ホビアニTCG世界でカードデザイナーやってるTS配信者   作:あずきの豆腐

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7話 ストレージにはお宝がいっぱい

 今日のwithアリスちゃんはカフェじゃなくてカードショップに立ち寄ることになりました。

 本音を言えばカフェでまったりおしゃべりしたかったけど、アリスちゃんが楽しそうにしているのでオッケーです。

 

「わぁ、見てくださいイズミ先生! 【超克龍(ちょうこくりゅう)ディメンションドラゴン】が売ってますよ!」

「え、本当に?」

 

 確か2弾くらい前のパックに収録されたスーレアだったかな? 私作のカードで、モンクレを始める前でも配信でリスナーから「当たった」「永遠に引けない」と悲喜こもごものコメントを貰ってたから強いのは知っています。

 

「たっか!?」

 

 ゼロの数間違えてない!?

 

「先生のカードなら当たり前です!」

 

 え、ちょっと待って?

 イラストを担当したのち、貰ったサンプルを売り払ったら給料実質2倍になるんじゃ……?

 いや、しないけどね。ちょっと心が揺らぎそう。

 

「というか、全体的に思ってる以上に値段が高い……」

 

 普通にパック剥いた方が安価に揃いそうに感じます。

 前に開封配信した感じだと封入率は渋いなんて感じなかったし、どうしてこんな高値で取引されているのでしょう。

 

 ペガサス・コーポレーションが総パック数を絞ってるのかなぁ?

 需要に対して供給が足りていない。そう考えないとつじつまが合いません。あるいは客寄せパンダ的な扱いで、売るつもりが無いかどちらかだと思います。

 

「先生、こっちですこっち」

 

 ぴょこぴょこと愛らしい仕草で手招きするアリスちゃんに誘われて、ほいほいと寄ってみる。

 

「ああ、ストレージ。よかった、ちゃんとこういう値段のカードもあるんだね」

 

 パック売りではなく、1枚につき○○円みたいな感じで売りに出されてるカードの束。ここに並んでるのは1枚30円のカードたち。

 それは前世の記憶と変わらない。一つ違和感があるとすれば――。

 

(多いなぁ?)

 

 カードの量が尋常じゃないくらい膨大。

 

「たまにレアカードが混ざってたりするんですよ」

「なんで?」

「たぶんなんですけど……」

 

 耳打ちをする仕草でアリスちゃんが私の顔のすぐ横に顔を寄せました。

 きゃわわぁ! アリスちゃんの尊いお顔が! すぐ真横にぃ!

 

「(カードショップってパックを箱買いして、レアカードはサーチして効率的に回収するんですよ)」

「うん? うん」

「(で、レアカードの抜き終わったパックを中身も確認せずにストレージ行き。っていうのがモンクレプレイヤーたちの定説です)」

「またそういうことするぅ」

 

 流通量が少ないんじゃなくて、ショップ側がレアカードを抜いてるから価格が馬鹿みたいに跳ね上がってるんじゃないの?

 わくわくしながら限られたお小遣いでパックを買いに来る子どもの純粋な気持ちを踏みにじるなよぉ。

 

「ま、まああくまで都市伝説ですから!」

 

 よほど渋い顔をしていたのかな。

 アリスちゃんが慌てた様子で話題をそらそうとしているのがわかりました。

 

「よかったらいっしょにしません? ストレージの束からレアカードを探す――宝探し!」

「ん。そうだね」

 

 自分用にデッキを組むにあたって、現環境と、過去の環境の変遷は勉強しました。発売開始から数年しかない新しいカードゲームであることと、少なくないカードをイラスト担当していたのですんなりと記憶できました。

 だから、どのカードが当たりとなっているかはわかります。

 

「んー?」

 

 よぉく目を凝らすと、カードの束の中に、強く輝くカードが混ざって見えます。

 

「お、これとかホロじゃないの?」

 

 と思い抜いて確認すると、なんの変哲もないただのよくあるカード。

 あれ? 輝いて見えたんだけどな?

 

「ああぁぁぁ!? それ、天地鳴動パックでのみ収録されていた汎用パーツですよ! 既に製造が終了していて、通常レアリティでありながら品薄状態が続いてるカードです! この品質の良さなら普通は3500円はしますよ!?」

「そんなに!?」

 

 お前ぇ、どうしてこんなカードの束に隠れてるんだよぅ。

 

(というか、キミホロ加工されてないんだよね? なんか、やけにキラキラ輝いてない? 気のせい?)

 

 わかった。わかった。お迎えするから、その光輝くのやめなさい。

 

「うわ」

「先生? どうしました?」

「いや、なんでもないよ」

 

 疲れてるのかな。カードの束から、いくつもまばゆい光が見える気がする。

 

「えーと、じゃあこれは? あ。ただの通常レアか」

「そ、それは! 違いますよ先生! これはエラーカードです! よく見てください、効果テキストが【心目(しんがん)のサナ】を手札に加えるになってるじゃないですか。これ、正しくは【心眼(しんがん)のサナ】なんで、サーチできないサーチカードって有名なんです!」

 

 君はここにいて妥当なカードみたいだね。

 まあ、わかる人にはわかるレアカードみたいだし、見つかりやすいように手前に置き直しておいてあげよう。

 

「じゃあこれは?」

「こ、これは……! エラッタ前【エクスキューショナー】じゃないですか! 墓地に送られたターンに手札から反撃札をコスト踏み倒しで使えるカードなんですが、使用回数も移動元の場所も制限されてなかったせいで1キルが大量発生して販売1カ月と待たずに使用禁止になった伝説のカードです!」

 

 君、そんなに恐ろしい性能していたのか。

 エラッタされた以上公式の場で活躍する機会はあんまりないだろうけど、なんでもあり系の大会では活躍できるんじゃない?

 

(あ、いや待って。普通に配信ネタにするのはありか)

 

 よし、擦り続けよう。

 君もお迎えだ。

 

「これは? いや、聞かなくてもわかったや」

「それは! 速攻デッキの必須パーツと言われたレアカードじゃないですか! ストレージの束に入ってちゃダメなくらい強いカードですよ!」

 

 隣を見るとアリスちゃんがあんぐりとこちらを見ていました。

 

「先生、ストレージ漁るのお上手ですね……! わたしもまけていられません!」

 

 そう言って、アリスちゃんは必死にカードの束を確認していくのでした。私目線だと、そのストレージに光り輝いてるカードは無いんだけど……私の直感が外れてるかもしれないし、水を差すことじゃないね。

 

「あとは、これとか……あっ、さっきと同じカードか」

 

 アリスちゃん曰く、天地鳴動パックだけで収録されていた製造終了の汎用パーツ。これも美品だし、3500円で売れるのかな?

 

「ひぇぇぇ、本気で言ってます……? そのカード、町中のショップをめぐっても1枚も見つからないことも珍しくないんですよ?」

「そうなの? ……お、3枚目」

「あわ、あわわあわわ」

 

 アリスちゃんが白目をむいて意識を手放しかけている。

 あ、あぶなーい。

 ふぅ、間一髪。私が支えなかったら卒倒していたね。

 間に合ってよかった。決して、アリスちゃんを合法的にお触りしたいと思っていたわけではないです。

 

 アリスちゃんの「ありがとうございます」という赤面に心が満たされていくのを感じながら、ストレージに視線を戻し、嫌な事実に気付いてしまいました。

 

(ストレージ漁りしていた方が時給高いんじゃ……?)

 

 いやいや。転売ヤーみたいな真似で金を稼ぐのは信条に反します。気をしっかり持ってください、私。

 

(うーん? 見えるレアカードって、全部私が描いたイラストなんだね)

 

 まあ、私のイラストのカードが強力なことが多いから確率的なものもあるんでしょうが、私以外のイラストレーターが描いたカードが光って見えることはありません。

 

  ◇  ◇  ◇

 

「いやぁ、今日は楽しかったよ。ありがとうねアリスちゃん」

「い、いえ! わたしのほうこそ! とても素敵な一日でした! えへへ」

 

 くぅ、なんだよ「えへへ」って。かわいいかよ!

 

「っと、そうだ」

 

 ストレージから拾い集めたカードの内、ネタカードじゃない、実用的なカードを選別してアリスちゃんにプレゼント。

 

「はいこれ」

「え!? いやいやいや! 受け取れませんよ!」

「いいからいいから」

 

 それでも断ろうとするアリスちゃんに、理由を説明します。

 

「ほら、最近物騒だって言うじゃん? レアカードを賭けて辻バトルを挑んでくる輩がいるとか。そういうやつらに絡まれたら、このカードを渡して逃げればいいよ。いわゆる、お守りってやつさ」

「あぅ、ですが……」

 

 アリスちゃんの手に握らせて、カードたちに贈る言葉に思案を巡らせます。

 

「私の大切な人を、怖い人からきちんと守ってあげてね。期待してるよ」

 

 カードが強く、輝いた気がしました。

 君たち、ひょっとして自由意志もってる?

 いや、まさかね。

 

「じゃね」

 

 アリスちゃんが動転しているうちに、立ち去ってしまおうと駆け出して、最初の十字路を曲がったところでふと思いました。

 

(ああぁぁぁ!? しまった! 次に会う約束してない……!)

 

 こういうのは別れるときに取り決めておかないと、あっという間に疎遠になってしまうものなのです。私知ってます。

 

(いやぁ、ここで引き返すの恥ずかしいなぁ)

 

 追いかけてくれないかな、とチラチラ窺ってみますが、願い叶わずでした。

 というか、未練がましく追いかけてくれるのを待ってる時点で相当情けないですね。

 大人しく、すごすごと顔を出しましょう。

 

「ごめーんアリスちゃん。大事なこと忘れてて――は?」

 

 へらへらしながら引き返した先で、私の表情は真顔になりました。

 なぜか、アリスちゃんが、怪しい黒ずくめの男と向かい合っています。

 

(ん? おーい、アリスちゃん? 私が席を外したちょっとの間に何があったのかな? 何を今から始めるつもりなのかな?)

 

 その場に漂う空気は肌がひりつくように張り詰めていて――。

 

「「バトル!!」」

 

 んもぉ!

 レアカードを囮にして逃げろって言ったじゃん!

 なんでバトルしてんのぉぉぉ!?

 




※ナイトメアエデン下っ端
「よし、夢咲イズミとかいう化け物は去ったな! ガハハ、ここでさっそうと初心者狩りだ!」

「なんで戻ってくるんだよぉぉぉぉ!」
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