第43話 夏服
1987年も終わろうかという12月
彡(^)(^)つ「ヒロカツくん、ついにできたで!」
(´^ω^`)「お!Dパートが完成ですか!」
Dパートは夏のある日から幕を明ける
サツキとメイの夏服に衣替えだ
サツキは薄い黄色のサンドレス
メイは薄いピンクのサンドレス
(´・ω・`) .。oO(そういや、この服を決めるときにもひと悶着あったな………)
まだ、このDパートに宮崎さんが入る前
彡(゚)(゚)「これをサツキの夏服にしようと思うんや」
(´・ω・`)「どれどれ……」
彡(゚)(゚)「白地に青い線なんやけど、どう思う?」
(;´・ω・` )「えっと………」
正直………微妙………
宮崎さんが提案してきた服はワンピースのセーラー服
これをサツキが着ると目立ちすぎて絶対に浮く
想像してみて欲しい
学生帽にランニングシャツ、半ズボンのカンタと並ぶ白いセーラー服のサツキを……
そんなことになったらあまりにちぐはぐで作品の性質を変える
良いとか悪いとか………好みで話す問題じゃなくなっている
けど、素直に似合ってないなんて言えないし………
でも、なんでもいいからなにか答えなきゃ
それも前向きな否定で……
(;´・ω・` )「そ、そうですね………」
(;´・ω・` )「これだと線が多くなりませんか?」
彡(^)(^)「せやねん!胸の青リボンに襟からの背中の青い1本線が………」
彡(^)(^)「芝居の邪魔をすると思っててん」
(;´・ω・` ) .。oO(でまかせで言ったこと大正解だったみたい)
それにしても毎度毎度
自分の中で答えが決まってることを聞いてくるのだからたちが悪い
確認したい気持ちも分かるけど………
答える方の身にもなって欲しいものだ
第44話 映画の要
(´・ω・`)「他にはこんなこともあった………」
優秀な映画のストーリー展開の基本は緊張と緩和だ
トトロではAパートからCパートまで
緊張らしい緊張を作らずのびのびと描かれている
ということは、Dパートでいかにして緊張をもたせて終わらせるか
これが映画の要となる
Dパートはのんびりとした昼下がりに一通の電報が
サツキへと届けられたところから動き始まる
母の入院する七国山病院から打電されたものだった
「レンラクコウ シチコクヤマ」と電報にある
(´・ω・`)「お父さんは夕方になるまで帰ってこない」
電報でお母さんが心配になってどうにもならなくなる妹
自分だって不安なのに何も出来ない姉の我慢を重ねた気持ちにも限界がくる
「メイのバカ! もう知らない!」と叫ぶサツキ
そんな姉の言葉に泣きながら外に飛び出すメイ
そしていなくなったメイをサツキが必死の想いで捜すものの見つからない
(´・ω・`)「やがて陽は西に傾きはじめ………」
池に小さな女の子のサンダルが浮いているとの知らせを聞くサツキ
サツキに「自分の責任だ」と思い込ませる
その心を追い詰めるために一切メイの様子をみせない
(´・ω・`)「冒頭から60分かけて………」
サツキとメイに心を寄せるように作り上げておきながら
画面から一切のメイを取り上げてサツキの心を追い詰める
それと同時に心を寄せた観客の心理をも追い詰めるのが
このDパートの役目だ
宮崎さんもこのことを理解して絵コンテを描いていた
でもある晩、宮崎さんの手が止まった
彡(゚)(゚)「ヒロカツくん………」
(´・ω・`)「なんですか?」
彡(゚)(゚)「………サツキを追い詰めすぎとらんか?」
(´・ω・`)………
宮崎さんの絵コンテは
カンタのバアちゃんが土手で小さなサンダルを手に握りしめ
「ナンマンダブ ナンマンダブ ナンマンダブ」と必死に念仏を唱えている
バアちゃんの周りでは人々が竿を手に池を探っている
「そっちの方は泥が深いから その先!」と男が叫ぶ
そこに電車がガァァァーと音を立てて通るところで止まっていた
彡(゚)(゚)「これ以上進めるのが辛いんや………」
(´・ω・`)………
ドラマに必要な状況の辛さと
楽しい作品を楽しく作るという目的とが
このカットでぶつかったとボクは思った
彡(゚)(゚)「この先をさらに続けたら………」
彡(゚)(゚)「トトロを見ている子供たちがその芝居に耐えれんくなるんとちゃうか?」
彡(゚)(゚)「もう見たくないと心が離れんか?」
(´・ω・`)………
追い詰めたサツキによって“楽しい”気持ちから離れつつある緊張した子供心を
再び引き戻す緩和のタイミングがこのトトロという作品の核だと思った
心を少しずつ離すことは出来たが、それを如何にして引き戻すか?
これは“何処まででとどめるのか”による
(´・ω・`) .。oO(この宮崎さんのとまどいに………)
トトロはきっと良い作品になるとボクは思った
(´・ω・`)「ここが最後なんですよね?」
(´・ω・`)「ここまでくればサツキは最後の望みに気付いて………」
(´・ω・`)「その場所へ自然に行けますよ」
と、ボクは鉛筆を取って宮崎さんが止めた
電車がガァァァーという効果音の矢印線を
そのカット尻まで書き足して宮崎さんへと戻した