メルトリリスは踊らない   作:もるげんれえて

3 / 9
メルトリリスとすれ違う藤丸立香。
そんな彼の前に現れたのは、あの尼僧であった。

C107で頒布予定の小説、「メルトリリスは踊らない」です。
頒布版では加筆修正、展開の相違などがある可能性がありますので承知ください。


メルトリリスは踊らない 第1章ー2話

 あてどなくなくカルデアを歩き回る。様々なサーヴァント、職員が仕事をしたり、休んでいたり、めいめいに過ごしているから暇をつぶすには困らない。適当にぶらつき、話をしているとだんだんといつもの自分が返ってくる。動揺は姿を消し、自然な笑みが浮かんでくる。それじゃあ、また、とあいさつを繰り返す。

 昼まではまだ時間があった。溜まっているレポートでも消化しようかと自室へと戻ることにした。

 

「あら」

 

 その向こうから一人の女性が歩いてきていた。頭襟に僧衣を纏う禁欲的な姿なはずなのに、その体格が惜しみなく表れており、スリットからは生々しい白い脚が覗いている。

 

「殺生院、さん」

 

 はい、と尼僧は微笑んだ。目を細め、紅色の唇を柔らかく歪ませる。

 

 殺生院キアラ。メルトやBBたちと同時にこのカルデアに現れた、セラフィックス事変の首謀者その人。あの事件からまだ日はそれほど経っていないからか、彼女の姿にどうしても体が強張ってしまう。

 そんな自分の有様を殺生院はすぐに見抜き、ふう、と片手を頬にあてる。

 

「たしかにセラフィックスの件は私が引き起こしたようなものです。ですが、今はマスターに使える一人のサーヴァントです。そのような反応をされてしまいますと、私めもいささか傷つくというものです」

 

「それは、すみません」

 

 彼女自身はセラフィックスでのことは覚えていない。しかし、カルデアのデータサーバーには事件のあらましが他の特異点同様、自由に閲覧できる状態で保存されている。別の召喚された自分がどんなことをしたかは、多くのサーヴァントが気になることのようで、特異点の記録の閲覧は人気のコンテンツでもあった。

 殺生院もその記録を読んだのだと考えるのが自然なことだ。

 

「構いません。むしろかつて特異点の元凶となった私を、マスターの口添えもありカルデアに置いていただける。それだけで十分でございます」

 

「まあ、それは」

 

 彼女が召喚されたとき、先んじてカルデアに来ていたBBからは「この女は絶対に碌なことにならない。さっさと追い出すべきだ」という言葉をもらった。BBの危惧も分からないでもないが、現状彼女の霊基がビーストではないこと、令呪なども有効なことからカルデアとの契約は継続している。まあ、彼女以上に危ないサーヴァントも複数名いるが。パラケルススとか、パラケルススとか。あと、モリアーティとか。

 BBは不承不承に納得した。そして「いざとなったらアンデルセンさんをぶつけてください」というアドバイスをもらった。よく分からないが殺生院と何かしらの縁があるのだろうか。

 

「殺生院さんは」

 

「キアラ、とお呼びください」

 

「ええと、キアラ、さんは」

 

 さん付けもいらない、と殺生院は言う。年長者なのでつけさせてくださいと言うと押し黙った。ちょっと不服そうなのが意外だ。

 

「カルデアの生活はいかがですか。何か困りごとなどは」

 

「ええ。よくしていただいております。非常に快適ですよ」

 

「よかった。何かあったら教えてくださいね」

 

 では、と自室へと向かって歩き始めた。

 その背中に殺生院は投げかける。

 

「一つ、ご忠告を」

 

 振り返ると微笑みを浮かべた彼女が立っている。それは穏やかだが、どこか、何かを狙うかのような目つきでもあった。

 

「我々アルターエゴは他のサーヴァントと異なります」

 

「というと」

 

「アルターエゴとはある一つの自我の現れ。本来総体である心の一部を歪にも取り出し、一個体としての精神に仕立て上げている

ものでございます。故に、その心は人のそれとは違うのですよ」

 

 どういう意味かと眉根を顰める。殺生院は続けて言う。

 

「お気を付けください。アルターエゴとは、勝手なものですから」




面白かったら高評価、ブックマーク、感想のコメントなどよろしくお願いいたします。
マシュマロでも感想を待ってます。
https://marshmallow-qa.com/morghenrate?t=s2pkoY&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

とらのあなさんで委託させていただいております!
https://ecs.toranoana.jp/tora/ec/item/040031283011
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。