低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記   作:タナボルタ

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大変お待たせいたしました。

私「どうして緊急の仕事(イレギュラー)は発生するんだろう……
ゼロ、もしおれがイレギュラーを発生させたら君が働いてくれ……」

ゼロ「バカなこと言ってねぇで働け」


それではまたあとがきで。
あとがき後にちょっとした用語解説があります。


第十四話『楽しい夕食』

 

 底辺配信者から一転、無自覚の内に人気配信者となっていた日から明けて翌日。学校も終わった夕方の時間。美少女配信者“るぷす”ことランは、自宅の一室を整理していた。

 整理と言っても大きめのテーブルを一台、座布団を三枚用意し、テーブルの上に普段から愛用しているノートパソコンをちょこんと置くだけだ。

 

「この前掃除しておいてよかった」

 

 あっさりと()()()()を終えたランは軽く一息吐き、呟いた。時計を見れば十八時。約束の時間まであと三十分程。

 

「……」

 

 そわそわと、ランの身体が動き出す。後は待つだけだというのに、何かをしなくてはいけないのではないか、と身体が疼くようなもどかしさ。そう、ランは今夜のイベントを待ちわびている。期待している。楽しみにしているのだ。

 

「むう……なんか落ち着かない。こういう心を鎮めるためには……」

 

 ランは隣の自室に戻り、クローゼットから大きな箱を取り出した。小柄なランからして一抱えもある箱。その箱にはやたらとマッシブさが強調された合体ロボットの絵が印刷されている。

 

「合体ロボットなのに全体の七割が一つの機体って、今見ても思い切った構造してる」

 

 ランは箱から取り出したロボットのアクションフィギュア(税込みで約五万円の高級トイ)をガチャガチャといじり、心の安定を図るのであった。

 

「……おお、このシリーズもついにアクションフィギュア化。でも……うーん、やっぱり合体機構に無茶がありすぎて見た目が犠牲になりすぎてる……三万円以上するのに……」

 

 一通り変形と合体、ポージングを楽しんだランはスマホでロボットの写真を撮り、ロボット系のアクションフィギュア情報サイトを巡る。

 好きなロボットアニメの機体もキット化が決定したことを喜んだのも束の間、二次元の噓が通用しない三次元化に伴い、あまりにも無茶すぎる合体機構のせいで、とんでもなく歪な形をした主役機の姿がサイトに載せられていた。

 

「……あ、でも可動範囲凄い。こんなに格好悪くなっちゃったのに」

 

 しかし、どうやらその無茶すぎる機構を利用したのか、他のキットと比べても破格の可動範囲を有することに成功したらしい。これで見た目もそれなりに伴っていればランの食指も動いたのかもしれないが、そのロボットの見た目はロボットなのにあまりにも名状をし難い物となっている。流石のランも数万円以上出して買う気にはならなかった。

 

「これなら合体なしで出した方が……ん?」

 

 好きな作品だっただけに不満の募るランであったが、その愚痴は不意のチャイムの音に停止させられた。ふと時計を見ると十八時四十分。少し遅れてはいるが、約束の時間だ。

 

「急げ急げ」

 

 二階の自室から『ててて』と走り、玄関へと急ぐ。宅急便などの可能性は考えない。と言うより完全に抜け落ちている。それだけ楽しみにしていたのだ。

 ガチャリ、と玄関のドアを開ける。果たして、そこには考えていた通り、二人の人物が立っていた。

 

「お待たせ、ラン」

「遅れてしまってすみません。スーパーからここまで、少し道に迷ってしまって」

 

 大きなバッグと買い物袋を持った二人、美亜と美奈の湖水姉妹だ。

 

「二人ともいらっしゃい。中に入って」

 

 ランは挨拶もそこそこに早速家の中へと二人を招き入れる。美亜たちも初めて訪れるランの家に興味津々なのか、しきりに家の中を見回している。美亜は途中から己の行為のはしたなさに気付き、自重した。顔が赤くなっており、可愛らしい。

 ランは二人をリビングに案内しそこにバッグを、台所に買い物袋を置いてもらう。

 

「……なんか思ってたより多く買ってきたね……?」

 

 二つの買い物袋にはぎっしりと食材が入っている。少し持ち上げてみると一応探索者である美亜はともかく、一般人である美奈には中々に辛そうな重さだ。

 

「アンタの()()()()()の鯖だけじゃあんまりにも物足りないでしょ。だから他にも色々とね」

「うふふ、張り切っちゃいますよー」

 

 美亜たち姉妹はエプロンを着用しながら袋から食材を出していく。湖水姉妹が今日の夕食を作ってくれるのだ。

 そもそもなぜこの二人が夕食を作ってくれるのか、それは昨日の美奈からの“お願い”が関係している。

 美奈からのお願い、それは『姉が爆増した登録者数・フォロワー数にビビッてしまったため、一緒に配信してやってほしい』というものである。

 そしてそのお返し、というか今までの色々なことに対する感謝の気持ちとして今回夕食を作る、ということになったのだ。

 もちろんこの一回で全部チャラという訳では決してない。これから先も様々な形で湖水姉妹はランに恩を返していこうと決めているのだ。

 ちなみに今回ランがリクエストしたのは『鯖』である。両親と暮らしていた時はそれなりの頻度で魚を食べていたのだが、一人暮らしとなってからは全然食べなくなってしまったから、とのこと。

 

「献立は鯖の塩焼き、玉子焼き、納豆、大根のお味噌汁、お漬物、ほうれんそうのおひたし。そしてたっっっぷりの大根おろしよ」

 

 でん! と、美奈は大根1/2(ハーフ)カットを取り出す。太く、大きく、とても立派だ。

 

「え、これ全部おろすの?」

「お味噌汁にも入れるから全部じゃないけど、ほぼほぼおろすわ」

「三人分とは言え鯖だけでそんなに使う?」

「なに言ってんの。玉子焼きとかそのままご飯と一緒に食べたりとかするでしょ?」

「え……?」

「あら、したことなかった? 美味しいわよ?」

「ふふふ、美奈は大根おろしが大好きなんですよ」

 

 雑談をしながらも姉妹の手は迷いなく動き、手際良く食材を捌いていく。(鯖だけに)

 それを横やら後ろから覗くランの身体はそわそわと身動ぎしだす。自分もなにか手伝いたくなったのだ。

 

「……私もなにか手伝うよ?」

「あ、じゃあ大根おろしてくれる? おろし金に円を描くような感じで」

 

 試しにお伺いを立ててみれば即座にレスポンスが返って来た。大根半量近くともなれば、おろすのは確かに大変な作業だろう。ランは手を洗い、張り切って大根をおろしていく。

 そうして和気藹々と調理を続け、遂に夕食が完成した。

 テーブルに並ぶ料理の数々。どれも美味しそうな匂いを発し、ランの食欲を大いに刺激する。

 ぐう、とランのお腹の虫が鳴った。

 

「お腹減った」

「ちょっとは恥じらいなさいよ……」

「それじゃあいただきましょうか」

 

 三人はそれぞれ席に着く。テーブルを挟み、ランの前に美奈、その隣に美亜が座った。三人は手を合わせ、「いただきます」と声を合わせた。

 

「さてまずは……」

 

 ランはスマホを取り出し、最近と比較するととても豪勢な夕食をパシャリと写真に収める。表情は変わっていないが、発せられる雰囲気は『ホクホク』と言ったところか。

 

「珍しいわね、ランがそういうことするの」

 

 ランは基本的に食事やスイーツなどを写真に撮ったりすることはない。しかし、今回は写真を撮る理由が存在したのだ。

 

「後で神酒君にいいんちょたちの手料理を自慢しようと思って」

「アンタねぇ……」

「あんまりソー君をいじめないで下さいね」

 

 ランの動機に美奈は呆れ、美亜も苦笑を浮かべた。ランはまず味噌汁に手を付けようとしていた手を止め、美亜へ向き直る。

 聞き慣れぬ言葉に首を傾げながら、その言葉を口にする。

 

()()()?」

創真(ソーマ)君のあだ名です。ソーマだから、ソー君」

「……」

 

 美亜からその言葉の意味を聞き、なぜか固まる。やがて何かに納得したのか、手をポムと打ち、何度も頷いた。

 

「神酒君がいいんちょの幼馴染みということは、自動的に先輩も幼馴染みであるということ……! 全然気付かなかった」

「ええ……?」

 

 これには美奈も呆れを超えて困惑が先に来た。ランは疑問が晴れてスッキリしたのか、改めて味噌汁を口にする。

 

「あ、美味しい。これは……こうじ味噌?」

「白味噌よ」

「なるほど、これが白味噌……」

「大根と合うんですよねぇ」

 

 次にランが手を付けたのは納豆だ。何の変哲もないパックの納豆。そういえば納豆も最近は全然食べてないな、と考えつつ、箸でぐりぐりと掻き混ぜる。

 

「そういえば聞くの忘れてたけど、ランって納豆は大丈夫……なのよね? 鼻が良いってことをすっかり忘れて出しちゃったけど……」

「玉ねぎは無理だけど納豆は大丈夫」

 

 言いつつ納豆をぱくり。安心・安定の味。変わらぬ美味しさだ。

 

「……ふむ」

 

 ランは鯖を見る。たっぷりの大根おろしが添えられており、とても美味しそうだ。その横の玉子焼きもふっくらとしており、焼き跡一つない見事な仕上がりである。

 ちなみに甘くない出汁の利いた出汁巻き玉子となっており、こちらにも大根おろしがたっぷりと添えられている。

 更にその横、ただ大根おろしがこんもりと小皿に盛られている。

 

「これに醤油をかけてご飯と一緒に?」

「そうそう」

 

 美奈に促がされるまま、醬油を垂らしてご飯と一緒に一口ぱくり。

 

「……お? 美味しい。意外とご飯に合う」

「でしょ?」

「私は天つゆも好きなんですよね。天かすもたっぷり入れてご飯と一緒に食べたら幸せの味ですよー」

 

 美亜が更なるアレンジを提示する。今回はスーパーの天かすが売り切れていたので試せないが、今度見かけたら買って試してみようとそう思うくらいには美味しくいただくことが出来た。

 そして鯖だ。ランは鯖と大根おろしに醤油をかけ、鯖の皮に箸を入れる。パリッと香ばしく焼けた皮は軽い音を立てながら、しっとりとジューシーな身と共に骨からすっと離れた。

 

「すごい。私が前に焼き魚にチャレンジした時は皮が黒焦げになってフライパンにこびり付いたり、それなのに身は生焼けだったりしたのに」

「あー、あるある」

「お魚は油とか焼き加減が難しいんですよね」

 

 自らの失敗談を語りつつ、鯖の身に大根おろしを乗せて口へと運ぶ。鯖の身を嚙み締めればじゅわっと脂が溢れ、しかし大根おろしが脂のしつこさを消し、醤油の尖った味も鯖の脂と混じり、強烈な旨味となってランの舌を喜ばせる。そこにご飯も加えれば完璧だ。

 

「……美味しい。凄く美味しい。ご飯多めに炊いておいて良かった」

 

 以降、ランの食事のペースが上がる。もりもりと食べる様子は、まさに食に没頭していると言っても良い姿だ。

 そんなランの様子を見た美奈たちは、互いに笑い合うと同じく食べることに没頭した。

 今日のご飯も美味しく出来ている。

 

 

 

 さて、食事が終わって後片付けをしたら、少しの休憩の後に配信の準備だ。

 準備と言っても後はもういつもの格好に着替えれば良いだけなので、まったりとした時間が流れている。

 ダックスで告知した配信開始時間は午後の九時。それまであと三十分はある。

 

「何となくデジャヴ」

「ん? なにか言った?」

「何でもない」

 

 ランは配信時間まで自室に戻って両手で大剣を構えた、いわゆる『勇者パース』で飾ったままのロボットフィギュアで遊ぼうかと一瞬だけ考えたが、それは流石に二人の不興を買うだろうと即座に思考から排除した。

 それに二人ともおしゃべりも楽しいものだ。特に湖水姉妹と神酒創真の幼馴染み三人の話が面白い。

 

「まさか先輩の初恋が神酒君だったとは……」

「儚い恋でしたねぇ。ソー君は昔っから美奈に夢中で……」

「はい! その話はもうおしまい! 二人とも配信の準備をしなさい!」

「なんでまだ付き合ってないの?」

「さ っ さ と 着 替 え な さ い ! !」

 

 せっかく話を色々と広げていこうとしていたのに途中で遮られてしまった。とは言え、確かに時間はもうすぐそこまで迫っている。美亜の緊張を解すために美奈をいじりつつ恋バナなどをしていたのだが、それもどこまで効果があるだろうか。

 ランと美亜はいつもの探索における装備に着替え、パソコンの前に座る。()()()()()()()も二人の真正面に浮かび、いつでも配信を始められるように準備を済ませている。

 

「すーはーすーはーすーはーすーはーすーはーすーはーすーはーすーはー……!!」

「それはもう深呼吸じゃないよ」

 

 美亜によるあまりにも速く浅い深呼吸。ランはツッコミを入れているがその目はとても虚ろな物となっており、とても巨大(おおき)なお胸がぽよぽよと揺れて震えてランの視線を固定させる。

 

「……あと三十秒ー」

「ん」

「は、はいっ」

 

 美奈の言葉に二人は返事を返す。ランも美亜も意識をダンムーバーである“るぷす”、“ミーア”へと切り替える。そして────。

 

「三、二、……!」

 

「夜も遅くにこんBowWow(バウワウ)。美少女ダンムーバーのるぷすです。今日は告知通りゲストを交えて自宅からの配信だよ」

「あなたも私と一緒に見てミーヤ! 魔法使いのミーアです!」

 

 遂に、本日最大の配信(イベント)が始まった────!

 

 

 




お疲れ様でした。

鯖はみぞれ煮も美味しい……。でもしめ鯖は何か苦手。
大根と言えば大根の葉の炒め物も美味しい……。最近食べてないから食べたい。大量に食べたい……。

次回は配信回ですね。また掲示板回もやってみよう……。

それではまた次回。




ランが好きなロボットアニメ
開獄導師(ヘブンズレイザー)リィン=フォーン』

サブスク独占配信の十五禁アニメ。
鷹型・熊型・魚型の三体のロボットが合体、正二十面体を形成してから人型ロボに変形するという変態的変形合体機構を有している。
パイロットは四人で主人公の少年以外は少女たちで構成されている。機体のダメージがパイロットにフィードバックされる仕様であり、主人公はガッツリと痛がるのだが、他の少女たちはどう見ても痛みというより別のナニかに悶えている。(十五禁の理由)
作中の様々なアレコレの元ネタはホラー映画の『ヘルレイザー』とネット発の都市伝説『リンフォン』、そしてヨハネの黙示録である。
作品評価としては賛否両論。退廃的で背徳的な結末を描いた、いわゆるメリーバッドエンド作品。

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