低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記 作:タナボルタ
風邪を引いて咳と痰がえらいことになってしまいました。皆様も体調管理にはお気をつけ下さい。
さて、今回は(も)作者のにわか知識が化学反応を起こしてスパークしていますので、どうか優しい眼差しで見てやって下さい。
あとるぷすとミーアの詳しい容姿について描写するのをうっかりと忘れていましたので、第一話冒頭でるぷすの、第七話でるぷすがおっぱいに突き飛ばされた後にミーアの容姿について加筆しましたので、よろしければ読んでやって下さい。
こうして閲覧数を稼ぐってぇ寸法よぉ!(姑息)
それではまたあとがきで。
それはるぷす達が片付けをして帰ろうとした時に起こった。
バキバキと大きな音を立て、ボス級ゴーレムの真っ二つに割れた巨体たちが地面に沈んで────否、
「えっ!? も、もうダンジョンによる“消化”が始まったんですか!?」
「この広場ってボス級ゴーレムしか入れない上に、ここでは何故かボス級ゴーレムでもすぐに“還元”されるんだよね。……先輩は消化派なんだ?」
消化、還元。これはダンジョン内で死した魔物の死体が、ダンジョンに呑み込まれていく様を表した言葉である。文字通り飲み込まれていくように見えることから消化、ダンジョンに還っていくようにも見えることから還元と、いつしかこの現象をそう呼ぶようになった。
そこから発展して『ダンジョンとは巨大な生物の腹の中である』とする珍説が発表されたりと、意外と世間に与えた影響は大きいと言える。
:俺も消化派
:俺は還元派
:俺も
:ダンジョンは生き物の腹の中説面白いよね
:しかしボス級の消化まで超速とはここって本当に何か特別な場所なんかね?
やがてすっかりと吞み込まれたボス級ゴーレム。通常、ボス級と呼ばれる魔物はダンジョンに還元されるには時間が掛かり、通常の魔物は還元が速い。それは魔物としての“格”が影響しているのか、それとも
なお、るぷすが魔物を遠慮なく“パーン”しているのはこの還元があるからである。そうでなければ邪妖精の巣窟など、一体どれだけのゴブリンの血や肉やらが壁・天井・地面に染み込み、へばり付いていることか……考えるだに恐ろしい。
「……あ、やった。ドロップだ」
るぷすはボス級ゴーレムの巨体があった場所に残った大きな球体を発見する。それはボス級ゴーレムのドロップ品、“ゴーレム・コア”だ。
ゴーレム・コアとは文字通りゴーレムの“核”であり、
るぷすは五○センチはあるコアを持ち上げると、「はい」とミーアに差し出した。
「えっ」
「私が持ってても仕方がないし、これは先輩が持ってって」
確かに魔法使いではないるぷすが持っていても仕方がない物である。が、ゴーレム・コアはボス級ゴーレムのドロップ品。他の魔物のドロップ品と比べても希少なアイテムだ。それをポンと渡そうとしてくるるぷすに、ミーアは大慌てで制止に掛かる。
「ちょ、ちょちょちょ待って下さい! いくら何でもそんな貴重な物をいただけませんよ!?」
「でも私が持ってても意味ないし」
「高値で売れるじゃないですか!?」
「それはそうだけどこのくらいのコアならいくつも持ってるし」
「いくらたくさん持ってるからって……え、たく、たくさん持ってるんですか!?」
「十個くらい持ってるよ?」
「ええ……?」
ゴーレム・コアを十個。当然アイテムドロップには運が絡み、魔物を倒せば必ず手に入るという訳ではない。つまり、るぷすはボス級ゴーレムを十数体以上倒してきたことになる。
:いや……でもそうか あんだけ簡単にボス級を倒せるのならそりゃ大量に持ってるわな
:ひえ 一財産あるやん
:オラにコアを分けてくれ!
:俺にもちょうだい
:出たよ乞食ども
:コアくれよ!
:やーだよ!
コメントの方でも冗談交じりであるがコアを譲ってくれという視聴者が現れる。どこにでもあるよくある話だ。るぷすもゴーレム・コアの希少性は知っているし、何の見返りもなく渡す物でもないことは理解している。
それでも、るぷすはミーアに受け取ってもらいたいのだ。
「先輩は魔法を使えるようになった。これはそのお祝いだと思ってほしい」
「え……」
「元々先輩には自分が持ってる分を渡そうと思ってた。でも、これは
「……!」
「だから、このコアを先輩に貰ってほしいと思った。……ダメ?」
るぷすはコアを渡そうとする理由を嘘偽りなく伝えた。るぷすにとって、初めて探索を共にする友人への祝いの品だ。ずっと昔から辛い現実を生きてきたミーアへ、輝ける未来に続く何かを贈ろうと考えた結果がコアを贈ることだった。
本来なら後日、プライベートの時に渡そうと考えていた。だが、二人で協力してボス級ゴーレムを倒し、コアをドロップした。あのボスは自分たちの為に自らその身を捧げに来てくれた。これはもうダンジョンがそうしろと言ってくれているのだろう。そうに違いない。(断言)
るぷすは偶然の巡り合わせに従い、この場で贈ることにしたのだ。ミーアは差し出されたコアを前に動けず、るぷすの目を見つめる。
「……私は、るぷすちゃんから貰ってばかりです」
「……?」
「危ないところを助けてもらいました。魔法を使えるようにしてくれました。一人でも大丈夫なのに、私もゴーレムに挑ませてもらいました。その上、コアまでなんて……」
るぷすの気持ちは泣きたくなるほどに嬉しい。もう十分泣き腫らしたというのに、今もまた涙腺が緩み、涙が滲んでくる。だが、嬉しいからこそミーアの心は痛みに喘ぐ。自分は与えられるだけで何も返せていない。そんな今の自分にこのコアは相応しくない。だから、ミーアはるぷすにこう告げる。
「いつか」
「……」
「いつか、私はこのコアに相応しいくらい立派な魔法使いになります」
「……うん」
「だから、その時まで。……その時まで、このコアはるぷすちゃんが持っていて下さい」
「……分かった」
いつか自分を誇れるその時まで。いつかるぷすの隣に立つに相応しい魔法使いになるまで。
「それじゃあこのコアはその時までキープしておくね」
「……もうちょっと言い方なんとかなりません?」
るぷすは少し拗ねた。その様子がどこかおかしく────少しの罪悪感が胸を過ぎり、ミーアは苦笑を浮かべるのだった。
「と、そうでした。私からもるぷすちゃんにプレゼントがあるんです」
「私に?」
「はい。命を助けてもらったり、今日なんて魔法を使えるように指導していただきましたし、そのお礼……としてはささやかな物になってしまいますが……」
ミーアはそう言い、帽子を“きゅぽっ”と脱ぐと、その中から大きめの布を取り出した。その布は何やら紺色で水着のような合成繊維で編まれた物に見える。
それを目にした瞬間、るぷすは布の正体を看破した。
「それは……“浮力の布切れ”……!」
「はい、そうです。妹からるぷすちゃんが欲しがってたと聞きまして」
:浮力の布切れ?
:なんやそれ
:おお スク水・ゴブリンのドロップ品じゃん 珍しい
:なんて???
:スク水・ゴブリン……???
:んん? もしかしてるぷすちゃんが邪妖精の巣窟に籠ってたのはこれを狙ってたからなのか?
:となるとるぷすちゃんって泳げないのか
:るぷすちゃん泳げないの!?
:待って 俺を置いていかないで
:スク水・ゴブリンってなんだよ!?
:(……何でみんな帽子からアイテムを出したことにツッコまないんだろう……でも俺がおかしいのかもしれないし空気を読んでお口にチャックだな……)
:↑草
ミーアが取り出した布切れを見て、コメント欄の流れが俄かに加速する。ドロップ元の魔物の名前、るぷすが泳げないという情報が視聴者たちを沸かせた。
「いや違うの。私は泳げる。ただ犬かきしか出来ないだけでちゃんと泳げる」
:ちゃんと?
:犬かきだけはちゃんとか?
:そもそも何で泳げる泳げないが何とかって布を欲しがる理由になんのよ?
るぷすの言い分を聞いた視聴者が疑問を抱く中、一人の視聴者が浮力の布切れの効果を問う。
:説明しよう! 浮力の布切れとは 加工して水着にすればどんなカナヅチでも自在に泳げるようになるという夢のアイテムである!
:え 普通にすげえアイテムじゃん 俺も欲しい
:そりゃお前ダンジョンの割と奥にいるゴブのレア派生のドロップ品だからな
:奥の方なの? じゃあ何でミーアちゃんが持ってんだ?
どうやら視聴者の中に色々と詳しい者が居たらしく、るぷすが説明するよりも早く効果を説明してくれた。しかし、スク水・ゴブリンはダンジョンの深奥に生息するそれなりの強さを持つ派生種だ。当然以前のミーア(現在でも)では到達は不可能である。
では何故それをミーアが持っているのか。
「いえ、実は不思議な事に、以前配信外で撃退した入り口近くで襲ってきたゴブリンが落としていきまして。それを拾ったんです」
「……そんなことあるの?」
それはるぷすをして初めて聞いた出来事であった。原種たるゴブリンが派生種のドロップ品を持っていたなど、本来なら有り得ないことだ。考えられる可能性としては、他の探索者が落とした物をゴブリンが拾っていたか、もしかしたら派生種へと変化する為の物だったのかもしれない。
派生種への変化とは進化のことではなく、何かしらの外的要因が重なって起こる現象のことだ。例えばゴブリンがゴブリン・ナイトへと変化する場合、剣、あるいは盾などが必要となってくる。
それらを手にし、経験を積み、晴れて彼らは派生種へと変化を果たすのだ。進化ではなく変化と呼ぶのは、ゴブリンからホブゴブリン程の魔物としての強化が行われていないからである、とのことらしい。
「でも、いいの、先輩? これも結構レアなアイテムだけど……」
「もちろんです。受けた恩に対してささやかな物ですが……受け取って下さい」
ミーアは浮力の布切れを先程のるぷすのように差し出す。るぷすはそれとミーアの顔を交互に見やり、やがておずおずと受け取った。
「……私のは受け取ってくれなかったのに」
「だって貰い過ぎで心苦しいんですよぉ……」
拗ねたように呟くるぷすに、ミーアは情けなくも泣きそうな声で反論する。るぷすは浮力の布切れを胸に抱くと、上目遣いでミーアを見やり、頭を下げた。
「ごめんなさい。ううん、ありがとう、先輩。大切に使わせてもらう」
「はい」
:良かった良かった
:これで泳げるようになるね
:邪妖精の巣窟ともおさらばか
:水着回は期待していいんです?
:泳ぎの練習を配信しようぜ!
「ちょっと待ってほしい。犬かきだって立派な泳法。私は犬かきで一〇〇メートルを泳げる。だから私は泳ぎ上手」
「まあまあまあ落ち着いてるぷすちゃん」
そうしてるぷすを宥めつつ、ミーアの疲労も考えてそろそろ配信を終えてダンジョンを去ろうとした時、とあるコメントが二人の目に入る。
:魔法もちゃんと使えるようになったんだし無理して探索者を続けなくてもいいんじゃないか?
:今なら自然再生プロジェクトにも参加出来るだろうし そっちの方がお金も稼げて有名になれると思う
それは、今のミーアの心に冷や水を浴びせるような内容であった。
:何だよせっかくのお祝い気分に水差しやがって
:言いたいことは分かるがミーアちゃんの気持ちが大事じゃないか?
:そもそも無理してってなんやねん ミーアちゃんは探索をやりたいから探索者をやっとるんやろがい
:まあでも確かに危険な探索を続けるよりかはって意見も分かる
先のコメントに対し、視聴者たちの意見は否定寄りだった。だが、その意見も分かるという層も存在する。
そもそもの話、日本の魔法使いで探索者をやっている者は変わり者であるという認識が存在する。その大きな理由の一つが政府が打ち出し、世界迷宮機関やギルドを始めとした様々な機関・企業が協賛している、通称“魔法による自然再生プロジェクト”だ。
魔法の持つポテンシャル、可能性は膨大だ。例えばエネルギー問題に関して、数十人の魔法使いにそれ専用に調整・応用した汎用魔法を用いて、試験研究を行った。
火力発電に倣い魔法の炎と水で蒸気を発生させてタービンを回し、発電を試みる実験がある。長年に渡り研究と改善を重ね、近年では一日の発電量が一万kwhを超える莫大な数値を叩き出した。これはおおよそ三千世帯分以上を賄えるほどの電力であり、世界は新たなエネルギーの可能性に沸きに沸いた。
他にも砂漠の緑化、水質の改善、汚染水の浄化など、魔法の有用性は計り知れない。
しかし、どんな物にも完璧という物が存在しないように、当然魔法の使用にも問題が存在する。
一つ、魔法は連続使用に耐えないというもの。魔法使いが魔法を行使するには魔力が必要となる。その魔力を生み出し、操作するのは心臓と脳だ。長時間の魔法の行使には、それら臓器に多大な負担を強いるのである。
プロジェクトの黎明期には無理に魔法を使用した魔法使いが脳に重大な障害を抱え、二度と魔法の行使が出来なくなったという例が存在する。先の魔法による発電も、長時間の魔法の行使が前提となっており、交代制とは言え魔法使いたちには大きな負担が圧し掛かるのだ。
「……私を心配してくれてのお言葉だと思いますが、それでも私は探索は止めません。子供染みた意地みたいなものでも、私は探索に憧れているんです」
俯きながらではあるが、ミーアはそう強く言い切る。真っ直ぐとした視線を返せないのは意固地なのを自覚している為か、それとも
ともかく、ミーアの言葉を聞いた視聴者からは探索を止めるように促すコメントはなくなった。納得したのか、呆れたのか。それはミーアには分からない。それでも自分のスタンスを改めて提示出来たのは良かったのだと自分に言い聞かせる。
分からない、と言えば。
────そう言えば、何でるぷすちゃんはあんなに魔法に詳しいんでしょうか。ご家族に魔法使いの方が居たり、とか……?
脳裏を過ぎる疑問に、ミーアはるぷすをちらちらと見やる。先日に続き今日で随分と仲が良くなったと自負しているが、それでもプライベートなことにまで踏み込んでいいのかミーアには躊躇われた。
そして、疑問を持っているのはるぷすも同じであった。
────先輩はどうして配信者になったんだろう。あの人に憧れて探索者になったのなら配信はしなくても良かったはず。ましてや、先輩は魔法使いなのに魔法を使えなかった。視聴者たちからどんな反応が来るのかなんて分かるはずなのに……。
ヴァイオレットは探索者ではあるが配信者ではない。魔法が使えない魔法使いであったミーアが探索を配信すれば、世間からの嘲弄が免れないのは想像に難くなかったはずだ。それでもミーアは配信を行っていた。
そのことに対してるぷすはミーアに問い質したかったが、流石にデリケートな部分に触れるのはるぷすをしても躊躇われた。天然で空気を読めないきらいがあるるぷすであるが、その辺りの機微はちゃんと有している。
結局、二人は互いに何も聞くことが出来ずに帰路に就く。
「あ、そうだ。先輩、色々あったのでまた“るぷすポイント”を進呈します」
「え、ああ、はい」
「とりあえず2500万ポイントを進呈。わーい」
「どうもありが────2500万!!?」
:ファっ!?
:にせんごひゃ 2500万!?
:にwせwんwごwひwゃwくwまwんwwwwwwww
:さっきまでと桁が違い過ぎるwww
:ミーアちゃんの現るぷすポイントは25000060点!! 一億点まで残り74999940点!!
:点数配分どうなってんだwww
:でも豪華景品に一気に近付けたぞ!
:基準が知りたいわ!
とりあえず、もやもやとした空気は晴らしておくことにしたるぷすであった。
某テレビ局の楽屋。そこでは三人の成人したて頃の年若い女性が思い思いに過ごしていた。一人は出演する番組の台本を読み進め、一人は小説を読み、そしてもう一人は……。
「……うっわー、マジかー……。えぇ? ……うっそでしょ……ひえぇ、すっごぉ……!」
何やらスマホで動画を見ているのか、小さな声ではあるが静かに過ごしている他の二人からすれば、集中を乱されるくらいの声量でぶつぶつと感嘆の声を漏らし続けている。イヤホンをしているので音は漏れていないのがまだマシではあるが。
「……ちょっと、さっきからうるさいわよ
「ん? あ、ごめんごめん、
「私は大丈夫だけど……何か面白い動画でも見つけたの?」
小説を読み、来夏に文句を言ったのは
来夏に動画の内容を尋ねたのは
最後にスマホで動画を見ていたのが
「そうそう、この動画なんだけどさー、いやもうマジですんごいのよ! ちっちゃくて可愛い女の子がゴーレムをぶっ壊したりゴーレムをぶっ壊したりボス級ゴーレムを真っ二つにしたり!」
「ふーん? ちっちゃい女の子がねぇ……?」
「ど、どんな子なの?」
そうして来夏のスマホを二人が覗き込む。来夏は見ていた動画を最初から再生させる。映し出されたのは小学生程の背丈の少女。その小ささに驚きの声を上げる二人であったが、画面の少女の顔が映されると、また別の驚きの声が上がる。……特に千華から。
「うわっ、かわい────」
「かっ、かかかかかかわいい~~~~~~!! えっ、ほんとにちっちゃい。でもかわいっ、あれ、何でこんなにちっちゃい子なのにダンジョンの中に。でもかわいいっ、え、え、え、あっ、もう一人居るんだ。あっ、こっちの紫の人もかわいい! うわっ、うわうわうわわわわわわ」
「いやうるさっ」
大きな声でかわいいと連呼する千華に二人は思わず頭を逸らして距離を取る。そこまでされてようやく自分の失敗に気付いたのか、千華は二人に頭を下げ、改めて動画を見直す。
それはつい数時間前に投稿されたとあるダンムーバーの切り抜き動画。どうやら有名な切り抜き師が投稿したもののようで、既に一万回以上再生されている。気になる内容は“るぷす”という配信者が先日配信した動画の戦闘シーンを纏めた物のようであり、動画の概要欄にはるぷすの年齢なども記載されていた。
「こんなちっちゃいのに十六歳なんだ」
「小学生にしか見えないよね」
「抱っことかしてみたいなー。ほっぺとかももちもちしてるのかなぁ」
やはり最初に抱くのは年齢と外見の乖離についての驚きのようだ。ダンムビで配信出来ているので詐称ではないようだが、それでもこの幼く見える少女に探索者が務まるのかと初見の理央と千華は疑問を持つ。
「そろそろゴーレムとの戦闘だからさ、よーく見ときなよー?」
にひひ、と意味深に笑う来夏に二人の期待は高まっていく。そして、その上げられた期待のハードルは軽々と飛び越えられてしまった。
「……うっそ、でしょ」
「うわ、うわわわわわわ……!」
「ねー! 凄いっしょー!?」
驚愕に声を震わせる理央と千華。二人が見たのはるぷすに腕を捩じ切られ、頭部に蹴りを叩き込まれて粉砕されたゴーレムの姿。
当然、二人の驚きはこんな程度では終わらない。動画の時間は十数分と短めではあるが、その短い中で何体ものゴーレムがるぷすに打ち倒され、挙句の果てにはボス級ゴーレムを一撃で真っ二つにする衝撃映像で動画は終わる。先も見ていたというのに、来夏はまたテンションがどんどんと高くなっている。
ボス級ゴーレムにるぷすとミーアという魔法使いの二人で立ち向かった時には思わず無茶だ無謀だと声を出してしまっていたが、そんな物は杞憂に過ぎなかった。そもそも来夏が凄惨な動画を勧めてくるわけがない、と後で気付いた。
「はー……世の中にはとんでもないバケモンが居るものねー……」
「あんなにかわいいのに、あんなに強いなんて……どんな鍛錬してるんだろう」
「私らじゃ通常ゴーレムすら倒せるか怪しいのにねぇ」
三人はるぷすの強さに感嘆の息を吐く。自分たちとは数年しか歳が違わないのに強さは圧倒的なまでに違う。
そう、この三人もるぷすたちと同じく探索者。それも、『とらい☆りっぱー』としてアイドル活動をしているダンジョン配信者だ。
何を隠そうこのとらい☆りっぱー、某アイドル事務所から『アイドルに探索者をやってもらおう』というコンセプトで生まれたアイドル兼探索者────
『
当然選抜は至難を極めたが、アイドルとして通用する容姿、探索者としての確かな強さ、その両方を兼ね備えた三人の探索者が見い出され、見事デビューと相成ったのである。なお。グループ名の由来は三人とも得物が刃物であるところから来ている。
歌やトークはまだまだだがダンスのキレは他のアイドルたちを圧倒する物があるという評価を受けており、今後が期待されているアイドルだ。
「それにしてももう一人の魔法使いの人もかわいいね」
「ああ、紫の。えっと……ミーア、だったっけ?」
「……魔法使いのミーア? 何だっけ、どっかで聞いたことあるような……?」
三人はどこか聞き覚えのあるミーアの名前に首を傾げるが、それよりも更に気になる部分があり、何が記憶に引っかかっていたのかが分からぬままに集中を乱されていた。
「しかし……
「すっごい大きいね……」
「デカパイアイドルの千華よりも大きい……」
「来夏ちゃん? その呼び方やめてって何度も言ったよね?」
「いふぁいいふぁい! ふぉめん! ふぉめんっへばぁ!?」
三人はミーアの圧倒的大きさを誇る胸に視線が釘付けとなっていた。そのせいで来夏がぽろりとセクハラ発言をして千華を怒らせてしまって頬を引っ張られてしまったが。
と、三人がワチャワチャしていると扉がノックされ、ADがスタジオに呼びに来た。
「うっし、良いもん見たし頑張りますか!」
「収録が終わったらるぷすちゃんの動画を探そうっと」
「概要欄にリンクがいっぱい貼ってあったから、そこから見ていけばいいかもね」
三人はADと連れ立ってスタジオへと向かう。今回は『最近話題のアイドル』の特集が組まれた番組への出演だ。探索者の傍らアイドル活動をしているという異色の経歴を持つ三人は、世間からの関心も高い。きっと根掘り葉掘り色々なことを聞かれるだろう。面倒臭い、と思ってしまうのは仕方がないことだ。収録語の動画探しを自分へのご褒美にして乗り切ろう。千華だけでなく他の二人もそう考えて収録へと臨むのだった。
なお収録語に見たるぷすの動画がご褒美となったのかは定かではない。
「うわあああああ!? ご、ゴブリンの頭があああああ!?」
「ボンって!! トロールの背中から何か赤いモザイクの塊がボンって!!?」
「うっわ……マジか……これ、え? マジでぇ……? ………………いやマジで?」
ちゃんちゃん。
お疲れ様でした。
魔法なんて便利な物があるんだから色々と活用させようぜ! というわけで魔法は色んな分野で活躍しているよ、という設定です。
命懸けでダンジョン探索するより自然再生プロジェクトに従事している方が安全だしね。
日本の魔法使いの総数とか諸々はまた今度。汎用魔法の諸々についてもまた今度です。
ちなみにるぷすポイント2500万点にはちゃんとした(?)理由があったりします。
以前名前だけちょろっと出てきたとらい☆りっぱーが今回出ました。
彼女たちの今後の活躍にご期待ください。
……次の出番はいつになるかな? 割りとすぐかな?
それではまた次回。