勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜   作:乾エルト

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第14話:真実を尋ねて

 私は、フォーマル(ごく一般)の家庭で産まれた。

 

 父は手品師で、夢に対して一途。

 そんな父が、私は大好きで憧れだった。

 

 

 そんなある日...母が家を出て行く。

 父の夢に付いて行けなくなったからだ。

 

 私は母より父を選んだ。

 どれだけ馬鹿な選択だとしても、私は父が、お父さんが叶えようとしていた夢に憧れていた。

 

『アーク中を驚かせる程の天才手品師(マジシャン)

 

 私はそんな父が好きだった。

 

 しかし、現実がそう上手くいく事はなく...私はある()()()を境に、夢を失ってしまった。

 

 

 路上で手品をしながら生計を立てる。

 しかし、殆どが無料(タダ)での見物客で、クレジットを支払ってくれる人は稀だった。

 

 仕事を辞めた父は手品に没頭する。

 私の食事は以前までなら母の手料理だが、もう母はいない。

 父は料理が得意では無かったから、パーフェクトバーやインスタント料理でお腹を満たすしかなかった。

 

 

 父の働いていた所は給料が良く貯金は十分にあったが、それが尽きるのも時間の問題...その貯金も、ある人達と出会った事で無くなった。

 

 

 私達が路頭に迷う寸前の事───お父さんはテトラか何処かのお偉いさんから打診を受けた。

 

 それはまたと無いチャンス...お父さんは夢を逃したくないのと、お金の問題からその人と契約する。

 ───しかし、それこそ最大の間違いだった。

 

 

 そのスポンサー主は、父を騙して私達から貯金を奪った挙句、借金を背負わせたのだ。

 上手い話には裏がある───本当にその通りの出来事で、私はこの時に人が信じられなくなった。

 

 それ以来、お父さんは酒に溺れるようになってしまった。

 

 

 私が寝て───次に目を覚ますと、見慣れない景色が目に広がった。

 

 まるで病室のような場所で、ベッドも家のとは違う...しかも手首には私の名前や番号の他に、『エリシオン』と記されたリストバンドが付けてあった。

 

 ───エリシオンという名前を見た時、私の頭には嫌な考えが頭に浮かんだ。

 

 このままだとニケにされる。

 何とかして家に帰らなきゃ───そう思い、私は施設からの脱出を試みた。

 

 

 父から教わった手品を駆使して拘束ベルトを解き、警備員や研究員らしき人達の目を掻い潜る。

 それはまるで、未来を予見していたかのように。

 

 何とか施設から脱出する事に成功した私は、家を目指す。

 私は誘拐されたんだ...お父さんが心配している───そう思っていた。

 

「ただいまお父さ───」

 

 私が見たものは、見知らぬ黒スーツの職員達とテーブルに座る父...頭が追いつかなかった。

 

「えっ、この人達は誰...?」

 

 お父さんは答えてくれない...代わりに答えたのは、父の向側に座っていた職員だった。

 

「やぁ、初めまして。

多分頭が追いつかないと思うから僕から説明するよ。

お嬢ちゃん───キミは()()()()()()()んだ」

 

 ───ニケに選ばれたと言われ、私の心は凍り付くかのように寒気がした。

 

 テーブルの上にある紙...それが契約書で、お父さんがそんなのにサインしたなんて信じたくなかった。

 

「そんな訳ないでしょ!?

でしょ!? お父さん!

何とか言ってよ───!!」

 

 苦痛の叫びを上げながらも私はお父さんに縋り付くが、彼は俯くばかりで反応が無い。

 ...職員が父の代わりに話始めた。

 

「これは、キミのお父さんとの契約なんだ。

キミは、エリシオンでニケとなる───嫌だろうけど、勝利の女神になれるんだ」

 

「えっ、お父さん...嘘でしょ...?

ねぇ...ねぇってば───!」

 

 

 ───乾いた音が痛みと共に、私の身体全体へと鳴り響く。

 それはお父さんが私の頬を叩いたからで、そんな父の平手打ちは、まるで私を拒絶するかの様だった。

 

「えっ───?」

 

「───どうぞ、連れて行ってください...」

 

 父の言葉を聞いた職員は、その場にいる他の職員に命じて私を連れて行く。

 ───抵抗する気になれない。

 どうしてお父さんが私を見捨てたからなのか...当時の私には理解出来なかった。

 

 

 

 私服を着て、かつての家を訪ねる。

 今の私はソルジャーシリーズのO.W.タイプ...私をもう誰の事かなんて判る筈が無い。

 鏡に映る私なんて、どうせ偽物なのだから───。

 

 

 かつての家に辿り着いた私は、一呼吸置いてインターホンを押すが...反応は無かった。

 

 留守だろうか?

 それとも、私が来ると想定している...?

 そんな事を考えていると、後ろの方から声が聞こえた。

 

「おや...? あんた誰だい?」

 

 私に声を掛けたのは老婆で、この人が近所に住んでいる事は薄ら憶えていた。

 

 でも今の私は量産型ニケ...相手が名前を聞いた所で信じてくれるかは分からなかった。

 

「あっ、えっと...私は───カトリーナ..."カトリーナ・ベルマン"です」

 

 一応、ニケになる前の名前をお婆さんに名乗る。    

 私の名前を聞いた時、その人は信じられないと思う様に大きく目を見開いて驚いた。

 

「まさか、あの人の娘かい...?」

 

「は、はい...」

 

 その人は、まるで私を憐れむような表情(かお)をしながら溜め息を吐いた。

 

「おいで。

話しておきたい事がある」

 

 

 私はお婆さんに誘われて、その方の家にお邪魔する。

 リビングで椅子に座らせてもらい、お茶まで淹れて貰ってしまった。

 

「あっ、ありがとうございます...頂きますね」

 

「どういたしまして。

ただ、驚きだねぇ...量産されたニケとはいえ、あの時とそっくりだよ。

寧ろ貴女をモチーフにしたんじゃないかと思うぐらいだよ」

 

「えへへっ」

 

 彼女はお茶を一口飲むと、一呼吸置いて本題に入った。

 

「そうねぇ...カトリーナちゃん(貴女)がよく分からない人達に連れて行かれて、何日か経った後だったか───貴女のお父さんは"自ら命を絶ってしまった"わ」

 

 

 ───私はお婆さんの言葉に驚愕する。

 それもその筈...父があの後、命を絶った事実が信じられなかったからだ。

 

「どうして...?」

 

「私にも分からない。

ただ...一つ言える事は、窓の向こうからずっと泣いている彼の姿よ」

 

「泣いている...?」

 

「これは私の推測だけど...多分、あなたのお父さんは"後悔していた"と思うわ」

 

 嘘だ。

 信じられない。

 後悔していたなら私を平手打ちしてまで拒絶しない筈だ。

 

「でも、お父さんはわたしをお金の為に...!」

 

「そう思うのも無理ないわ...お父さんのした事は、親として最低で最悪の行為よ。

───でも、恐らく彼はそれに対して酷く悔やむ事になった筈よ」

 

 そんなの憶測でしかない。

 お父さんは私を売ったんだ。

 お金の為に、私を───。

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