勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
「フラワー! 何ボサっとしてる!?」
「もう無理です指揮官! 退却を!」
「フラワー!! ねぇ!」
激しい爆音。
交わる怒号や悲鳴。
重なり合う異なった銃声。
───地上に出て、私の心は一気に枯れ果ててしまった。
私は、ただ認めてもらいたいだけ...認めてもらいたかっただけだったのに。
家族じゃなくてもいい...もう誰でもいい。
誰かに、私の事を───。
───私達の部隊は他とは違う。
違うとよく言われているのが宿舎だった。
宿舎はみんなで"クレジット"を出し合ったのもあるが、ほぼ私から。
...次点でサンや指揮官だった。
初対面からは過ぎたものの、まだ1ヶ月ぐらいしか経ってないのに家族のように仲良くなってて、指揮官は無愛想を装おうとしても私達を理解しようとする気持ちは伝わってきた。
...でも、何故か私の中でのモヤモヤは収まらない。
部隊が編成された時からそうだった。
別に今の部隊に対しての不満は無い。
仲間とはすぐに打ち解けることが出来たし、指揮官も今までと違って横暴な態度を取る事はあまり無い。
───なら、この不満は何処から来るの?
朝食を食べた後───私は銀行に向かい、ATMからクレジットの残高を確認した。
『"クレア・リーベフェルト"』
...昔の名前が映し出される度に
ATMの残金はまだある...送り先が心配になるぐらいに。
正直このまま部隊から離れてロイヤルとして暮らそうかな...って思ったけど、どうせ無理。
ニケになった時点で人として扱って貰えない...それは事実。
...どうせ私達の指揮官も今は余裕があるだけで本質は同じだろうし。
私はATMからクレジットを下ろすと、宿舎に帰った。
私が宿舎に戻ると、偶然にもファルと出会った。
「あっ、お帰りなさい...です」
「ふふっ───ただいまっ!」
私は普段通りを装う為にファルへ抱き付く。
ファルの事は大好きで、それは演技では無い。
ただ...私は自分が何故こんな事をしているのか意味が分からなかった。
私とファルは血の繋がった姉妹という訳ではない。
アークエクスプレス占拠事件から、あの子は人間時代に血の繋がっていた兄と出会い、最初は溝が出来そうだったが、その事件をキッカケに兄妹の絆を取り戻せたようだった。
...それなのに、私は未だに家族と出会える気がしない。
私だって妹だったのに、今ではファルを妹のように扱っている。
まるで自分が出来なかった事を重ねているように...。
「───どうかしましたか?」
いつもなら戸惑いと恥ずかしさから私を引き離そうとするが、何か様子の違いに気付いたのか、私の顔を見上げていた。
「えっ...?」
「いえ...その...。
フラワー"らしくない"表情をしていたので...」
───私らしくない表情。
それがどんな
私は自分からファルを引き離してしまった。
「あっ、ごめんねファル。
私、もしかしたら疲れてるのかもしれないから、シャワー浴びてくる!」
私はそそくさと自室へ戻っていく。
ファルが「あっ...」と何か言いたそうにしていたが、私は気にしないようにした。
シャワーを浴びてお風呂に入る。
水浴びを終えた後は鏡を見て、自分がI-DOLL・フラワーである事を改めて自覚した。
正直、ニケになる前と後でも姿は似ている。サンは私のお姉ちゃんに似ているけど、こっちのサンは教養こそあれど少し馬鹿な所があったから、憎まずに済んだ。
タオルで髪を拭いてる時、鏡と向き合っていた私は自分の身体に触れる。
...ニケであっても、認めて貰いたかった。
ただ私は、認めて貰いたかっただけなのに。