低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記 作:タナボルタ
今回もダンジョンに潜る話です。
作中の季節は初夏と言ったところ。
……しかし地の文とコメントのバランスが全然掴めませんね。ついついコメントを増やしちゃう。
それではまたあとがきで。
今日も一人、るぷすはダンジョンを探索する。
今回訪れたダンジョンは気温が低く湿気は高く、辺りの岩は苔むしている。天井を見上げれば氷柱のようなものが形成されているが、その正体は氷ではない。
「配信よろしくね」
指先で傍らを飛ぶダンジョンドローンを撫で、指示を出す。数秒の間の後、今回も異常なく配信が開始された。
「わっしょいどもどもおはがるるー。美少女
:おはがるるー
:こんるぷすー
:こんるぷ……ん?
:こんる……あれぇ?
:毎度の挨拶も安定しないなぁ
「今回は夏場に嬉しい涼しいダンジョンにやって来たよ。どこか分かるかな?」
るぷすはドローンのカメラに鼻先がくっつきそうになるぐらいに顔を近付け、クイズを出した。ドローンはるぷすから距離を取り、ゆっくりと旋回しながらダンジョン内部の様子を映す。
:ああー! もっとるぷすちゃんのドアップが見たかったのにー!!
:カメラさんもっかい! もっかいるぷすちゃんに近寄ってー!
:鍾乳洞? ってことはスライムの巣穴かな?
:こんだけ広いと怪粘菌の巣窟の方だな
:相変わらず
「ん、正解。今回は“C級ダンジョン”の
るぷすは前回の
しかしるぷすはそんな寒さを感じさせないような足取りで奥へ奥へと進んでいく。ある程度の技量を持ったダンジョン探索者には、この程度の肌寒さなどあってないようにする技術が存在する。そしてるぷすはその技術を意識せずとも行使できるほどの実力を持っているのだ。
:今回もドロップ狙い?
:スライムのドロップ……?
:んー 調合に使える素材がたまに落ちるとかは聞いたことあるけど……
「あ、今回はドロップアイテム狙いじゃないよ」
:違うのか
:じゃあなんやろ?
:スライムと戯れに来たとか?
:ふむ……るぷすちゃん……スライム……ドロドロ……ひらめいた!
:通報した
:通報した
コメントの疑問に答えたるぷすはキョロキョロと周囲を見回しながら進む。そして目に入ってきた変態コメントを見て「ふむ」と息を吐いた。
「実はそれほど間違ってもない」
:え
:えっ
:エッッッッ
:ほほう 服を脱ぐからちょっと待って
:脱wぐwなw
「実は今回、スライムをぼこぼこにしに来ていたりする」
:ほーん?
:何で?
るぷすの目には炎が宿っていた。それは復讐の炎だ。
それはまだ配信者となる前のこと、戦闘はせずに単純にダンジョン内を散策していた時のことだ。るぷすの前に一体のスライムが現れた。その時のるぷすはお気に入りのフリルがたくさん付いた白のブラウスと黒のスカートでお洒落をしていた。そして飛びかかってきたスライムをついつい倒してしまい、お気に入りの服たちはスライムの粘液まみれになってしまったのだ。
スライムの粘液による染みは落ちなかった。そうしてるぷすはお気に入りの服と泣く泣くお別れをしたのである。
「そんなわけで私はスライムを許さない。あのブラウスとスカートの仇を今こそ取る」
拳を握り締めてそう話するぷすにコメントは疑問を呈した。
:なるほど(*´Д`)ハアハア
:しかし何でお気に入りの服のまま探索したの? (*´Д`)ハアハア
:確かに疑問やな(*´Д`)ハアハア
:……粘液まみれのるぷすちゃん……(*´Д`)ハアハア
:お前ら全員通報した(*´Д`)ハアハア
「ん? だって私は美少女だし」
:……???
:人間が理解出来ない超理論やめーや
:確かに美少女だけどもw
「それに私は学習出来る美少女。それ以来ダンジョンに入る時は汚れてもいいようにTシャツとスパッツにしてる」
:サスガダァ……
:学習出来てえらい
:るぷすちゃん天才! 美少女!
「むふー」
:“無”のドヤ顔いただきましたぁ!
:無表情だけど可愛い
:可愛いけど色んな意味で心配になってくるな
コメントで褒められて気分よく無い胸を張るるぷす。そうしてずんずんとダンジョンを進んでいくと、ようやくお目当ての相手が現れた。
「む、スライム……!」
るぷすの前方十メートルほどに、青いぷるぷるとした球体が現れた。大きさはおおよそ二十センチメートルといったところ。サッカーボールと大体同じくらいの大きさだ。
エンカウントしたのはRPGなどでおなじみの雑魚モンスター、スライムだ。ちなみに作品によって強さが大幅に変わり、物理攻撃が効かず、酸などで人体を溶かしてくる悪魔と化すこともある。
この世界に於けるスライムは大半が雑魚同然の魔物だが、高ランク帯のスライムはベテラン探索者でも嫌厭する難敵となるのだ。
:本 日 の 犠 牲 者
:頑張れスライム! るぷすちゃんを粘液まみれにするんだ!
:気持ちは分かるが向こうを応援するなw
「きゅっぷ!」
スライムはるぷすを認識したのか、身体を震わせてぽんぽんと跳ねる。突進攻撃の事前行動だ。タイミングが分かりやすく、初心者でも対処が容易なこの突進だが、当たればそれなりに痛い。ただの一般人ならば骨の一本~二本は容易に持っていかれるだろう。
「きゅいいいっ!」
雄叫びなのか、それとも摩擦音なのか。スライムは甲高い音をダンジョン内に響かせながらるぷすに渾身の突進をお見舞いする!
「ほい」
「……きゅ?」
:あ
:あら?
:……ん? どうやってんだこれ?
:え 掴んだ? スライムを?
るぷすはスライムの突進を
「 つ か ま え た 」
「きゅ……っ!?」
手の中のスライムに、るぷすがニタァと粘着質で邪悪な笑みを浮かべて見せる。
:!? る るぷすちゃんが……
:るぷすちゃんが……笑った……!?
:るぷすちゃんが初めて“喜”の感情を見せてくれたぞー!!
:邪悪な笑みで草
:こ ん な 喜 が あ っ て た ま る か
:……それでも可愛いって逆に怖さを助長させるんだなぁ
るぷすは両手に更なる
スキル『気功術』────それがるぷすの有している探索者としてのスキルだ。探索者になる者にはスキルが宿る。るぷすの気功術は身体能力を始め、様々な恩恵を齎してくれる。スライムを捕まえていられるのも、高い体温を保っていられるのもこれのおかげだ。
「ふふふ……今こそブラウスとスカートの仇を取る。喰らえ、夏祭りで子供たちが遊んでるところを見て思いついた必殺技!」
「きゅい!?」
:!?
:!?
:どんな思いつき方だ!?
:ほんとに必殺なの?
るぷすはスライムを右手に持ち、大きく振りかぶる。その際に左足を天へと届けと言わんばかりに真っ直ぐに振り上げた。
:!?
:!?
:!?
────るぷすのドローンは優秀である。いつもるぷすが良く映るように、配信映えするように、射角を変え、距離を変え、ピントやら明度やらフレームやらモザイクやら編集やら、様々な処理をこなしてきた。
今回ドローンはるぷすがスライムを右手に持った瞬間に側面に移動し、左足を大きく振り上げるところを煽り気味の正面から配信に流した。スパッツ越しとはいえ、本来は隠れていて見えない部分が丸見えのベストアングル。
ぷっくりとした大きめのお尻やムッチリ肉厚なフトモモが視聴者のパソコンモニターやスマホ画面にばっちりと映し出された。
:!?!?!?
:うほおおおおお!!
:やったあああああ!!
:おおおおおおおおおおお!!
:ほあああああああああ!!
:ドローンありがとおおおおおおおおお!!
コメントに流れる大歓声。るぷすはそれを意図的に無視してスライムを思い切り投げつける。
「おらー!」
威勢が良いのか気が抜けているのか、絶妙に二つが混じり合った声を上る。瞬間、キュボッ!! という音を立て、スライムは時速約二百キロメートルのスピードで壁に叩きつけられ、爆散した。
:ヒエッ
:はっっっや!
:壁がびっちゃびちゃ
:……スライムって結構重量あったよな?
:それがあのスピードってことは……
スライムは半液状生物であり、それだけ重さがある。先のスライムだとおおよそ五~六キログラムといったところだ。それがあの速度で飛んでいく……恐ろしい話だ。これがるぷすの対スライム用の必殺技。
「……必殺、『水風船』……!」
るぷすは満足そうに必殺技名を告げた。
:水風船?
:あー 確かに水風船だわ
:俺も子供の頃に友達と投げ合ったりしたっけ
:なるほど だから夏祭りの子供たちで思いついたのか
「仇は取った……これからは単純にストレス発散タイム」
:おっと?
:正体現したね
:元々ボコボコにしに来てんだよなぁ
「ふっふふーん♪」
:鼻歌きゃわわ
:歌みたも投稿してくんねーかな
:ご機嫌なのに無表情なの草
:“無”の鼻歌いただきましたぁ!
その後もるぷすはスライムを見付けては水風船として壁に叩きつけては壁の染みにしていく。それは正に見敵必殺。「サーチアンドデストロイ。サーチアンドデストロイだー」と、某漫画の名台詞も呟きだす。
:しかしるぷすちゃん身体柔らかいね
:確かに あんなに足上がるのとか大リ○グボールみたいだった
:俺はポ○モンを思い出したな
:……(女子アナを思い浮かべたのはワイだけやろうし黙っておくやで)
:黙れてない黙れてないw
「参考にした投球フォームは飛○馬でもル○ナでもないんだけどね。ちなみに番○蛮でもないよ。女子アナさんは……分からないけど」
:!?
:おっと???
:これは……色々と話が変わってきますなぁ
コメントに出てきたアニメ・漫画・ゲームのネタに即座に返するぷすに視聴者がざわつきだす。ポ○モンはともかく、るぷすが口にしたキャラクターが登場する作品は今から何十年も前の物だ。
:るぷすちゃんって意外とアニメとか詳しいの?
「私も超オタクだよ? ワ○ピースとか全巻持ってるし」
:んん~~~~~~っ!
:どっちだ……?
:いやでも百巻以上集めてるなら本物か……?
:そもそもこのネタを知ってる時点でガチじゃないか?
「クッキ○グパパも全巻持ってるよ」
:本当に話が変わってくる!?
:この話題でそれチョイスする!?
:ちなみに一番好きな漫画は?
「ドラ○ンボール」
:ああー……何となくるぷすちゃんっぽい
:確かにぽいな
:るぷすちゃんにぴったりっぽい!
:ぽいぽーい!
「艦○れは……どっちかと言えば時○派かな」
:これマジもんかな
:思ったより色々知ってて草
:これからの配信が更に楽しみになってきやがった……!
るぷすは視聴者たちとオタク談義をしながら探索を続ける。壁の染みが二十を超えた辺りでるぷすはようやく満足したのか、そろそろ配信を終えようとしていた。そんな時、とあるコメントがるぷすの目に留まる。
:しっかしるぷすちゃんも大概体力お化けだな
:逃げたスライムを追っかけて走り回ってたのに息一つ乱してないもんな
「まあ私は美少女だから鍛えてるし、体力とかは自信あるよ」
:美少女と体力に一体何の因果関係があるんだ……?
:普段どんなトレーニングしてるの?
「ん? んー……」
頤に指を当てて考え込むるぷす。ドローンは斜め四十五度の角度からそれを映し、コメントにて称賛される。ややあって、るぷすはカメラの向こうの視聴者に次の配信の内容を告げる。
「次の配信は私の家でトレーニングしながらの雑談配信にしようかな」
:おお!?
:初めての雑談!
:しかも運動しながら!?
:おいおい そろそろ服を着ようと思っていたのにまだまだ着れないじゃないか
:お前はさっさと服を着ろwww
:てかマジで脱いでんじゃねーよwww
「質問とかにも色々答えようと思うから、何か聞きたいこととか考えといてね」
:マジか!?
:うっひょい次が楽しみ!
:あんま変な質問はしないようにしないとなぁ……ぐふふ
:ほんとに分かってんのか?w
「それじゃ今回もご視聴ありがとうございました。アリーヴェるぷすー」
:アリー……なんて?
:毎回毎回テキトーな挨拶だなぁw おつでしたー
:そろそろちゃんとしたの考えようぜw 乙ー
:でもそんなとこも可愛い! アリーヴェるぷすー
:さよならー
:おつっした
:いやー今回は神回だったな おつです
今回の配信も無事終了。ドローンもウエストポーチに仕舞い込み、雑談配信について思いを巡らせる。
「……オシャレってした方が良いのかな? でも身体を動かすし……うーん……」
抱いた疑問は年相応の可愛らしいもの。あまり動きにくい物は着たくないし、かといっていつもの服装も味気ない。るぷすの悩みは家に帰って風呂に入り、眠りに就いて次の日になっても答えは出ないのであった。
なお、今回の配信も何故かグロテスク規制を受けた。スライムとは言え、生物が爆散しまくったのがいけなかったのかもしれない。
後日るぷすは「流石にこれがグロ規制になるのはちょっと……」とダンムビの運営に異議申し立てを行うことになるのであった。
お疲れ様でした。
ちなみにですがるぷすは『美少女が注目を集めてしまうのは当然のこと』という考えを持っているので“見られる”ことに関しては大分ガードがゆるゆるです。「見えちゃったのなら仕方がない」、みたいな感じですね。
しかし羞恥心は普通に持っているので下着などが見えてしまえば恥ずかしがるし、セクハラコメントなどには嫌悪感を抱きます。
例えば下着が見えたとしてコメントでそれを喜ぶのはOK、もっと見せろと言ってくるのはNGという価値観です。
そろそろキャラを追加していきたいけどどうしようか……。
それではまた次回。