低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記   作:タナボルタ

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お待たせしました。

今回も短めになります。そして早めの更新。毎日更新してる人って凄いなぁ……。
あとがきにちょっとした用語解説があります。

それではまたあとがきで。


第十三話『いつか胸を張って』

 

 さて、ドローンさんや目覚まし時計のアラームで目を覚ましたランは、再びスマホの電源を入れ、未だ続いている通知の雨に身体を強張らせている。

 どうやら先程の出来事は夢ではなかったと理解出来たようで、無表情ながらも少々困ったような雰囲気をその身に纏っている。ちらりとドローンさんを見やれば、こちらもまたダンムビのアカウント画面をホログラム投影し、先程よりも更に増えたチャンネル登録者数を見せつけてくる。

 

「……何で?」

 

 なぜこうもいきなりダンムビのチャンネル登録者数や、ダンジョンテック社発のSNS“ダッケル”のフォロワー数が爆発的に増えたのか、ランには皆目見当がつかなかった。

 ランは暫しベッドの上で様々な理由を考察し、頭を悩ませる。しかしいつまでもこうしてはいられない。本日は月曜日。祝日でも何でもない平日だ。学生であるランは当然学校へと行かなければならない。

 

「……まあいいか。学校でいいんちょや神酒君に聞いてみよう」

 

 ランの数少ない友人である美奈とソーマもランのフォロワーである。二人に話を聞けば、この不思議な現象の答えも分かるだろう。そう考え、ランはゆるゆると身だしなみを整え、シリアルに牛乳を掛けて食し、学校へと出発した。もちろん戸締りも完璧である。

 いつもと同じ学校への道。通学路を歩くランではあるが、どこか自分に向けられる視線がいつもとは違うように感じる。そう、恐怖や畏怖といった視線ではなく、興味・関心が強い、いわゆる好奇の目に晒されているような、そのように感じている。しかしその視線を心のどこかで好ましく思っているのもまた事実だ。

 自分は意外と承認欲求が強かったのか? とランは自分の新たな面に驚きを覚えるが、そもそも請われる形とは言えダンムーバーを続けていることを考えれば、意外でも何でもないな、と考え直す。そもそもランは美少女である自分が耳目を集めるのは当然だと思ってるので本当に今更である。

 そうして辿り着いた自分の教室。ガラリと扉を開けると、そこにはいいんちょこと美奈のドアップの泣き顔があった。

 

「ランーーーーーーッ!!!」

「うーん、デジャヴ」

 

 そう、美奈がいつかのようにランに飛び付いたのだ。今回は前回よりも更に勢いが良く、衝撃もまた強い。しかしランはそんなタックルを受けても微動だにせず完璧に受け止め、それどころか美奈に反動を与えないように衝撃を逃してみせた。

 クラスメイト達はまたも泣き出した美奈に驚いている様子で、こちらも変わらず見守りの態勢である。

 

「ゔ……ぅうゔ……!! ふぐぅ……っ、ううぅ……!!」

「よしよし、今度はどうしたの?」

 

 ランの肩に顔を押し付け、泣き声を上げる美奈を優しくあやしながら、ランは何があったのかを尋ねる。

 

「ば……お、……ばお、ぅ……ばぉー……ばおー……っ!」

「来訪者?」

 

 ぶんぶんと首を振る美奈。どうやらランの出した回答は間違っていたらしい。

 

「ばお、ぅ……ば、おう……ばおう……!」

「ザケ○ガ?」

 

 またも美奈は首を振る。これも違ったらしい。

 

「ば……ば、ほう……ま゛ほぅ……まほう……」

「うん」

「お……おね、え、ちゃんの……魔法……ありっ、あり、がとう……!!」

「……先輩にもいっぱい言われた」

 

 ありがとうと何度も言う美奈に、姉である美亜(ミーア)の姿を重ねてランは無表情に苦笑する。というか私はこの姉妹を泣かせ過ぎではないだろうか、という罪悪感がランの胸にじわりと広がってくる。

 感謝の気持ちを伝えることが出来たためか、美奈の身体から力が抜けていき、ずるずると沈んでいく。

 

「おっと」

「むごっ」

 

 ランは美奈の流れそうになる身体を支えるために腰を抱き寄せる。そのためか、身長差のせいで美奈の胸がランの肩に乗り、圧迫感で変な声を出してしまう。

 

「いいんちょ、自分で立てそう?」

「……ちょっと、無理、かも。なんか、腰、抜けたっぽい……?」

「ありゃりゃ」

 

 予想外の事態にランも頭を掻く。こうなれば仕方ないと、ランは美奈をお姫様抱っこで抱え、保健室へと連れていくことにした。恥ずかしがる美奈をあえて無視し、開いたままの扉から出て行こうとするが、その前に一人のクラスメイトの女子に声を掛ける。

 

「ちょっとごめん」

「っ!? ……えっと、な、何、大神さん……?」

「いいんちょを保健室に連れていくから、先生が来たらいい感じに説明しておいてほしいんだけど……」

「あ、うん。……分かった、言っておく」

「ありがと」

 

 今度こそランは美奈を抱え、教室を出て行った。時計を見ればホームルームの数分前。担任が来る前に保健室から戻るのは無理だろう。それが分かったのか、そのクラスメイトもランのお願いを受け入れた。

 

「……」

 

 その女生徒は保健室へと向かうランの背中をじっと見送る。その胸中には、言いようのない罪悪感が滲んでいた。()()()()()()()、ランの配信動画を学校に広めたのはこの女生徒である。

 以前の美奈の様子。そして今回彼女が見たランの配信動画の切り抜きたち。ゴーレムを一蹴するるぷす(ラン)。魔法を解説するるぷす。そして────苦しんでいた一人の少女を救ってみせたるぷすの姿。

 それは、自分が恐怖を覚えた少女と同一人物だ。だが、自分はあまりに一方的に、一側面だけを見ていただけに過ぎないのではないだろうか?

 未だにランに対する恐怖はある。しかし、それと同時にランは自分に感動を齎した。興奮を与えた。尊敬を覚えた。

 女生徒の中で、ランへの見る目が変化していく。それは他のクラスメイトも。そして、この学校に通う生徒や教員たちもだ。

 流されやすいと言えばそれまでだ。掌返しと言われても否定は出来ない。しかし、それでも。

 大神ランという少女の本質は、静かに、しかし確実に知れ渡っていくことになる。

 

 

 

 

 

「ところでいいんちょ」

「ぐすっ……何?」

 

 保健室へと向かう道すがら、ランは丁度良いとばかりに美奈へと問いを投げる。

 

「実は朝起きたらダッケルのフォロワー数とダンムビのチャンネル登録者数が爆伸びしてて」

「ああ、そのことね。お姉ちゃんもそれで朝から放心してた」

「先輩も?」

 

 美奈曰くこれは自分にだけ起こった現象ではなかったらしい。一体どういうことなのかと聞いてみれば、やはり切り抜き動画が原因であったようだ。

 

「ほら、一昨日のゴーレムのダンジョンでの配信。昨日有名な切り抜き師があれの切り抜き動画を投稿してね、それがバズったの」

「……ということは大体昨日の夕方頃に投稿されたんだ。え、そんな短時間でこんな増えるものなの?」

「そりゃまあ……バズるっていうのはそういうことよ」

「なる、ほど……?」

 

 一応頷きはするが、納得までは行っていなく、どうにも現実味がない。朝の通学中は若干浮かれもしたが、時間が経ってしまうとどうにも疑念や不安が押し寄せてきたらしい。

 

「ちなみに複数の動画が投稿されてて、一番人気はあんたがボスゴーレムを真っ二つにしたシーンね。それからお姉ちゃんが魔法を使えるようになったシーンとか、あんたがドローンのカメラで遊んでるシーンとか。……切り抜きの許可申請が来てたでしょ?」

「……そういえばDMが来てたような……? でもそこら辺はドローンさんに丸投げしてるから覚えてなくて」

「……あんた、いくらドローンが切り抜き許可の対応が出来るからって、確認も何もしないのはどうかと思うわよ?」

 

 マオ謹製のドローンさんは優秀である。切り抜き許可申請のDMの対応などもお茶の子さいさいだ。先方がどのような切り抜き動画を作るのか、その傾向を調べ上げて可否を決定するぞ。ついでにちょっとした要望を加えることもあったりしちゃうぞ。

 

「そういえば先輩はどのくらいチャンネル登録者が増えてたの?」

「……今までが私とソーマを含めて十数人だったんだけど……今朝お姉ちゃんに聞いてみたら一気に二十万人に増えてたの」

「おお……!! 凄い、私よりもずっと多い……!!」

 

 ランの目が珍しく驚きに見開かれる。それだけの衝撃が美奈の言葉にはあった。まるで漫画やアニメのような数字の伸びっぷりに、ランの目がキラキラと輝きを放つ。

 

「……何か嬉しそうね?」

「ん? そりゃあ先輩の努力が報われたんだし、私も嬉しいよ?」

 

 美奈の言葉に含まれる真意が理解出来ず、ランは首を傾げる。そんなランを見て美奈は口を開き、何かを言おうとするも躊躇してしまい、もごもごと動かすだけに至る。

 何かを言いたそうにしているとスピーカーからチャイムが鳴り響き、そして二人は保健室に到着した。

 

「失礼します」

 

 ランは両手が塞がっているので、美奈に保健室の扉を開けてもらう。中を見回しても保険医は居らず、とりあえずランは美奈をベッドに横たえることにした。

 

「とりあえず一時間目はここで休んでおいたらいいと思う」

「……そうね。そうする」

 

 美奈はせっかくだからと布団を被ってしっかりと休む姿勢を作る。それじゃ、と教室に戻ろうとするランの後ろ姿に、美奈は思わず声を掛けた。

 

「ねえ」

「ん? どうかした?」

 

 首を傾げるランの姿に、美奈はまたも言い淀む。いつもの無表情のラン。しかし、先程のランは確かに嬉しそうと言える表情を浮かべていた。

 

「その……悔しかったり、とかってしないの? お姉ちゃんの方がチャンネル登録者数が増えちゃって……」

 

 目を伏せながら、美奈はランに疑問をぶつけた。聞けば誰もがそう思っても仕方がないことだ。少し前まで自分よりも劣っていた者が、自分を遥かに遠くに追い抜いているという受け入れがたいその事実。

 美奈はランの立場を自分に置き換えて考えてみて、やはり悔しさや妬ましさ等を感じるだろうと思い至った。それは人として当たり前の感情である。では、ランの場合は。

 

「ん……悔しい、とかは無いと思う。私の場合、元々ほとんどの配信がグロ規制されてて見れる人自体が少なかったから、そこら辺の数字は気にしてなかったし」

「あ……」

 

 そういえば、と美奈は小さく息を吐いた。そもそもの話、ランは配信者として高みを目指しているわけではない。請われるままに配信を始め、そのままダンジョン探索の()()()に配信をしているようなものだったからだ。故に配信中に高評価とチャンネル登録をお願いしても、それがなされようがなされまいが特に感慨らしい感慨も無かった。自分の戦い方では規制は当たり前だと割り切っているからだ。……まあ、流石にスライム退治で規制されたときは抗議したが。

 ただ、最近はそんな心境も少しは変わってきた。

 

「でも、大勢の人が見てくれるっていうのは……嬉しい、と思うようになった、かな。リスナーの人達と絡むのも楽しいし」

「そう、なんだ」

何より私の美少女っぷりにみんながメロメロになってチヤホヤしてくれるし

「そーなんだー」

 

 美奈の頭が枕に沈み込んだ。照れ隠しとかではなく本当にそう思っているから色々と台無しである。別にろくろを回しながら高尚なことを語ってほしかったわけではないが、それはそれとしてもっと他になかったのかと文句を言いたくなる。

 

「だからまあ……先輩とはこれからもたまにでいいから一緒に配信させてもらえたら嬉しい。先輩と一緒だと、その……私も楽しい、から」

 

 ランは美奈から視線を外し、俯きながらもそう言った。不安そうに、縋るように。ランは恐れている。ミーアの方が、自分から離れていってしまうのではないのかということを。

 美奈はランの様子からそのことを察し、不謹慎だが嬉しく思ってしまった。ランが姉との絆を……友情を大事にしてくれていることを。

 

「それなら大丈夫。全然問題ない」

「……ほんと?」

「うん。……というか、ランには申し訳ないんだけど……早速またお姉ちゃんのことで助けてほしいというか……」

「……?」

 

 いくら何でもランに甘えすぎな自分達姉妹のことを情けなく思うが、悲しいことに()()()()()()()で頼れる人物はランしかいない。言質だって取れたのだから、早速利用させてもらうとしよう。本当に情けなさ過ぎて涙が出てしまいそうだ。

 何やら自虐的な笑みを浮かべて涙目になっている美奈をちょっと不気味に思いながら、ランは一つ条件を加えることで了承することにした。

 

「一つ、私からもお願いがある」

「なに? ランには本当に助けてもらってるし、大抵の事なら頑張るけど」

 

 美奈の言葉にランは頷く。

 

「テスト勉強を手伝ってほしい……特に数学」

 

 至極真面目な顔(無表情)をしての可愛いお願い事に、美奈は笑みを浮かべた。

 

「そんなことで良いのなら、いくらでも」

「おお、言ってみるもんだ」

 

 ランは諸手を上げて喜ぶ。相変わらず無表情ではあるのだが、やはりランから発せられる雰囲気は嬉々とした物に変じていた。この無表情故に関りを持たぬ他者から無機質と誤解されやすい、しかし本当は友情に篤く、分かりやすい気質をしている少女と友誼を結べたことは、美奈にとって望外の幸運だった。

 彼女から与えられる恩に対し、自分たちが返せるものはあまりにも少ない。しかし、時間が掛かっても、少しずつでも……そう。例え一生を懸けてでも、ランの友情に報いたい。そう心から想っている。

 また頼ることになってしまうことに罪悪感はある。甘えてしまうことに抵抗がある。だから、今ではなくとも。きっと、いつかは。

 

「よろしくね、いいんちょ」

「……ええ、こっちこそ」

 

 ────いつか、胸を張って親友だと言えるように。肩を並べて歩けるように。

 美奈は、差し出された小さな手を握り、心に誓うのだった。

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。
男キャラを出したいのにタイミングが掴めない……何てことだ……。
これからもしばらく女の子しか出てこない……予定が狂いまくってる……。

まあいいか。(思考放棄)


以下用語解説

“ダッケル”(Dackel)
ダンジョンテック・ドイツ支社から発表されたSNS。ダンジョン探索者がこれに登録するとギルドの探索者資格とアカウントが紐付けされ、探索者がどのダンジョンに潜っているのかが表示される。
簡単な操作で救難信号を発することが出来、付近の適切な実力を持った探索者に救助要請が送られる。この機能を利用した不適切行為、犯罪行為なども発生してしまっているが、そういった行為を行った者にはギルドから重い処罰が科せられる。
なお一般人でも登録することが可能であり、登録者数は一般人>探索者となっている。
名前の由来はドイツ原産の犬種である“ダックスフント”(Dachshund)であり、ダッケルはその短縮形。
ドイツではダンジョン探索者のことをダッケルという愛称で呼んでおり、その由来はダンジョンの魔物を巣穴のアナグマ、探索者のことを猟犬に見立てたことから。(ダックス=アナグマ、フント=猟犬)
ちなみにロゴマークはダックスフントの横顔がモチーフとなっており、可愛らしいと人気を博している。


それではまた次回。
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