勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜   作:乾エルト

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サン編です。
イーグル編のようにオリジナルニケが出ます。


第25話:ゴッデスに憧れて

 私は、ニケに憧れていた。

 

 

 孤児院にいる時、私は勝利の女神達(ゴッデス部隊)おとぎ話(活躍)を聞くのが楽しみだった。

 

 彼女達の情報は断片的にしか分からない...。   

 それでも、私にとっては憧れの人達だった。

 

 

 アウターリムの孤児院からロイヤルの資産家に養女として引き取られた後でもその気持ちは変わらない...ある時、私は養父に言った。

 

「お父様、私ニケになりたい。

ニケになって、人々を護りたい」

 

 ───しかし、現実は私が思っていた事以上に違って残酷だ。

 

 

 

「サン! そいつを見捨てて持ち場に戻れ!」

 

「くっ...」

 

 私達ニケは兵器(もの)として扱われる。

 そこには人権も、勝利の女神としての威厳もなかった。

 

 死線を潜り抜けたとしても、そこには何も無く...誰かに認められる事もない。

 私達は、所詮使い捨ての駒でしかなかった。

 

 そう、今の部隊に会うまでは───。

 

 

 

 ある任務でラプチャーとの交戦中、仲間の1人であるファルが負傷してしまう。

 まだ幼いであろう彼女が負傷した場所はラプチャーから見ても近い...普通なら見捨てるものだ。

 

「私が助けに行く...!」

 

「待て、サン!」

 

 

 私は指揮官の静止を振り切って私はファルに駆け寄る。

 周りにはセルフレス級とサーバント級...それ以上の等級より弱いとされているが、数が多かった。

 

 私の無鉄砲な動きにより、絶体絶命の危機(ピンチ)に陥るが...そんな時、指揮官は私達が逃げられるよう他の仲間に指示を出した。

 

「23とイーグルはサンとファルへのフォローを!

他はサン達の援護を!

フラワーは23達がこっちまで来た後に奴等へぶちかましてやれ!」

 

 その叫び通り、23とイーグルが走りながら私達の近くにいるラプチャーを掃討した。

 

「サン! 私達が援護するからファルを抱えて逃げてちょうだい!」

 

「私達もすぐ追い付きます!」

 

「2人とも、かたじけない...!」

 

 私はファルを抱え、指揮官達の所まで走る。

 ファルを抱えて走る私の左右には仲間の放つ銃弾が駆け、後ろからはラプチャーの金切り音が迫るが、23とイーグルの足止めによりその音も途切れ途切れになる。

 そんな中でも私は止まらずに走り続け...指揮官達の元へ後退できた。

 

 23やイーグルも後から追い付き、追ってくるラプチャーに対してフラワーのダンシングフラワー(ロケットランチャー)が火を噴いた。

 

「フラワー、今だ!」

 

「はーい!」

 

 ロケット弾は追ってくるラプチャーの群れに命中して爆発を起こすと、先程までの群れは殲滅した。

 

「戦闘終了...」

 

「すみません...私の不注意で...」

 

「ファル、お前のせいじゃない。

指揮官、それにみんな...すまなかった」

 

 私は自責に駆られるファルを慰めた後、指揮官達に頭を下げて謝る。

 だが、指揮官達は怒ってなどいなかった。

 

『いや...お前はよくやったよ、サン』

 

『ええ、やっぱり貴女は勝利の女神よ』

 

『ほんとほんと〜!』

 

『私も憧れてしまいました!』

 

『本当にサンってば勇敢なんだから...』

 

『無茶しちゃダメって言いたい所だけど...今日はサンへの祝杯ね♪』

 

『サン、お疲れ様です』

 

『凄かった...それは認める』

 

「みんな...!」

 

 それはかつて私が出来なかった事であり、この部隊に入ってからはニケとしての誇りを改めて持つ事が出来た。

 

 

 

「───と、そんな事があったんだ」

 

 私は孤児院で子供達に、今の部隊での出来事を話していた。

 

「サン、盛り過ぎ」

 

「盛ってないぞ、本当だからな!」

 

 フラワーは私の話を盛っていると茶化し、話を聞いていた子供達が笑い始めてしまう。

 確かに最後は讃えられるよりも先に指揮官やオーシャン、フラワーから無茶するなと怒られてしまったからだ。

 確かにファルを救ったのは英断だとみんな思っていたようだが...それでも私の向こう見ずな無鉄砲さには頭を抱えていた。

 

 私がフラワーを睨み付けると、彼女は悪戯っぽい笑みで返す。

 私への挑発かと思ったが...ここで怒ってしまえば子供達を怖がらせてしまう。

 だから今回だけは許してやろうと、睨むのやめて子供達の方を向いた。

 

 

 今、私達はアウターリムの孤児院に来ている。

 "ベルパーソン孤児院"...私の育った最初の故郷(ふるさと)

 私がニケになった今でも、話し方や仕草から私だと気付く人もいて、"ベルパーソン院長"がニケという存在を敬っているからだ。

 

 だが、量産型(この姿)になっても私の個性がそれ程強かったのか、それとも手のかかる子だったからなのか...どちらにせよ、憶えててくれた事が嬉しかったのは事実だ。

 

 

 私達が孤児院を訪れたのは、とある理由からだった。

 

 私の育った孤児院は養父(ちち)である"ベネヴィエール卿"からの資金援助を受けていた。

 

 だが、養父が亡くなり私もニケとなり...資産はもう使い切ってるから残っていない。

 

 私も30年分の維持費や生活費を孤児院に寄付したが...問題なのはクレジットではなかった。

 

 

 立ち退き命令...孤児院に命じた人物、或いは組織が言うには徴収金額(みかじめ料)を払ってないという訳らしい。

 正直、アウターリムは治安の悪い場所。

 そんな事があっても不思議ではないが...ベルパーソン孤児院は人類がアークに移住した初期からあったそうで、もし仮にみかじめ料を取るにしても"古株"が許さないだろう。

 だがもしそんな事をするなら"清明会"か"ヘッドニア"、"牡丹会"...だがその三つは一部の末端が暴走したとしても全体としては許し難いだろう。

 最悪の線では"E.H."とは違うエンターヘブンの別派閥や女神の名を穢す恥晒し共(ワイルドメナス)の可能性もあったが、どうやら私が挙げた組織では無いようだ。

 

 

 今は指揮官がベルパーソン院長の依頼内容を聞いていて、私達は子供達と遊んでいる。

 私達といっても...私やフラワー、オーシャンやイーグルにファルとオウル、それに23であり、無愛想な08と12は来なかった。

 

「23と呼んでくればいいわ。

にじゅうさん」

 

「に、に...にーさん!」

 

「えっと...」

 

 幼児に言葉を教える23は何だか不器用に感じる。

 一方で手品を子供達に見せるオウルやイーグルはあやとりを見せて楽しませ、ファルは何故か子供達のおままごとに()()()として付き合っている。

 

「お母さんご飯まだ〜?」

 

「あっ...今作りま───作るから...ね...」

 

「お母さん暗いよ〜」

 

「うっ...」

 

 ...ただ、ファルがお母さん役というのも彼女に同情したくなる程でミスキャストにも程があるだろう。

 

「よしよし...ふふっ、赤ちゃんなんて初めて抱っこしたわ」

 

 フラワーは赤ん坊を抱えては腕の中で眠っている様子を見て微笑ましそうにする。

 孤児院には幼児の引き取りもしていて、アウターリムとしても聖域のような場所だ。

 

「フラワー、凄いな」

 

「そう?

...ふふっ、私が向いてる事ってこれかも」

 

 フラワーはそう言いながら嬉しそうな笑顔で赤ん坊をあやし続ける。

 部隊でも姉のように振る舞いをしていたが、年下相手には母親のようにもなれるのだろう...フラワーは部隊の中でも必要不可欠(潤滑油のよう)な存在だ。

 

 子供達と遊びながら懐かしい思い出に浸っていたものの...私の中には"幼馴染"が頭に浮かんでいた。

 

 孤児院(ここ)で一緒に育ち、それぞれ別々に引き取られた。

 

 私と"アイツ"は、姉妹のような存在...血は繋がらなくとも、互いに憧れるものは一緒だった。

 

 

 その後、私達は宿舎に戻り...ブリーフィングルームで指揮官から話を聞いた。

 

 立ち退き命令を出した人物が取り下げる条件...それは、アンダーアリーナへの出場だった。

 

 まるで意味が分からない...クレジットが目的では無く、アンダーアリーナへの出場だなんて。

 12が調べてくれたようだが、優勝した際の褒美目立った所は無い...まるで"誘われている"みたいで不気味だった。

 

 アンダーアリーナへの出場は一名...言わずもがな私が選ばれた。

 

 そもそもこの部隊の中で近接戦闘が得意なのは私ぐらいで、その次にイーグルだろうが...彼女も同じニケ同士で戦いたいかとなると違うだろう。

 それに...今回の相手はまるで私の事を知っているかのように感じた。

 

 

 次の日───私達はアンダーアリーナ会場に向かう。

 会場には私と指揮官だけで向かい、他の仲間は連れて来なかった。

 

 アウターリム...本来なら入る事の無い場所。

 クレジットも現物に換金してやり取りする事が多く、認識チップが無くとも生活しているが、アークとは違って無法地帯。

 孤児院に来た時からそうだったが...養父(ちち)といい、指揮官や部隊の仲間といい...皆怖くないのだろうか?

 

「指揮官」

 

「どうした?」

 

「その...お前は怖くないのか?」

 

「何がだ?」

 

アウターリム(ここ)だ。

アーク市民にとってここは治安の悪い場所(ゴミの掃き溜め)...好き好んで行ける場所では無い。

だから...もし無理なら先に帰っても構わないのだぞ?」

 

 指揮官は私の言葉に苦笑いをした。

 

「...サンは相手が人間であっても自分を貫けるんだな」

 

「どういう事だ...?」

 

「要するに、指揮官は俺だ。

俺が決めたなら、その命令は絶対だろ?」

 

 ...最初は理解出来なかったが、私も意味を理解して笑う。

 こんなに気前の良い指揮官...他では類を見ないだろう。

 

 

 そして、車はアンダーアリーナ会場のある場所に止まる。

 やっと来た...ここでの腕試しは一度やってみたかったものだ。

 

「...準備はいいか?」

 

「ああ、任せてくれ。

私がすぐに終わらせよう」

 

 

 会場に入ると、そこには様々なニケや人間がいる...暴力性と収賄さえ無ければアークでも出来ただろうに。

 私は受付を済ませようとするが、エントリーネームが必要だ。

 

「エントリーネーム...困ったな。

サン、何か考えてるか?」

 

「ふ...安心してくれ、指揮官。

()()()()()()()()がある」

 

 私がエントリーネームとして記した名、それは───。

 

『シャニングサン』

 

「...何故黙る」

 

 指揮官は私の名前を見て沈黙する。

 だが、その後は褒めてくれたから不問にするとしよう。

 

 

 控え室へ向かう時、私達に声を掛ける人物がいた。

 

「おい」

 

 私と指揮官が振り向くと、そこには別部隊の指揮官と()()()()()()()()()()()()がいて、指揮官の方は何処か金持ちがチンピラになったような見た目だ。

 

 一方でそのニケは私と同じテトラの量産型ニケ。

 同じI-DOLLシリーズでサンタイプ(私達)と対を成す存在..."I-DOLL・ムーン"だった。

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