ホビアニTCG世界でカードデザイナーやってるTS配信者 作:あずきの豆腐
#7119
これは救急安心センター事業の番号です。
救急車を呼んだ方がいいのか、あるいは、どこの病院に行けばいいのか迷った際の相談窓口だと思ってもらえればいいと思います。
「ほら、幻覚が見えてるのは救急レベルって専門家も言ってるでしょ?」
「もー、幻覚じゃないんですよー!」
「いいから、いくよ」
「ひぃぃぃ」
ダメだよ、ちゃんと見てもらわないと。
自分では大丈夫だと思っていても、取り返しがつかないくらいの傷を負っていることもあるんだから。
それこそ、場合によっては死に至ることだってある。
という感じで精神科にやってきたわけですが。
「突然カードから声が聞こえると言い出したと」
「はい、やっぱり重症なんでしょうか?」
「そうですね……精神というのはまだわかっていないことも多く、また、一人ひとり異なります。画一的な診断方法となると……しますか」
「へ?」
「バトル」
……?
うん?
バトル? なんでバトル?
(えっ、何かの隠喩? あるいは心理学分野における専門用語?)
と思ってたら白衣をバサーってなびかせながらカードデッキの束を取り出す先生。
勤務時間中にデッキを――!?
「望むところです!」
アリスちゃんもノリノリであります。
なんでみんなカードバトルにそんな絶対の信頼を置いてるの!?
「「バトル!」」
「……あほらし」
帰りますか。
◇ ◇ ◇
帰ってPCを立ち上げると、大橋さんから返信が来てました。
どうしてあの人は大企業に勤めておきながら休日返上で働いてるんですか?
もっと命大事に生きてくれー、頼むー。
ところで。
創作の世界は表現の自由が確保されているなど言いながら、タブーとされているものがあります。ポルノみたいな話じゃなくってです。
これは前世の話ですが、たとえばルーン文字の
あとは、日章旗とかも怒られるそうです。
要は人を不快にしそうなデザインは、商業的によろしくないのです。
私も、お絵描き配信をはじめたころから意識してきましたが、世界中のそれらを完璧に把握するのは諦めました。
私が把握してるのは代表的なものだけ。
それだけでも結構回避できるものですが――、
「あー、踏んじゃったかー地雷」
今回のように、その手のタブーに引っかかることはまれにあります。これは修正案件。個人で楽しむイラストと、商業用のイラストの違いですね。
ささっと修正してしまいましょう。
問題は配信しながら修正するか、裏でささっと修正してしまうか。
ラフ画の段階だからわざわざ配信に乗せるほどではないような気もするけれど、せっかく「配信OK」の取り決めをした和装束ウォーリアシリーズで配信しないのはもったいない気も。
ちょっとだけ配信しましょうか。
ストリーミングソフトを立ち上げ、配信サイトで配信を開始。
「修正タイムはいりまーす」
・はじまた
・こんズミー
・モザイクかかってるじゃん
・モザイク草
・卑猥なもの描いちゃったか
・えっちなのはまずいですよ!
「えっちなやつじゃないよ。なんとかって国でタブー視されてるデザインを連想させそうな模様描いちゃってたから修正依頼が来ただけ」
ちなみに、構造的にはイラストソフトはモザイクなしで、それをキャプチャしているストリーミングソフトでモザイク処理を施してる感じ。
モザイクに見えてるのは視聴者だけで、私目線だと無修正の状態で確認できてます。
・前の配信のアーカイブどうなりますか?
「アーカイブかぁ。大橋さんは何も言ってなかったんだよね。正直、連想ってのも難癖レベルだし、個人的には消さなくていいと思ってるんだけどどうしようね」
・消さないでー
・ダウンロードするから待って
・見て来たけどどこがアウトなのかわからん
・どこの国でアウトなの?
・大橋さん厳しすぎぃ
「世界的大企業ペガサス・コーポレーションだからコンプライアンスには厳しいんだよ、たぶん。そう考えると消した方がいいのか? 大橋さんに確認しておきます」
こういう確認は早い方がいいでしょう。
遅い時間に申し訳ございませんと前置きしたうえで、大橋さんにメールを送信します。
「これでよし。じゃあ修正作業するよー」
いったん今ある模様をすべて消して、そこから異なる模様を描いていきます。
「モザイクはもういっか」
問題と指摘された部分は消し終えたので、ストリーミングソフトからモザイクのフィルターを外して配信に載せます。
・はぇぇぇ
・すご……
・いつ見てもほれぼれするペン捌き
・すげぇ
・線が加わるだけなのに、ぐっと魅力が上がる気がするな
・コツとかってありますか?
「密度の強弱とか」
視線を誘導したいところに書き込み量を多くするとか。
「これはラフだからモノトーンだけど、顔まわりは他より彩度を上げたりとか。あとは髪の裏側に光を当ててコントラストを強調するのも手だよね」
・すげぇ
・例えのレベルが国宝級なのよ
・これで金取れるレベル
・なぜ講師で金を稼ごうと思わなかったのか
「講師ってのはさ、自分が持ってる知識を人に伝える仕事なんだよ。視線が過去に向いてるんだよ。若手に未来を託すと言えば聞こえは良いけど、私なら自分の力で自分の道を拓きたい。最前線で戦い続けたい」
少なくとも、大手企業から依頼されるような脂の乗ってる時期からそういう方向に手を伸ばすつもりはありません。
「でも腐ったら『腐っても鯛です~』なんて顔しながら講師してるかも」
・草
・いい話だったのになぁ
・感動しかけたのに
・涙引っ込んだ
・俺の感動を返せ
はい、そうこうしてる間に修正案完成。
「これも大橋さんに送っておきますか。『五月雨式に失礼いたします』……、これ私悪くないよね? アーカイブを消すべきかの確認って緊急を要する話だし、修正案も上がったのにこっちで抱えておくのは時間の無駄だし、どっちも必要な連絡なのになんで謝らないとダメなの?」
・真理に気付いてしまったか
・そういう定型文なんだよ
・本日の炎上スレはここですか?
・反省の色全く無いじゃーん
・まあ俺も申し訳ないとは全く思ってないながらも『五月雨式に失礼いたします』って書いてる
「まあ円滑なコミュニケーションのためってのはわかるよ? ただ、こういうこと多いからさ、先方から『こいついっつも五月雨式に謝ってるな』って思われてないかなーとか考えちゃうよね」
・俺完全にそれ
・ここに私がいる……!
・わかる
・イズミ先生とおそろいー
「みんな謝ることいっぱいで笑うわ」
メール文化はやっぱり悪。
◇ ◇ ◇
一方そのころ、
「ふっ、やるわね舞園さん!」
「先生こそ、こんなに熱い戦いは久しぶりです」
「でも次のターンでおしまいよ! さあ、ラストドローに祈りなさい!」
「わたしのターン、ドロー!」
舞園アリスが不敵に笑う。
「【ケイオススライム】を召喚! 山札の上から5枚をめくり、光属性と闇属性のカードを手札に加えます!」
内訳は水属性が2枚、光属性が3枚。
水属性のカードを墓地に捨て、手札を3枚補充。
「ふふ、どうやらお目当てのカードは引けなかったようね」
「まだです! この瞬間、場の【ポップスライム】の効果発動! スライムと名のつくモンスターが出たことで、手札を1枚捨て、山札からカードを1枚ドローします!」
舞園アリスが目を伏せて、山札のトップに手を重ねる。
「お願い、来て――!」
彼女の祈りが引き寄せたカード。
それはラスト1ターンで残された唯一の勝ち筋。
「魔法【
「なんですって!?」
「【ケイオススライム】でアタック! そして――【ポップスライム】でとどめ!」
「きゃぁぁぁぁっ!」
「やったぁぁぁぁ!」
舞園アリスが【ポップスライム】とグータッチを交わし、それから【ポップスライム】が誇らしげに背後を振り返ります。
『お母さん見ていてくれたぽよ!? ボクがんばったぽよ! いっぱい褒めてほしいぽよ!』
「……あれ? 先生?」
バトル中は集中していて気付かなかったが、スマホを確認すると夢咲イズミからメッセージが届いていることに気付く。
「『長くなりそうだから先に帰るね』って」
『ぽよぉぉぉぉ!?』
院内に【ポップスライム】の悲痛の叫びが響いた。
普段はカクヨムで↓みたいな作品書いてます
チート転生者の亡霊「育成した表人格(メスガキさん)が【ランダムエンカウントする魔王】って呼ばれてる」
https://kakuyomu.jp/works/822139839704869763
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