だ。

少し口が悪い、というか辛辣。

ゆかりさんが来るまではあんなに思い悩んでいる様だったのに。

 

どうも、ととりあえず頭を下げておく。

ゆかりさんがちらと私を見る。

紫色の瞳が私を見る。

霊夢と同じようにひきつけられる瞳だ。

じっと見つめられる。

 

どぎまぎしていると、「ほら、さっさと始めなさいよ」と霊夢が呼びかける。

 

「ええ、そうね」とゆかりさんが目線を外す。

 

私は少し安心した。

だって、このまま見続けられていたら、きっと魅了されていただろうから。

 

 

「ねえ、今度はどこに行くの?古代日本?海外?それとも未来?」

 

これだけ聞くとはしゃいでいる子供のようだが、霊夢は真剣な―私に二度あることは三度あるかと聞いてきた時と同じ瞳をしていた。

っていうか古代日本とか海外とか、未来?

海外はまあわかるけど古代とか未来とかは訳が分からない。

 

 

「どういう事?古代とか未来とかって」と問いかけると、

 

「そのまんまの意味よ」と返される。

 

「でも、どうやって行くの?そんなものはまだ開発されていないのに」

 

開発は進められているけれど難航しているのだ、と毎日のようにニュースで伝えられている。

ちなみに私はそんなものに力を注ぐぐらいなら今をよくした方がいいと思っている。

できたとしても今の私達によって未来が滅びていたら意味がない、というのが私の意見。

 

 

「紫に連れて行ってもらうのよ」

当たり前でしょ?と言うように私を見る。

 

「え?」

 

「ほら、紫」

 

「ええ、それじゃあ始めましょうか」

 

ゆかりさんが微笑む。

 

 

 

―またしても空気が変わった。

 

先程ゆかりさんが来た時よりも大きく変わった。

まるでこの空間だけが、この世界から切り離されてしまったようだとさえ感じる。

 

そしてようやく気づく。

このゆかりという女性は私達とは違う世界を生きているのだと。

 

ゆかりさんを中心として半球型に薄い膜が広がる。

霊夢は驚きもせずにそれを見ていた。

 

「で、どこに行くのよ今回は」

 

「正解は過去でも未来でもない。この世界から切り離された場所。貴女は未来に行きたかったんでしょうけれど」

 

ゆかりさんは全てを見透かしたような笑みを浮かべて霊夢を見る。

対する霊夢は少し驚きつつ、「まあ、そうね」と答える。

 

『二度あることは三度ある』と霊夢が言った意味が分かった。

 

三度目も未来に行きたかった。

つまり、霊夢は二度、未来に行っているということになる。

…この世界は霊夢にとっては未来ということだろうか。

そもそもなぜ霊夢は未来に来たのだろう。

 

頭の中に疑問がいくつも浮かぶ。

 

 

「今から行くのは私にとって本命の場所。つまり『二度あることは三度ある』じゃなくて、『三度目の正直』といったところかしら」とゆかりさんは楽しそうに笑う。

 

その言葉を受けて霊夢がはっとする。

もちろん私も。

私達が『二度あることは三度ある』について話していたことを知っていて、『三度目の正直』と言ったのだろう。

いつから私達のことを見ていたのか。

 

 

「やっぱり、あんたは信用ならないわね」

やれやれとため息をつく霊夢。

 

「さあ霊夢。いつでもいけるわよ」と言いながら何か紫色のよく分からないものを宙に浮かばす。

 

「じゃあ、行きましょうか」と霊夢に手が差し出される。

 

 

「いや、あんたが時間を指定したんでしょ。まだ時間じゃないと思うけど」と霊夢が呆れる。

 

「あら、そうだったわね」

 

うっかりしちゃったわーと言うように笑う。

…なんか、この人凄く胡散臭いな。

 

「ねえ今って何時?」と霊夢が私に聞いてくる。

 

空にはもう、星が輝き始めている。

 

「えっと、18時29分と10秒」といつものように答える。

 

「じゃあ、もうちょっと待たないとね」と霊夢が言う。

 

ゆかりさんは少し驚いたように私を見る。

私は普通の人間なのだけれど。

 

20秒。

 

「てか、どうやったらこんな人と出逢えるの?」と私が言うと、

 

「まあ、色々とあってね」と霊夢が言った。

 

そりゃあ一言で表せはしないだろうけど。

 

 

「じゃあ、どこで出逢ったの?」

 

「え、普通に街中」

 

ますますわからないなあ。

このゆかりっていう人の事が。

こんな人が街中にいるかなあ?

 

50秒。

 

「じゃあ、今度こそ行きましょうか」

 

「ええ」

 

霊夢がゆかりさんの方へ向かう。

 

「霊夢、」

 

あまりにも突然すぎて咄嗟に呼び止めようと声をあげる。

 

しかしその言葉が霊夢に届く前に、二人の姿は消えてしまった。

 

 

そして18時30分。

霊夢とゆかりさんは切れ目へ消え、私の身体に雨が降り注ぐ。

そしてふと気づく。

さっきまでは雨が降っていなかったということに。

 

 

 

 

 

 

 

▼ 20xx年 xx月xx日 7:54分07秒

 

「れ、いむ……?」

 

何か夢を見ていた気がする。

昔のことだったような気がするけど、何も思い出せない。

 

…不思議な夢を見るなんて、私の相棒じゃあるまいし。

 

というか待ち合わせに遅れそうだ。

まあ、いつも遅れているんだけどね。

 

 

 

集合場所につくと思った通り、「もう、遅刻よ」と言われる。

 

 

そもそも、私はどうして秘密を暴き始めたのだろう。

誰かを探すためだった気がするけれど、もう思い出せない。

 

秘密を暴いていけばそれを思い出すことができるのだろうか。

 

きっとそうだ。

 

 

「ねえ、遅刻してきたのに自分の世界に浸り始めないでよ。まったくもう…」

 

溜息交じりに言われ、紫色の瞳でじっと見つめられる。

 

金髪で紫色の服を着ている彼女になぜだか物凄く惹かれた。

 

 

「まあまあ、次に行く場所はちゃんと見つけてきたから。次はここに行きましょう!!」

といつものように(なだ)めながらノートを取り出す。

 

 

 

私たちは秘密を暴き出す。

今日見た私の夢も、私の過去も、その全てを。

 

『―活動を、秘封倶楽部を始めましょう、メリー!』「ええ、勿論よ蓮子。私達ですべてを暴き出しましょう!」

 

 

 




何というか秘封倶楽部って綺麗に終わらせやすい気がします。
ちなみに3年前時点では蓮子ではなく魔理沙みたいな人、でした。
少しゆかれいむを感じるかんじになっちゃいました。

2度あることは3度あるを入れて小説を書こう!と急に思い立って書き始めましたが、かなりお気に入りの作品です。
小ネタとして、雨は細かく降っています。
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