勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
食事中に見るのはお勧めしない話です。
───僕があの男の養子になって、どれぐらい経ったのだろうか。
あの時に僕は、男に引き取られた。
フォーマルでは無く、ロイヤルとしての身分として...大事な人を他者から奪ったのに、そんな自分がこんな贅沢をして良いのかと感じた。
「───お前は生きろ。
生きて、その罪に苦しみ続けろ」
...その言葉通り、今も僕は苦しんでいる。
いや、僕はこのまま苦しまなくてはならない。
それがマリアへの...僕が今まで見殺しにしてきた
学校の時間が終わる。
ロイヤルの学校は慣れない...だが今更フォーマルの学校に行った所で、小学校のような嫌がらせが起きるだろう。
...そうなるぐらいなら、
僕が校門から出ていくと、道路を挟んだ向こうで黒い長髪の女学生を見かける。
黒い長袖のセーラー服...恐らくフォーマルの学生だろうが、その"赤い瞳"には心当たりがあった。
僕と目を合わせては、付いてくるよう顔で指示をした。
僕はその女学生と合流し、一緒に歩く。
この人物───"D"はいつも僕の監視役になっている。
ジャッジとしての任務が無い時は、こうして僕を家に送り届けていた。
「D...いい加減やめてよ。
僕は1人で帰れる」
「勘違いするな、私はお前のお守りに来た訳では無い。
お前が今でもジャッジの対象だという事を忘れるな」
知ってる...あの男に引き取られたとはいえ、僕はシージペリラスからすればジャッジ対象...それに"あの惨劇"から唯一生き残った罪人だ。
Dと一緒に帰路についていると...時折、彼女が何者か分からなくなる。
Dは僕の姉を演じるように、人が歩いて来るのを見かけると穏やかな笑顔になった。
「こんにちはー」
自分から挨拶するDの笑顔は、何も知らない人からすれば取り繕っているようにも見えない自然な笑顔に見えるのだろう。
...ただ、僕にとっては薄気味悪く感じていた。
Dは僕をジャッジ対象として見ながらも、任務が無い時は食事に連れて行ったり遊園地に連れて行った事もある。
その時の顔が演技なのか、それとも本心かなど...知る由も無かった。
「D...」
「何だ?」
「僕は...
あんな事をしたのに...」
「..
「どういう事...?」
「今は知らなくて良い」
そんな話をしながらも、
僕はDに見送られて屋敷の門を通る。
屋敷から出迎えたのは割烹着のようなメイド服を着たニケ..."メディスン"だった。
「お帰りなさいませ、"ヴィンセント"ぼっちゃま!
...あら、D様は今日も遊びに来ないのですね」
メディスンは竹箒で掃くのを一旦止め、僕に挨拶をする。
そして、屋敷から離れた所にいるDを見ては、そう言った。
「うん、お疲れメディスン」
僕はメディスンを労いながらも、Dの事は気にせず
家に入り、
養父の男..."ジョナサン・ウォルターズ"は"中央戦略情報局"の人間であり、マリアの言っていた通り"
「学校はどうだ?」
「...いつも通り」
「そうか...」
...いつもこんな感じの会話だ。
男は不器用なりにも父親のように接する。
僕が大事な人を奪ったのにも関わらず───。
住む所、食事、それに新鮮な衣服を与え、まるで親子のように過ごす。
僕は、この男の趣味に付き合わされているのかと思っていたが...里親と過ごした日々と比べたら幸せだと思えた。
...だが、僕がこんな生活を享受して良いのだろうか?
マリアを殺したのは僕。
彼はきっと、僕を憎んでいる筈。
恐らく裏がある...ここまでしているのは、これが僕にとって最後の晩餐なのだと毎日思った...なのに、いつもと変わらず終わった。
休みの日...僕は書斎に行き、父さんに訊いた。
「どうした?」
休日とはいえ、父さんは昼間からお酒を嗜む。
酔いが回ってないと良いが...それでも僕は訊いた。
「...なんで僕をこうして生かすんだ?
他にもっと...
そうだ。
僕が苦しんでも、父さんから見て苦しんでいるように見えないのなら罰にはならない。
なのに...父さんはブランデーを一口呑んだ後、僕の方を見ながら言った。
「...
父さんの言葉は、意外にも同情的で落ち着いていた。
「えっ───?」
「お前を引き取ったのは、
あの惨劇は私が原因で、生き残ったお前への暴力も私が憎しみに溺れたのがキッカケだが...お前を引き取るのは彼女の
───僕は唖然とする。
マリアは、どうしてそこまでして僕のその後を守ろうとしたのかと。
「マリアが...?
一体どうして...」
「マリアはお前の話を私によくしていた。
「マリアが...」
僕は自分のした事を顧みて、再び罪悪感に苛まれる。
どうして僕は恐怖に屈して撃ってしまったんだ、と。
...その後、マリアが装着していたバイザーを部屋に持って来る。
父さんは僕を見極めた後、償う意思があるならと預かっていた。
僕はまりあのバイザーを装着し、彼女が残した記録を再生する。
記録を再生すると映像が映り...マリアが現れた。
『えっと、これをこうして...コホン。
───この動画を見ているという事は、私はもうこの世には居ないでしょう。
なのでこれは、一緒に死線を潜り抜けて生き延びた指揮官への最後の我儘となります。
...実の事を言うと私は、あるニケフォビアの集団を探ってました。
その集団というのがただの口だけならまだしも、彼らの所業はもはや狂気であり...明確な意思を持ってニケになった子もいれば、望まぬ形でニケになった子も居ます。
理由がどうであれ、彼女達は私達ニケの苦労を知らない人達に命を弄ばれ、二度目の死を迎えています。
ただ...こんな事に首を突っ込んだ応報なのか、私はもう少しで命を落とすと思います。
調査中、私は顔が割れてしまい、恐らく私も拐われた他の子と同じような事になるかもしれません。
それだけは避けたい...なので私はこのまま帰る事はできません。
そんな時、私はある男の子と出会いました。
その子は、恐らく私の追っている集団のメンバーの子だと思いますが、その子だけは...助けてあげてください。
話していく内に感じ取ったのですが、その子は私が
私はその子を両親から託され、助け出したのですが...その時の私は弱く、そのせいで望まない形での養子となってしまいました。
なので...その子が完全なニケフォビアにならないよう、私は自分の身を犠牲するという
これがどう転ぶのか私にも自信がありませんが...それでも───。
───ふふっ、今までありがとうございました。
結果がどうであれベストを尽くしてね、私指揮官っ───』
───映像が終わると同時に、僕の目は涙で溢れ、嗚咽しながらもバイザーを外し止まらない涙を拭った。
どうして僕はあんな事をしてしまったのだろう?
何故マリアが犠牲になる必要があった?
どんなに深い傷を与えてでも、僕が道を外さないように...その為に彼女が死んだ。
この犠牲を無駄にする事は出来ない...僕は、ある
───高校生ぐらいの歳になった
マリアの映像を見た次の日から、ずっと自分を鍛えていた...だが、鍛えるだけでは駄目でこんなのは探偵ごっこをしてるだけに過ぎなかった。
ある日の事───俺は路地裏に入る。
運が良ければゴロツキに絡まれ、喧嘩が出来る。
実践による経験を積むしか無かった...筈だった。
「ほな、
壁に持たれながら腕を組む女性...その女性は長い髪で片目を隠していて、DやKよりも身長が高く感じた。
俺は
気性の荒い奴やプライドの高い奴なら無視した俺に殴り掛かってクレジットなどの金品を奪おうとする。
...だが、この女は違った。
「ニケを殺した癖に、
───俺は逆に殴り掛かってしまう。
違う、殺したくて殺した訳じゃない...何も知らない
女性は俺の右ストレートをすんなり避けると、その腕を掴んで回り...背負い投げをした。
受け身は取れたものの、背中は痛い...そして視界の先には───。
───視界の中央にある点。
それが
心臓の鼓動が激しくなる。
だが、呼吸は止まっている。
女は俺の顔を逆さまに覗きながら、ニヤニヤと笑っていた。
「あんさんの目は
方言のような言葉遣いながらも、話す事は物騒...俺の身体は悪寒に包まれた。
「アンタは...何なんだ...?」
その女は名乗ろうとしたが...その前に邪魔が入る。
別の声がした方向を見ると...そこにはガラの悪い男達がいた。
「よぅよぅ姉ちゃん、お楽しみかい?
そんなガキ相手にしないで俺らと遊ぼうやー」
女は溜め息を吐きながらも僕の目先から先端を離し、立ち上がった。
僕は逆さにその光景を見る。
ガラの悪い男は3人...だがその女は動じてなかった。
「あんさんら、わてと遊びたいんか?」
「おうよ...華奢だろうが見た目は良さそうな───」
「
「は───」
───男の顔は話し途中で潰れる。
鼻や唇は潰れ、白目を剥いて倒れた。
女は胸ぐらを掴んですぐに男へ頭突きをしたようだが...それにしては
「おいてめぇ...!」
倒れたのとは別の男が女に殴り掛かろうとするが...男の拳を胸の前で受け止め、明らかに
「あ゛ぁ゛っ゛───!」
女は、今相手をしている男が悲鳴を上げる前に喉を肘で殴り潰す。
声は出ない...それどころか呼吸困難で死んだのだろう。
「あっ───」
女の背後を取った生き残りの男が近くの鉄パイプで彼女を殴り付ける。
しかし、彼女は微動だにしておらず...それどころか当たった筈の鉄パイプがひん曲がっていた。
「お前...まさか
鉄パイプを持った男が怯える。
化け物を見る目...だが、その女───ニケは不気味に口角を上げて笑顔を見せた。
人殺し...
本来ならニケは、"人間に危害を加えられない"とされているが...なら今、俺の目の前にいるコイツは何なんだと戦慄した。
その場には3人の男が倒れている。
俺はゆっくりと立ち上がり、逃げようとも考えたが...奴には想定済みであり、尚且つ
「あんさんや、この現場を見ても尚...
「...どうして俺を知っている?」
「ああ、わてな...ちょっとした
そらそうと...あんさん───いや、"
V───それはKが俺に付けた
ヴィンセントのVから始まり、そこから"ヴィー"と名付けられた。
確かにこのあだ名はシージペリラス以外にも使われる...だが今目の前にいるニケとは初対面だ。
「お前は誰だ...」
「わてか?
わての名前は"アイスピック"...あんさんの"
...俺にとっては信じ難い。
何より初対面であり、ニケだとしても怪しい。
俺はこんなに不気味な奴から逃げたかった。
俺は逃げようとしたが...途中で呼び止められた。
「Vちゃんな...あんさん逃げても無駄やで?
何せ私の
...確かにそうだが、それが何だと。
俺はこんな事言いたくなかったが...この精神異常者に対して粋がった。
「そうかい...だが捕まるのはお前だけだ。
俺にだって無実を証明してくれる───」
「
そないな
...俺は途轍もない悪寒を背筋に感じる。
一体このニケはどこまで知っているんだ?
「お前は本当に何なんだ...?」
「ほな、話の続きでもしよか」
そのニケはそう言って俺の腕を引っ張り連れて行く...どうなるかと思ったが、彼女は最寄りのアパートに入った。
アパートの一室に入り、俺を椅子に座らせる。
拘束などはされず、ただ座らせられた。
「...俺をどうする気だ?
拘束もせず...逃げたり殺されるかもしれないぞ?」
「そないな事心配しとらん。
だって、あんさんはわてへの
...ハッタリにも聞こえるが、そこまで見抜かれているとは思わなかった。
俺は恐怖している。
シージペリラスとは違う、異質な恐怖。
とにかく恐ろしく、逃げても無駄だと思える程だった。
「飲み物は...いらんか。
わてが
アイスピックと呼ばれるニケは携帯端末で誰かと話し始める。
だが...彼女の同業者でも居るのか、話している事は悍ましかった。
「...ああ、わてや。
10番セーフハウス辺りの路地裏で
"掃除屋"の派遣を頼むで。
はい、おおきに」
電話を終えたアイスピックは、テーブルの上に封筒を投げる。
彼女は封筒の中身を開けるよう俺に言い、言う通りにすると───。
───俺にとって信じられないもの。
紙の書類にはあの忌々しいニケフォビア集団の情報が載っている。
しかも教祖をはじめとした様々な名前や個人情報...拠点すら載っていて、徹底的に調べ上げられていたように感じた。
「こんなもの、どうやって...」
「ふふ、すごいやろ?」
アイスピックは悪そうに笑う。
ただの精神異常者では無いのだろう...恐らく裏社会の殺し屋か、
どちらにせよ、俺にとって都合が良かった。
「どや...Vちゃん。
わてを信じようが信じまいがあんさんの勝手だが...わてが
「あんたが...?」
「せや。
悪い話でないやろ?」
...悪い話ではない。
何せ、俺は復讐したい。
法で裁けないなら俺が裁くまで...これが俺にとって犠牲になったニケ達への───マリアへの
条件に乗った俺は、アイスピックが師事する元...様々な技術を身に付ける。
銃の扱いや格闘術...解錠や即席での作製等を学び、アイスピックの
父さんや
『人類の為に───』
大義を話そうとした男の額からは真っ赤な液体が流れ...彼の周りは阿鼻叫喚とする光景がスコープ越しに広がる。
俺はスナイパーライフルのボルトを引いては薬莢を排出し、
...より残虐に、より確実に。
アイスピックの教えは、相手に恐怖を感じさせる事だった。
奴らの
ターゲットは様々な方法で殺した。
入浴中にコンセントを差したままの電気機器を投げ込み、角で待ち伏せした後に燃やして廊下を走らせたり、尋問として杭で磔にした後、ダーツのようにナイフを投げたり...それ相応の罰を与えた。
ニケは勝利の女神と偽りの親心で言いながらも裏ではニケを弄ぶクズも殺し、俺と同じ年代の奴もシンパとして"ニケハンター"をしていた奴もいたが...ソイツは
「───Vちゃん、今日のアークデイリー読んだで〜上出来やないか。
まさか年頃の
俺はその言葉に笑みで返し、ニケハンターからくり抜いた2個の眼球が入った小瓶を渡す。
腐らせないよう酢漬けにしていて、これはアイスピックの好物だった。
「綺麗な青い瞳やなぁ...ほな、頂きます───」
アイスピックはその眼球を味わう。
舌で転がしながらも美味しそうに咀嚼する彼女を見て───何故か俺は吐き気を催した。
家に帰り、トイレで嗚咽する。
屋敷の間取り上、トイレとはバスルームは分かれている。
だから水浴びする人に気付かれる事はないだろうが...嗚咽が響いて誰かが来る可能性もあった。
トイレの水面に吐瀉物が浮かび上がり、自分の顔が見えなくなった。
...俺は誰だ?
俺は一体誰なんだ?
何故俺は、同年代の子にすら残虐な手口を使った?
考えれば考えるほど訳が分からなくなり、頭の中には
悪人の断末魔...そう解釈しても、心は釈然としない。
俺が殺した。
俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した俺が殺した───。
───目を覚ますと、そこはベッドの上...隣に座っていたのはメディスンだった。
「あっ、ヴィンセントぼっちゃま!
良かったぁ...心配したんですからね」
安堵するメディスンに、俺は自分がどうなったのか気になった。
「俺は...一体...」
「トイレで気を失っていたんですよ!
それに...言い難いのですが、吐瀉部塗れの水面に顔を突っ込んでて、ジェクターが気付かなければ命を落としていた可能性も...」
...そうか。
俺は自責の念に駆られ、意識を失ったんだ。
まさかそんな惨状になってるとは思いもしなかったが...。
「あっ、気分を悪くさせてしまったら申し訳ございません!
...大丈夫ですか?」
「あっ、ああ...俺は大丈夫だ。
メディスン、気にしなくて良いからな」
「感謝の極みです...あっ、この薬飲んでは如何です?」
メディスンは薬を渡す。
それは睡眠導入剤であり、ストレス緩和などの効果もあるようだ。
「...飲んでみる」
「ふふっ、ありがとうございます!」
俺はメディスンから貰った薬を一錠飲み、床につく。
メディスンから「おやすみなさい」と言われながらも...暗闇の中、何も考えないように瞼を閉じた───。
───朝となり、スッキリした目覚めを感じる。
どうやら、睡眠導入剤の効果があったようで...流石はテトラの薬剤師と言えるニケだろう。
俺はメディスンに感謝し、屋敷から出るものの...外に出た理由は明確だ。
最後のターゲット...教祖である"レティシア・フォーディア"...彼女は若くして会社の社長となっていて、三大企業ほどでは無いにしろ規模は大きい。
だが、そんな彼女の人脈を潰し、尖兵共を殺した。
今の奴は手薄...ここで今復讐を終わらせる。
奴だけは逃す訳にはいかなかった。
全ては犠牲になったニケ達や、彼女達を守ろうとした人達の為───そして、マリアの為に。
最後のターゲット─── レティシア・フォーディア。
ニケフォビア団体の教祖であり、救いの聖火の教祖...では無かった。
アイスピックの
俺の忌々しい最大の記憶。
それを...今ここで終わらせる。
「んんっ...」
レティシアが目覚める。
当時は高校生だったレティシアだが、今も変わっていない...恐らくエターナルライフを接種し始めたのだろう。
その美貌と身体でどれぐらい信徒を集めたのか分からないが...くだらない。
信者共は盲目的に彼女の言葉を信じ、イカれた所業をしてきた。
結局人間なんてそんなもの...自分達こそが
...
俺はレティシアの猿轡を緩めては発言できるようにした。
「けほっ、けほっ...。
はぁ...はーっ...」
「気分はどうだ? 教祖サマ?」
レティシアは俺を睨み付ける。
強がっているように見えて、その目には何処か
「貴方は...何故あの惨劇から生き延びられたのですか?」
「生きて苦しむ為だよ。
お前らに撃たせられたとはいえ、引き金を引いたのは俺だからな。
それに...何故そんな事を知っている?」
「それは...いえ、そんな事はどうでも良いです。
引き金を引かせた件...あれは
ニケは勝利の女神でも人類の希望でも無い。
アークにニケは要らない、ラプチャーと共にお互い潰し合って消えるなら人類は───」
「だったら
俺は信者の1人から奪った携帯端末で、ある画像や映像を見せた。
クレジットの動きや、ブラックサイトでのやりとり、
そして動画は...ニケを
そう...
ブラックサイトでの
救いの聖火はコイツらの隠れ蓑...もしかしたら実在するかもしれないが、今はそんな事どうでも良かった。
「...ふふ、それを見せて何が言いたいのですか?
まさか、私がやった証拠として
挑発するように妖しげな笑みを浮かべるレティシアだが、A.C.P.U.にもシンパが混じっていた事から、コイツを突き出しても意味は無いかもしれない...だからこそ
「そうしても無駄なのは解ってる。
だが...お前を俺の手で殺しても、お前の恵まれた身体をアウトロー共の慰み者として使わせるのも意味は無いだろうと思っている」
「それなら...何です?
私をニケにするのですか?
生憎、貴方の言う通りニケフォビアはただの隠れ蓑...私がニケになった所で困るのは人からの扱いというだけでそれ以外では困らないでしょう」
「...そうだろうな」
「でしょう?」
お前がニケになったら、"勝利の女神"という名が穢れる...だから───」
俺はレティシアの猿轡を再び締めた後、上から檻の中へと落とす。
落ちはするが、下には厚いクッションがある...
「んんっ、んーっ!」
「野生動物に襲われるのも、変態どもには人気だったんだろ?」
クッションのおかげで怪我こそしなかったものの...レティシアが落ちた衝撃で池の水面が揺れてずぶ濡れになり、俺に怒りを見せる。
最後に滑稽な姿を見せてくれてありがとう───そう思いながら、俺は上扉を閉めた。
俺は別部屋からレティシアの最期を見届ける。
縛られた身体をもがかせて必死に叫ぼうとしても無駄になり...それは、過去に俺が見たニケ達の姿に重なった。
レティシアは上半身だけを何とか起こして自身の身体を縛り上げるロープを解こうともがくが...そんなのは無駄だった。
奴の背後からは
レティシアは呻き声を上げながら俺を睨むが...その途中で頭からアナコンダに丸呑みにされていった。
ニケにして自分のシンパに殺されていく展開も考えたが...それはマリア達に申し訳ない。
それに...ジワジワと苦しみながら死んでいくなら、これが良いと思えたからだ。
ここはアーク都市部にあるような動物保護施設とは違う...アウターリムの非合法な動物保護施設。
アイスピックがアウターリムの事を教えてくれたおかげか、処刑場所を選ぶのに時間は掛からなかった。
「アンタも好きだねぇ。
こういう女が蛇に丸呑みされるのはワニの踊り食いより人気だよ」
「...そういうのじゃない」
俺は不快感を露わにしながらもここを管理している女に現物のクレジットを渡し、その場から立ち去る。
丸呑みにされ、アイツがアナコンダの中で身動き取れず惨めに消化されるのを想像しながら───。
薪の入った空ドラムの中に、レティシアが最後に持っていたバッグや貴重品を入れて全て燃やす。
認識チップを取り除く事は出来なかったが...アイスピックが無効する機器を提供してくれたおかげで無効化出来た。
もし仮に認識チップが復旧したとしても...消化される内に溶かされるだろう。
「...終わったのか」
後ろから声を掛けられる。
その声に聞き覚えのあった俺は銃を構えず、後ろを振り向いた。
俺の後ろに居たのはダークグリーンのコートにフードや布で顔を隠した男。
アウターリムの住人であり、情報屋のような壮年の男。
「..."バザさん"か。
ああ、これで
「そうか...ご苦労だったな。
"清明会の精鋭"から話は聞いたぞ、お前さん...復讐をしていたとな」
「ああ...」
...俺達は沈黙しながらも、バザさんの方から口を開いた。
「お前さんはさっさと帰れ。
お前さんのような人間が此処にいるべきじゃ無い」
「ああ...そうする。
"ローゼリア"さんにも「お世話になった」と代わりに言ってくれ」
俺はそう言いながら、拳銃をバザさんに渡す。
最初はアイスピックから提供された拳銃を使っていたが...信者共との戦闘中に紛失し、それ以外のも同じように
最後に返した拳銃はバザさんが持っていた拳銃の一つ...交換条件にメディスンの睡眠導入剤を渡したが、もう俺には要らない。
これで終わり...俺は帰路につき、アウターリムを後にした───。
───それからというもの、ニュースではロイヤルで社長でもある
それがエンターヘブンや救いの聖火による仕業だと見解されているが...上手いように情報操作されているように見えた。
「怖いね、最近アークを騒がせている連続殺人事件...」
クラスメイトがそう言う。
だが、この
「オペレーターになったらそうも言えないんじゃないか?」
「それはそうだけど...でも最近、アークにラプチャーなんて来た事例はないじゃない?」
「まぁな...」
第二次地上奪還戦時にエレベーターへの侵入を許した話はあるが、アークの都市部まで来た話は聞いた事が無かった。
もし今後あったら...笑い話では無くなるが。
下校時間となり、帰路につく。
しかし、その時だった───。
───俺は左側にあった路地裏に引き摺り込まれ...そのまま壁に叩き付けられる。
目の前にいたのは
Kは腕を組みながら見守り、Dは俺の胸倉を掴んで睨み付けた。
「お前...自分のした事を
「V...私が言うのも何だけど、お前ちょっとやり過ぎだって〜...。
確かに、アイツらは私も殺してやりたかったし今はスッキリしてるけど...」
「余計な事を言うな...」
Kが溜飲を下げる反面、Dは怒りを露わにしている。
だが俺にとって、何故
「何だ? 父さんからか?
悪いが俺は自分が正しいと思う選択をした。
それの何が───」
───頬に重い一撃が入る。
ニケだからこそ手加減こそしているものの...右頬に来る鈍い痛みや、口の中を鉄の香りで充満させる血の味は、その威力を伝えるのに充分だった。
俺はDから聞いた言葉を口にする。
中学校時代に聞いた言葉...それを僕は理解した
「...
Dはその言葉を聞くと目を大きく開いた後、激昂した。
「その言葉を...その言葉を軽々しく使うな───!!」
「なぁ、もう一回殴るのはやめた方が良いんじゃないか───」
「お前は! お前はただ
Kが宥めたからか、Dのもう一発を喰らう事は無かったが...Kの言葉を中断させるような声で俺に怒りをぶつけた。
「...何が言いたいんだ。
俺には何もせずにただ居ろと?
マリアを自分の手で殺し、他のニケが無闇に弄ばれているのにか?」
「そうだ...
Dは俯きながら胸ぐらを掴む手を緩める。
最初は何だと思ったが...彼女の俯いた顔からは水滴が地面を濡らした。
Dは涙を流している...なのに俺は、
「───どうせその涙も、
───Dが顔を上げる。
それは何処か絶望したような
Dは俺を壁に叩き付けると、路地裏の奥へと走っていく。
Kは自分の相棒を引き止めようとしたが間に合わず...諦めては俺を見た。
「...おい、V。
私が言えた義理じゃないんだけど...お前、ちょっとは
Kは寂しげな表情をしながらもそう言ってDの後を追う。
Dがどんな想いだったのか...俺には知る由も無かった。
その後...家に帰った俺は父さんに呼ばれる。
多分、怒られるのだろう...そんな事は明確だった。
「...例の連続殺人事件、お前がやったのか」
「それが?」
シージペリラスからの情報だろうが、怒鳴られようが、勘当されようが...俺にはどうでもいい。
...だが、俺の予想とは裏腹に普段通りの口調だった。
「そうか...」
「...失望してないのか?」
「失望というよりは
お前が手を汚す事になったからな...少なくとも、生きて帰って来てくれ事には感謝する」
俺には意味が分からない。
父さんもDも、俺に何を期待している?
俺に真っ当な人生は歩めない...もう知っている筈なのに...。
復讐の戦いから数日経ち───あと5、6ヶ月で高校を卒業する...俺は父さんに、指揮官になりたいと話をした。
「お前には...
父の声色は普段と似てるようで異なったのは容易に判る。
目や表情はまさしくあの時の...俺に銃口を向けた時のだった。
「ある」
「...お前には、
迷いの無い俺の意思を試そうとしているのか再び問いかけるが...それにも自信を持って答えた。
「ああ、耐えてみせる」
父さんは俺の答えを聞き、少しの沈黙を経た後───口を開いた。
「...それなら信じよう。
だが約束しろ...絶対に生きて帰って来い。
だがその前に...
父はそれ以上の事を言わず、俺が指揮官を志すのを認めてくれた。
士官学校の競争倍率は高く、ひたすら勉強し...苦労の末に合格する事が出来た。
高校を卒業して士官学校に入学したのは良いものの...予想とは違うものだった。
自分達が英雄やらエリートやら鼓舞される、謂わば精神論ばかりで...あまりにも戦闘の教育が無い。
戦略なり何なりあれば良いのだが、そこについては現場を見てきた父さんや彼に従っているジェクターやメディスンから教えてもらったり、交流して親しくなった他の指揮官候補生と情報交換をしたりして地上に向かう為の知識を身に付け、蓄えていった。
士官学校というのは名ばかりで、とてもくだらない精神論をほぼ聞いてるだけだったが...指揮官になるには話半分に聞いて、後は経験あるのみなのだろう...俺はそう自分に言い聞かせるしか無かった。
士官学校を卒業し、ニケ達と共に地上へ向かう。
...もしマリアが生きているのなら、こうして肩を並べられたのだろうかと───指揮下にいるニケ達を思いながら見た。
───しかし、俺は甘く見ていた。
地上というのは甘く無く、共に戦う事の無い復讐劇とは違う。
俺はここで、父さんの質疑を理解した。
「サーバント級多数接近!」
「指揮官、下がってください!」
「あぁ...私の腕が...腕が!!」
ラプチャーは金切り声を上げて俺達に襲い掛かる。
ニケ達の応戦虚しく任務は失敗に終わった。
父さんは宿舎のお金を出し、最高で1年は生きていられる生活費を渡してくれたが...クレジットも無限では無かった。
次の日も。
また次の日も。
任務は失敗に終わるか、任務に成功しても犠牲や損失の方が大きく、貰える
「助けて、助けて...。
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて───」
俺の指揮下にいた1体のニケが一つの単語を連呼し始めると同時に...同僚である筈の仲間に襲い掛かる。
俺は止むを得ず、部下だったニケの四肢を撃って身動きを取れなくするが...彼女は
撃ちたくない。
撃たせないでくれ。
お願いだから、やめてくれ。
「助けて───」
───乾いた発砲音が鳴り響き、耳に水が入ったような感覚を覚える。
俺は引き金を引いてしまった、助けられない恐怖から...。
───周りが灰色に見える。
色が無く、音が聴こえ難い。
周りからはラプチャーが迫って来ている筈なのに、どれが何なのか判別が付かない。
目の前では、部下のニケが俺に向かって何かを必死に言っているが全く聴き取れなかった。
そして、爆発に巻き込まれたのか俺の身体は浮き...地面に叩き付けられると同時に視界は真っ暗になった───。
俺が目覚めるとそこは病院で、どうやら誰かに助けられたようだった。
父さんも、誰も見舞いには来ない。
無事に帰って来いと言ってた筈なのに、死んだと思われてるのだろうか?
何とか退院して病院からリペアセンターに向かう。
そこには部下のニケも退院出来たものの...部下の1人は俺に激昂しながら胸ぐらを掴んだ。
「アンタのせいで...アンタのせいで...!
返してよ!! 私の友達!!」
「落ち着いてください!」
看護師のニケが止めようとするものの...部下のニケは涙を流し、憎しみの籠った目を俺に向けたまま、俺を責め立てた。
「申し訳ない...本当に...申し訳ない...」
俺は崩れてしまう。
ラプチャーを倒せず、ニケを救えない無力さを思い知った上での絶望、悔しさ、罪悪感...涙を出ながら俺は謝罪の言葉を漏らした。
「今更謝罪なんてやめてよ!
どうせ
───俺の中で何かが壊れた。
この時に解った───Dが何故あんな表情を俺に向けたのか。
俺を復讐から遠ざけようとした理由...俺はDに、彼女になんて酷い事を言ったのだろうか。
戦場では平等に命を落とす。
俺は淡々と指示を出し、ニケが侵食されたり思考転換で暴れ回ったら
ニケが話す筈ない...アレは兵器なんだと必死に言い聞かせながら。
「わ、アイツがそうなんじゃない...?」
「確か...任務は失敗しても自分だけ生き延びるんでしょ、やだー」
いつの間にか、俺の悪評が広まっていた。
ニケからも、同じ人からも...俺は
ある言葉を機に、俺の中で限界を迎えた。
「
───気付くと俺は殴っていた。
指揮官の1人から言われた言葉を最後に
「は、歯がっ───」
...そんな事はどうでもいい。
俺は男の首を掴みながら近くの壁に叩き付け、その頬に拳を叩き込んだ。
何度も。
何度も。
何度も殴り付けた。
拳が真っ赤になり、そこにはドロっとした血が漏れ出す。
周りは悲鳴を上げたり止めようとするが...俺はその指揮官が失神するまで、
その後、駆け付けたA.C.P.U.に捕まり、俺は更生館に収監される。
そこでの生活も地獄ではあるものの...俺にはどうでも良い。
もし外に出ようものなら俺は...あの時のニケハンターと同じく殺人鬼と化していたかもしれないのだから。
牢屋の外では拘束ベルトで厳重に縛り付けられて運ばれる
彼女は偶然こちらを見ると、穏やかそうに青い瞳で微笑む。
...俺はその笑顔を見て、マリアを思い出した。
マリアに会いたい...俺はそう思いながら牢の中で過ごした。
それから数年の時が経ち───俺は更生館から出所する事になった。
理由は父の手引きだが、外に出ると黒いリムジンと、父の専属ニケである運転手、ジェクターがいた。
「...久しぶりだな、ジェクター」
「お久しぶりですね、ヴィンセント様。
お父上がお待ちです」
ジェクターが自身の被っている帽子の鍔を軽く摘んで礼をし、後部座席のドアを開ける。
車内には父は厳格な雰囲気を放ちながら座っていた。
「...久しぶりだな、V。
頭は冷えたか?」
「...ああ」
俺は車に乗り込み、沈黙の時を過ごす───父さんは家に着くまで一切の話をしなかった。
そして家に着き、車から降りる。
久しぶりの家...扉の前では、メディスンが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、旦那様。
それにヴィンセントぼっちゃまも...お久しぶりでございます」
「ああ...お前も変わってないな」
「ふふ、ニケですもの」
そんな他愛のない話をしながらも、俺は父さんに付いて行きながら書斎へと向かった。
書斎に着き、椅子に腰掛けた父さんは...俺に話し始めた。
「...お前がどうして更生館にいたかは知ってる、傷害事件の事もな。
出所させるまでは私の力で何とか出来たが、噂まではどうにもならない。
お前が
父はそう言うが、ここまで足を引っ張る俺を許さないのかと思っていた。
「怒りを...感じないのか?」
「怒りか?」
「独断で復讐をし、指揮官になって傷害事件まで起こし、更生館に...父さんだって手間が掛かって嫌じゃないか?」
父さんは俺の話を聞き終えると...椅子に座り直してから口を開いた。
「...正直言うと、私は父としては不出来であろう。
お前の事を怒れないから面会にすら行かず、まるで小物のように権力を使って出所させた。
運良く寿命を全うしても、地獄に堕ちるのは確定だろう」
「なら、どうして俺を...」
「...お前の事を責められる立場ではないからだ。
復讐は私もしたかった...それに、お前が無差別に殴ったと思ったが、
まさかそこまで知っているとは思わなかった。
だが、父さんにとっても今回の事は黙って見過ごす訳にもいかなかった。
「だが...抑える事は出来なかったのか?
お前に殴られた被害者は、トラウマになってしまって再起不能となってしまった。
権力を使ったとはいえ、7年も面会に行かず出所もさせなかったのは...私が唯一お前に与えられる唯一の
...その言葉を聞き、俺は自分のした事を悔やむ。
父さんは俺に失望している...もうどうすれば良いのか分からなかった。
俺は頭を深く下げて謝るものの、父は頭を上げるように言った。
「大丈夫だ。
ただ...お前に
父は、ある紙の書類を出す。
そこにはあるプロジェクト名が記されていた。
『"PROJECT:DECIDERS"』
「これは...?」
「お前の戦績はオペレーターを通して確認しているが、素晴らしいものだと思う。
それに、お前が良ければだが...。
───
父さんはそんな提案をする。
だが、俺には
本当に部隊を引っ張れるのか?
この部隊でも同じ事が起きるのでは無いか?
俺はそんな不安を抱えながらも、書類に目を通した。
"ディサイダーズ"部隊───表向きは"第52リプレイス部隊"という名称の量産型部隊で、所属するニケは原則からの例外として3体以上...
9体の理由も長期戦となりそうな任務で欠員しても任務続行できるようにと理由が付いている。
メンバーは
3ヶ月間における生存率の高さ。
思考転換の疑いや開発過程で"NIMPH"に不具合が出ているか否か。
そして記憶の有無等...それらを基準に決めているようで...厳選した9名の名前も記載されていた。
『ソヨン───プロダクト12』
『フレイヤ・ヴィンテル───プロダクト08』
『アンリエッタ・ソレーヌ・ベネヴィエール───I-DOLL・サン』
...本名まである。
家族構成も、人間時代の事すら揃っている。
俺は自分の部下となるニケの、9名分の資料を見ながらも...どうなるのか分からない計画に乗った。
そして一週間後───第52リプレイス部隊が編成される。
彼女達を初めて見た時は、『どうせこの子らも死ぬのだろう』と思いながら見ていた。
正直、あてになるかどうかも分からず...最初の戦闘シミュレーションではチームとしてもバラバラで、タワーでも口論が続いた。
しかし、地上での最終試験では───予想外の展開が起きた。
一週間という期間を設けての地上野営...これが駄目なら死という恐怖の中、当然の如くラプチャーが現れた。
「セルフレス、サーバント級多数!
それにマスター級...!?」
「えぇ〜!?
あんなに相手するのは無茶だよ!」
「やるしかないだろ?
私は準備完了だ」
「指揮官、指示を」
彼女達は生存率が高い理由を納得させるようにそれぞれ動き始める。
しかも俺の指示を聞きつつ、場合によっては自分達で指示を出し合いながらフォーメーションを組んで。
シミュレーションルームでは喧嘩していたメンバーも、足を引っ張る事無く連携を取っていた。
そして戦闘が終わり...俺は爆発に巻き込まれて気絶していたようだった。
目覚めた後、周りを見るとそこには空薬莢とラプチャーの残骸...でもニケ達の姿は無かった。
俺は彼女達の名前を呼ぶが、返答が無い。
また救えなかった...そう思って諦めていると───。
「はぁ...はぁ...戦闘終了」
「危なかった...損傷率も
「やっぱりラプチャーと戦うのは慣れませんね...」
「だいぶ慣れてると思ったわ...本当に治安維持任務の方が長かったの?」
───全員生き延びていた。
軽い損傷こそあったものの、致命傷には至ってない。
これが運なのか、それとも彼女達が今まで生き延びてきた
それからというもの、俺と彼女達の生活は始まった。
正式投入されてからの初任務で失敗したり、久しぶりの地上で死にかけた事もあったが...今もこうして生きているし、彼女達も最初の時と比べると自然な笑顔になっているように感じた。
そうか、俺の望んでいたのは───。
───俺は目を覚ます。
走馬灯を見ていたかのようで、それは
目の前には23が馬乗りになっている。
そして俺の首を絞めていて...目を覚ます事で、窒息する苦しみが戻ってきた。
ニケの握力は人間とは比べ物にならない程に強く、一度掴まれると抵抗できない。
俺は現実に引き戻されて、やっと思い出した。
...そうか。
俺は失敗したんだ。
俺は、目の前にいる彼女の事も救えなかったんだ。
「───マリア、
...僕は、何故この償い方を思い付かなかったのだろうか。
これで指揮官編終わりです。
次は12月23日に投稿予定です。