勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜   作:乾エルト

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08編です。


第16話:護衛任務

 私には何も無い。

 別に何かがあった訳でも無く、ただ平凡...やる事なす事が私にとって普通のように感じていた。

 

 

 スコープを覗き、目的地付近を動くサーバント級ラプチャーに照準を定める。

 ロックオンする為のチャージメーターが100%となり、私はMISR-03(スナイパーライフル)の引き金を引いた───。

 

「───ラプチャーダウン」

 

『───見事だ...()()()()()()()()()()

よし、我々もそちらに向かう』

 

 私はMISR-03のスコープから目を離し、立ち上がる。

 指揮官達が今頃目標に向かって来るだろう...そんな矢先だった───。

 

 

 

 バンッ───と1発の大きな銃声と同時(とも)に意識が現実へと引き戻される。

 ...時折こんな夢を見るが、この夢に関しては不快さを感じていた。

 

 時計を確認するとまだ午前5時...任務が無ければ、まだ誰も起きてないだろう。

 寝付くのには時間が掛かる...オフラインにしようとも考えたが、迅速な対応が出来なくなるのも困るから起きる事にした。

 

 

 着替えて屋上に行き、空を眺める。

 私にとって地上の空(本物)エターナルスカイ(偽物)も変わらない...風景としては一緒だからだ。

 

 そんな風景をただ見つめながら、私はふと思いに耽る。

 それは私の部隊の仲間であるプロダクト23───彼女についての事だった。

 

 

 ...最近、23の様子に違和感を感じてしまう。

 確かに彼女は元から不安症のような所があった。

 

 しかし、それとは違う別の何か...もし23が思考転換しかけていたら、彼女はイレギュラーとして処分される。

 私達の部隊には()()()()()から選ばれたのは推測出来るが、思考転換によるイレギュラー化は恐らく考慮されていないだろう。

 

 ...それだけは、私にとっても避けたかった。

 

 

 それから数刻置き...アークは朝を迎えた。

 

 私達は朝食をとる。

 ニケに飲食は必要無いとされているが、それを認めたくないニケは多かった。

 

 私の部隊でも12以外は特にそうだろう。

 最も...12が心の内を明かす事は殆ど無いから、もしかしたら他のメンバーと同じ気持ちかもしれない。

 私もお腹が空く訳では無いものの、オーシャンの手料理は食べておいた方が良いだろうと判断したからだ。

 

 

「みんな、食事中に申し訳ないんだが...」

 

 指揮官が食事の手を止め、申し訳無さそうに話を切り出す。

 そんな彼の様子が気になってフラワーが一番に訊いた。

 

「畏まってどうしたの?」

 

「実は───」

 

 指揮官は自分が持っている携帯端末の画面を見ながら、任務の内容を伝える。

 ...だがそれは中央政府からでも彼の上官でも無く、メッセンジャー(blabla)からの発信だった。

 

 差出人はどうやらロイヤルの家柄のようで、『息子を守って欲しい』と、指揮官に送ったようだ。

 

「えぇ〜どうせ迷惑メッセージじゃないの〜。

指揮官達って士官学校を卒業すればアドレス抜かれるらしいし」

 

「こらオウル、指揮官にタメ口は駄目よ」

 

 茶化すオウルにオーシャンが叱り付ける。

 ...2人は距離を縮めたような気がするが、私の勘違いだろうか?

 

「私達の事分かってるんですかね...?」

 

 イーグルは心配そうに指揮官に訊き、彼は答えた。

 

「一応、俺達の部隊については知っているそうだ。

恐らく...ファルが刑事の兄さん(カーマイン刑事)と一緒にAZXの事件を解決したからかもな」

 

「なるほど...じゃあファルのおかげね!」

 

「えっ、あっ、私だけでは無いので...」

 

 指揮官の答えを聞いたフラワーは、ファルを改めて褒める。

 ファルはいつものように謙遜するが、AZXの事件を解決して部隊の評価を上げたのは事実だ。

 

「それで、引き受けるんですか」

 

「ああ、引き受けようと思う。

...不満か、12?」

 

「私は異議ないっすけど、他のメンバーは?」

 

 12がそう訊くが、他は別に異議が無かった。

 

「よし...なら、俺はお前達の中から1()()()()を護衛として連れて行く」

 

「───は?」

「───え?」

 

 ───指揮官の言葉に、私を含めた全員が唖然とする。

 今回の任務...依頼と言えば良いのだろうか、それに同行するニケはなぜか1人だった。

 

「な、何だよ...」

 

「いやいや、指揮官様バカなの?」

 

「はぁ?」

 

「私達を弾除けって言わないのは嬉しいですが...ただ、護衛は1人だけって...」

 

「依頼主がそう言ってるんだから仕方ないだろ...しかも、ニケを9体も連れてる部隊なんてここぐらいだと思うぞ?」

 

 確かに...どんな内容かはまだ分からないにしろ、ニケを9体同時に引き連れるのは依頼者にとっても宜しく無いのだろう。

 

「それなら...誰を連れて行くんですか?」

 

 指揮官が私達9体を見渡しながら考え込む。   

 そして...彼は考えを決めたのか再び目蓋を開き、私を見た。

 

「08、お前が護衛となってくれ」

 

 ───この時、私は初めて指揮官の命令に異議を申したくなった。

 

 護衛が私達の中から1体とはいえ、選んだ結果が私なのか...不思議でならなかった。

 

「...何故私ですか?」

 

「あれ...嫌だったか?」

 

「そ、それは───」

 

「お前ならこの部隊で一番目も利くし、何かあっても冷静に、臨機応変に対応し易そうだと思ったからだ」

 

 私にとっては普通の事とはいえ、そう言って頂けるのは嬉しい。

 ...だが、周りの仲間が不平不満を抱えながら指揮官を睨んでいる光景には目を瞑りたくなった。

 

 

「───はぁ...」

 

 私は思わずため息を吐いてしまう。

 今はもう指揮官の運転する車の中だ。

 

「不満だったか...?」

 

「別に」

 

 気まずそうに運転する指揮官を尻目に、私は窓から見える光景を眺めていた。

 

 

 私は他の仲間と比べて、ニケになる前(人間時代)の記憶があまり無い。

 というよりは...ニケになる直前まで特に目立った出来事が無かった。

 

 勉強し、良い成績を取り...それ以外、何があったか分からない。

 友達と言えるのは人間(ひと)であった時には作っておらず、ニケになってから現部隊の同じプロダクトシリーズである12や23が友達と呼べる部類...なのかもしれないが、友達というよりは同僚という方が強い。

 ...ただ、23とは友達になりたいとは思ってしまう。

 この事は誰にも話せないだろうし、私が冗談を言ってると思われるだろうが。

 

 

 依頼主が指定した場所に着き、車から降りる。

 そこはロイヤルロードにあるホテルの一つであり、名前はトワイライトホテル。

 ...ただ、指揮官からの視線を感じた私は何故不思議そうに見ているのか訊いた。

 

「何か私に?」

 

「いや...()()()()()()なと思って」

 

 珍しい...私は最初、指揮官が何を言っているのかと思ったがすぐに理解する。

 ...ただ、何故か腹が立つから少し揶揄ってみようと思った。

 

「勤務中の雑談は禁止となっています」

 

「えっ?」

 

「勤務中の雑談は───」

 

「分かった...分かったから...」

 

 指揮官は頭が上がらないようになる。

 彼が珍しいと言った理由は、どうやら私の服装が珍しいという意味のようだった。

 

 ヘルメットを脱ぎ、黒いタートルネックと藍色の薄いロングコートを着た私がそんなに珍しいのか...確かにほぼ戦闘服かその下のインナーだから否定はできなかった。

 

 

 ホテルの受付で事情を話し、ラウンジに入る。

 ラウンジには依頼主と思わしき男と妻らしき女性、そして少年がいた。

 

 依頼主と思わしき男は椅子から立ち上がって私達に近付いた。

 

「もしかして...第52リプレイス部隊の方ですか?」

 

「はい、そうです。

あっ、こちらはメッセージにもあった通り護衛のニケです」

 

「おお...!

よく来てくださいました、では席へ」

 

 私達は依頼主に言われた通り、会合を始める。

 依頼主はロイヤルのジョンソン一家...目立つようなお金持ちでは無く、ただフォーマルより裕福なだけというべきだろうか。

 

「それで、要件というのは?」

 

「ああ...単刀直入に言うと、()()()()()()()()()んだ」

 

「お子さんを...?」

 

 指揮官は不思議そうにする。

 自分の事でも自分含めた事でも無く、息子だけをだった。

 

「そうだ。

クレジットならある...だから頼む」

 

 クレジットを使ってでも懇願する依頼主の必死さは伝わるものの、指揮官も同じ事を考えていたのか()()()を訊いた。

 

「待って下さい。

我々ではなく、A.C.P.U.には連絡しましたか?」

 

「A.C.P.U.には頼れん...連絡したら見せしめに使用人を───」

 

 依頼主は最後まで言うのが憚れたように拳を握りしめる。

 声色などから察するに、その使用人は何らかの手で殺されたように思えた。

 

「それは、気の毒に...心中をお察しします」

 

「お願いよ...この子だけでも助けて...」

 

「頼む、一生のお願いだ...私がどうなっても良い、息子だけでも...」

 

 ジョンソン夫妻は2人揃って頼み込むが、私はある事を訊きたくなった。

 

「───1つよろしいでしょうか?」

 

「ああ...何だろうか?」

 

()()()私達に依頼しても良いか、考えましたか?」

 

 指揮官も依頼主達も不思議そうにするが、私の方が不思議だ。

 ...何故なら、私達は()()()量産型部隊でしか無い筈だから。

 

「...ジョンソン(依頼者)様が存じ上げているかは分かりませんが、私達は一時期『寄せ集めの鉄くず部隊』とも呼ばれていました。

AZXの乗っ取りを仲間の1人が解決しましたが...あれはA.C.P.U.の刑事と協力したからであって、中でどんな事が起こっていたは私達でも分かりません。

もしかしたら仲間のソルジャーF.A.はそこまで動いてなかった可能性も」

 

「おい、そんな事───」

 

「指揮官、黙ってて下さい。

ロイヤルともなれば蓄えには余裕がある筈...その中で私達を選ぶというのは、その身分に傷が付くかもしれませんよ」

 

 私は指揮官の言いたい事を察しながらも彼を口止めして依頼主に今一度留意させる。

 そして、依頼主は俯きながら考えた後...再び口を開いた。

 

「確かに、君達は汚名を被っていた。

だが、あれは一部のロイヤル市民が君達の邪魔をしたと、()()()()()から話は聞いている。

アウトローや他の部隊に息子を預けるのが不安な今、君達を頼りたい」

 

 依頼主は話の途中、私から一瞬目を離す。

 自分の子供を大切に想っているのは分かったものの、何か怪しかった。

 

「───分かりました、教えて頂き感謝致します。

...指揮官、どうしますか?」

 

 私は指揮官に依頼を引き受けるか伺う。

 だが彼は上の空だったのか...私の声に驚きながらも引き受ける事にして依頼主を安堵させた。

 

 ...依頼主は何を隠しているのか。

 そして、犯人の狙いは何なのか。

 どちらにせよ、私は依頼を遂行する他無かった。

 

 そして次の日から...私は護衛任務に就いていた。

 

 運転手は不在で、私が学校までの送迎をする。

 だが護衛対象の少年は私に対して不信感を抱いているのか、任務当初はあまり口を利いてくれなかった。

 

 そして休校日には一緒に出かける事にした。

 

 場所は公園...こんな場所に連れて来るのは私にとっても不都合だった。

 

「行きますよ。

...聞いてますか?」

 

 反応の無い子だと思いながら、私は彼の腕を掴んで公園から別の場所へ移ろうとした。

 

「痛いよ...お姉ちゃん」

 

「あっ...すみません」

 

 そうして手を離すと、彼は再びベンチに座った。

 

 ...私のミスだ。

 何処から狙ってくるかも分からない所に連れて来なければ良かったと後悔している。

 だからこそ不都合だった。

 

 確かにここは色んな人がいるものの、相手は依頼主の使用人を見せしめと称して殺すような人物。

 何が目的なのかさっぱり分からず、手段を選ばないサイコパスの可能性が高かった。

 

 私としてはトワイライトホテルに籠城している方が良いような気がするが───。

 

『何処に隠れても有無を言わさず皆殺しにする』

 

 ───馬鹿げている。

 何がしたくてそんな警告をしているのか。

 それにわざわざ、依頼主も私達のような一介の量産型部隊よりもカフェ・スウィーティーなどの何でも屋を頼れば良いのに...私達を薦めた"ツテ"が何者なのか、少し気になった。

 

 

 私は護衛対象の隣に座って周囲を観察する。

 私達の前では遊具で遊ぶ子供やそれを微笑ましく見守る親、あとは談笑するカップル(男女)...こんな所で犯人が襲って来れば、楽しい景色が忽ち阿鼻叫喚に変わるのは目に見えていた。

 

 

「...お姉ちゃん」

 

 護衛対象は珍しく自分から口を開いた。

 

「...何ですか?」

 

「お姉ちゃんはどうしてニケになったの?」

 

 意外な事を訊く子だと思いながらも、私は答えた。

 

「確か...交通事故に遭って、病院で居た頃にニケになる事を持ちかけられたそうです。

知らない内にこの姿だったので、恐らく両親が契約書にサインしたのでしょう」

 

「そう...なんだ。

ニケになった時、後悔はなかった?」

 

「後悔?

...ないです」

 

「ふーん...お姉ちゃんって()()()()()()()()()なんだね」

 

「不思議な言い回しですね」

 

「だって、即答じゃん。

普通なら、()()()()()()はありそうなのに」

 

「そう言われても、ニケになったからにはもう人間には戻れませんし」

 

「...お姉ちゃんの人生って、()()()()()()だね」

 

「そうですか」

 

 この時...私はどうでもいいように相槌を打ったが、護衛対象が見せた悲しげな表情が目に焼き付く。

 まるで同情や共感ともとれるような...そんな雰囲気を感じた。

 

 

 私達がベンチで黙って座っている時、護衛対象は紙のスケッチブックとペンを出して絵を描き始める。

 今ならタブレットで描けるのに、この子は何故アナログなものを使っているのか不思議だった。

 

 護衛対象が描いてるスケッチブックを覗く。

 どうやら周りに見えている公園の風景を模写しているようで、そのタッチは上手く感じてしまった。

 

 私が素人目だからだろうか?

 小学生だとしても、美術館に飾れる程の腕前だと思ってしまった。

 

 護衛対象は私が見ている事などお構い無しに絵を描いている。

 そんな時...私の携帯に通知音が鳴った。

 

 携帯の画面を見ると、謎の人物がメッセンジャー(blabla)のトークを開いたようで、私はその人物からのメッセージをタップしてアプリを開いた。

 

『私の言う通りにしないとそのガキを殺す』

 

 悪戯にも思えるそのメッセージを気にしないでおきたいが...護衛対象が狙われている以上、この送り主に従うしかなかった。

 

『あなたは何者?』

 

『お前がよく知ってるだろ』

 

『指揮官や同僚のは非通知じゃないので』

 

『減らず口もそこまでしろ

護衛たいしょうののうてんをぶちまけてやるよ』

 

 途中から変換すらしなくなる程の相手という事は、相当短気なのだろう。

 問題はその人物をどう対処すべきか...しかし、犯人らしき人物はすぐにメッセージを連投した。

 

『わかったこうしよう』

『向こうに見えてるアパートがあるだろ?』

『私はそこにいる』

『窓からチラチラ光るものが見えるだろ?』

 

 メッセージ通り、公園の近くにあるアパートの窓を確認する。

 何箇所もある窓の1つから、確かに光が反射しているものが見えた。

 

 

 私は護衛対象をこの場に置いておくべきか少し悩みながらも、私は自分の部隊のグループチャットに護衛の代理を頼む。

 すると、何故か23が一番早くそれを承諾した。

 

『了解よ、私が行くわ』

 

『ありがとうございます、23』

 

 23が何故近くにいたのか分からないが、単なる偶然だと思って彼女が早めに来る事を祈った。

 

「申し訳ありませんが、()()()()()()行ってきます」

 

「分かった」

 

 護衛対象は1人になる事に不安は無いのか、すぐに絵描きを再開した。

 

 

 私は指定されたマンションに入り、部屋を目指す。

 ホテルではなくマンションの一室(こんな所)で狙撃とは...相手は金銭面に余裕があるのか、それとも何かしらの権力者に雇われているのか。

 それにしては相手の言動が直情的であり、わざわざ私を自分のいる場所へ誘い込む理由も分からなかった。

 

 コートのボタンを外し、ショルダーホルスターから拳銃を抜く。

 護身用やバックアップガンの類とはいえ、相手が重武装の兵士で無ければ事足りる。

 指揮官から事前にリミッターも解除して貰い、人間であっても危害を加える事は可能だった。

 

 だが...返り討ちにされる可能性もある。

 それも考慮してオペレーターに座標を送り、いざという時には通報してもらうよう伝えた。

 

 

 指定された部屋の前に辿り着き、私は扉を開こうとする。

 しかし、扉を開く直前───内部から銃声が響いた。

 

 減音器(サプレッサー)を使う事を忘れているのか、壮大な銃声。

 まるで誰かを撃ったと私に教える様な、最悪の音。

 ただ、その銃声は"MISR-03"...同型なのだろうか?

 それとも、偶然そのスナイパーライフルを使っただけ?

 

 

 私は扉を開けて部屋に入る。

 内部は薄暗く、続いて奥のリビングへと入っていく。

 誰か住んでいたような生活感があるものの、何故か違和感があった。

 

 嗅覚センサーが微かに漂う血の匂いを感知する。

 血の匂いはクローゼットの中からするようで、私は銃を構えながら慎重に扉を開いた。

 

 ───出てきたのは男性の遺体...()()()()()なら状態を見るに死後そこまで経っていない。

 問題は表面だった。

 

 遺体を仰向けにひっくり返すと、あまりにも凄惨だった。

 

 損傷こそ無いものの、()()()()()()()()()いる...何の為に両眼を?

 これも犯人の仕業だろうか?

 

 だが、私が考える必要も無い。

 何故なら───。

 

 

 ───背後からの気配を感じ、私はすぐに後ろを見る。

 ...見たのは悪趣味な覆面の人物だった。

 

 服装は藍色のジャンバーで、覆面はスマイリーフェイスというべきか...ただ、充血した目や歯を見せるその口などから、あまりにも悪意のあるデザインだった。

 

 服や覆面には英語で、低俗なスラングを使った酷い文章が書かれていた。

 

Fuck you Goddess(女神を犯せ)

Kill the Human(人間共をぶっ殺せ)

 

 ───カランビットナイフの刃が私に襲い掛かる。

 私はそれを回避したが、刃の先端が肌に触れるまであと少しだった。

 

 床に身体が付くものの、私はすぐ相手に銃を向けて発砲する。

 その人物は避けようと仰反るが、悪趣味なマスクに弾丸が当たっては膝を付いた。

 

 私は立ち上がって相手を捕まえようとしたが、その人物は瞬く間に部屋の外へ走り出してしまった。

 

 ───マスクから見えた()()()()、そして銀色の髪。

 その人物はどこか...()()()()()()ように思えた。

 

 

 部屋の外に出た私は、狙撃犯と思わしき人物を追いかける。

 追跡中...その人物は別の部屋から出てきた住人を殺そうとするが、私は引き金を引いた。

 

 弾はナイフを持った手を撃ち抜き、その銃創からは赤い血を噴き出す。

 ...だが、ナイフを落としてはいるものの痛む様子を見せずに逃亡を続けた。

 

 相手は人間(ひと)じゃない...銃創から噴き出したのが血では無く液体触媒なら、相手は同じニケ...MISR-03を使うなら、もしたかしら私と同型である可能性が高かった。

 

 ...私はそう思いながらも追いかける。

 考えている内に()()()()()()()を思い出すが、そんな事は無関係だろうと思った。

 

 

 途中、覆面の人物がエレベーターに入ろうとするが...エレベーターは降りたばかりで犯人は諦めて階段から逃げていった。

 

 階段を駆け下り、覆面の人物を追いかける。

 拳銃で相手の脚を撃とうとしたが...轟音と共に照準が揺らいだ。

 

 あの部屋で爆発が起きたのか...だが、そんな事はどうでも良い。

 私は犯人と思わしき人物の捕縛を優先した。

 

 

 犯人を追いかける内にアパートの外へ出ると、外は混沌としていた。

 

 パトカーや消防車、救急車などといった車両がそこら中にいて、A.C.P.U.は逃げ惑う人々を落ち着かせようとし、A.F.F.は消火活動を行っている。

 案の定、狙撃犯がいたとされる部屋の窓からは炎と煙が上がっている。

 物的証拠を完全に隠滅させる事は出来ないだろうが、足取りを掴むまでの時間稼ぎにはなるだろう。

 

 

 私は護衛対象の事を考えて我に返り、公園に向かった。

 

 泣き叫ぶ子供。

 誰かを撮る野次馬達。

 お互いに抱き合う親子。

 恐怖から手を繋いで逃げ出すカップル。

 ...公園は阿鼻叫喚の景色が広がっていた。

 

 

 野次馬をかき分け、護衛対象の元に近付く。

 するとそこには───。

 

「───お姉、ちゃん...?」

 

 護衛対象は恐怖に怯え、その場に座り込んでいる。

 彼の側には、()()()()()()()()()()()()プロダクト23らしき容姿の人物...私は信じたく無かった。

 

 

 虚ろな瞳。

 その目からは一滴の涙が、血溜まりへと零れ落ちた───。

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