勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
ニケになる前、私は
母は小学校の教師で、父は地上奪還を志していた元指揮官...その後はエリシオンで技師をしている。
子供は私の他に2人の弟もいて、私にとっては手の掛かるやんちゃな子達だった。
勝利の女神達と一緒に地上奪還を目指していた指揮官の父。
教師として、子供達に知識を与える母。
弟達は指揮官であった父に憧れていたが、私は母の様な教師に憧れていた。
勉強を頑張ったおかげか、母が卒業した高校に入学。
そしてその高校で学びを深め、2年生になった時には先生から教師への適性があるとも認められた。
私は教師への道を順調に進む...筈だった───。
「───ん...」
...私は金属の部屋の中で目を覚ます。
コンテナだろうか...それにしては小さい気がした。
体が動かない...それに口には何かが巻かれている...私は自分の身体を見て状況を理解した。
「んんっ...!?
んーっ!」
両手は背中で縛られ、足首も縛られている。
更に念入りな程に身体はロープで縛り上げられていて、口には布の猿轡を噛ませられていた。
どうしてこんな事になってしまったのだろう...?
確か...私は───。
───私は
学校が終わり、帰る時に私は背後から口に布を当てられて意識を失った...それがこんな事態になるなんて思いもしなかった。
目の前には時限爆弾がある。
猿轡を噛ませらているせいで助けを呼ぶ事も出来ず、呻き声を上げるしかなかった。
「んーっ! んんっ!!」
もがいてもロープが解ける気配は無く、ただ身体に締め付き、ロープの軋む音が聞こえるだけ。
天井にはカメラが接着されている。
それは、縛り上げられた私を見世物とするように撮影されていた。
爆発までの時間が迫る。
恐怖からか、股に濡れた感覚がする。
私は失禁してしまった...それが恥ずかしくて堪らなかった。
爆発時間は刻一刻と無慈悲に迫る。
怖い、なんで私がこんな目に遭わないといけないの?
お父さん、お母さん、ヘンリー、ロジャー...お願いだから誰か助けて───。
───爆発までの間...助けられるのを諦めながらも、私は涙を流しながら祈った。
どうか。
どうか私が生まれ変われるのなら。
どうか私が
どうか私に...
───私は夢から目を覚ます。
...ニケになってからどれぐらいになるだろうか。
まだ
でもこの部隊に配属されてから、復讐の事を忘れていた。
それなのに...この夢を見るとあの頃に呼び戻される感覚に襲われ、焦燥感に駆られてしまう。
稀にしかこんな夢を見ない。
なのに、またこの夢が呼び起こされる。
この胸騒ぎは...何?
みんなで朝食を食べ、皿を洗う。
今日は私が皿洗いの担当で、オーシャンが久々に休めていた。
いつもはほぼオーシャンが家事全般をしている事もあり、私達が家事をするのは時々だった。
今日の皿洗い担当は私───。
それぞれ思い思いの事をしていて、私はキッチンスペースで皿を洗いながら他の人と一緒にテレビを見ていた。
食卓にいるのは指揮官とオーシャン、そしてフラワーぐらいで私達は平穏な日常を過ごしていた───番組が変わるまでは。
先程まで流れていた番組が、臨時で入った緊急ニュースに切り替わる。
それを見た私には、
『───番組の途中ですが、ここで緊急速報です。
先程、ロイヤルロードにあるショッピングモールにて爆発が起き、犠牲者は───』
───パリンッ、と大きな音が聞こえ...私は下を見た。
そう...先程まで拭いていた皿が手から離れ、床に落ちて割れてしまった。
他の人も割れた音に反応して、ニュースから私に注目を移した。
「大丈夫...!?」
フラワーが動揺しながらも心配そうに声を掛け、私は我に返った。
「───あっ!
すみません!」
私は謝った後、焦って破片を片付けようとするが指揮官に手を掴まれて止められた。
「待て、怪我するぞ」
「ですがニケは...」
「オーシャン、すまないが箒と塵取りを持ってきてくれ」
「ええ、今持って来るわ!」
オーシャンが箒とちりとりを取りに行き、フラワーが私に優しく寄り添った。
「イーグル、大丈夫...?」
「───あっ、は、はい...」
───どうやら私は放心状態になってしまったようで、フラワーからの声で我に返った。
その後、私が落として割った皿は指揮官とオーシャンが片付け...私はフラワーに付き添われて部屋に戻った。
部屋に戻るや否や、私は異様な程の悪寒に襲われた。
私を殺した
私を殺した
それは、
奴に同じ様な痛みを。
奴に同じ様な苦しみを。
そして───奴に死を。