勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
この戦いに何の意味があるのか...私には分からなかった。
ただ戦い、ただ傷付き、ただ死ぬ。
ニケなんてどうせ消耗品───私がどうして生きているのか信じられなかった。
元は人間でも、人類とは違う存在。
勝利の女神とは名ばかりの、兵器人間達。
そんな自分を割り切っていたのに、いつからか疑問を抱えていた。
"前哨基地"───私達の部隊は他の部隊と共にそこへ駆り出されていた。
任務内容は"カウンターズ"が匿っているヘレティック、"マリアン"を奪取する事。
何日か前にあった"総力戦"でこのヘレティックらしきラプチャーは見かけたが、私達の事はスルーして飛んで行った。
そして"総力戦"の後、カウンターズとかいう部隊がマリアンを引き取っていたようだが...
...勝手にやってろとしか思えない内輪揉めだが、指揮官の上官サマからの指令という事もあり、拒否権は無かった。
銃声や爆発音があちこちで鳴り響き、中央政府から派遣されたであろう兵士が、私欲の為に動いてるアウトローが、次々に倒れていった。
グレネードランチャーから放たれる擲弾が爆発し、誰かが吹っ飛ぶ中...私達はコマンドセンターへ前進する他無かった。
爆発で燃え盛る炎。
空に舞い上がる爆煙。
飛び散る血や液体触媒。
そして、無数に転がる薬莢。
ヘレティック奪取の為だけに、犠牲者が増えていく。
こんなくだらない事の為に...。
前哨基地での戦いが終わり...カウンターズは
トライアングル部隊もカウンターズを追跡する為に量産型ニケ達を連れて地上へと向かい、前哨基地に残存している
私としては同じ容姿の同型が拘束されているのを見るだけで謎の気持ち悪さを感じていて、早く帰りたかった。
そんな中、同僚のオーシャンが
クズで救いようの無い自業自得なアウトローや、私達のように替わりなんて幾らでもいるニケ、それにアークの治安を守っとけばいいだけの中央政府軍兵士。
彼女は一部の衛生兵達と共に応急処置を施していた。
私は面倒な事になると思って帰りたかったが...案の定、オーシャンがある男と揉めてしまう。
それは、中央政府の一部隊を率いる隊長のようで、私達の方の指揮官より何歳か歳上だろう。
「負傷してるなら手当てさせてください!!」
「大丈夫だと言ってるだろ!!」
「ニケ風情が私達の部隊に何の用!?」
揉めている光景に私は呆れてしまう。
私はオーシャンの自己犠牲感は、ハッキリ言ってイライラしてしまう。
価値観の違いや過去の経緯があるにしろ、あそこまで他人に尽くそうとする様は、私からすると滑稽だ。
───でも、それが私にないもの。
まるで私はコンプレックスを感じているようだった。
指揮官はオーシャンとその隊長の口論を止めように2人の間へ入った。
「2人とも落ち着け!」
「だったら先にそこのニケを落ち着かせれば良いじゃない!」
更にややこしくしたいのか隊長の部下である女兵士がオーシャンを指して言うが、オーシャンはそんな事で引き下がるようなニケじゃなかった。
「 私は落ち着いてる。
あなた達はどうして私がニケだからって、拒絶するの...?」
「それは...ニケなんて...ニケなんてただの兵器よ。
そんな
オーシャンはその言葉を聞き、諦めのついたような表情をした。
「───ニケをそういう目で見てるのなら、仕方ないわ。
オーシャンはそう言って、左肩に掛けていたバッグを置いてその場を後にしようとする。
しかし、負傷している隊長が彼女を呼び止めた。
「待て...」
「...何?」
「...手当を頼む。
部下が何人かやられていて、衛生兵1人ではどうにもならない。
だから...手を貸して欲しい」
「隊長!?」
「お前は黙っていろ...先程の無礼は申し訳ない。
頼めるか...?」
オーシャンは心変わりしたような隊長の言葉を聞き、微笑んだ。
「ええ、任せて欲しいわ」
オーシャンが中央政府の一部隊の手当を行う中...私達はオーシャンの手伝いをする面子と、カウンターズ追跡の為に指揮官と共に地上へ向かう面子で分かれる事になった。
オーシャンにはサン、08、オウルが付く事になり、それ以外の私達は指揮官と共にカウンターズの追跡をする事に決まった。
前哨基地を後にし、地上へ上がる私達。
装備は対ラプチャーの
エレベーターに乗り込む中、23が腕を組みながら指でトントンと自分の腕を叩いていた。
いつもより表情も暗く、様子もおかしい...。
だが私は面倒ごとに巻き込まれるのが嫌で、23に話しかけなかった。
だが、私が話しかけなくてもフラワーが23の様子に気付いて声を掛けた。
「ねぇ、大丈夫...?」
「───えっ?
あっ、大丈夫よ」
フラワーが心配そうに声を掛けた時点でどうなるか不安だったが、23は普段通りの返事で、フラワーも深入りしなかった事でその不安は解消された。
23は心配性な所があり、フラワーはまるで
誰かに深入りしても、死んだら元もこうも無いのに。
エレベーターに乗る中、私達の元にオペレーターから連絡が入る。
どうやら特定の座標にカウンターズ御一行が居るようで、上官も
上官も慎重どころか意味が分からない。
相手がヘレティックと同行しているからなのか、それともカウンターズの指揮官が特別だからなのか...どっちにしろ、割りを食うのは私達だ。
地上に着き、辺りを警戒しながら進む。
ラプチャーとの遭遇を避けながら、私達はある建物の前に辿り着いた。
そこは電波塔のようで、古びている。
オペレーターから送られた座標を見るに、カウンターズはここで誰かに通信を試みていたのだろうが...今でも使えるのだろうか?
私達は電波塔の内部へ入っていく。
ファルコンが盾を構えながら先行し、それに続いてイーグルと私、フラワーに指揮官...そして背後からの奇襲に対応できるよう23が最後尾で警戒していた。
通路の途中では、
指揮官は徐に屈み、指で黒い焦げ跡に触れた後、その指を嗅いだ。
「火薬だ...恐らく爆破物。
それに...恐らく
「嗅いだだけで判るの...?」
「ああ...ちょっとな」
フラワーが不思議そうにするのも無理は無い。
この指揮官は何か違う...それは私達が最初に会った時からそうだ。
私がこれまでに出会った他の指揮官は初めて命のやり取りをしに来た感じだが、この指揮官は慣れている...もしかすると
生き残りのトラップや死角からの敵襲に警戒しながらも...私達は反応のある部屋の前に辿り着いた。
「よし...ファル、俺が
ファルの支援は俺がするから、他も俺と同じように付いてきてくれ」
指揮官の指示を聞き、ファルコンが彼の前で盾を構える。
そして部屋の扉を少し開いた指揮官がフラッシュバンのピンを抜き、部屋の中へと転がした。
...私達は部屋から光が溢れ出したと同時に突入する。
だが、そこにカウンターズは居ない...その代わりに背中合わせで縛り上げられた
「んっ...んんっ!?」
「ん...?」
1人はフード付きの外套を着た女で、もう1人は白黒混ざった長髪の女。
床に落ちている装備と
彼女達は今まで意識を失っていたのかフラッシュバンの音で気が付いたようで、縛られた身体を動かしていた。
「誰...?」
フラワーが銃を下ろしながらそう言うと、隣にいた指揮官が唖然とした表情で言った。
「シージ...ペリラス...」