ではそれは誰なのか。そんな謎が残る中、ダ・ヴィンチはある真実を皆に告げる。
C107で頒布予定の小説、「メルトリリスは踊らない」です。
webでの更新はここまでになります。
頒布版では加筆修正、展開の相違などがある可能性がありますので承知ください。
とらのあなさんで委託させていただいております!
https://ecs.toranoana.jp/tora/ec/item/040031283011
「それは私ではありません」
ダ・ヴィンチからの報告ににべもなくメルトリリスは答えた。ダ・ヴィンチも「まあ、そうだよねえ」と頷いている。
「一応、確認はとっておこうと思ってね」
「はあ」とメルトリリスは肩をすくめる。そしてはっきりと、きっぱりと伝えた。
「私がここで踊ることはありません」
当たり前すぎることを、と少し呆れ気味であった。
「そうなのですか」
「そうなのです」
マシュの質問にも彼女は即答だ。それ以上の説明もなく、誰も問い掛けることはなかった。
「ま、マスターくんの見立て通り、ということだね」
「あら、マスターは私ではないと見抜いていたんですか」
初めてメルトリリスが蠱惑的に自分を見つめた。青い色が挑戦に揺らめいて、心臓に一滴のカンフル剤を落とされたかのようだった。
「よく見ていらっしゃるようですね、
「……」
言葉には、明確な棘があった。心臓が強く収縮して、胸のあたりがざらざらとする。隣にいるマシュがそんな自分の変化に気づいたのか、心配そうに見てきていた。
「たまたま、だよ」
「へえ、そうですか」
メルトリリスの瞳に揺れていた波が収まって凪いだように目を伏せる。
「まあ」ダ・ヴィンチが空気を変えるために割って入る。「それで実は、私たちの方からも報告があるんだ」
「私の幻が踊っていた、ということを確認するためではないのですか」
「それもある。けど、もう一つ重要な報告があるんだよね」
ごほん、と咳ばらいをしてダ・ヴィンチは続けた。
「我々のカルデアに敵が侵入する、という事態は本当に異例だ。けれど、どの敵も攻撃はするが敵意は向けてこないんだよね。ただ突っ立っているだけ、という事例もあった。我々を攻撃するというには、あまりにも意味がないというか、手際が悪すぎやしないか。それに先日もあったカルデアの電脳化したという事例。殺生院キアラの活躍で何とかなったけれど、どうもあれは結界などの類ではなかったようだ」
「つまり、マスターを捉える意図がなかった、ということですか」
そうだ、とダ・ヴィンチは頷いた。メルトリリスはその説明を静かに聞き流している。
「そして踊っていたメルトリリスの件も明らかに敵意は欠いている。我々を攻撃する、ということとはちょっと違うみたいなんだ。
そこで、我々は視点を変えることにした。敵は、我々に侵攻してきているのではなく、たまたまカルデアに現れてしまっているだけなのだ、と」
「えっと、土地の縁があってはぐれサーヴァントとして召喚されてしまう、みたいなことですか?」
マシュの質問に、そうともとダ・ヴィンチが頷いた。
「概ねその理解でよい。このように考えれば敵意のなさも、これまでの現象にも説明がつくだろう。そして、そうに考えると後は解析手法を変えれば事足りるのだ」
まさに天才の御業、と言わんばかりに自慢げに胸を張るダ・ヴィンチ。だが、さらに真相を語り始めると彼女の饒舌がなぜかトーンダウンした。
「今回の現象は誰かとの縁によって導かれたと仮定し、因果律をトリスメギストスに計算してもらった。これまでは敵意だったり侵犯行為としての思考だったが、偶然性や確率論に切り替えた、ということかな、うん。まあ、それでとりあえず、『誰が送り込んできているのか』はわからないけれど、『誰と縁を作ったのか』ということは分かったんだ」
それはつまるところ、このカルデアの問題を引き起こした原因ということになる。マシュはいよいよ身を乗り出さんばかりに興味津々だが、メルトリリスは相変わらず我関せずであった。
ようやく解決の糸口が見えた。そのはずなのに自分の胸はちっとも晴れない。むしろ刺された傷が膿んでいるように、背中をうすら寒い感覚が動き回っていた。喉の奥がいがらっぽいような、そんな違和感。
ダ・ヴィンチはその真相を口にする。
「――メルトリリス。君が、結節点だ」
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