ホビアニTCG世界でカードデザイナーやってるTS配信者 作:あずきの豆腐
和装束ウォーリアシリーズはかわいさを追求する一方で、彼女たちの戦う相手『鬼』サイドは禍々しさを際立たせます。
いわゆるコントラストってやつ。
・こんなかわいい子たちなのに地獄みたいな世界で生きてるんだよな
・心を動力源に武器を生成してるんだよね
・武器の形態ころころ変わりそう
・慕っていた先輩が命を代償に守ってくれて心が壊れちゃった子とか絶対いるよね
・逆に「先輩♡ 先輩♡」と慕ってくれた後輩を見捨てるしかできなくて絶望するパターンも
・そもそも鬼と戦う覚悟ガン決まってる時点で身内に犠牲者がいそうなんだよなぁ
・えっ、そう考えるとこの子たちなんで笑えてるんだ
「君たちは人の不幸を願う天才だねー」
・元凶
・諸悪の根源が何を
・おまわりさんこいつです
・かわいいの世界に地獄を持ち込んだ張本人
「いやいや。私の場合はちゃんと考えがあるからさ」
そもそも。
現環境のトップが
常にリソースかつかつで戦わざるを得ない速攻に、さらにリソースの消耗を迫る
つまり、環境のトップに対するメタだったのです。
「現状、
しかし、いくら手札を増やしても、キーカードを破壊されるリスクは残っており、運要素が強く残ってしまいます。
「そこで賢い私は考えました。私のイラストからカード効果が発案されるなら、墓地を連想する要素を組み込んでおけば墓地利用効果がたくさん生まれるのではないかと」
・墓地利用?
・破壊された時に効果発動するモンスターとかかな
・現状でもあるよ?
「ああ、うん。あるのは知ってるよ? 勉強したからね。でも、私が言ってるのはたとえばリアニメイトとか」
・リアニメイトって?
・ああ!
伝説じゃないのよ。
・アニ×イトが繰り返されることだぞ
大喜利大会でも開催なされました?
「違う違う。Reanimate、蘇生のことだよ」
さらさらとキャンバスに綴りを記す。
Reは再びの意、animateは命を吹き込むの意。
組み合わせると、墓地からのモンスター蘇生の意味になります。
・ほへー
・イズミネキって本当に中卒なん?
・普通に高校卒業程度認定試験受かりそう
・学歴いらない世界の人だからなぁ
うーん。前世だと割と一般的な用語だったんだけど、こっちの世界はあの世界的カードゲームが無いから浸透してないのかな。
(待って? つまりこの世界基準だと画期的なアイデアを湯水のように湧かせるチャンスってことでは!?)
転生17年にしてまさかの知識チート発覚。
「他には、たとえば墓地から山札に戻すことで効果を発動するカードとか」
・視点が新しすぎる
・何そのギミックおもしろそう!
・やめてくれーせっかくそろえた手札破壊デッキが時代遅れの遺物になってしまう……!
・ひょっとしていまのうちに売り払った方が賢い?
「待って待って、早まらないで。忘れちゃダメだけど、カード効果を決めるのはペガサス・コーポレーションのお偉いさんたち。私の言ってることは願望で、実装される保証はどこにも無いからね?」
言っておかないと、後からクレームが来ても困る。
・実際ありそうなんだよな
・まあ、あったとしても販売されるのはしばらく先でしょ?
・わからんぞ
・販売元がペガサス・コーポレーションだしなぁ
・来月発売! ってなっても驚かない
「いや来月とか絶対バランス調整とか済んでないよ。壊れかクソザコか、どちらかになるね、絶対」
個人的には深度Vくらいで蘇生魔法使いたいんだけど、ちょっと強すぎる気がしないことも無い。
「墓地蘇生って、通常だとコストが重いモンスターをコスト踏み倒しで出せたりしちゃうからさ」
折衷案としては、蘇生対象のモンスターに深度制限を設けるとかですかね。
「あとは既存のカードの見直しもいると思うんだよね」
従来、自分のリソースを墓地に送ることはデメリットの場合がほとんどでした。
・【ケイオススライム】で手札に加えられなかったカードが、墓地というリソースに保管するって発想になるのか
・墓地は安全地帯ってコト!?
・墓地に送る効果がメリットになるのか
「うちのチャンネルカードゲーマー多くない……?」
・チャンネル主がカードゲームのデザイナーなので
そう言われるとそうなんだけどさぁ。
私は別にカードイラストの専門職じゃねえぞ。
立ち絵とかの依頼もしろよぉ……。
「お腹すいたので終わりー」
その後も長時間配信を続けて、腹時計に任せてバイバイとリスナーにお別れを告げました。
ぽふん、とメッセージアプリの通知がポップして、スマホを確認するとアリスちゃんからです。
「『配信見てました、とても有意義な時間でした。お別れの言葉を書き込めなかったのでここで書かせていただきます。おつかれさまでした』。律儀だねーアリスちゃんは」
ありがとうの一言を返そうかと考えて、この長文に対してそっけなさすぎか? と自問します。もう一言加えた方がいいでしょうか。
「お、そうだったそうだった。使ってないサンプルカードあげる約束してたんだった……あ」
そういえば私、スリーブに入れてない気がする。
(いやだってサンプル貰ってもカードゲームなんてするつもりなかったし……)
まして、私のカードが高騰するなんて思いもしませんでした。
「ま、まあ、対戦用であってコレクション用じゃないし文句言われないでしょ……ん?」
サンプルカードの保管庫となっていたケースを引っ張り出し、中身を確認する。
(傷一つついてない……? この世界のカードってすごく頑丈なつくりをしてるんだね)
モース硬度5、いや6あるんじゃないかな?
そのうえ靭性と剛性にも優れていると来ました。
なんの素材でできてるんでしょう。
「滅茶苦茶頑丈なつくりのカードかぁ。まるでホビーアニメだね。っと、それよりアリスちゃんに返事返事」
わざわざメッセージありがとうの言葉と、約束したカード発掘したよの連絡と、都合のいい日程の確認の3つを送る。
返事は爆速で来て、週末に同じステージに出るというのでそこでまた会うことにしました。楽しみー。
「アリスちゃんのもとでもきちんと活躍するんだぞー。それがお母さんの望みだからなー」
ホロ加工されたカードがやけにキラキラ輝いて見えました。
最近の技術ってスゴイ。
◇ ◇ ◇
週末。
さまざまなカードのデザインのラフを大橋さんに送り、いったん返事待ちの時間を作る。できたら月曜まで預かっててほしい。というかペガサス・コーポレーションなんて大企業に入ったならきちんと土日は休んで欲しい。死ぬぞ(実体験)。
「あ! イズミ先生!」
「おー、アリスちゃん。今日もかわいいねー」
「えへ、そうですか?」
「うん。私がお嫁さんにもらいたいくらいだね」
「~~っ! もう、からかわないでください!」
結構本気なんだけどね。
相手が冗談と思ってくれていて、それで程よい距離感を保てているなら私もそれに乗っておこう。
さて。ここはアリスちゃんと初めて出会った時と同じステージ。
今日も今日とて、前と同じバカでかいスピーカーがあって、アリスちゃん含めてダンスメンバーが準備中。
「前も思ったんだけど、このスピーカーっていちいち運んでるの?」
「はい! 先輩たちの代から受け継がれてきた大事な備品で、その年のメンバーで保管することになってます!」
「重くないの?」
「重いですよ、物理的にも、精神的にも」
それはそうか。代々受け継がれてきた備品、自分たちの代で途切れさせるわけにはいかないだろうからね。
「今日も楽しみにしてるよ?」
「はい! 期待して待っててください! ――あ」
対面していたアリスちゃんが、急に不機嫌になりました。
何か地雷踏んだのかな、と不安になりましたが、よくよく見ると、私のさらに後方を睨んでいると気づきます。
不思議に思って振返ってみると、そこに、見覚えのある人相の悪い青年グループが。
「よォ、この間は世話になったな」
「またあんたたち? 何の用よ」
アリスちゃんがメンチを切ってる。
メンチ切っててもにじみ出るかわいさが隠しきれていないの微笑ましいしかない。
「なぁに。この間の礼をたっぷりしてやろうと思ってなぁ?」
「~~っ、なに? この禍々しい気配……っ」
え? アリスちゃん? どしたの急に。
禍々しい気配……? さっぱりわからない。
「カードディーラーから面白いカードを譲り受けてなぁ? リベンジマッチと行こうじゃねえか」
「いいわ、望むところよ!」
だからなんでなの!?
どうして、なんでもかんでもカードゲームの勝敗に趨勢を委ねようとしてしまうの!?
「あのさ、このステージはアリスちゃんたちが使用申請出してるんだよね? だったらそもそもアリスちゃんたちが使用するのは正当な権利じゃないの?」
「えっ」
「えっ」
えっ。
なんで私が「何言ってんだこいつ」みたいな反応されないといけないの?
創造主であるママのことが大好きなのに声も形も認識してもらえないカードの精霊たち……可哀そう