低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記   作:タナボルタ

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最近推しに捧げたりお優雅だったりなダンジョン物小説にドハマりしたので投稿してみます。

とにかく最近の自分が気に入ってたり好きな設定だったりを闇鍋にしてますので色々と属性過多な感じになっちゃうかもですね。

とにかく今後ともよろしくお願いします。

それではまたあとがきで。


第一話『頭がパーン』

 

 薄暗く広大な洞窟の中を歩く一人の少女。彼女はその傍らに浮遊する小型撮影等多目的機器『ダンジョンドローン』を携え、軽い足取りで奥へ奥へと進んでいた。

 その外見は正しく華奢で可憐、奥ゆかしさも垣間見え、この荒涼とした洞窟には不釣り合いと言える。

 白にもほど近い銀の髪をウルフカットで整え、蒼玉(サファイア)の瞳は真っ直ぐに前を見つめている。小さな桃色の唇はきゅっと閉じられ、その表情には何の色も見られない。小振りながらも鼻筋は通り、白い肌も月光のように神秘的なまでの静謐さを湛えている。

 神が創り上げた芸術品────見る者にそのような印象を抱かせるには充分な美貌。

 身長はおおよそ130センチメートル程しかなく、手は細く足は……やや太いか。若いよりも幼いという感想が先に出てきてしまうその容姿。

 そんな彼女が身に纏っているのは白無地のTシャツに青いスパッツ。そして()()()()()()()()()()()()()だ。

 軽量化された鋼鉄製の胸当て、手甲に脛当。腰にはシンプルな黒いウエストポーチとやや大振りのサバイバルナイフを携帯している。

 

「……そろそろ始めようかな。()()()()()()()

 

 まるで鈴の鳴るような声。その主の命に従い、ダンジョンドローンはダンジョン探索動画専用配信サイト『Dungeon(ダンジョン) Movie(ムービー)』(通称ダンムビ)にアクセスし、諸々の準備を自動で整え始める。

 数秒後、全ての準備を整えたドローンは配信可能を示す緑のランプを点滅させた。それを確認した少女は一つ頷くと、「じゃ、配信開始」と涼し気に告げた。そして────。

 

 

 

 

 

「いえーい、どもどもこんるぷすー。美少女ダンジョン配信者“るぷす”です。今日も短い時間だけどよろしくねー」

 

 

 

 

 

 恐ろしいほどの無表情で感情の籠っていない声を出し、表情と声音のせいであまりにそぐわないダブルピースをしつついつもの挨拶をお見舞いした────!

 

 

:るぷすちゃんきちゃ!

:ひゃっはー!新鮮なるぷすちゃんの配信だー!

:無表情ダブピカワ(・∀・)イイ!!

:るぷすちゃん今日もよろしくぅ

:こんるぷすー

:こんるぷすー

 

 

 “ダンジョン配信者”。それが彼女、“るぷす”の()()である。チャンネル登録者は二百と少し、現在の同時接続数は十五ほど。とてもではないが人気配信者とは口が裂けても言えない数字だ。むしろ最底辺であると言えよう。しかし彼女は気にしない。そもそもの話、配信を始めることになったのもダンムビとダンジョンドローンの仕様による事故が切っ掛けであるからだ。

 

 

「今日は“C級ダンジョン”の『邪妖精(ゴブリン)の巣窟』に来ました。欲しい素材があるんだけど、それがここなら出やすい感じみたい」

 

:あー、あそこか

:ドロップ狙いだと何だろ? 何か希少な素材とかここにあったっけ?

:希少って訳じゃないけどここで探すならやっぱ派生ゴブリン系統じゃない? めっちゃ種類あるけど

:物欲センサーが大活躍の予感

 

 

 邪妖精(ゴブリン)。禿げ上がった頭にとがった耳をした緑色の肌をした人型の魔物(モンスター)だ。背は低く猫背であり、手足は異様に細くまるで骨と皮しか存在していないように思えるほどだ。半面その腹は大きく丸く張り出しており、まさにイメージ通りのゴブリンの姿をしている。

 

「お? ……何だ、普通のゴブリンか」

 

 るぷすは視線の先に現れた魔物の姿を捉えると、目当ての魔物かと期待するが、違った様子。がっかりといった様子で息を吐くと流れるような動作で構えを取る。

 左手を前に、右手を胸の前に。足はやや大きく開いて腰をどっしりと落とす。

 

「き?」

 

 ゴブリンがるぷすに気付き、首を傾げて声を漏らす。そして────ぺこり、と軽く会釈をして猛ダッシュで奥へと走り去ってしまった。

 

「……逃げちゃった」

 

 

:あ、どうも(挨拶)ごゆっくりぃ!(逃走)

:草

:一目見て力の差を理解したのか……

:危機管理能力が高いさっきのゴブリンは多分有能

:未来のキングかロード候補か……胸が熱くなるな

 

 

 るぷすはダンジョンドローンが投影してくれるホログラムコメントを横目に見ながら構えを解く。実際、コメントが示す通りただのゴブリンとるぷすでは隔絶した力の差が存在している。それを見抜いた先のゴブリンは確かに有能と言えるだろう。通常のゴブリンは好戦的であり、知能が低い。獲物を見かけたらとりあえず突っ込んでくるような行動が主である。長となるべき者に必要なのは、危機管理能力なのだ。

 

「きっと私のあまりの美少女オーラに気圧されちゃったんだね」

 

 

:草

:相変わらず自己評価たっけぇ!

:でもそれを否定出来ないくらいにはマジで美少女なのも事実

:くやしい……でも見惚れちゃう!

 

 

 るぷすは己の容姿に絶対の自信を持っている。そしてその自信がただの思い込みでも勘違いでもなく、客観的に見ても純然たる事実であるのが質が悪い。無表情ではあるが鼻息荒く「むふー」と満足げな様子に一部の視聴者は「“無”のドヤ顔いただきましたぁ!」と大興奮だ。無のドヤ顔って何だ。

 

 

:マナー違反で悪いけどちょっと質問いいかな?

:なんじゃなんじゃ言うてみい

:俺るぷすちゃん知ったの最近なんだけどそんなに強いの?

 

 

「お? もしかして私の戦闘シーン見たことない?」

 

 ゆっくりと流れるコメントの一つが目についたるぷすは首を傾げてそう問うた。

 

 

:ぎゃわいいっ!!

:あ……(昇天)

:この“こてっ”と首を傾げるのがもう……! もう……!

 

 

 無表情ながらも抜群に美しいるぷすの可愛らしい仕草にコメントが加速するが、その流れは次のコメントによって断ち切られることになる。

 

 

:いや 今回は設定変えられるようになったから入れたけど何か以前の視聴設定だと規制が強くて見れなくて

:あっ(察し)

:……もしかして新成人か?

:あー……まぁねぇ……

:あれはなー……どうしてもなー……

:未成年にはちょっとね……つーか耐性が無い人もね

 

 

 一気に減速するコメント。るぷすもるぷすでその理由を理解しているのか、顔を背けて目線を逸らす。

 

「それはほら……。私って強いから……。こうさ、魔物と戦うと相手がね、パーンってなっちゃうから」

 

 

:???

:おおぅ……(蘇る悪夢)

:びっくりしたよね

:俺モロに見ちゃってさ その日は眠れなくなったわ

:え なに怖いんだけど???

:なぁにこのチャンネルを見てればいずれ分かるさ……いずれな

 

 

 要領を得ないるぷすの言葉にご新規さんはハテナを打つしか出来ず、その後のコメントによって戸惑ってしまう。

 るぷすが今まで配信した動画は二十を超えるが、そのほとんどに規制が掛かっている。その規制というのが……。

 

「あ、都合のいいことにまたゴブリンが出てきた」

 

 

:うせやろ?

:あっ(察し)(数十秒ぶり二回目)

:何とも間が良いのか悪いのか

 

 

「……キ? キヒヒヒヒ……」

 

 

 ちょうど横穴から出てきたゴブリンがるぷすに気付き、ニタニタと笑いながらゆっくりと近付いてくる。ゴブリン自体は探索者でなくとも大人数人で掛かれば普通に対処出来る魔物であるため恐怖感は薄いが、醜い容姿も相まっていやに不快感を煽ってくる。

 

「それじゃさっそく」

 

 るぷすが先程同様に構えを取る。それを見たゴブリンが右手に持った棍棒を肩に担ぎ、更に笑みを深める。獲物が無駄な抵抗をしようとする様を笑っているのだ。

 尤も、そのゴブリンの意識は次の瞬間に消えているのだが。

 

「ほっ」

 

 バァンッ!! と。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()音が洞窟に響いた。

 いつの間にかるぷすはゴブリンの間合いに存在していた。右腕を突き出し、五指を曲げた掌底を繰り出した体勢で。その動きはあまりに早く、あまりに静かでほとんどの視聴者は目で追うことも出来なかっただろう。

 

 

:え?

:おー

:ヒェッ

:わーきれいなはなびだなー

 

 

 後ろに倒れゆくゴブリンの首から夥しいほどの血が吹きあがる。その身体に頭部はない。先のるぷすの一撃で粉々に弾け飛んでしまったのだ。

 

 

:…………おわあああああああああああ!!? ち、ちちち血が!? 頭が!!? はじ、はじはじ弾けとぼってられええええええ!!?

:すげえ混乱具合

:これコメント音声入力か? 臨場感あって良いよな

:キーボードカタカタだとどうしてもどこか冷静になるからなー

 

 

 そう。るぷすの動画の規制の原因は“グロテスク”規制である。

 るぷすの使っているダンジョンドローンは優秀だ。何せ配信に流せないような物(脳みそとか内臓とか色々)が映りそうになれば自動でモザイクを掛けてくれる。しかもその速度はほぼラグが発生しない。むしろ少々早すぎるくらいだ。

 そのおかげで本来ならば規制は掛からないはずなのだが……るぷすはモザイクが掛かる頻度があまりにも高すぎた。

 

 

:思い出すなー。るぷすちゃんの初配信で壁一面に広がった緑色のモザイク

:コボルト相手に蹴りを放ったら上下に真っ二つになって何か赤黒くて細長いモザイクが木の枝に引っかかったりしたよな

:オークに体当たりしたら背中から大量のモザイクが飛び散ったこともあったよな

 

 

 これである。るぷすが攻撃をするたびに血の花が咲き、臓物は飛び散り、画面はモザイクだらけになってしまうのだ。故にグロテスク規制で未成年は視聴出来なくなってしまったのである。

 

 

:おぼぇっ!? ぅ゛おええええええええ……っ!!

:吐いた!?

:そういや設定変えたって言ってたが、モザイクまでカットしちゃったのか!?

:ダンムビの仕様的に最初にグロ規制とは表示されとったやろがい!

:……やれやれ(俺も最初は規制の内容については読み飛ばしてたなぁ)

 

 

「……」

 

 るぷすはコメントを読んで気まずそうに頭を掻く。抜群に優れた容姿を持つるぷすの配信が伸びない理由の一つがここにあった。

 

「チャンネル登録、高評価をお願いします」

 

 

:今言うことかぁ!?

:タイミングぅ!

:そういうとこやぞ!

 

 

「むぅ……ごめんなさい」

 

 コメントに怒られ、ちょっとしょんぼりするるぷす。その後も時折コメントと会話しつつ探索をしてモザイクの花火を量産していくが、お目当ての素材は手に入らないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界にダンジョンが出現するようになって百年とちょっと。世界の有様は一様に変化していったみたい。当時は世界大戦だ何だって大変だったみたいで、突然現れたダンジョンには少数の研究員が派遣されただけだった。

 でもそこで発見された様々な鉱物や未知のエネルギー、空想上の生物だと思われていた魔物が存在すると分かったらさあ大変。「戦争なんてやってる場合じゃねえ!」とばかりに各国はダンジョン探索に力を入れるようになる。

 特に大きなダンジョンに力を注いでいたんだけど、放置されていた比較的小規模なダンジョンから魔物が溢れてきてさあ大変。世界各国の小規模ダンジョンから魔物が大氾濫してしまう。これには世界中が「いがみ合ってる場合じゃねぇ!」と協力を開始。見事世界は一つとなって大氾濫を乗り切った……って授業で習った。

 今も表向きは世界各国仲が良い。ダンジョンに関する国際法とか国際機関とか色々と作られて、近年ではダンジョン探索者が生まれ、更にはダンジョン配信者なんて職業まで出来た。

 何でダンジョンが出来たかなんて誰も分からない。もしかしたらファンタジーよろしく魔王とかが原因で、勇者なんかも居たりするのかもしれない。でも、そんなことは私には関係ない。

 この物語は、私ことダンジョン配信者“るぷす”がとある夢を叶えるためにダンジョンに潜る日常を描いたものである!

 

「むふー」

 

 

:“無”のドヤ顔いただきましたぁ!

:何でこの子急にカメラ目線で小説のあらすじみたいなこと言い出したの?

:なぁにこのチャンネルを見てればいずれ分かるさ……いずれな

:げおぅ……なるおど……チャンネル登録すらます……ぅおえっ

:大丈夫なのかお前!?

:無理はせんでええんやぞ!?

 

 

「おお、ありがとう。ほら、美少女の感謝の笑顔だよ」

 

 

:圧倒的無表情で草

:口角が一ミリたりとも上がってねぇんだよなぁ

:でも可愛い!! ちくしょう!!

 

 

 こうして和気藹々とした空気の中、るぷすの配信は終了していった。




お疲れ様でした。

ぶっちゃけ配信とか全然詳しくないのでおかしな描写が大量に出てくるかと思いますが『この世界ではそういうことが出来るんだな』と寛大な心で受け止めて下さい。

るぷすちゃんを気に入っていただけるように頑張っていきますね。

それではまた次回。
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