勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
私は、
父は手品師で、夢に対して一途。
そんな父が、私は大好きで憧れだった。
そんなある日...母が家を出て行く。
父の夢に付いて行けなくなったからだ。
私は母より父を選んだ。
どれだけ馬鹿な選択だとしても、私は父が、お父さんが叶えようとしていた夢に憧れていた。
『アーク中を驚かせる程の
私はそんな父が好きだった。
しかし、現実がそう上手くいく事はなく...私はある
路上で手品をしながら生計を立てる。
しかし、殆どが
仕事を辞めた父は手品に没頭する。
私の食事は以前までなら母の手料理だが、もう母はいない。
父は料理が得意では無かったから、パーフェクトバーやインスタント料理でお腹を満たすしかなかった。
父の働いていた所は給料が良く貯金は十分にあったが、それが尽きるのも時間の問題...その貯金も、ある人達と出会った事で無くなった。
私達が路頭に迷う寸前の事───お父さんはテトラか何処かのお偉いさんから打診を受けた。
それはまたと無いチャンス...お父さんは夢を逃したくないのと、お金の問題からその人と契約する。
───しかし、それこそ最大の間違いだった。
そのスポンサー主は、父を騙して私達から貯金を奪った挙句、借金を背負わせたのだ。
上手い話には裏がある───本当にその通りの出来事で、私はこの時に人が信じられなくなった。
それ以来、お父さんは酒に溺れるようになってしまった。
私が寝て───次に目を覚ますと、見慣れない景色が目に広がった。
まるで病室のような場所で、ベッドも家のとは違う...しかも手首には私の名前や番号の他に、『エリシオン』と記されたリストバンドが付けてあった。
───エリシオンという名前を見た時、私の頭には嫌な考えが頭に浮かんだ。
このままだとニケにされる。
何とかして家に帰らなきゃ───そう思い、私は施設からの脱出を試みた。
父から教わった手品を駆使して拘束ベルトを解き、警備員や研究員らしき人達の目を掻い潜る。
それはまるで、未来を予見していたかのように。
何とか施設から脱出する事に成功した私は、家を目指す。
私は誘拐されたんだ...お父さんが心配している───そう思っていた。
「ただいまお父さ───」
私が見たものは、見知らぬ黒スーツの職員達とテーブルに座る父...頭が追いつかなかった。
「えっ、この人達は誰...?」
お父さんは答えてくれない...代わりに答えたのは、父の向側に座っていた職員だった。
「やぁ、初めまして。
多分頭が追いつかないと思うから僕から説明するよ。
お嬢ちゃん───キミは
───ニケに選ばれたと言われ、私の心は凍り付くかのように寒気がした。
テーブルの上にある紙...それが契約書で、お父さんがそんなのにサインしたなんて信じたくなかった。
「そんな訳ないでしょ!?
でしょ!? お父さん!
何とか言ってよ───!!」
苦痛の叫びを上げながらも私はお父さんに縋り付くが、彼は俯くばかりで反応が無い。
...職員が父の代わりに話始めた。
「これは、キミのお父さんとの契約なんだ。
キミは、エリシオンでニケとなる───嫌だろうけど、勝利の女神になれるんだ」
「えっ、お父さん...嘘でしょ...?
ねぇ...ねぇってば───!」
───乾いた音が痛みと共に、私の身体全体へと鳴り響く。
それはお父さんが私の頬を叩いたからで、そんな父の平手打ちは、まるで私を拒絶するかの様だった。
「えっ───?」
「───どうぞ、連れて行ってください...」
父の言葉を聞いた職員は、その場にいる他の職員に命じて私を連れて行く。
───抵抗する気になれない。
どうしてお父さんが私を見捨てたからなのか...当時の私には理解出来なかった。
私服を着て、かつての家を訪ねる。
今の私はソルジャーシリーズのO.W.タイプ...私をもう誰の事かなんて判る筈が無い。
鏡に映る私なんて、どうせ偽物なのだから───。
かつての家に辿り着いた私は、一呼吸置いてインターホンを押すが...反応は無かった。
留守だろうか?
それとも、私が来ると想定している...?
そんな事を考えていると、後ろの方から声が聞こえた。
「おや...? あんた誰だい?」
私に声を掛けたのは老婆で、この人が近所に住んでいる事は薄ら憶えていた。
でも今の私は量産型ニケ...相手が名前を聞いた所で信じてくれるかは分からなかった。
「あっ、えっと...私は───カトリーナ..."カトリーナ・ベルマン"です」
一応、ニケになる前の名前をお婆さんに名乗る。
私の名前を聞いた時、その人は信じられないと思う様に大きく目を見開いて驚いた。
「まさか、あの人の娘かい...?」
「は、はい...」
その人は、まるで私を憐れむような
「おいで。
話しておきたい事がある」
私はお婆さんに誘われて、その方の家にお邪魔する。
リビングで椅子に座らせてもらい、お茶まで淹れて貰ってしまった。
「あっ、ありがとうございます...頂きますね」
「どういたしまして。
ただ、驚きだねぇ...量産されたニケとはいえ、あの時とそっくりだよ。
寧ろ貴女をモチーフにしたんじゃないかと思うぐらいだよ」
「えへへっ」
彼女はお茶を一口飲むと、一呼吸置いて本題に入った。
「そうねぇ...
───私はお婆さんの言葉に驚愕する。
それもその筈...父があの後、命を絶った事実が信じられなかったからだ。
「どうして...?」
「私にも分からない。
ただ...一つ言える事は、窓の向こうからずっと泣いている彼の姿よ」
「泣いている...?」
「これは私の推測だけど...多分、あなたのお父さんは"後悔していた"と思うわ」
嘘だ。
信じられない。
後悔していたなら私を平手打ちしてまで拒絶しない筈だ。
「でも、お父さんはわたしをお金の為に...!」
「そう思うのも無理ないわ...お父さんのした事は、親として最低で最悪の行為よ。
───でも、恐らく彼はそれに対して酷く悔やむ事になった筈よ」
そんなの憶測でしかない。
お父さんは私を売ったんだ。
お金の為に、私を───。