勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
指揮官は縛り上げられている2人組を見るや否や...唖然としながら、"シージペリラス"という部隊名らしき言葉を呟いた。
「指揮官、知ってるんですか...?」
「...イーグル、ロープを解くぞ」
「えっ...?
───あっ、はい!」
指揮官とイーグルはその2人組を縛り上げていたロープを解く。
拘束から解放された彼女達は、自分達の手首や身体の状態を確認した後...私達の方を向いた。
...そんな2人に、指揮官は
「"D"...それに"K"...。
何でここに...」
「...それはこっちの台詞だ」
「なぁ、まさか
「いや...
「クソっ...ヘマしたのがバレるな...」
「アンタらもカウンターズを追いかけていたのか」
「ああ。
中央政府からの指示で」
「指揮官、この人達は何者なの...?」
「この2人はDとK...。
暗殺───いや、中央政府の偵察部隊だ」
「なんで
「口には気を付けた方が良いと思うけどな〜...?」
白黒混じりの長髪なニケがフラワーを睨み付ける。
面倒ごとに巻き込まれそうだったが、フードの女性は冷静に答えた。
「...私達は中央政府の命令で動いている。
恐らく、
「そうか...アンタらも大変だな」
「...お互い様だ」
フードの女性は指揮官と目合わせするが、その視線は互いに何処か
その後、シージペリラスと呼ばれる部隊は私達に後を任せてアークへ帰還する。
会話中、あの2人が23の方を見たような気がするのは私の勘違いだろうか?
シージペリラスと別れた私達は、カウンターズ追跡の為に電波塔から出て行く。
オペレーターから送られた座標に向かうと...そこは
銃を構えながらゴーストタウンを歩く。
ここに残っているのは当然人間では無い...ラプチャーだ。
「ラプチャー!
応戦するぞ!」
「エンカウンター!」
...廃墟と化した市街地での戦いは熾烈さを極める。
屋上から降りてくるラプチャーの奇襲に遭いながらも戦うが、敵が多い。
まるで私達が来る事を想定しているかのようなラプチャーの量だ。
「数が多過ぎる!」
「指揮官! 早くここから逃げないと!」
フラワーの言葉通りだ。
敵の多さもあれば、地面が脆くなっているのも相まってとても危険な状況だった。
しかし、逃げ出せる状況でも無い。
四方八方からサーバント級やセルフレス級が攻めてくる。
防戦こそしつつも撤退するまでの余裕など無かった。
掃射中、自爆型のサーバント級ラプチャー、"レムナント"が私の横から接近してきた。
私はそのラプチャーに気付かず、もう少しで死ぬところだったが───。
「危ないっ!!」
23は私に駆け寄ると私は彼女に抱き込まれるように押し倒され、同時期にレムナントは先程まで私がいた所に飛び込んで自爆した。
...サーバント級とはいえ、爆発の衝撃は強い。
爆炎に巻き込まれる事は無かったが、私達の倒れているコンクリートまで崩れてしまい...私と23はそのまま下へと転がり落ちていった───。
───どうしてあの時、死ぬ事ができなかったのだろうか。
父に捨てられ、母は自分から命を断ち、人生に嫌気が差した私は屋上から飛び降りた。
死ぬ筈、だったのに───。
───私は
目の前には23が膝元に倒れていて、私は彼女を起こした。
「23、生きてますか」
「───う、うぅ...」
何とか生きていたものの...私達は孤立してしまった。
だが、それでも2人で生きて帰れるかどうか...。
「あっ、12...ここは何処なのかしら?」
「私にも判りません...。
先程の自爆で脆くなった道路が崩れ、私達はその下に転がり落ちたようです」
「そう、なのね...」
「まずはここから離れましょう。
ここにいた所で意味が無い」
私はその場から離れる事を提案し、23は私の提案に対して素直に頷いてくれた。
私達は暗い地下道を突き進む。
地面に線路がある事から、元々ここは地下鉄なのだろう...下水道じゃないのが不幸中の幸いだった。
「あの...12」
「何...」
「あっ、ごめんなさい...」
「どうして謝るんすか...」
「あっ、怒ってると思って...」
「別に怒ってる訳じゃありませんが...」
よそよそしくなっている23がめんどくさくてイライラする。
いつもはこんな事無かったのに、様子のおかしい彼女に苛立ってしまった。
いつからなのか、彼女は何かと物思いに耽っている。
08達がよく23を気遣ってはいるが、彼女は「何でもない」、「大丈夫」などの一点張り。
まるで構ってちゃんのような所が...目障りで耳障りだった。
地下鉄跡を歩く事数分───私達は崩れた天井の隙間から差す日と私のヘルメットや23がつけているバイザーの暗視モードを頼りに進んでいるが、一向に出口が見えない。
「私達、ここで死ぬのかしら...」
「ええ、このまま出口が見つからなければそうでしょうね」
「12はどうして平気なの...?」
「さぁ...慣れてるんじゃないすかね」
「そう、なのね...」
他愛のない話をしながら歩く事数分経ち───私達は薄暗い地下から地上へと戻る事ができた。
光のある地上へ出れたものの、私達は指揮官達と合流する術を知らない...そもそも生きているかどうかも。
正直、指揮官達が好きで見捨てる様には思えないが、あの状況なら見捨てざるを得ない。
私はそうなっても理解しているつもりだが、23が発狂して思考転換する可能性が高い...指揮官達も無事な事を祈りたかった。
歩く道中、瓦礫の他にラプチャーの残骸を見かける。
焦げ跡や残骸の状態が新しい事から、誰かが戦ったのは判るが...その代わり不思議なのは、まるで
意識を取り戻してから銃声や爆音を聴かなくなったのを思うに、戦闘は終わったのだろう。
だが、目の前には明らかに不自然な残骸がある。
ラプチャーを一刀両断出来る武器など聞いた事もないし、そもそもラプチャーに近接戦闘を挑むなんて無謀だ。
まぁ、
そもそも23の事で手一杯なのに、そんなどうでもいい事に頭のリソースを割きたくなかった。
助かる道が無いなら早く殺してくれ...そう思いながらも歩き続ける。
そんな時、飛行物体を見かけた。
飛行物体は輸送機の見た目では無く恐らくラプチャー...大きさ的にサーバント級とはいえ、事を大きくするのは自分の首を絞めるのと同類。
私達はすぐ最寄りの建物の中に入った。
最寄りには入ったものの、中を見るに恐らく倉庫だろう。
小さい穴が何箇所もまばらに空いた屋根からは光が差し込んでいた。
私達は日向を避けて物陰に隠れる。
体温センサーを低く調整して死体と同類になり、私達は頭の装備を外して一先ず落ち着く事にした。
しかし、銃身はあと1本...もし途中で弾を補給出来たとしても、今差し込まれている銃身が加熱したらこの銃自体も使い物にならなくなる。
拳銃はラプチャーに対して無力...正直、戦力としては期待できなかった。
23の持つ
ただでさえ
何か武器さえあれば良かったが...。
「あ、あぁ...」
私が考えているのをよそに、23は尻餅をついて狼狽え始めた。
「23? 一体何が───」
彼女が口を抑えながら見ている物...それはソルジャーO.W.のHMDであり、その中は空だった。
「あ、お、オウル...」
「23、オウルはアークに居ます。
私達には付いてきて───」
「嫌...いやぁ───っ!」
23は悲鳴を上げる。
まるで記憶を失ったかのように錯乱していて、オウルがここにいる筈が無かった。
23を落ち着かせようとするが、どの言葉も彼女には通じない。
こっちが優しくして
ふざけるな。
めんどくさい。
...その思いからか、私の苛立ちは限界を迎えてしまった。
パチン───と乾いた音がその場に鳴り響く。
目の前には私を見て呆然としている23がいて、彼女は自分の左頬を抑えていた。
「あ───」
私は怒りのあまり平手打ちをしてしまった。
まるで、あの時と同じ。
そして、あの母親と同じ事をしてしまった。
「すみません23、私はただ...」
私の謝罪も届かず、23は泣き出してしまう。
まるで幼い子供の様に泣きじゃくるその
黙れ。
私の中で何度も聴こえる。
母も私が泣く度にこうして叩いた...もしかしたら母も私に対してこんな気持ちだったのだろうか?
ロイヤルとフォーマルの間に生まれた
アウトローでは無いのに、母は産まれた私をそう言った。
ニケになってからは血など関係無いのに、まるで遺伝の様に残っている。
...私はそれを認めたくなかった。
突如として屋根の一部が崩れて重い何かが着地する。
サーバント級ラプチャー、ランドクラブだ。
「いやっ...来ないで...!」
錯乱している23は怯え切っている。
天井から落ちてきたラプチャーは1体だけで、MIMG-07の残弾だけでも倒せるだろう。
...なのに私は引き金を引けずにいた。
手が震える。
さっきの平手打ちのせいなのか。
目の前にはラプチャーがいる。
早く発砲しないといけないのに、手が思い通りに動かなかった。
ラプチャーの瞳は紅く光る。
私達を標的として捉えたのだろう...これで終わりだ。
だが、その
そのラプチャーから縦一筋の線が現れ、光ると...それは真っ二つに分かれる。
まるで、
「...嬢ちゃん達、大丈夫かい?」
そこにいたのは傘帽子を被った謎の女性で、服は恥ずかしさを覚えるような水着みたいな白い薄着。
彼女は手に持っていた刀を腰の鞘に納めた。
「あ...あ───」
「23...? 23!」
23は声にならない声を漏らした後に失神してしまい...傘帽子の女性は困惑した。
「おやおや...そちらの嬢ちゃんは意識を失ってしまったようだな」
「...貴女は何者?」
「私かい?
私は"紅蓮"───キミ達と同じくニケさ」