勝利の女神:NIKKE 〜Nobody can take your place〜 作:乾エルト
「お母さん、お兄ちゃん、早く!」
お父さんに背負ってもらい、私は"AFX"記念式典に来ていた。
AFX───それは"AZX"の前身とも言える"アークエクスプレス"であり、私は兄と共にそんな列車に心踊らせていた。
「お姉ちゃん、"列車味のパーフェクト"食べようよー」
「ふふっ、乗ってからね」
途中で仲睦まじそうな姉弟が列車味のパーフェクトについて話しているのを聞いて私も食べたくなっていた。
「お父さん、わたしも列車味のパーフェクト食べたい!」
「ぼくも!!」
「ははっ、中に入ってからな」
これが私にとって思い出の1ページとなる、筈だった───。
再び墓地へ行き、彼のいた墓石の前に立つ。
そこにはある一家の名前が記されていて、私は一家の娘と思わしき人物の名前を見て胸騒ぎを覚えた。
『"ファルネリア・
まさか、そんな筈はない───私は墓地を後にしてある所へ向かった。
何分も掛けて向かった先は慰霊碑がある場所...その慰霊碑は"AFX列車テロ事件"で命を失った人達を追悼する為に建てられたもので、私の読み通りそこには彼がいた。
慰霊碑に手を合わせて俯くその後ろ姿を見て、私は無意識のうちにふと呟いてしまった。
「お兄ちゃん───」
私の声に気付いた彼は振り向き、こちらを見る。
格好は前回会った時と同じだからか、すぐに私だと判ったようだ。
「キミは...墓地で会った...」
「あ、あの...」
私は意を決して彼に訊いた。
不安こそあれど、この違和感を払拭する為にはこうするしかなかった。
「あの───貴方には
私の質問を聞いた彼は、驚く様に一瞬目を見開いた後...表情を曇らせて俯いた。
「...ああ、いたさ。
丁度キミと同じぐらいの見た目の歳でね。
僕や両親と一緒にAFXの式典に来てたんだ」
「それなら、今は...」
「...父さんと一緒に死んだよ。
爆破テロに巻き込まれてね」
私はそれを聞いて唇を噛み締める。
そうか、私は彼の妹だったんだと───やっと見た夢に確信が持てた。
「───もし、
彼は私の問いに歯を食いしばるように表情を更に曇らせた。
「どうもこうも、ニケになったらもう僕や親の事なんて憶えてない...」
その答えに私は一呼吸置いて彼に言った。
「───
「どうしてそれを...?」
彼は愕然とする。
その表情は、私が彼との出会いを無かった事にしたい程だった。
「まさか、そんな筈は...」
「私は生前を姿を憶えてませんが、貴方がいた事は憶えています」
「そんなの嘘だ...ニケがそんな事憶えてる筈が無いだろ!?」
───彼は私の両腕を掴みながら激昂する。
...怖かった、目の前が歪んでしまう程に。
「───すまない...」
───彼はすぐ我に返って謝る。
それでも、私は拒絶されたようなショックから咄嗟に彼の元から走り去ってしまった。
「待っ───」
帽子を落としてしまうが、そんな事はもうどうでもいい...私は目に溜まる涙を堪えながら宿舎へと走る。
───止めようとする声を最後まで聞かずに。
宿舎に戻れたが、偶然フラワーと会ってしまう...悪い人では無いが、彼女に捕まると厄介だ。
「あっ、お帰りファル!」
「た、ただいま...」
「その格好気に入った?」
「は、はい...」
このまま話が続けば直に涙が溢れてしまう...それだけは避けないと───。
「良かったぁ〜!
あっ、もし良ければファル一緒に───って、どうしたの...?」
...私の目はもう限界で、視界は涙が滴っていた。
「すみません、部屋に───」
「待って!」
私が横切ろうとするが、フラワーは私の腕を掴んだ。
「は、離してください!」
あぁっ、涙がますます溢れそうになる。
フラワーの腕を振り解こうとした瞬間───私は彼女の胸元に引き寄せられ、抱きしめられた。
「───何があったか分からないけど...私に話してみない?」
背中を撫でられ、涙が更に溢れてくる。
突き飛ばして部屋に篭れば良かったのに、フラワーの温かさから離れたくない...今は甘えたくて、慰めて欲しくて苦しかった。
私はフラワーの部屋で、彼女に今までの話をする。
ただ、話をしていく内に私の声はくぐもっていた。
「大丈夫よ、落ち着いて」
「あ...ありがとうございます...」
「...でも、嫌な話ね。
妹がニケになっても、中身まで変わった訳では無いのに...」
「多分、信じたくないんだと思います...夢の時は彼も幼かったですし...」
「それでもよ?
妹が生きてて量産型とはいえ、記憶だって思い出してきてる...それは素直に喜ぶべきじゃないの?」
「でも...」
「血の繋がった家族のはずなのに、ニケになったという理由だけで拒絶するのはあんまりだし、信じらんない...」
フラワーは俯き、拳を握り締める。
いつもの様子とは違う彼女だっだが、私が見ている事を改めて自覚すると、すぐ元のフラワーに戻った。
「───あっ、ごめんね。
でも、その話はファルが悪い訳じゃないから。
私はファルの味方だから...ねっ?」
「あ、ありがとうございます...」
私はフラワーと話したおかげか、気持ちが落ち着く。
そして、その日はぐっすり眠る事が出来た。
そして次の日───私達は朝食をとっていた。
今日はAFXでのテロ事件で失われた命を弔う追悼式が行われる日...私にとっては重要な日だ。
朝食をとり終え、それぞれが任務の無い時間を過ごしている中───私はテレビに映った追悼式の生中継を観ていた。
しかし...見ている中で画面が変わった。
『───追悼式の途中ですが、ここで緊急速報です。
武装グループがアークエクスプレスの1本に乗り込み、乗客を人質にとりました』