師匠系爺に憧れて 作:武神祭
強い老人キャラが好きだ。
嘗て伝説を残し、老い衰えて尚も前線に立つ老人。膨大な経験を経た先に立つ強さ。絶対的な信頼。それに応えるキャラのなんとかっこいいことか。
某忍者漫画、海賊漫画、死神漫画、願い叶える玉の漫画………国民的漫画に登場する強い爺さん。
老いた執事、魔法学園の校長、超人気な中国拳法使いの師、形無き物を切る不老の剣士、剣の鬼、国宝を振るう剣士、星の自転すら止めるリーゼント、宗教のトップに立ったキメラ教皇……爺だけではない。
銃ぶっ放す人形遣いの婆さん、お役目により怪物を封じ続けた老婆、見た目幼女の筋肉、霊能力婆さん……兎に角数多の老人キャラに憧れ、そうありたいと願い、そうあろうと努力した。
数多の格闘技を学び、自衛官の父に教えを請い、大学卒業後には世界を回った。
その過程で戦地を見て思った。銃までならともかく、ミサイルには勝てないな、と。
俺が憧れた老人達はその殆どがミサイルが飛んでこようと気にしないだろうに。俺は、違う。絶望した!
弱い己に失望した。
そして俺は、ミサイルに勝てるようになる術を探し、魔力と気とかオカルトに手を出さざるを得なかった。
世界中を探して回り、しかし見つける事出来ぬまま一度日本に戻りそこで魔力魔力と呟きながら徘徊する妖精の噂を耳にした。
その山で、俺は死んだ。ハンドル操作をミスったのか歩道に突っ込んできたトラックに潰されたのだ。そら飛ぶ半裸の妖精に気を取られたばかりに…………。
そしてなんか目覚めた。
第二の人生が始まったのだ。
第二の生を受けた世界には魔力があり、魔力を用いて戦う魔剣士という職業があった。当然、目指す。伝説級の力を持つ老人。となれば若き頃は最強を目指さなくてはならない。
基本的に魔剣士になるのは貴族。魔剣士が功績を積み貴族となり、貴族同士で婚姻し、それを繰り返すことで魔力の素養が高い子供が生まれるからだ。特に王族に至っては英雄の子孫とされている。
平民の俺では魔力量に大きな差がある。そちらは鍛えて増やすとしても、増やすまでの過程で弱い、なんてことがあっていいのか? 答えは否!
魔力量増幅と同時に技術も極める。少ない魔力でより強い結果を生み出せるように。体外に排出した魔力が霧散し無駄にならぬように。
そして戦争には必ず参加した。
命を奪うことに抵抗は? そんなもの本物の殺気を浴びれば軽く吹き飛ぶ。前世の戦場でそれを学んだ。
とはいえ戦争は良くないと言う思いはある。だからなるべく被害が少なくなるように数の多い国に味方し、早々に敵陣の大将首を落とす。ただ略奪、強姦、蹂躙が目的の場合は数関係なくその国軍を討つ
やっぱ若い頃は手が付けられなかったみたいな感じが良いので乱暴に行こう。
「首置いてけ、なあ! 大将首だ! なあ大将首だろうお前!?」
万軍を超える軍勢を切り裂きながら一直線に進んできた男に総大将の顔が引きつる。
「ひぃ! せ、せせ、戦鬼!!」
数多の戦場に現れては勝利を齎す最強の魔剣士。その名が広く知れ渡ることとなった戦場では傭兵に殿を押し付け国軍が逃げ出し、逃げようとする傭兵を国軍が殺すという生きて帰らぬ戦場。
傭兵を押し留める役目を担った魔剣士隊隊長の首を切り落とした後敵軍に単身で向かい、斬られ、貫かれ、穿たれ、燃やされ………その上で八千の兵士の屍を生み出し屍山血河を築き上げた戦場の鬼。
「狼狽えるな。この暗黒剣技が相手となろう」
「お、おお!」
とある組織から高い金を払い借り受けた魔剣士。試し切りだと国の精鋭を斬り殺した総大将の知る限り最も強い魔剣士が前に出る。
「表の世界でどれほど崇められようと、決して届かぬ闇があると知るがいい」
「邪魔だあ!」
ポーンと首が飛んだ。
「なあ構えろよ! 魔剣士だろう? 魔力に満ちた貴族だろうお前!!」
「ひ、ひ、ひいいいい!!」
「………………」
恐怖に支配され逃げ出す総大将。戦鬼はその背中に目を細めると先程の首を拾う。膨大な魔力が込められていく。
「まだ味方が諦めず戦ってんのに撤退命令も降伏通達もせず、己の命惜しさに逃げ出すか。いい、いい、お前の首取った功績なんざいらん。派手に死んで、悲鳴を戦場に響かせろ」
その首を投げつける。背後から迫る首に気付いた総大将が出来ることは、最早叫ぶだけ。
「ひぃやああああああああ!?」
その悲鳴も爆音の中に消えた。
「そ、総大将が…………あれは、戦鬼!?」
「か、数の多い国に着く臆病者じゃなかったのかよぉ!?」
「ははははは! その臆病モンの首を取れば、たちまちお前等昇進できっぞぉ! 最強の男の名も手に入る! 女犯して爺婆殺して金目の物を奪う欲深い獣共! お前達が強さも求めるなら、この首取ってみろおおお!!」
多くの兵が逃げ出す中、最強への憧れでその場に残る者が数名。それは仲間を殺された怒りの他に、認められたい、何者かになりたい、そんな思いを胸に最強へと挑む。
「その意気、良し!!」
溢れ出す翡翠の魔力。一部の上位魔剣士のみが行える現象。
翡翠の一閃が戦士達の体を切り裂いた。
時には人ではなく魔物の相手をする。
ドラゴン……とは名ばかりの羽が生えただけのトカゲ。獣同然の知能しかないそれ等から、伝説に残る霧の竜のように人と契約する知性は見受けられない。
だが強い。一匹一匹が並の魔剣士の集団を凌駕する国すら滅ぼす厄災の群れ。
「グギャオオオオオオ!!」
「吠えるな、蜥蜴風情が………」
時には国難に挑む。
空に空いた大穴から降り注ぐ無数の怪物。特に強大な6対の翼を持つ魔の王。
「オオオオオオ!!」
「相手にとって、不足なしだなあ!」
時には此方を子供扱いする子供に出会ったりもした。
「ふ、はは………はははは! これが、武の頂きか。その若さで、辿り着くか!」
「武の道に頂きなんざねえよ。俺たちが進んでいるのは山道ではなく果無き海原………まあ、
「成る程…………極めたと、そう思い込んだ時から私は歩みを止めていたのか」
「なら、また歩けばいい………その足はまだ動くだろう?」
「………………ああ、腰を痛めるほど老いてはいない」
そして強過ぎる彼の存在は戦争を奪い、されど魔剣士という者達は戦いを求め、最強の魔剣士を決める大会が開催された。
初大会は山の中でその情報を知ることなく見逃し、次の大会で武神を降し優勝した。以来なんか付いてくるようになった。
妙な宗教団体に誘われ断ったら切りかかってきたので斬り殺し、そんな生活を続けるうちに彼もだいぶ落ち着きを得た。
一度弟子と共に鎖国された国に行ってみた。弟子はそこの剣をいたく気に入りにそこの流派を学ぶべく数年留まるつもりが………何故か途中で此方が教える側になり更に数十年。
半世紀近く戦場から離れた。それは人族から戦の鬼の記憶を薄れされるには十分。ましてや老いた剣士など恐れる者はいない。
その名を名乗ろうと街から人がいなくなる、などということはなくなった。
「お前が『剣鬼』か………成る程、描かれた似顔絵と似ても似つかぬ」
「貴方は?」
「この国の王となる者」
赤髪の王子はそう名乗る。
「戦場を失いし鬼よ。その身が朽ちる前に、その剣を後世に残す気はないか? 王宮剣術指南役………いや、騎士団の団長の座を用意しよう」
「私はただの戦餓鬼。政ごとに関心はありません…………指南役が丁度いい」
こうして剣聖、或いは剣鬼。もしくは戦鬼と呼ばれた男は国に仕えることとなる。
「私も鍛えてもらおうか」
「よろしいので? 私の修行は、武の神すら弱音を吐きますぞ」