勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜   作:乾エルト

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第11話:帰郷

「元ロイヤルのバカ女が...」

 

 不機嫌な指揮官から髪を引っ張られ、平手打ちをされる。

 ...私の扱いは酷かった。

 

 私よりもっと酷い扱いを受けているニケもいるかもしれない...でも辛かった。

 

 

 地上に来て、私はただ呆然とするしかなかった。

 

 他のニケはどんどんラプチャーの餌食になり、指揮官は私達を盾にして逃げようとする。

 ...醜い光景ばかりが広がっていた。

 

 

 ニケの足を撃って餌にした指揮官もいたし、他のニケが気に食わない同僚のニケをワイヤーロープで縛り上げ、ラプチャーの生贄に捧げるところも見てきた。

 

 ...そんな光景を見て、私は何も出来なかった。

 

 

 アークに戻ればストレスの溜まった指揮官や道ゆくニケフォビアにセクハラやパワハラ等をされる。

 拒否しようにも、私達は人間に奉仕するロボットのように反逆などできないよう作られている...しかも、嫌な要因は指揮官や市民だけじゃなかった。

 

 ニケ同士の嫌がらせやいじめ、それに陰口などは当たり前。

 相手に何か嫌がらせをされたならまだしも、所属企業やニケのタイプ...ニケになる前の身分だけで嫌味を言われる事もあった。

 

 頑張っても、誰かに良くしても、戦っても、どんな事をしても認められない。

 ...誰も認めてくれない、認められなかった。

 

 どうして?

 どうしてみんな、私を置いていくの?

 

 

「ねぇ...早まらないで...」

 

 同じフラワータイプがある日の夜、建物の屋上から飛び降りようとしていた事があった。

 

「...私、もう無理よ」

 

 理由は指揮官のセクハラがエスカレートし、その子に行為を及んだからで、そのせいで彼女は思考転換しかける寸前でもあった。

 

「な、なら、上に言おうよ!

それなら、私達の───」

 

「そんな事言ってなんになるのよ!?」

 

 ビクッとなる私を尻目に、彼女は涙声で話を続ける。

 

 

「私達はニケよ...。

どんな事があっても物扱い...私達がこうなった時点でもう、普通なんて求められないのよ...」

 

 自分からバランスを崩す彼女に向かって、私は手を差し伸べるように助けようとした。

 

「まっ、待って───!」

 

 ───助ける事は叶わず、彼女は私の前で飛び降りてしまう。

 下からは鈍くて重い音が聴こえ、私はその場に塞ぎ込んだ。

 

 やめて。

 嘘だと言って。

 夢なら醒めて。

 お願いだから。

 もう許して。

 我儘言わないから。

 もう認めてほしいなんて言わないから。

 もうやめて。

 私を人間に戻して───。

 

 

 

 ───私は溢れそうになる涙を抑えながら、ロイヤルの住宅街にある一軒の豪邸の前に辿り着いた。

 

 ...過去の出来事を振り返ると、涙が出てくる。

 上流階級(ロイヤル)の家系に生まれたのに、惨めな気持ちは無くならない。

 もし...もしも"彼"がまだ生きていたら、私はこんな人生にならずに済んだのだろうか?

 

 

 インターホンを押そうとした瞬間───私は悪寒を感じて後ろを振り向く。

 ...しかし、誰も居なかった。

 

 宿舎から高級住宅街(ここ)にたどり着く前、誰かが後ろから付いて来てるような気がした。

 

 最初はオウルの悪戯かなと思っていたが、一瞬だけ黒尽くめの人物を見た気がする。

 その身長的にオウルでは無く、体型的にも男性のようにも見える...どちらにせよ、不審者である事に間違いなかった。

 

 

 私は不安ながらにインターホンを押す。

 今は深夜...A.C.P.U.(警察)を呼ばれる可能性も高く、しかもその不審者が私に目を付けていたらどうなるか...不安になる程だった。

 

『...こんな夜遅くに誰だ?』

 

 ...カメラが付いているインターホンとはいえ、私が量産型ニケなら誰の事か分からないのも当然。

 私は震える声を抑えながら、自分の名前を...人間だった時の名前を名乗った。

 

「───私です。

あなたの娘だった... ()()()()()()()()()()()です」

 

  ───私は名前を伝える。

 ただそれだけだと...私が名前を借りただけの怪しいニケだと思われる。

 だからこそ信じてもらう為にそれ以外の、私が憶えている限りの情報を伝えた。

 

 情報を伝えると、玄関の扉が開く。

 出迎えたのは私の父...今の時間帯も相まって彼は不機嫌そうな目でこちらを見ていた。

 

「...ここまで来て何の用だ」

 

「少し...お話がありまして」

 

 父は舌打ちをすると、私の後ろを見渡した後に家に入れてくれた。

 

 

 父の後を付いてリビングへと向かう。

 ...私の写真は無い。

 写真が無いのは当たり前なのかもしれないけど、悲しかった。

 

 リビングに辿り着くと、椅子に座らず立ち上がって話した。

 

「...お母様とお姉様は?」

 

「どっちも今は留守だ」

 

「そう...なんですね」

 

「...で?

それだけか?」

 

 父の鋭い眼光が私の目に入る。

 過去を思い出すように怖かったが、意を決して本題に入った。

 

「あっ、あの...どうしてクレジットをあそこまで私に振り込むのでしょうか...?」

 

「決まっているだろ、()()()()()()()()()という意味だ。

何だ? あれでもまだ足りないってか?」

 

「あっ、いえっ、あのっ...」

 

 ───言葉が詰まる。

 前から父が、母が、姉が怖かった。

 

 まるで他人の様に...。

 ...今思えば、あの頃からニケのような扱いだった。

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