魔法少女ノ魔女裁ば……なんか一人多くない?   作:ゴクチョー社畜賞

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Q.クリスマスは誰からプレゼントを貰えますか?

A.本作から可愛い子の死をプレゼントします。



読んでくださってる皆様に何時もありがとうございますという感謝と、とても遅くなってごめんなさいというお詫びの言葉をプレゼントメッセージに添えさせていただきます。

え?もう過ぎてる?そろそろ年末?

まさか〜。



日常と非日じょ……なんか一人足りなくない?

 

 

 

 ナノカからのビデオメッセージを確認した後日、私達は夕食の後にラウンジへと呼び集められていた。

 

 集合を掛けたのはエマ、シェリー、ハンナの3人だ。彼女たちはこのまま牢屋敷に居ても殺人や裁判が頭を過ぎる以上、残った人物たちでこの屋敷から脱出することを改めて考えたい……そんな主張を私達に持ちかけてきた。

 

 然し具体的な案は持ち合わせておらず、一度脱出を企てた際に看守が暴れて危険な目に遭った経験もあり少女の殆どは消極的な姿勢を保っている。ナノカと一緒に処刑されたはずの看守……ナノカの姉も、まるで何事も無かったかのように今もラウンジの入口に立っているため皆の不安がより煽られるのは当然だろう。

 

 私もあまり乗り気にはなれなかった。牢屋敷から脱獄出来ればそれに越したことはない。だが効果的な方法を見つけられない限りは看守が居る限り叶わないどころか、今度は誰かが命を落としてしまう可能性もある。危険な真似は避けるべきだ。

 

 同様の考えを持つものが大半で口々に発言した結果、エマの提案については否決された。皆が集まってる中、レイアのふとした疑問から何故裁判を続けなければいけないのかという話題に切り替わる。

 

 その間、脱獄する話を拒否されたエマは少し落ち込んだ様子で俯いていたが、それを察してなのかウルハが彼女に近づき気遣ってるのが見て取れた。話の合間に少しだけ耳を傾けてみる。

 

 

「桜羽さん、元気だして……。勇気をもって提案してくれたのは嬉しいから」

 

「……ありがとうウルハくん。何か良い案や脱出方法が思い浮かんだらまた……話してみる」

 

「うん。桜羽さんならきっと大丈夫。頑張って」

 

 

 ウルハの励ましにエマも多少心を落ち着かせられたようだ。些細な表情や感情の変化に気が付けるのは彼の良い点だが、あんな風に応援を掛ける辺り彼は脱出に関しては肯定的なのだろうか。

 

 視界に移る様子を横目に皆と話を続けていく。私が前もってゴクチョーに聞いた話から、結局牢屋敷のシステムは変えることは許されず、これからも殺人が起きる度に裁判を開き魔女を特定する他ないという事実を皆につきつける。

 

 裁判。その言葉を口にする度に皆の表情に陰りが生まれていく。脳裏に過ぎるのは殺害された被害者の死体か、犯人が悲惨な処刑でなれはてとされていく光景か。皆が口を噤み沈鬱な空気がラウンジを支配していた。

 

 

「みんな、希望を捨ててはダメだ!」

 

 

 鬱屈とした空気を切り裂くように、声を張り上げたのはレイアだった。その表情に陰鬱とした要素は無く周囲を励ます声も力強い。皆を引っ張っていくような前向きな姿勢はやはり目を見張るものがある。

 

 彼女は今の状況を受け入れた上で自分達に出来ることを精一杯に行おうと奮起の言葉を投げかける。各人も思うことはあるようで、相槌を返す人物もちらほらと見えた。

 

 私に出来ること。やるべきこと。それは大魔女について調査をすること、そして元凶たるその存在への対処方法も可能ならば……。そう思考し始めた時、

 

 

「まずはみんなで力を合わせて────最高の劇を作りあげようじゃないか!」

 

 

 …………。

 

 

「は?」

 

 

 呆気に取られた私が無意識に声を出してしまったのを、誰が咎めることができようか。

 

 レイアは劇を行うことを全く諦めていなかった。劇に向けて様々な準備を既に行っている以上、中止する等一切考えていない様だ。最初は私と同じく皆も呆れた雰囲気だったが、意外にも劇にまつわる話でラウンジ内は自然と明るくなっていき先程までの重苦しい空気はいつの間にか霧散していた。

 

 ……元から劇に否定的だったアリサは呆れたまま先にラウンジを出ていってしまったが。私は周囲を観察しながら一人考える。

 

 エマへの悪感情は消えていないが、沸き起こる殺意はなりを潜めている。ここに居る人物たちは皆牢屋敷に無理やり連れてこられた被害者だ。

 

 ここで暫く暮らす上でも情報を集めていく上でも、協調性を保ち歩み寄ることが今私にとって必要なことなのではないだろうか。お互いの友好関係を深められれば殺人の抑止力にも十分なりうる。

 

 ……ならば距離を置くのではなく、私も自ら働きかけるべきだ。ナノカにもこれ以上少女たちを魔女化させないようにと、託されたのだから。

 

 

「劇の制作なんだが、私も何か協力させてくれないだろうか」

 

 

 そうして私はレイア達へ歩み寄り協力を申し出た。この行動はきっと正しいものだと確信をもって。

 

 

 

 勿論、舞台に一緒に立つ提案はしっかりと断った。

 

 

 

 

 ██████████████████

 

 

 

 

 レイアからの助言をもとに私は牢屋敷の中を歩き皆の様子を見て回りつつ、劇の制作について自分が手助け出来そうなこと、やってみたいこと等を模索していた。

 

 外で私達の服を洗濯をしていたハンナとシェリー、娯楽室で劇の練習をしていたエマとその写真を撮影をしていたミリア、中庭で一人休んでいたアリサをレイアが劇の協力へ熱心に誘い続けるのを見届け……最後に人の気配がある場所、ノアのスタジオへと足を運ぶ。

 

 そこに居たのは机に向かって黙々と作業をしているノアとアンアン、そしてそれを邪魔しないように部屋の中を適度に掃除してるウルハの姿があった。

 

 その中でもアンアンは紙束を睨み手が止まっている。どうやら進捗が芳しくないようだ。心配したノアと様子を察したウルハがアンアンへ声を掛けてみるも彼女の険しい表情は変わらない。

 

 ヒロインが活躍する展開、というものを書き出したであろう紙をアンアンは二人に突きつけている。

 

 

『こういうのはどうだ?』

 

「えーっと……えー、ここでヒロインが死んじゃうなんて聞いたことないよ」

 

「流れが急というか……伏線らしい伏線も無いよね。夏目さんが斬新さをアピールしたい気持ちは分からなくは無いけど……」

 

「うん、変えちゃいけないところもあると思うなぁ。ね? ウルハちゃん」

 

「そうだね。酷い目に遭うのは悪いことをした悪役だけで十分だよ。物語や劇もそういうものだもの。役者の人も観客の人も楽しませるストーリーの方が好きだなぁ」

 

 

 どうやら舞台の展開について相談しているらしい。3人とも集中しているせいかまだ私の存在には気づいてないようだ。書き出したものが不評だったアンアンは泣き出しそうな声を発してからウルハのことを睨みつける。

 

 

「くそぅ、2人一斉にダメ出しされてしまった……。わがはいをここまでコケにするだなんて、許さん……許さんぞ、ウルハ……」

 

「えっ!? こっちだけ!?」

 

「ウルハちゃん、アンアンちゃんのこと虐めたんだ〜。ヒロちゃんに告げ口しちゃおっかな〜」

 

「城ケ崎さんも一緒になって言ってたよね!? やめて許してっ、二階堂さんに誤解されたら正しくないってお説教受けちゃうかもしれな──」

 

「ウルハ、君は私のことをそんなふうに捉えていたんだな。よく分かった」

 

「きゃ゛ぁ゛〜〜〜〜!!??」

 

 

 謂れのない想像につい口を挟んでしまう。するとウルハは大きく身体を跳ねさせ甲高い悲鳴を上げ2人が作業してる机の間へと身を屈めて隠れてしまった。

 

 姿が見えなくなった訳ではなく、深くフードを被り顔を隠したまま身を震わせていた。衣装の頭部に付属した耳まで怯えて揺れているかのようにみえる。……失礼な。

 

 

「あ、ヒロちゃん。もしかしてウルハちゃんにお仕置しにきたの?」

 

「そんな訳ないだろう、たまたま立ち寄っただけだ。経緯もちゃんと見ていた」

 

「そ、それなら無罪ですか…………?」

 

「どうだろうね。丁度今、有罪になって然るべし反応を受けている訳だが」

 

「ウルハ、諦めて【机の下から出ろ】」

 

「ぁぁ゛〜〜……」

 

 

 【逆転有罪】というスケッチブックを掲げたアンアンが魔法を使ったのだろうか、ウルハは泣く泣くといった様子で這い出てきた。

 

 普段ならみだりに使うことは指摘するべきだが今回は……まあ良いだろう。これまでの彼女達の接し方を見る限りコミニュケーションの一貫とも取れるだろうし。私はため息混じりに口を開く。

 

 

「冗談だ、責めるつもりはないから安心してほしい。偏った印象を持つことは褒められないが」

 

「ありがとうございます……ありがとうございます……二階堂さんの恩赦に感謝を……」

 

「君は相変わらず大袈裟に捉えすぎだ」

 

 

 会話もほどほどに私はアトリエの中を改めて一瞥する。この場所はウルハのおかげである程度は整理整頓が行き届いている。もし散らかっていれば片付けを手伝うことも出来たが、ここでは私の仕事はあまりなさそうだ。

 

 ただアトリエの中でふと気になるものがあった。少し開けた空間にある組み立て中らしき木製の何かが布の上に置かれていたのだ。その周辺には工具や木材が揃って整えられており、何かしらを作ってる最中だと分かる。

 

 

「あれも……劇に使う道具を作ってるのか?」

 

「ううん、ウルハちゃんが新しくイーゼルを作ってくれてるんだ」

 

 

 ふと呟いた疑問に答えてくれたのはノアだった。イーゼル……絵を描く時にキャンバスを支える台のことだったか。

 

 確かに言われてみれば三脚部分から可動部らしき箇所まで限られた素材ながら上手く作り込まれている。金属部は屋敷の何処かから拾って入手したのだろうか。

 

 ノアは嬉しそうな笑顔のまま言葉を続ける。

 

 

「アトリエに元々あるものが劣化しちゃってて壊れかけてたのを見たウルハちゃんが、折角ならのあの背丈に合わせた新しいのを用意してくれるって。楽しみだなぁ〜」

 

「ああ確かに。腕が褒められるのも納得だ。そういえばウルハ、素材はまだしもこういった工具はどこから調達を?」

 

「牢屋敷の物置とか、外にある倉庫とか……あとはゴクチョーと交渉して貰ったものもあるよ」

 

「ゴクチョーと? そんなことをしてるとは……初耳だが」

 

 

 ウルハの言葉を聞いてつい声に力が篭もる。こうして話している中でもナノカのメッセージを聞いて以降、彼の挙動に不審な部分が無いか見ることが多くなった。

 

 その上でウルハがゴクチョーと接触していたところを見たことが無かったが……秘密裏に事を運んでいたのだろうか。そうなれば管理者側との関与を疑わざるを得ないが、返答するウルハの態度は軽いものだった。

 

 

「そっか、二階堂さんには伝えてなかったね。どこから話そうかな……牢屋敷の管理者、黒幕だった氷上さんが使ってた魔法は覚えてる?」

 

「確か【治療】だったと思うが。何故唐突に彼女の話を?」

 

「実は氷上さんの【治療】って傷を治す以外に、壊れてしまった物体を直す力もあったんだ。だから牢屋敷に傷がついたり設備が壊れた時、看守でも修理が難しいものは彼女の力で直していたみたいなんだけど……」

 

「彼女がいなくなった以上、牢屋敷の破損箇所への対処が容易にはいかなくなったのか」

 

「そういうこと。看守さんができる範囲でしてくれてるみたいだけどそれも限りがあるだろうし、そこでゴクチョーに交渉してね。牢屋敷の内装なんかを可能な範囲で修理してあげる代わりに必要な工具を頂戴って。意外と快く応じてくれたよ」

 

「ゴクチョーがウルハちゃんのこと、【模範囚】って言って感謝してるところ、のあも聞いてたよ。秘密のお話してると思ったのにそんなこと無かったからちょっとがっかり」

 

「……そうか、それならいいんだ。勘繰ってすまない」

 

「ううん。ゴクチョーと何かしてるって思ったら誰でも疑うだろうから気にしないで」

 

 

 魔女であるメルルの魔法は私達のそれよりも強力な効果を持っていたことは想像に難くない。またこの話を隠すつもりも無く、ゴクチョーとの接触を他者に見られても動じてないことから確かに事実なのは間違いなさそうだ。

 

 ……いけないな。完全に信じている訳では無いにしても、勘繰りすぎて相手を不快にさせるのは正しくない。私は首を小さく横に振って思考を冷静に保つ。

 

 

「……、ぐふぅ……スランプだ……」

 

 

 そうしたところで、いつの間にか作業に集中していたアンアンが空気の抜けたような声を出し机に突っ伏していた。覗いてみれば殆ど筆が進んでいない様子で、顔をゆっくりと持ち上げたアンアンは虚空を苦々しい目で見つめる。

 

 

「……エマがウェンディ役なのが良くない」

 

「桜羽さんが? ……えっと……な、なにか恨みというか……気に入らないことがあったり……?」

 

『別に私的な怨恨は無い』

 

 

 突然挙げられたエマの名前に私たち全員が不思議がる。特にウルハは動揺してるのも見て取れたがアンアンのスケッチブックに書かれた文字を見ると少しほっとしていた。

 

 アンアンの視線はアトリエに飾られた演劇用の衣装に向けられていた。その純白のドレスはウェンディ役のエマが着る予定のものだ。

 

 

「……わがはいも空を飛んでみたかった」

 

 

 か細い呟きに私たちは顔を見合わせる。年頃の少女らしい願望にほんの少し緩んだ空気が漂った。

 

 役者を交代することくらい皆進んで考えてくれるだろう。そう思った私たちはアンアンがウェンディ役を代われないか相談するべきだと話すが、当の本人は勢いよく首を横に振って拒否する。人前で役を演じるというのは彼女にとってよほどハードルが高いらしい。

 

 本人が望まない内は無理強いしない方が良いだろう。改めて筆が進まない現状に頭を悩ませてるアンアンにノアが付き添っている間、ウルハから声を掛けられる。

 

 

「あ、そうだ。二階堂さん、今手が空いてたら良ければ物を整理するのを手伝ってくれないかな。今使用済みのものとそうでないのを分けてる途中で……少し量が多くて」

 

「分かった。手伝えることがあれば力になろう。何からすればいい?」

 

「じゃあそこの……まだ使ってないキャンバスをあそこに集めて欲しいな。手を怪我しないようにね」

 

 

 私は彼の指示に頷いて物を運んでいく。その際、あるひとつのキャンバスに違和感を覚えた。裏側を見てみると紙切れのようなものが挟まっており、それを手に確認すると大きく目を見開く。

 

 文面から察するにこれは……大魔女が残した記録だ。軽く周りを見渡し誰もこちらを見ていないことを確認してからそれをポケットへとしまい込んだ。

 

 

「ヒロちゃん、どうかしたの?」

 

「いや、なんでもない」

 

「ふーん……?」

 

 

 アンアンとの話が落ち着いたのか、ノアは私の方へと近づき顔を覗き込んでいた。彼女は我儘なところもあり、普段からどこか掴めない性格をしているが勘の鋭い時もある。私の様子に小首を傾げていたが咄嗟に取り繕ったのもあって追及はされなかった。

 

 

「……そうだ。ヒロちゃん、あのね……のあ、ヒロちゃんに……その」

 

「……? なんだ?」

 

「……えへへ、やっぱりなんでもない。なんでもない同士、おあいこだね」

 

 

 目の前で両手を弄り何が言いたげな顔をしていたノアだったが、頬をかきながら笑って誤魔化したようだった。私が何かを隠したことへの意趣返しにも見て取れるがそうではないという確信もあった。

 

 度々、彼女は私と顔を会わせては普段の会話とは別の何かを伝えようとしている……ということは分かるんだが。……私自身も未だ溝が深まった過去が頭に過ぎってこちらからも無理に踏み切れない。

 

 そんな微妙な空気を感じ取ったのか否かノアはすぐさま自分の作業机の方へと戻っていく。隣で筆を走らせるアンアンと楽しげに会話しながら作業に勤しむ姿はとても微笑ましく見える。無理に追及する必要も無いかもしれない。

 

 私はウルハと一緒に残りの分も整理をして、十分片付けた後に彼から感謝の言葉を受け部屋を後にした。

 

 

 

 

 

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 各々が劇の制作を進めているとある日、私は気分転換に見回りも兼ねて中庭へと訪れていた。空を見上げれば雲ひとつない快晴、しばらくは天気の良い日が続くだろうと楽観的な予想もほどほどに視線を中庭中央にある噴水へと向ける。

 

 その前には2人の人物が立っていた。片方は台本と小道具を手に高らかな声をあげ堂々とした立ち振る舞いをしており、もう片方の人物は台本と相手とを見比べては相槌を返して付き合ってるように見えた。

 

 

「レイア、今日も精が出ているようだな」

 

「ヒロくん! 応援しにきてくれたのかいありがとう! 今日は私の練習に付き合ってくれる子がいてね、いつもよりも捗ってるよ」

 

「そのようだ。君が付き合っているのは少し意外だけれどね、ウルハ」

 

「こんにちは二階堂さん。はは……なんというか成りゆきで……」

 

 

 声を掛ければ2人はすぐに私の方へと顔を向けてくる。普段よりもどこか溌剌とした様子のレイアに、困った声色で微妙な雰囲気を醸すウルハ。大方ウルハがレイアとばったり出会い、練習の誘いを断りきれず今に至る背景が頭に浮かんだ。

 

 

「そろそろ劇も近くなってきているからね。より本番に近い環境で練習する為ウルハくんには色々なシーンの代役を務めて貰っているんだ」

 

「練習の代役でも蓮見さんから指導を受けながらだけどね……。むしろそっちがメインになりかけてるっていいますか……」

 

「ああ、すまない。我が事ながら演技のこととなるとつい熱くなってしまう性分で。ウルハくんも筋が良いものだから余計に熱も入るんだ」

 

 

 レイアが芝居じみた仕草で額に手を添えて笑ってみせる。劇の練習を最も楽しんでいるのが彼女なのは間違いないが、周囲ともその楽しさを共有し気遣う姿にはやはり皆をまとめられるリーダーの資質を感じられた。

 

 それからふとなにか思いついたかのようにレイアはウルハへと近づいていく。距離を縮められたウルハはきょとんとした態度で見つめていた。

 

 

「そうだ、折角なら裏方から役者に転向してみるというのはどうかな? 今からならみんなと相談すればまだ間に合うかもしれない」

 

「えっ!? いや、うーん……でもそれはちょっと……人前でなにかするとか不安だし……」

 

 

 唐突な提案に当然ウルハは困惑し自分のフードを抑えて顔を隠す。だがレイアは止まるどころかその場に片膝をつき片手を胸に、もう片手を彼へと差し出して役に入った彼女は言葉を続ける。

 

 

「大丈夫、最初はみんな不安を抱くものさ。けれど足を踏み出してみることも重要だ。それに今のウルハくんには私もついている……損はさせないよ」

 

「うっ、蓮見さんの顔が良い……じゃなくて。急にそんなこと言われても困るというか〜……」

 

「目を逸らさずに【こちらを見るんだ】。ウルハくんならきっと出来る。共に高みを目指そうじゃないか!」

 

「あ、ぅ……それ、なら……ちょっと、先っちょだけ……」

 

「……全く。レイア、そこまでにして魔法も解いてやってくれ。ウルハが頼まれれば断り辛い性格なのは知っているだろう」

 

 

 視線を固定されたウルハが安易に頷きかけていたので助け舟を出してやる。数々の舞台をこなしてきたレイアからあんな風に誘われてしまって同意したくなる気持ちは分からないこともないが……こんな時に本人の意志が脆弱なのも問題だな。

 

 

「何より殆ど完成に近い脚本にまた役者を追加するとなればアンアンにも負担を強いてしまう。もし彼を役者に採用するなら、別の劇をする機会があればにしてくれ」

 

「……! ふふ、それもそうだね。何も今回が最後と決まってる訳じゃないんだ。ウルハくんも、もちろんヒロくんのことだって私は諦めていないよ」

 

「そこは諦めて欲しい」

 

 

 レイア本人も言葉ではああ言いながらも無理強いなどするつもりは無いのかあっさりと引き下がる。冗談半分なのかそうでないのか、その判断まではつかなかった。少なくとも私については冗談であって欲しいんだが。

 

 ほっと胸を撫で下ろしてるウルハを見ながら、少し思案する。今私はとある人物の作業を秘密裏に手伝っている。私からアイデアを出すことはほとんど無いが、実際に台本にあるシーンを演じるところを見ておけばより効果的に手助けする事が出来るかもしれない。

 

 

「良ければ2人の練習風景を見ていってもいいかな? 邪魔にならないよう、少し離れたところに立っているから」

 

「私は勿論構わないよ、むしろ歓迎する。ウルハくんはどうだい?」

 

「二階堂さんひとりなら大丈夫だと思う。蓮見さんも観客が居てくれる方が多分練習し甲斐があるもんね」

 

「ウルハくんの理解があって嬉しいよ……! それなら早速再開しようか!」

 

 

 快く承諾を得られたので私は距離を置いた場所から2人の練習を眺めてみる。

 

 レイアはやはり本業なだけあって、衣装や背景等が無い中でも一つ一つの振る舞いに惹き込まれる魅力を感じられた。彼女から視線を外せず、目が釘付けになるという評価を耳にしたことがあるが、それはきっと魔法ありきのものではないのだろう。中庭にも関わらずレイアの周囲には演技だけで色々な情景が想像出来る。

 

 ウルハは動くことも殆どなく顔もフードでよく見えない。その為場面や役に合わせた台詞を読むだけではあるが、その声にはよく感情が籠ってるように思える。本人は実際の舞台には立つことは無い。ただレイアと一緒だからか本人の生真面目さ故か、練習といえど手を抜かず懸命に行ってるのが見て取れた。

 

 2人の様子を見ているだけでも私の頬は自然と綻んでしまっていた。自分の今すべきことを忘れている訳でも、ましてやウルハのことを警戒してない訳でもない……少なくとも自分ではそう思っている。それでも、この牢屋敷の中で貴重な日常の一場面を垣間見えてる気がして気が緩まずにはいられなかった。

 

 そうして暫くの間、自分の作業に活かすためにも中庭での練習風景を観察していた。私たち3人が解散したのは昼の自由時間が終わる直前だった。

 

 

 

 

 

 

 

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 それからも劇の準備に精一杯、私たちは取り組み続けた。あれだけ拒絶していたアリサも気が付けば参加していて、相談や稽古の為に皆が一斉に顔を合わせる機会も珍しくなかった。

 

 そして劇の発表が明日に迫る中、夕食を食べ終えたところでレイアが立ち上がり改めて皆へ語り掛ける。劇の制作に一団となって取り組んだことへの感謝と、その上での本番に向けての奨励。不安を抱くものや緊張するものも多く見られるが、皆明日が待ち遠しいという気持ちは恐らく一緒だった。

 

 最終確認も兼ねて話の流れはアンアンが書いた台本へと移る。全員が文句のない出来栄えを褒め称える中、たった一人俯いて打ち震える人物。それは話の渦中にいるアンアン本人で、彼女はゆっくり立ち上がると青ざめた顔を持ち上げて重々しく口を開いた。

 

 

「……違う。告白する。それは、わがはいが書いたものでは……ない。わがはいは殆ど書けなかった。だからヒロに手伝ってもらって、ほとんどヒロが書いたような、ものだ……」

 

 

 絞り出すような声と共に明かしたのは私が台本の大部分を書き出したという事実。わざわざ言わなくても良かっただろうが、その行為を理解することも出来た。アンアンの胸の中では様々な葛藤が渦巻いてるはずだ。

 

 それを察してか口々に皆がアンアンへ慰めの言葉を投げ掛けるものの、彼女の中では踏ん切りがつかないのか涙目を浮かべたまま口を噤んでいる。私はアンアンへと寄り添いその頭にぽんと手を置いて言葉を紡ぐ。

 

 アンアンは決して怠惰に他人の手を借りていた訳ではない。それはずっと傍で見ていた私はもちろん、彼女と一緒に作業をしていたノアや台本を時折確認してくれていたミリア、展開の相談を受けていたウルハ……ここにいる全員がそれを知っている。そして今の彼女の内に渦巻く『悔しい』という気持ちこそ、次へ活かすための力になるのだと。

 

 

「君は将来文豪になるのだろう? 次回作を頑張ればいい。期待してるよ」

 

「そ、そうだ……! わがはいはいずれ文豪になるのだ。み、見ていろ……! 次こそ皆をあっと言わせる大傑作を仕上げてみせる……!」

 

 

 気を持ち直したアンアンの発言に場の雰囲気が和やかになっていくのを感じた。ノアがアリサに作業を手伝ってもらっていたことを楽しげに話すのを皮切りに、各々が劇の制作で取り組んでいた事を改めて語っていく。

 

 この場に集まっている少女達の顔には不安の色などもうどこにもなかった。この数日間で育まれた絆を確かに感じられる。レイアの目論見が上手く機能している証拠だった。私自身も純粋に劇を楽しみにしているのだから。

 

 私たちが殺人など起こしようもないと判断されれば、全員揃って釈放されるかもしれない。レイアの語るそれはあまりにも淡い希望だが今の私たちに必要な寄る辺となるだろう。

 

 このまま平和に時を過ごしこれ以上誰も犠牲になることなく、元凶である【大魔女】を裁く。エマとの関係は依然微妙であり、ウルハの素性についても掴めないままだが、少なくとも2人には何かを起こすような気配は見受けられない。

 

 きっと全てが上手くいく。私もこの少女達と同じように前向きに考えてみてもいいかもしれないと……そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………そう、思っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ────私の視界の中、夏目アンアンが中庭に倒れていた。中庭に設置されていた柵が酷くひしゃげていて、そこに背中から突き刺さったのか彼女の胸元から一本の鋭利な柵の先端が飛び出ていた。じわりじわりと赤い染みがアンアンの衣服と地面を汚していくのが見て取れた。

 

 

 致命傷だ。間違いなく。もう助からない。一体誰が。そんなの分かりきっている。何故なら今、私が、私自身が。アトリエのベランダから彼女を【突き落としてしまったのだから】。

 

 

 

 

 私が。私が、アンアンを殺してしまった。

 

 

 

 

 気が付けばベランダからアトリエの中へと戻されていた私は、思考もままならない状態でその場にへたり込んでいる。大雨が降り注ぐ音を耳にしながら辛うじて、周りを慌ただしく駆け巡る人物に視線を向けた。

 

 ──桜羽エマ。彼女は涙を目に浮かべたまま外と中を行き来しては、痕跡を消すように急いで手を動かしている。エマも私がアンアンを落としてしまったのを見ていたはずだ。彼女は今すぐにでも私を糾弾するのが正しいはずなのに。一体何の為に、誰の為にこんなことを……。

 

 

「──生きてよ、ヒロちゃん……!」

 

 

 …………。

 

 

「お願いだから、生きて……!!」

 

 

 

 ──────────。雨音は、暫く止まなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ██████████████████

 

 

 

 

 

 

 

 ……私は懲罰房に再び閉じ込められていた。あるいは私自ら、この場所に閉じ込められたのかもしれない。

 

 アンアンの死体が発見され、ラウンジへと集められた少女たちは誰も口を開くことはなかった。ただ【事前投票】の間際に唯一私だけが無意識に口を開いていた。

 

 アンアンを殺したのは私だ、と。

 

 全員が信じられないといった驚愕の表情を浮かべ、それに反応する気力も私には無かった。ただ大人しく看守に拘束されて此処へと連れてこられた。今ではつい先程の記憶を思い出すことすら体力を奪われる気がして億劫だ。

 

 だが頭の中にこびり付いて離れない光景がある。それはあの時……アトリエでエマを襲っていたアンアンを止めようと争い、ベランダまで移動して彼女から不自然に離れてしまった、その瞬間。姿勢を崩したアンアンがベランダから落ちていく直前の絶望した顔。どしゃりと重々しく響いた落下音。そして────アンアンの胸を貫く血に塗れた柵の棘。

 

 目を開けてようが瞼を閉じていようが関係ない。否が応でも自分がした行いを再認識させられて、私の身体には一切の力が入らなかった。

 

 懲罰房の扉が開く気配はない。今回の事件の犯人は私だ。私自身も自供したのだから、こんな殺人犯の元に誰も来ようとは思わないだろう。私は裁判の時間がやってくるまで力なくその場で蹲って──。

 

 

 

 ──()()()()。聞くはずのない、扉が開く音が聞こえた。顔を上げればそこに立っていたのは……。

 

 

 

「…………ウル、ハ」

 

 

 

 何時もの様に灰色基調の衣装に身を包んだフードで顔を隠している少年、大上ウルハだった。下から見上げる形でも彼の顔はほとんど見えない。だがその蒼い瞳だけは、私のことを複雑そうに見つめているのが分かった。

 

 

「……分かってたけど酷い状態だね、二階堂さん。でも無理もない……よね」

 

 

 彼はその場で片膝をつくと目深にフードを被ったまま私の顔を見つめてくる。今の私がどんな顔をしているのかは知らないが、少なくともじっくり見られたい気分ではなかった。反射的に顔を背ける私にウルハは言葉を続けた。

 

 

「今回の事件……二階堂さんが自分でああ言った以上、……そういうことで間違いない……と思ってるんだけど。でも心配でやっぱり来ちゃった」

 

「…………君は、自白した犯人だと分かっていても……様子を見に、来るんだな」

 

「うん、その。……少し気になることがあったから」

 

 

 ショックから立ち直るのに十分な時間が得られてないせいか私の声は振り絞った掠れたものになっていたが、ウルハは難なく聞き取りそれから何かを考える仕草をしてみせる。

 

 

「二階堂さん。本当に夏目さんを殺したの?」

 

「…………っ」

 

 

 直球な問いかけに私は顔を顰めてしまう。認めたくない、けれども起こってしまった現実を再認識させる質問。肯定しなければいけない理性と肯定したくない気持ちがせめぎ合って、何も答えることが出来なかった。

 

 

「……。当時の状況を知らないから何も分からないし、酷いことを言うかもしれないけど……。二階堂さん。【もう一度よくその時のことを思い出してみて】」

 

「…………なん、だって……?」

 

 

 ウルハはアンアンとも仲のいい人物だった。声色に変化こそないものの責め立てられるのも当然だ。後に続くのが罵りの言葉だったとしても潔く受け止めようと覚悟していたのに、耳に入ったのは全く別物だった。

 

 その時のことを? アンアンを突き落とした後に広がっていた、あの光景を? ……そんなもの思い出すまでもない。ずっと頭の中で一部始終繰り返されているのだから。

 

 だから、ウルハの言っていることが理解できなかった。私を苦しめたい意図があるなら別だが……彼は意味もなくそんな事を言わないはずだ。そんな……信頼めいた確信がある。

 

 

「本当にその瞬間、夏目さんは【死んでいた】? 自分の手で【確かに命を奪ったの】? ……どこか【違和感】を覚えるところとか、無かったのかな……」

 

「……君は、何が言いたいんだ。一体何を知って……」

 

 

 続けざまに紡がれる言葉には何らかの含みを感じられた。まるでウルハだけが知っている何かを試されているような。

 

 思考が正常に回らない。代わりに目がぐるぐると回る感覚に陥り混乱してしまう。頭を抑えて苦悶の声を上げてしまえば、ウルハは慌てた様子で私の方へ寄り添った。

 

 

「あ、ごめんっ……。思い出したりするのは辛いよね。ごめん、ね……やっぱりなんでもない、今聞いたことは忘れて」

 

 

 心配そうな声で私を伺っていた彼は間を置いてから私の傍に容器を置いた。それは透明な水が入ったペットボトルに似たものだ。中庭でレイアとウルハの練習風景を見ていた際、皆の水分補給の為に彼が用意していたのと同一のものだと思い出す。

 

 

「これ、お水。ラウンジの時に酷い声をしていたから……裁判に向けて少しでも、休んで……」

 

 

 ウルハなりの気遣いなのだろう。そういえば、最初にこの懲罰房に閉じ込められた時に彼は私に林檎をわざわざ届けてくれていた。だが正直に言えばあの時以上に今の私には水すら通る気がしない。私は露骨に視線を逸らしてしまう。

 

 手をつける動きすらしない私を見て彼は何を思ったのだろうか。少しの間傍に居たウルハはおもむろに立ち上がって、懲罰房の出口へと向かう。彼も事件について調査しなければいけないからだろう。私を気遣ってくれた彼に感謝のひとつはするべきなのに、未だに声は出なかった。だが代わりに、彼は去り際にこちらへ振り向いて、

 

 

「二階堂さん。……()()()()()

 

 

 意味を聞き返す間もなく、そんな言葉を残してウルハの姿は扉の向こうへと消えていった。

 

 

 

 ──生きてよ、ヒロちゃん……! 

 

 

 

 アトリエでのエマの発言と重なる。何故、私へとそんな言葉を投げかけるのか。訳がわからなかった。

 

 拘束が終わり裁判場に連れていかれて待っているのは、紛れもなく私を断罪するための裁判だ。私の為の【魔女裁判】だ。私自身も裁かれるのが正しいと自覚している。そう、正しいはずなのだ。

 

 

「…………っ!」

 

 

 私は咄嗟に置かれた容器を手に取り、蓋を開けて中身が多少こぼれるのも構わず一気に飲み干す。嗄れた喉が潤う。ぐちゃぐちゃになる思考を纏めていく。おぼろげな意識を覚醒させる。

 

 例え私を吊るす裁判であったとしても、刑を受け入れる他ないとしても……私は自分を保つべきだ。始まったそばから投票に移るとするならそれでも構わない。悠々と自分のした罪を受け止める……それに備える必要がある。

 

 

 その為に私は、私を貫く。

 

 

 どんな結末があったとしても──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ██████████████████

 

 

 

 

 

 

 私が看守に連れられて裁判場にやってくるのは三度目だ。その度に、今尚生き残っている少女たちの顔を確認する。それは同時に居なくなってしまった少女たちのことも……思い返すことになるが。

 

 

 エマ、シェリー、ハンナ。

 

 レイア、ノア、ミリア、アリサ。

 

 

 全員が証言台に立ったところでゴクチョーが口を開き────。

 

 

 

 

 

 ────? 

 

 

 

 

 いま、なにかおかしかったような……。

 

 

 

 

「さて、もう始めちゃっていいですかね? 今回はサクッと終わるといいんですけど」

 

「ちょっと待ってゴクチョー、()()()()()がまだ来てないよ!」

 

 

 ゴクチョーに意義を申し立てたのは片手を掲げたエマだった。そうだ、ウルハが居ない。何時もならエマの隣の証言台で落ち着きなくフードを弄っているはずの彼の姿がそこには無い。

 

 ……何故だろうか。猛烈に嫌な予感がした。それはエマも感じているからか、その声にはどこか焦りも含まれている気がした。

 

 私たちの顔色に反してゴクチョーはさも平然とした様子で、その口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「ああ、ウルハさんですね。彼は今【医務室で横になっていますよ】。でもあの出血量、早く終わらせて処置しないと助からないかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………、は?」

 

 

 

 

 潤ったはずの喉からは、乾いた声が零れた。

 

 

 

 

 

 

 ██████████████████

 

 

 

 

 

 

『私が大上ウルハを疑問視してる理由は他にもある。大きくは二つ。【宝生マーゴとの取引の内容】と【大上ウルハの魔法が不明なこと】よ。私は牢屋敷の情報を読み取った時にそれぞれの場所で過去、交わされた会話やその人物が取っていた行動を確認した。その上で聞いておいてほしい』

 

 

『まずは宝生マーゴと大上ウルハの間で交わされた【取引】について。犯人であることを黙秘する代わりに彼はあるものを宝生マーゴから受け取っていたの』

 

 

『それは……魔女を殺す薬(トレデキム)、氷上メルル殺害に使われた凶器のひとつ。人知れず破棄する予定だったものを大上ウルハは自分の懐へ仕舞った』

 

 

『沢渡ココはおそらく【取引】の内容に気づいていたんでしょう。大上ウルハと二人きりになったタイミングで薬について追及していた。でも最終的に、大上ウルハに自分の持っている分も含めて魔女を殺す薬を預けることにしたみたい。信頼故か保身の為かは定かではないけれど』

 

 

『沢渡ココが計画を立てた時、薬を返して貰おうと彼の元へ行くつもりだった。……でもそれは叶わず、彼の手元に魔女を殺す薬が今なお集められている。この事実を知ってるのは今これを見ている二階堂ヒロ、あなただけになるでしょう』

 

 

『次に【魔法】について。日常的に使ってる人物や【幻視】で見た限り3人を除いてそれぞれの魔法に偽りが無いことは把握してるわ。確認出来てない人物の内、二階堂ヒロ……あなたと桜羽エマは魔法を所持してないと主張している。真偽については置いておくとして……ね』

 

 

『でも残る1人……大上ウルハはそうじゃない。何らかの【魔法】を持ってることは確か。でも彼はそれを誰にも明かしていなければ、【幻視】で確認した牢屋敷の中でも使った記憶は無かった。……私の魔法でいつか読み取られるのを常日頃警戒していた、だからみだりに口にも出してないし使ってもいない……なんて考えすぎかもしれないけれど、可能性は十分あると踏んでる』

 

 

『大上ウルハは【魔女を殺す薬の有用性を元から知っていて】、私の魔法を……【幻視を直接的にも間接的にも意識して避けていた】。全ての行動が偶然の一致でも無ければこう結論付けるのが妥当なはず』

 

 

『二階堂ヒロ。今挙げた情報と私の推測をどう扱うかはあなたに任せる。皆に公表するのも、彼を問い詰めるのも、或いは放っておくとしても。ただ私が伝えたいのは牢屋敷や【大魔女】の真実を解き明かす最中でも彼からは迂闊に目を離さない方が良いという……警告』

 

 

『……でも、願わくば杞憂であってほしい。私は大上ウルハをあまり好ましく思っていなかったけれど……直接話す機会があれば、また見方は変わっていたかもしれない。紫藤アリサのように…………』

 

 

 

 

『……ごめんなさい、個人の感情を持ち込んでも意味が無いわね。どうか気を付けて二階堂ヒロ。叶うのなら彼も含めて……皆のことを宜しく頼むわ』

 

 

 





・ヒロちゃん
は?
……は?

・アンアンちゃん
引きこもりが引きこもりを引きずり出す珍しい例。
次回作にはウルハにもちゃんと役を用意してくれていた模様。何の役か知っているのは今のところ二人だけ。
なので知っている人物はもうこの世に一人として居ないかもしれない。

・ノアちゃん
ウルハをコントロールする術を学習してしまった。
でも何かを作ってくれる時は大抵、彼の方から提案してくれるので感謝してる。けど弄るし揶揄うし褒めてあげる。
手作りイーゼルの行方はいかに。

・レイアちゃん
ウルハに才能の原石を見出し始めてしまう。磨いても石かもしれませんよその人。
実は2人だけの時には蓮見さん師匠と呼ばれてたり呼ばれてなかったり。
でもそんな呼び方も二度とされないかも。

・ウルハ
小道具製作が早く終わったので実は各方面に駆り出されてた。囚人の衣装の洗濯を手伝うこともあったみたいですね?死刑。
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