低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記   作:タナボルタ

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大変お待たせいたしました。

今回は質問に答えるだけの内容のはずだったのですが、なぜかべらぼうに長くなってしまいました。
当初は分割して投稿するかと考えていたのですが、別にそんな勿体付けるような内容でもないため、そのまま投稿することにしました。
今では後悔しています。()

それではまたあとがきで。


第十六話『第二回雑談配信』

 

 配信の内容も決まり、質問の受付も始まった。本来こういったものは事前に募集をしておいて内容を精査しておくものだが、今回はつい先程まで何をするかも決まっていなかったので仕方がないだろう。

 

「あ、ミーア先輩の配信の方を見てる人もコメントしてね。二つのドローンさんはリンクしてて、互いの配信のコメントを相互に把握してピックアップしてくれるから。……ひとまずあと五分でいったん打ち切ろうかな」

 

 るぷすが画面に向かって注意を促す。それは同時配信をするにあたってマオから聞いた、ミーアのドローンさんの拡張機能だ。二つのドローンさんがリンクすることで処理能力を高め、互いの配信の二重チェックをタイムラグなしで行い、管理及び監視する。マオが「料金は安くするから色々と実験中の機能を付けさせて!」とミーアに要求して付与した機能の一つだ。

 

 

:ミーアちゃんのドローンも多才になったのか

:拙僧、多才なれば!(ドンドン!)

:マンボちゃん!?

:しかしどっちもドローンさん呼びはちょっとややこしいな

 

 

「ん?」

 

 るぷすは流れるコメントの中に気になるものを見付けた。確かに両方をさん付けしていてはどちらを示しているのか分かりづらい。たまたまミーアも同じコメントを目にしたのか、「確かにそうですねぇ」と頷いている。

 

「いっそ呼び方を変えてみる? 例えばドローンちゃんとかドローン君とか」

「んー……それならドローン君が良いでしょうか。ふふ、それじゃあこれからはドローン君と呼びますね」

 

 ミーアはるぷすの提案を受け、自分のドローンを君付けすることにしたようだ。その際、ミーアは柔らかく微笑みながらドローン君を優しく撫でる。それはつまりカメラ越しにリスナーたちも疑似的にミーアに撫でられたということで……。

 

 

:ミーアお姉ちゃん……!!

:お姉ちゃん……っ!!

:おお……! もっと撫でてお姉ちゃん……!

:こんなお姉さんが近所に住んでてほしい人生だった……

:俺のお姉ちゃんになってミーアお姉ちゃん……!!

 

 

 その微笑みと優し気な撫で方に、リスナーの中のお姉さん好きな者たちが軒並み落とされてしまったようだ。

 

「お姉ちゃんは私だけのお姉ちゃんなんだけど?」

 

 これには妹のミーナも黙っていられず、たまらず主張する。意外と強火のシスターコンプレックスっぷりにコメント欄は大はしゃぎだ。姉妹百合がどうとか、好き勝手なことを囃し立て、ミーナから「は? お? あ?」など、まるでヤンキーのような反応を頂戴している。

 

「まあまあミーナもそんな『!?』が似合いそうな顔してないで」

「どんな顔よ!?」

「もう集計も終わり。……最初の質問が表示されるみたいだよ」

 

 ぷりぷりと怒るミーナを適当にあしらい、るぷすは自らのドローンさんに注目させた。これから表示されるコメントが栄えある質問の第一号だ。るぷすたち三人は静かにその時を待ち、やがて一際大きな文字サイズで質問が表示された。

 

 

 

Q.三人の身長・体重・3サイズを教えて下さい!

 

 

 

「こういう系統ね」

「まあ無難と言えば無難」

「はわわわわ……」

 

 最初の質問はよくあるパーソナルデータを知りたいというものだった。るぷすもミーナも質問自体に何ら思うものは無いようではあるが、唯一ミーアが酷く恥ずかしそうな、というよりは恐れているような声を漏らしている。ミーアはその体型の事で色々と嫌な思い出も多いため、それも仕方のないことである。

 

「とりあえず以前も答えたし、私から発表すると……身長が135センチ、体重が36キロ、3サイズは秘密だよ」

 

 

:教えてくれんの!?

:今回も3サイズはダメだったかー

:ちっちゃ!? 軽っ!?

:マジでちみっこいのね

:その身長と体重でどうやってあれだけのパワーを……?

:贅沢は言わないから抱っこして膝の上に置いて髪の匂いを嗅ぎながら一日中過ごしたい……

:↑贅沢言いすぎなうえにキモォイ!!

 

 

 まず先陣を切ったのはるぷす。以前と同様に答え、言いたくないことは言わなくても良いのだとさりげなく示しておくのを忘れない。

 

「私は身長が160センチ、体重は……秘密。3サイズも秘密ってことでよろしく」

 

 

:身長しか分からん!

:ミーナちゃん意外と小さいな

:160が……小さい……?

:確かに俺ももっと高身長だと思ってたわ

:それは……ほら るぷすちゃんが ほら

:あっ(察し)

 

 

 次はミーナだ。実は3サイズに関してはSNSに載せていたりするのだが、あえてミーアの為に秘密としている。二人から意味ありげな視線を受けたミーアは、よし、と気合を入れると最初の質問に答える。

 

「わ、私は……身長は162センチで、体重は……秘密、です。3サイズも……すみません」

 

 

:まあしゃーないわね

:正直一番気になってたんだけどな……特にバストサイズ

:ミーアちゃんの方がミーナちゃんより身長高いのか 逆だと思ってた

:分かる

:胸もだけどお尻のサイズも知りたかった

:お前らホント欲望に忠実だな 俺も知りたかった しりだけに

:↑お前が知るのはギロチンの冷たさだよ

 

 

 結局ミーアも答えられたのは身長が精一杯だった。しかしそれを本気で不満に思っているのはごく僅かなようで、おおむね和やかな空気が流れているらしい。

 そんなコメント欄の空気にミーアがほっと息を吐くと、ドローンさんたちの手によって新たな質問が表示された。

 

 

Q.ダンムビはダンジョン探索専用なのにダンジョン探索以外の配信が可能なのは何でなん?

 

 

「……この質問を私たちにするの?」

「これは……運営に問い合わせた方が良いのでは?」

「まあ気になるのは分かるし、私も以前調べて理由を知ってるから答えるけど……」

 

 次に寄せられた質問には三人ともが首を傾げた。るぷすは質問者同様に疑問に思ったことがあったため、ダンムビの運営会社でもあるダンジョンテックの社長令嬢、近所のお姉さんのマオに話を聞いてみた。

 曰く、とあるダンムーバーが他の動画配信サイトで流す予定だった動画を、間違ってダンムビで流してしまったことが起因するようだ。その動画は再生数も100万越えという高い人気を誇っていたのだが、投稿主が間違いに気付き、その動画を削除。そして少なくない復活の要望が投稿主と運営に寄せられたため、運営は規約を更新。晴れてダンムビはダンジョン探索専用からダンジョン探索“者”専用へと変更されたのであった。

 ちなみにその投稿主とはまだ無名であった頃の“天誅†斬月”である。むしろこれを切っ掛けに有名配信者への道を歩み出したと言っても良いだろう。

 

「とまあ、そんな感じ」

「へぇー、そんな裏話があったんだ」

「運営さんもかなり柔軟に対応してますね」

「おかげで収益がかなり上がったんだって」

「なるほど、儲かる気配を察知したのね。流石だわ」

 

 

:サスガダァ…

:ダンテクに敵う企業などあるわけが……

:色んなとこを敵に回しそうなこと言うのは止めときな

:おっしゃ! 次行こうぜ次!

 

 

 コメントに急かされたからという訳ではないだろうが、次の質問がタイミングよく表示される。

 

 

Q.三人の癖を教えて下さい。

 

 

「癖……ですか。私はミーナ以外には敬語になってしまうことでしょうか」

「そういえばそうだね」

 

 まず答えたのはミーアだった。るぷすも言われてみればミーアは初対面の時に、自分を小さな子供だと誤解していた時にも丁寧な言葉遣いであったことを思い出す。さて、では自分の癖は何だろうかと考えを巡らせ始めた時、新たに文章が追加表示された。

 

 

Q.すいません。クセじゃなくてヘキの方です。

 

 

「ヘキの方か……」

「ヘキの方か……」

「え……? ヘキ、ですか? え……?」

 

 クセではなくヘキである、という文を見たるぷすとミーナは刹那、己の心と真っ向から向かい合う。オタクたるもの、己のヘキに嘘は吐きたくない。特段オタクではないミーアは置いてけぼりだ。

 

「ちょっと待ってね。出そうと思えばいくらでも出せそうだし、特にこれっていうのを考えるから」

「え……ヘキっていうのはそんなにいっぱいあるものなんですか……?」

「あ、そうか。お姉ちゃんは分からないか……。少し待って。例としてお姉ちゃんにも分かりやすいやつを厳選するから」

「えぇ……?」

 

 

:真剣すぎて草生える

:まあオタク以外にヘキって言っても伝わらないか

:それはそう

 

 

「よし、私はこれで行くわ。お姉ちゃんにも分かりやすく、王道なやつ。────『糸目キャラがここぞという時に開眼するところ』……!!」

「分かる……まさに王道……」

「……あー……そういう、感じの……?」

 

 

:いいよね……

:いい……

:男女どっちもいけるやつだ

:えっちだよね……

:猛者がいるなぁ

 

 

 ミーナが挙げたヘキはるぷすやリスナーにも好評であった。ミーアにも何となく言いたいことは伝わったようで、朧気ながらヘキとは何かを掴みかけているようだ。

 

「柳○教授いいよね」

「いいわよね、柳さ……え、誰?」

「え……?」

「え……?」

「……天才○沢教授の生活」

「……分からない」

「……そっか」

「……うん」

 

 

:草

:空気重くなって草

:俺も分からん

:まあ大分古い作品だからしゃーねーよ

 

 

「……じゃあ次は私で。────『普段きっちりと髪をセットしている男の人の髪が乱れるところ』……。特に普段オールバックとかで、何らかの理由で前髪が『パラ……』ってなったりとか好き」

「ああー! 分かる! 色気が増すのよね!」

「……んんー……?」

 

 

:分かる分かる! 私も好き!

:ワ○ピのク○コダイルとか超メロいよね 分かるわー

:ミーアちゃんはちょっと分からない感じかな?

:逆にミーナちゃんの方はかなり好きっぽいなw

 

 

 るぷすの挙げたヘキはミーナや一部の女性と思われるリスナーに受けたようだ。しかしミーアにはどこが良いのかが伝わっていない様子。これは『男の人』という部分がミーアの好みに合わなかったのかも知れない。

 ミーアは二人の挙げたヘキなるものを例に、自分の心と向き合った。要するに自分が“それ”を目にして気分が上がる、そういった物を挙げれば良いのだろうと結論付けた。では、それは何なのか……一つ、思い付いた。

 

「んー……では、私も何となく思い付いたのを」

「お、わくわく」

「お姉ちゃんのヘキか……聞きたいような聞きたくないような」

 

 

:そりゃ家族のヘキは聞きたくないわなぁw

:でもミーナちゃんは率先して開示してんだがw

 

 

 ミーナが呟いた言葉にリスナーがツッコむも、ミーナはそれを完全にスルーする。というか気付いてすらいない。ミーナはミーアのヘキを聞くのに夢中だ。

 

「えっとですね。────『やんちゃ盛りの男の子が汗を拭う時に、ハンカチとかを使わずに服の裾を持ち上げて、その時に見えるお腹とかおへそ』……とかどうでしょう」

 

 特に何でもないようにミーアはその内容を告げた。

 

「……おおぅ」

「……あ、あー……。うん……なるほど、ねぇ……」

 

 それを聞いたるぷすとミーナは何とも言えない言葉を残す。それを見たミーアは何かおかしかっただろうかと戸惑いを見せる。むしろ戸惑っているのはるぷすたちの方であるのだが。

 

「いや、何というか意外な業の深さに驚いたというか」

「んー……いやでもそっか。お腹はともかくお姉ちゃんはそうなっちゃうよね」

 

 

:おっとぉ……?

:ショタコンだったのか

:分゛か゛る゛っ゛っ゛っ゛!!!

:ショタのおへそ最高っっっ!!

:思ったよりやべーヘキで草

:いやでもこんくらいなら可愛いもんやろ

:私もショタのお腹舐めたいっ! 未発達な腹筋に指を這わせつつおへそのごまを舌で取りたいっっっ!!!

:ちょっと待ってコメントに怖い人たちが集まって来てる

:↑草

:ワロタwww 通報するべきか……?

:一人マジキチで草

:いくら何でもキショすぎて笑うわ

:ちゅーかお姉ちゃんはそうなっちゃうってどういうことや?

 

 

 リスナーの中にはミーアのヘキに強い共感を覚えた者も居たようで、その強烈な変態性を爆発させてくる者も出現した。そのせいでミーナの呟きはごく少数が疑問に思うも答えを得られず、次の質問へと流れて行ってしまうこととなった。

 

 

Q.三人とも可愛いけど芸能界からスカウトとかされたことある?

 

 

「スカウトね。私はあるわよ? コスイベとかで名刺貰ったりとか。まあ自由に活動出来なくなりそうだから全部断ってるけど」

 

 

:おお やっぱイベントでスカウトってあるもんなんだな

:俺の推しもイベントでスカウトされて芸能界入ったんだよなー

:ミーナちゃんは売れるだろうな……

 

 

「私も……一応はありますね。信用出来なくて断りましたけど……スカウトの人、ずっと私の胸見てましたし……やたらと馴れ馴れしかったですし……」

 

 

:ミーアちゃんもあるのか

:信用はね……しょうがないね……

:スカウトマンの奴絶対騙す気満々だったろそれ

:断って正解だわ いやマジで

:でもミーアちゃんを前にしたスカウトマンの気持ちも分かるよ……

:多分身体目当てとかだったんだろうなぁ ミーアちゃん可愛いし言い方悪いけどすげえエロい身体してるし

:枕とかそういうの連想しちゃうよなぁ やっぱ怖いわ芸能界

 

 

 ミーアたち姉妹の話にリスナーも盛り上がる。ミーナの場合にはイベントが絡んだことにより他のコスプレイヤーの話も交えて。ミーアの場合はスカウトマンの態度による芸能界の闇について。

 そして最後にるぷすの場合だ。

 

「私もけっこうされる。……一番多いのはキッズタレントとかそういうのだけど」

 

 

:ファーーーwww

:それは……うぅん……www

:笑うようなことではないんだろうけど……w ごめんねるぷすちゃん……w

:あー やっぱそっち系になっちゃうのか

:でも一番多いって言い方してるんだし普通にスカウトされたこともあるんじゃないか?

 

 

「うん。普通にスカウトされたこともある。女の人だったんだけど、凄い熱量で『あなたなら天下を取れる!!』って捲し立ててきて……」

 

 

:確かにるぷすちゃんならすぐに登り詰めそう

:でもるぷすちゃんは表情がその……ねぇ?

 

 

「私もそう思って断った。実は少し興味はあったけど……事務所に所属したら売れるにしろ売れないにしろ拘束時間が長そうだし、ダンジョンに籠れなくなりそうだし……」

 

 

:あーそっか るぷすちゃんにとってそれはちょっとな

:え 何か問題あんの?

:るぷすちゃんの夢を考えるとダンジョンに入れなくなるのはな

:しかし芸能界に興味あったんだ? ちょっと意外かも

:言われてみりゃ確かに意外だ

:何言ってんだ? るぷすちゃんはちやほやされるの好きなんだからむしろ興味ある方が自然だろ?

:んん~~~っ それは……そうなんですが……

:た 確かに……!

 

 

「ちなみに何でダンジョンに籠りたいのかと言えば……」

 

 るぷすのキッズタレント発言に暗くなっていたコメントの空気も明るさを取り戻していく。そして自分が無表情であることを理解しているからか、向いていないと自覚しており、普通のスカウトも含めて全て断っている。拘束時間についてもスカウトを断る理由の一つであり、るぷすは新規のリスナーたちに自分の夢を話し、皆から理解を得ていた。

 しかし、るぷすにとって一番忌避すべき理由は別にあった。

 

「それに……お化粧とかしなくちゃかもだし」

 

 

:ん? 化粧?

:そりゃ芸能人になったらそらね

:そういやるぷすちゃんって他の二人と違ってノーメイクだよな 化粧嫌いなんか?

:マジだ! ノーメイクだ!

:かーっ! 若いからって! 可愛いからって! 化粧もしないとか羨ましいこってすねぇ! ホント可愛い! 羨ましい!

:私だってねぇ! 私だって若い頃は! ……若い頃は……何でもないデス

:今だけだ! そうやっていられるのも今だけだからなチクショーメェ!

:草

:嫉妬民わらわらで草

 

 

 コメントが燃える。るぷすの美しい容姿に化粧をしていないという事実が炎上を呼んだのだ。しかし、るぷすの言葉に悪意はない。むしろ「化粧をしなければならない」という可能性のことを考え、その眉が僅かに、ごく僅かに顰められているのをリスナーが気付いた。

 

 

:そんなに化粧するの嫌なの?

:嫌そうな顔してる!? るぷすちゃんが!?

:るぷすちゃんの表情に出るレベルで?

:突然のレアな表情に俺氏困惑

 

 

「……実はお化粧にトラウマがあって」

 

 るぷすは化粧に関するトラウマについて話し始めた。それは今から約十年前の話。幼いるぷす────ランは母と共にアニメを見ていた。それは少女がお化粧をして魔法少女に変身し、悪の怪人たちと戦う変身ヒロイン物のアニメであった。

 そのアニメの大ファンだったランは母に言う。「私もお化粧をしてみたい」と。

 しかし、母はそんなランに対してこう言った。「いい、ラン。お化粧って言うのはね、その人をより美しく飾り立てる為の物のことを言うの。足りない美しさを補うための物のことを言うの。つまり、全次元世界一美しい私とその次に美しいランには必要のない物なのよ」……と。

 

「……凄いお母さんね」

「でもまあ私もおかーさんが世界一美人だと思ってる」

「お母さん思いですね……」

 

 

:……凄い母親だ

:これは……ルッキズム的なアレなんだろうか?

:とにかく凄いナルシストなのは理解出来た

:親が親なら……とは言うが るぷすちゃんが今まで見たことないくらい可愛いからなぁ にわかに否定出来ないのが何とも

:確かにるぷすちゃんの母親とかすげえ美人なんだろうなって思う

 

 

 少々話が逸れたが、るぷすは続きを話していく。幼いランは母の言葉を聞いて首を傾げ、そして問うたのだ。「つまり私がお化粧したらおかーさんより綺麗になれるの?」と。

 ────瞬間、今まで笑顔だった母の顔から表情というものが抜け落ちた。「我が娘ながらよくぞ言った。その言葉、私への挑戦と見なす」……母は夫────ランの父に車を用意させ、ランにお化粧体験をさせるべく近場の化粧品店へと向かわせたのだ。

 

「本当に凄いお母さんね!?」

「まさかそうなるとは思わなかった」

「それはそうでしょうね……」

 

 ここでるぷすはあらかじめ用意していたのか、画面外から一枚の写真を取り出し、それをミーアたち姉妹にのみ見せる。

 

「ちなみにこれがおかーさんの写真」

どれどれ────ぇ……えっ!!? これっ、嘘っ!? こん、こんな……え、ちょ、本当に……!!?

……っ!? ぁ、……っ、きれ、なんて……こんな……はああぁぁ……っ!

 

 

:え え ええ!?

:なになになに!?

:ちょいちょいちょい怖いんだけど!? 一体何なの!?

:ミーアちゃん泣いてる!?

 

 

 るぷすの母の写真をミーアたちが見た途端、二人は絶句し、まともな声を出せなくなってしまった。それはるぷすの母が誇る、ある種の人外染みた神域の美しさによって。

 ミーナの頬には朱が差し、思わずるぷすから写真をもぎ取って食い入るように見つめている。ミーアはより深く感じ入ってしまったのか、口元を両手で押さえ、その双眸からは涙さえ流れている。

 るぷすという神の被造物と錯覚してしまう美しい少女を見慣れている二人ですら、写真の女性に対して感動……否、それ以上の()()()()()()を感じずにはいられない程の衝撃。それはもはや美の概念の現身。美の女神そのものと言っても良いだろう存在に思えた。

 

「……で、化粧品店に着いたんだけど」

「そのまま話を続けるの!?」

「はぁー……すごいきれいです……」

 

 二人の様子も無視してるぷすは話を続けようとするが、流石にミーナからツッコミが入って停止してしまう。ミーアはミーアでミーナから写真を受け取り、うっとりとした目で眺めている。

 正直、るぷすにとって二人の反応は予想通りのもの。何せるぷすは母のその美しさから、他人がその素顔を見た瞬間に魅了・軽い洗脳に近い状態になる場面を何度か見たことがあるからだ。なので母が普段出かける時は帽子を目深に被り、大きくて濃いサングラスにマスクに大きなスカーフ(冬場はマフラー)という不審者スタイルを取っている。だが、それでも周囲からは「美人である」という認識をされてしまうという自らの正気を疑いたくなる光景も目にしてきた。

 写真越しで魅了効果は格段に下がるとは言え、母の素顔を見た者が『こうなる』のは予想出来た。それを分かっていてなお、るぷすは姉妹に母の写真を見せた。自分の母はこんなにも綺麗なんだぞと、子供染みた自慢をしたくなってしまったのだ。むしろ写真だからこそ、この程度の反応で済んでいるのである。

 ……流石に、実際に会うとなれば母には不審者スタイルを取ってもらわねばならないだろう。

 

「……で、化粧品店に、着いたんだけど」

「あ、はい」

「すみません、お話に集中しますね」

 

 

:ストロングスタイル……

:つよぉい……

:俺もるぷすちゃんのお母さんの写真見たいな……

:流石に無理やろ

:流石に顔を晒すのは危険すぎるもんね

 

 

 るぷすは話を進めるためにゆっくり、しかしやや力強く続きを話し始めた。流石にそこまでされてはミーナたちも黙らざるを得ない。リスナーたちもるぷすの母の写真が気になりつつもるぷすの話を集中して聞くのだった。

 

「車から降りた途端、私はあまりの気持ち悪さに眩暈がした」

 

 当時の事を思い出したのか、再びるぷすが眉を顰める。かつての幼いランが感じたもの、それは圧倒的な臭気である。

 店から、その周囲から放たれる、人工的で強烈な甘ったるい匂い。それはまだまだ幼く、強い匂いに慣れていなかったランの鼻を刺激するには十分すぎた。ほんの少し嗅いだだけだというのに強烈な頭痛を誘発してくる香水、あるいは化粧品たち。

 ガンガンと痛みを訴える頭はランの視覚にチカチカと火花を走らせ、胃の中の物を急速に競り上がらせる。

 しかし、ランはそれに耐えた。自分のわがままの結果、ここに来ることになったのだ。頑張って我慢してお化粧体験を終わらせよう。……出来るだけ迅速に。そう考えて店内に入る。

 そして不審者スタイルの母が店員にランに化粧を体験させたいと説明し、店はランの容姿を見てそれを快諾。早速皆が見守る中で化粧をされようとしたのだが……。

 まずはさっと洗顔し、スキンケアに入る。当時は冬場であったので保湿に優れた化粧水を選択。次に乳液だ。……この乳液がランには辛かった。ランの優れた嗅覚が甘く、そしてやや強い油臭さを捉える。それが、自分の顔に、べったりと塗られる。

 ……化粧下地、そしてファンデーション。ここでランは限界を迎えてしまった。ばっと顔を背け、床に這いつくばり……周囲の注目を集めてしまった中で、匂いに耐えられなくなり、胃の中の物を思い切り吐き出してしまったのだ。

 

「それ以来化粧品とか香水とかがトラウマになっちゃって。化粧品を見るだけで気分が悪くなって、好きだったアニメも楽しめなくなった」

「それは……辛かったわね……」

「今は大丈夫なんですか……?」

 

 

:思ったよりキツイな……

:そりゃトラウマになるか

:俺も化粧品の匂い嫌いだから分かる

 

 

「匂いは慣れたし、見る分には大丈夫。でも未だにお化粧しようとすると気分が悪くなったりする。何とか慣らそうと思ってこれならいけるかなって買った薬用リップを塗ろうとしたら凄い手が震えた。もうガックガク」

「薬用でもダメなんだ」

「相当に根深いですね」

 

 るぷすは冗談染みた口調で言うが、ミーアたちの声のトーンは暗いままだ。想像以上に根深いトラウマの存在に、友人として気の毒に思ってくれているのがるぷすにも伝わってくる。るぷすはそんな二人に感謝の念を抱き、そして一つ頷く。

 

「じゃ、次の質問に行こう」

「……あー、そうね。そうしましょうか」

「明るい話題が良いですねぇ」

 

 いつまでも同じ話題に拘泥していても仕方がない。と言わんばかりにるぷすは配信を進行させる。ミーアたちもるぷすの意を汲み、次の質問が表示されるのを待つ。

 そして表示された質問は以前の配信を見ていた者ならば納得の質問であった。

 

 

Q.何でるぷすちゃんは魔法に詳しいの?

 

 

「あ、これは私も気になってました」

「本当よね。アンタ魔法使いじゃないのに何であんなに魔法に詳しいの?」

 

 

:不思議よね

:俺も気になってた

:何なら一般の魔法使いよりも詳しくなーい?

:一般の魔法使いって何だよ

 

 

 やはり姉妹やリスナーたちも気になっていたようで、皆はるぷすの回答を待つ。

 

「これは簡単。おかーさんのお友達が魔法使いで、小さい頃に色々と教えてもらってた」

「なるほど、そういう」

「火とか雷とかカッコいいし、頑張れば汎用魔法を改造して『極大魔法かめ○め波』とか撃てるようになると思ってた」

「ふふふ、分かります。憧れちゃいますよね」

 

 

:俺もなー! 魔法使いだったら再現しようとするだろうなー!

:波ー!! とかやりたいよな!

:でも再現するなら魔法じゃなくて気の方じゃない?

:気は遠距離攻撃出来んのや……出来んのや……!!

:マジで!? 遠当てとかないの!?

:お、俺の長年の夢がコメント欄で砕け散った……!?

:ワロタwww ……ワロ…… わァ……ぁ……

:泣いちゃった!

 

 

「しかし随分と魔法に詳しい人に教わったのね?」

「研究者肌の人だから。おかーさんとは結構歳が離れてるんだけど何かウマが合ったとか何とか」

「うーん、一度お会いしてみたいです」

 

 

:研究者肌の魔法使いか……日本人じゃなさそう

:お? 魔法使い差別か?

:いくら何でも敏感すぎだろ

:日本の魔法使いだってヒャッハーだけじゃねーだろ ……多分

:ダンムーバーやってる連中が日本の魔法使いの印象を下げまくってんだよなぁ

 

 

「じゃあ次に行きましょうか」

「どるるるるるるるるるるるる」

「……ドラムロールの真似、上手ですね」

 

 

Q.るぷすちゃんって何人(なにじん)なの?

 

 

「ん? また私?」

「何人……本名からして日本人だと思うけど」

「でも確かに日本人離れした容姿ですよね」

 

 

:日本人離れっちゅーか明らかに外国人だよな?

:何となく北欧っぽいような感じはする

:本名は日本人風なのか

 

 

「一応私の国籍は日本だよ」

 

 

:あれ 結局日本人なの?

:いや 国籍はってことは

:そこを強調するってことは血筋は違うとかか

 

 

「うん。私の両親は外国の出身なんだけど、日本に帰化したの。その後私が生まれたから、私は生まれも育ちも国籍も日本人」

 

 

:なるほど 帰化二世ってやつか

:両親が共に帰化人なのか 何か珍しい気がする

:じゃあご両親はどこ出身なんやろな

 

 

「あ、確かに気になりますね」

「コメントで北欧っぽいって流れてたけど、実際どうなの?」

 

 るぷすの出生が分かり、その日本人離れした容姿の理由に皆が納得をする。そしてミーナによって両親がどこの国の生まれなのか聞かれるのだが、返って来たのは予想外の答えであった。

 

「……分かんない」

「分かんない? 何で?」

「二人とも教えてくれなかった」

「……? なぜ、でしょうね……?」

 

 

:そんなことある?

:何かやましいことでも……いや出身を伏せるやましいことなんかあるんか?

:何かこう……特殊機関の人間とか……

:なるほどあり得る

:ばっかお前そんな訳が……

 

 

「おかーさんに聞いたら、『あなたが大人になって、好きな人と結婚して子供が出来て、お婆ちゃんになって孫が出来て、天寿を全うするその瞬間に教えてあげる』って言われた。理由は分からないけど教える気がないんだと思う」

「ええ……?」

 

 

:お母さん随分長生きする気なんだな……

:↑草

:その発想はなかったわwww

 

 

「おとーさんに聞いたら『大切なのはどこの国の血が流れてるかじゃない。どこの国を自分の心の故郷と定めているかだ』ってほざ……言ってた」

「ほざ?」

「ほざ?」

 

 

:ほざ?

:もしかしてほざいてたって言おうとした?w

:ま まさかるぷすちゃんがそんなわけ……

 

 

 るぷすのちょっとした言葉遣いから両親への感情が見え隠れしているが、空気を読んだのか、ドローンさんが次に表示したのはそんな両親に関する質問だった。

 

 

Q.るぷすちゃんの両親ってどんな感じ?

 

 

「何か私への質問多いね? しかもタイムリーな話題だし」

「正直私も気になってるので逆に助かります」

「むしろ私も根掘り葉掘り質問したくなってきた」

「……根掘り葉掘りってよ……いや、止めとこう。とりあえずおかーさんは自分のことを宇宙一美しい存在だと言って憚らない人、かな。私もおかーさんが世界で一番綺麗だと思ってる」

「そうね。それは私もそう思う」

「……こんな綺麗な人がこの世に存在してるんですねぇ……はふぅ」

 

 

:今ギ○ッチョになろうとした?www

:自重出来てえらい

:そんな美人なのか……

:ミーアちゃん完全にファンになっちゃってない?

:俺も見たい

 

 

「おとーさんは……『俺はフェンリルの血を引いている。そしてその血はお前にも引き継がれているんだ』とか真顔でほざくような人」

「うわっ……」

「マジ?」

 

 

:うっわ……

:キッツ

:ほwざwくwよwうwなw人www

:前から思ってたけどるぷすちゃんお父さんに当たりキツくない?www

:そりゃおめー 自分の親から「俺はフェンリルの血を引く男」とか聞かされたらどう思うよ?

:悪い……つれえわ……

:っていうかミーアちゃんガチで引いてんじゃんwww

:あの「うわっ」てミーアちゃんだったのかw

 

 

「まあおとーさんも凄いカッコいいから普通に好きなんだけどね。はい、写真」

「どれどれ……うわっ! すっごいイケメンじゃない! さっきのお母さんと比べたらインパクトは薄いけど、それでも相当よこれ!」

「……あ、本当ですね。カッコいいです」

 

 

:お父さんも美形なの!?

:いや るぷすちゃんのことを考えればそうか

:美形一家ってことか くっそー羨ましい! 俺もイケメンに生まれたかったな

:何かミーアちゃん反応薄いな?

:やっぱ血統かー ……おかしいな 両親も兄弟もみんな美形なのに何で俺は……

:↑(´;ω;`)ブワッ

:きっとそのうち良いことあるよ……

:ミーアちゃん全然食いつかないね

 

 

 両親への質問へ回答し、姉妹に先と同じく今度は父の写真を見せるるぷす。辛らつな言葉を使ってはいても、父が好きなのは確かなようで、ミーナに褒められた際にはふんすと気分が上がっていた。ミーアの反応が少々気になるが、以前に聞いた彼女の小中学生時代の話を思い出し、そもそも『同年代から年上の男性』に対する信用や信頼が著しく低いのだと一人納得する。それでもミーアも格好良いと言ってくれたので、むしろミーアに対する好感度は更に上昇したるぷすであった。

 

 

Q.ミーナちゃんのコス衣装は全部手作りで販売もしてるって聞いたけど本当なの?

 

 

「お、ミーナへの質問だ」

「コスについてね。まあ基本的にはほとんど手作りで複雑な機構とかがあれば業者に依頼するって感じかしら。今私が着てる『このはのバトルドレス』だと、こことか」

 

 言いつつミーナが襟元に見えないように配してある小さなスイッチを押すと、胸当ての部分が縦に割れて回転し、肩へと移動。装飾過多だった袖が巻き取られ、長袖から半袖に。今回は座っている為に機構を動かすことが出来ないが、ロングスカートがある一定の長さから三つ折りに持ち上がり、ミニスカートに変わるという機能も搭載されている。これには原作ファンのリスナーたちがコメントで沸きに沸いた。

 ちなみにるぷすは配信前の時間に披露され、姉妹が見たこともないようなテンションでミーナの衣装をあらゆる角度から観察した。スマホで写真を何枚も撮った。実は今も隣で密かにテンション爆上げしているのである。

 

 

:うおおおおおおおおお!!?

:すげえええええええええ!!!

:完璧な原作再現!!

:マッハフォームだ!!

:相棒であるライジングビートの音声が聞こえてくるようだ……

 

 

「袖の巻取りは自分で何とか出来たんだけど、胸の部分が上手く回んなくてね。それから販売も本当。多分概要欄にURLが載ってると思うんだけど、そこでオーダーを受けて制作してるって感じね」

 

 ミーナ……美奈は都内の手芸店でアルバイトをしている。そこで店員業務の傍ら、コス衣装の制作をしているのだ。制作した衣装の販売に関しては店長が良い感じに回しているようで、税金やら何やら難しいことは全て引き受けてくれている。そこから諸々の収入を得ているのである。もちろん、バイト代も別途いただいている。

 

「要するにミーナの収入が私たちの生活費というわけなんですよ……ふ、ふふ……私はダメなお姉ちゃん……」

「お姉ちゃーんっ!?」

 

 稼ぎにおいて姉妹は完全にミーナの収入に依存している。無論ミーアもアルバイトをしたり探索で得た素材を売ったりでお金を稼いでいるのだが、二人の収入は正に雲泥の差。一着数万円から十数万円、時に数十万円で販売している衣装をひと月に複数作り上げるミーナの稼ぎは、そこら辺の社会人よりも当たり前に多い。つい先日まで魔法を正しく使えなかった弱小ダンムーバーが敵う訳もないのだ。

 がっくりとうなだれて卑屈に涙を流すミーアは見ていて痛々しくもどこか笑いを誘う。

 

「だ、大丈夫よお姉ちゃん! お姉ちゃんも人気ダンムーバーの仲間入りをしたんだからスパコメがっぽがっぽで私の稼ぎなんてすぐに追い抜くから!」

「ふふ……ダメよそんなリスナーさんたちに失礼すぎる……。そんなお金だけの関係なんて健全じゃない……」

 

 

:馬鹿野郎お前経済ってのはそうやって回ってんだよ!

:早くミーアちゃんに貢がせてくれ!

:おうよ! スパコメ用の資金は貯金してあるんだ!

 

 

 ミーアの熱心なファンが投げ銭(スパコメ)出来る日を今か今かと待ちわびているようだ。真面目なミーアとしてはあまり良い稼ぎと思えないのであろうが、ダンムーバーとはそういう職業なのだ。稼げる内に稼がねばあっという間にまた落ちていく。超ハイリスク超ハイリターンの代表格の職業の一つなのである。

 

「……えっと、次の質問に行ってもいい?」

「お願ーい!」

「ふふ……ふふふ……」

 

 

Q.三人は何か楽器とか弾ける?

 

 

「おお、素朴な質問」

「私はバイオリン弾けるわよ」

「私は……ピアノですね」

 

 

:バイオリン! 何かお嬢様っぽい!

:ミーアちゃんにピアノはぴったりだな 聞いてみたい

:姉妹での演奏聞いてみたいなー

 

 

「るぷすは何か出来る?」

「私はハープ」

「ハープ……ハープ!?」

「ハープってあの……あのハープですか?」

「多分そのハープ。グランドハープっていう大きいハープも弾けなくはないけど、体格的に厳しいから私はもっぱらベイビーハープとかサウルハープっていう小さめのやつを弾いてる。一番好きなのはアイリッシュハープなんだけどね」

 

 るぷすは「こんくらいの大きさ」と、愛用のハープの大体の大きさを指で絵を描くように表す。

 想定外の楽器の種類に姉妹は驚きの声を上げる。コメントも皆揃って意外だと言う声が多い。

 

「ちなみに水樹奈々の『深愛』って曲で使用されてるのはアイリッシュハープじゃなくて『アルパ』っていう南米で独自に変化していったハープの一種で、実は演奏法もジャンルも別物だったりする」

「え、そうなの?」

「……?」

 

 

:あれハープじゃなかったの!?

:いやハープではあるんじゃないか? 色々と変わっていったってだけで

:あれアルパって名前だったのか 個人的にアルパといえばアジールなんだが

:ミーアちゃんが微笑みながら首を傾げておられる

:奈々様は知らなかったか……

 

 

Q.三人は特にこれ! っていう特技はある?

 

 

「ふむ、特技」

「私はこの通り衣装の制作かな。趣味でもあるし仕事でもあるんだけど」

「私は……速読ですかね? 短い時間でたくさん本を読めるからお得なんですよ」

「私がラノベ一冊読み終わる頃には八冊~十冊くらい読み終わってるもんね」

「私の想定の三倍くらい速い」

 

 

:はっや!?

:いくら何でも速すぎやろwww

:どんな本読んでたんだろ?

:ラノベと比べるくらいだから同じカテゴリだと思うが……

:ミーアちゃんがそういうの得意なのちょっと意外かも

:そうか? 眼鏡っ子だぞ?

:何の関係があんだよwww

 

 

「私が灼○のシャ○でお姉ちゃんが境○線上のホ○イゾン」

「ミーナから勧めてくれたんだっけ。面白かったけど分厚くて読みにくかったなぁ」

「……!?」

 

 

:うっそだろwww

:あの厚さのラノベをそんなスピードで!?

:考えてたより十倍以上は速ええwww

:るぷすちゃんお口開いてるw

:表情こそ変わらんが驚いてるのは如実に伝わってくるwww

:フレーメン反応みたいwww

 

 

「で、るぷすは?」

「やっぱりこう……武術とかですか?」

「私の特技は……イラストかな」

「ああ……そういえば以前の配信でも色々描いてるって言ってたっけ」

「どういった物を描かれるんですか?」

「えーっとね……最近完成させたのが……」

 

 

:ほーん?

:イラストなんか

:ゴーレム真っ二つパンチじゃないのか

:ゴブの頭をパーンじゃないのか

:内臓をパーンじゃないのか

:血なまぐさいの止めて?

 

 

「はいこれ」

「────っ!!?」

「────っ!!?」

 

 るぷすが画面外から取り出したイラスト帳。それをぺらぺらと捲り、目当てのページを開き、姉妹とドローンさんたちにそのイラストを見せる。

 それは一人の女性の絵だった。地面に座り、後ろ手に手を付いてやや内股気味に膝を立てて空を見上げており、それを俯瞰した構図で描いたイラストだ。柔らかな笑みを浮かべ、空を見上げる瞳には一体何が映っているのだろう。

 その女性は鈍い光沢の紺色の衣装を身に纏っている。肌にぴっちりと張り付いたそれは湿り気を含んで妖しく水が滴り、豊満な胸部を艶めかしく彩っている。

 大胆に放り出された太腿もまた瑞々しい張りがあり、その柔らかながらも跳ね返してくるような弾力を想像させるに容易な肉感を描き出している。

 すらりと伸びる手足は女性らしいラインを描きつつも、種族の特徴の一つでもあるブヨブヨとした表皮の大きなイボのような物は残っている。

 緑色の肌、禿げ上がった頭、尖った耳……。そこに描かれた人物は……否、人ではない。そこに描かれた魔物こそは、一時期るぷすが探し求めていた希少な魔物。

 スク水・ゴブリンのイラストだ────!!!

 

 

:ぶっふぉwwwwwwwww

:スwクw水wゴwブwリwンwwwww

:うわああああああああああああああああ!!?

:ぎゃあああああああああああああああああっっっ!!!???

:これは大草原

:いやああああああああああああああああああ!!?

:えっっっっっっっっっっろ!!!

:すげえええええwww

:おっほぉwwwww

:あばばばばばばばばばばばwwwww

:だははははははははwww

:wwwwwwwwwwwww

:草

:うめえええええええええ!!?

:ちょwww うっまwwwww もうプロやんけwwwww

:ガチでプロ級なんじゃが!?

:ぶふぉっふふふふふんぐひひひひははははははははっ!! かひゅっくんぐふふはははははははひひひはははっ!! おぼぉびゅふふふぶっ!!

:こ この独特な文字列……! コメント音声入力ニキ……!?

:息……ふひっ 出来 な……っ! んふふふふ……!!

:音声入力ニキー!! 死ぬなーっ!?

:ちょwww

:草草の草

 

 

 ドヤ! と無表情で鼻息を荒くするるぷす。確かにそのイラストの出来栄えは素晴らしいの一言であるのだが、いかんせん題材がとち狂っている。魔物を選ぶのは良い。ゴブリンとて問題ない。だがどうしてよりにもよってスク水・ゴブリンなのか。どうしてちょっとエッチな感じに仕上げているのか。コメント欄は悲鳴と爆笑と称賛で阿鼻叫喚(笑)である。何なら一人死にかけだ。

 

「ぶふふっ! ちょ、おね、お姉ちゃん……!?」

「……っ!? ────……っ!!? ……、────っ!!?」

「先輩が呼吸困難に陥った」

 

 

:ちょwww

:ツボに入ったかwww

:ミーアちゃんが画面から消えたwww 倒れたのかwww

 

 

 ミーアの回復には数分間掛かったのであった。

 

 

Q.浮力の布切れはどうなったの?

 

 

「スク水・ゴブリン繋がりの質問が来た」

「ぷふぅ────ッ!!?」

「おね、お姉ちゃん……っ!」

 

 

:あかんwww ドツボにハマってるwww

:まだまだ連鎖は止まらないぜー!w

:ミーナちゃんも半笑いだwww

 

 

「ちなみに浮力の布切れは加工に時間が掛かるってことで、加工せずに懐に忍ばせて水泳の授業を受けたんだけど……結局先生にバレて没収された。無念」

 

 

:あちゃー

:まあ没収はしゃーないわな 授業に反則アイテム持ち込んだわけだし

:つーか加工しなくても効果ってあんの?

:自在に泳げるようになるわけじゃないが浮き輪くらいの効果はある

:はえー そうなんや

 

 

「次の質問行きましょう。これ以上話を長引かせたら私もつい噴き出しそうになふふふふふ……っ」

「ぷふ────あははははは……っ!」

「二人が壊れた」

 

 

:見事な誘い笑いwww

:遂にミーアちゃんが大笑いしだしたwww

:元凶はるぷすちゃんやろがい!w

:他人事じゃありませんわよ!?www

 

 

Q.何でるぷすちゃんは魔物をパーンさせるの?

 

 

「おっと、真面目な質問が来た」

「真面目……かどうかはともかく、確かに疑問よね?」

「はーっ、はーっ、な、何で、頭と、か身体、が……パーン、するんです……?」

「お姉ちゃんはもう少し休んでていいのよ……?」

 

 

:確かに何でパーンさせるんや?

:というかそもそも何でパーンするんだよ? そんだけ強いってこと?

:そりゃそうだろうけど……そういや貫通とかは見たことないな

:言われてみりゃそうだな 当たった瞬間パーンだわ

:↑当たった瞬間パーンだわ 何かニ○ニコで流行りそうな言い回し

 

 

 ようやく来たまとも(?)な質問に、姉妹だけでなくリスナーたちも更なる疑問を浮かべる。

 

「答えとしては、それが一番確実……だからかな」

「確実?」

「うん。これは百年前の大氾濫の時の話なんだけど……」

 

 そうしてるぷすが語り始めたのは、約百年前、各迷宮から魔物たちが溢れ出した大災害────通称“大氾濫”で得られた魔物の耐久性の話だ。

 当時は日本を含め、各国様々な国が戦争状態にあった。そんな中で溢れ出た魔物たちには銃火器を以って対応がなされた。人間は小さな弾丸でも当たれば行動不能に持ち込めるし、当たり所が悪ければ即座に死に至る。それは魔物も同じだと、当時はそう思われていた。

 だが、ここで想定外の事実が判明した。魔物相手……それがたった一体のゴブリンであっても、手持ちの銃火器程度では致命傷を与えきれないことがほとんどであったのだ。

 それは魔物の外皮や骨の頑丈さを見誤っていたが故に起こったこと。身体に何発の銃弾を放っても、ゴブリンは痛みに声を上げるが、それでも兵に向かって突撃し、幾人もを血祭りにあげた。頭部に弾丸を受けようとも、狂ったように血走った目で標的を定め、何人もを屠ってみせた。

 たった一体のゴブリンを倒すのに重機関銃や、ロケットランチャーが使用されたなんて話も語られるくらいだ。そんな魔物が、夥しい数を伴って迷宮から溢れ出てくるのである。

 彼ら魔物を打倒するのに、大量破壊兵器すら使用された。何の誇張も無しに、世界は一度魔物に滅ぼされかけようとしていたのだ。

 

「で、そんな頑丈な魔物を倒すのに手っ取り早いのが、まず首ちょんぱ。ほとんどの魔物は首が取れたら普通に死んじゃうみたい」

「ほとんど……ってところが怖いとこよね。じゃあパーンさせるのも?」

「そうそう。魔物は外皮や骨が頑丈みたいなんだけど、内臓はそれほどでもないみたいで。まあそれでも人間よりはよっぽど丈夫なんだけど……私の場合は衝撃を体内で乱回転させて、その圧力で吹き飛ばしてる感じ」

「体内で衝撃を乱回転……?」

「うん。私の武術の流派は回転の力を利用するというか、味方に付けるというか……そういうのだから」

 

 

:回転の力を?

:そういやボスゴーレムとの戦いで何かくるくるしてたな

:あー 確かに

:言われてみりゃ一般ゴーレムも攻撃食らったら捻じれたみたいになってたな

:一般ゴーレムって何だよ それはともかく確かにこう内側(?)に回りながら地面に叩きつけられてたな

:ボスゴーレムも真っ二つになったあとギュルギュル回ってたっけ

 

 

 るぷすの言う回転の力。それを想起させる様々な事柄が先の稼働石像(ゴーレム)の巣窟での配信で見られていた。

 

 

「具体的にはどんな武術なの?」

「んー……っと。『この世界は小さなものから大きなものまで、回転の力によって支えられている。小さくは原子や電子、分子。大きくは星の自転や公転、太陽系や銀河系。そして形なきもの、命も(めぐ)り、廻っている。我らが流派はその大いなる回転の力を借り受けるものだ』……って、おとーさんが言ってた」

「な、何か難しいですね。哲学的というか……」

 

 

:何か武術の話っぽくないな

:いやでも突き詰めていけばそういう話にもなるんじゃないか? 知らんけど

:説明的にお父さんが師匠なんかな?

:中国拳法なんかはかなり理屈っぽいよな そんな感じか?

:つまり……どういうことだってばよ?

:要するに遠心力ってことか?

:……黄金の回転エネルギー?

:そ れ だ ! !

:馬鹿野郎お前説明からして全然違うだろうが

 

 

 

「うーん、私もほとんど感覚で会得したから説明が難しくて……」

 

 

 るぷすの語る流派の概要。どこか哲学的な内容にミーアをはじめ、リスナーたちも疑問と困惑を隠せない。当のるぷす本人もあくまで感覚的なことしか語れず、詳細にどのような力学が働いているのかを説明することは出来ないようだ。

 

「何というか……感覚的な話で言えば、追い風を受けるとか、坂道を駆け下りるみたいな……」

「なる……ほど……?」

「んー……何か補助を受けてるっぽい感覚ってことかしらね?」

 

 

:ほーん?

:何か凄いようなそうでもないような

:でもるぷすちゃん上空から一瞬で急降下してたし それを考えたらとんでもないんじゃないか?

:確かに

:俺も習いてえなぁ

:そんな凄い効果なのにみんなも知らないみたいだしかなりマイナーな流派っぽいな

:流派名はなんだろう?

 

 

「マイナー……というか、門外不出で一子相伝っぽい? おとーさんも親から教わったって言ってたし」

「一子相伝……!」

 

 

:フェンリルから教わったのか……随分器用なフェンリルだ……

:www

:そういやそういう設定だったなw

:いや待て! もしかしたらそのフェンリルは人型で狼耳・銀髪・褐色のムチムチボインなお姉さんだったんじゃないか!?

:……!! 可能性はある!!

:あるあ……ねーよwww

 

 

「ところで門外不出となると配信で言及して良かったんですか? そういうのって知られること自体ダメなイメージがありますが……」

「一応配信を続けることになった時点で確認は取ってある。何なら『お前から誰かに指南してやってもいい』って言われた」

「あら。意外と軽い?」

 

 

:んんー? 禁止とかはされてないのか?

:門外不出の一子相伝で? どうなんだろうな ありなのか?

:まあ北○神拳も案外ゆるゆるだったし大丈夫なんじゃない?

:ああ……実例があったか

:実例か? それは本当に実例か?

:そうかな……そうかも

 

 

「じゃあ私やお姉ちゃんも習ったり出来るんだ? 流派……というか武術名かしら? なんて名前なの?」

「教えてもいいけど……身体に痣とか出来たらコスプレしにくくない?」

「この話は無かったことにしてちょうだい」

「あっはい」

 

 

:草

:判断が速い

:これには鱗○さんもにっこり

 

 

「で、武術名だけど」

「うんうん」

「……何故かちょっとドキドキしますね」

 

 門外不出、一子相伝とされるるぷすの武術の秘密のヴェールが剥がされようとしている。そのことにミーアはどこか暗い好奇心が、背徳感が満たされるような感覚を覚えた。

 湖水姉妹やリスナーたちからの期待、それに応えるべくるぷすは口を開く。

 

「────天地廻輪命環流(てんちかいりんめいかんりゅう)。それが私が修めた武術」

 

 

 

 

 

 

 

 

※おまけ※

 

 

ラン:好きなロボット物はスーパー系。王道の熱血系ストーリーを好む。必殺技は大剣でぶった切るのがジャスティス。敵をやっつけてヒロインと結ばれてハッピーエンド!

 

美奈:好きなロボット物はリアル系。ス○ークジ○ガンの戦闘に脳を焼かれて以来、名もなきエースやベテランが駆る量産型のカスタム機にハマる。

なお、ストーリーについてはリアル系にありがちな複雑な人間関係による恋愛模様を楽しんでいる節が強い。

 

美亜:ロボットアニメは全部ガ○ダムだと思ってるタイプ。

 

 




お疲れ様でした。

何でこんなに長くなったんだ……?
どうでも良いですが、私のヘキの一つは『短髪キャラの長髪化』です。
十年後XANXUSとか勇気爆発状態のイサミとか九千年老いた無惨とかNEO宮沢喜一とか……男ばっかり……だと……?

とりあえず今回でラン/るぷすの武術名発表です。うーん、もうちょっとひねりが欲しかったところ。回転だけに。()


次回はミーア単体での配信をやってみようかな。

それではまた次回。
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