低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記   作:タナボルタ

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大変お待たせいたしました。

アイドル……一体何者……!?

それではまたあとがきで。


第二十二話『アイドルとコラボ』

 

 七月も半ば、もうすぐランが通っている高校も夏休みに入る。夏休みに入れば長時間ダンジョンに潜り放題であり、“身長を伸ばす”という自らの夢を達成するのにも大きく寄与してくれることだろう。

 尤も、夏休み中にも登校日が設定されているし、宿題や()()()()()()()()()()()友人たちとも遊ぶ約束があるために四六時中、というわけにもいかないが。

 さて、ではそんな大いに楽しみな夏休みが迫る中で、現在ランがしていることといえば。

 

「それじゃあ私が話を振ったらみんなが登場ということで」

「はーい」

 

 C級ダンジョン『豊穣の森』での配信準備だ。今回はチャンネル登録者がまた大幅に増えたこと、自分の学校の問題が一部解決したこと、新たに友誼を結んだ者たちが豪華ゲストとして出演、ということで、ランも中々に機嫌が良い。表情はいつもと変わらぬというのに、()()からは「今日は機嫌が良いね、何か良いことあった?」と聞かれる程度には分かりやすかったようだ。

 ランが意識を配信に切り替える。いつものようにドローンさんを一撫でし、今回も配信スタートだ。

 

「またもや自然の中からこんるぷすー。美少女ダンムーバーのるぷすです。今回も豊穣の森に来てるよ」

 

 

:こんるぷすー

:きちゃ!

:こんるぷす

:こんるぷすー!

:始まった

:ひゃっはー! るぷすちゃんが元気そうで良かったぜー!

:足大丈夫?

:こんー 怪我治った?

 

 

 高速で流れていくコメント。るぷすへの挨拶に加え、前回の配信で負った怪我に言及するものも多くあった。ダッケルにて今回の告知に加えて怪我が治ったことも報告しておいたが、やはり実際に確認するまでは安心は出来なかったようだ。

 ちなみに脚の写真をダッケルに上げようかと美奈に相談した際に自撮り写真──太腿がほぼ丸出しのルームパンツを穿き、太腿から爪先までの脚全体を俯瞰して映した写真──を見せたら、「いかがわしい真似は止めなさい!」と半ば本気で怒られたもよう。

 るぷすは脚の具合を確かめるようにたしたしと地面を軽く踏みつける。

 

「脚の怪我はこの通り完全に治ってるから安心してね。それで今回の配信なんだけど、事前にダッケルで告知していたように豪華ゲストとのコラボ配信になる。……まあ、ゲストの想像はついてると思うけど」

 

 

:おほー! るぷすちゃんの足踏み!

:俺も踏まれてぇなぁ

:豪華ゲスト……! 一体何い☆りっぱーなんだ……?

:とらい☆りっぱーとのコラボきちゃ!

:ついに本物の芸能人とのコラボか……以前の底辺グロ配信時代からは考えられんな

:むっちりなふとももが美味しそうだぜー!

:配信始めてから二か月くらいか? そう考えたらとんでもない速さのサクセスストーリーだな

 

 

 変態的なコメントも流れる中、とらい☆りっぱーとのコラボを確信したコメントや、るぷすの成功の速さに感心するコメントも見られる。

 一通りコメントを眺めて一つ頷くと、るぷすは視線を画面外に向ける。

 

「それじゃあ、ゲストの皆さんどーぞー」

 

 と言いながら、右手をピッと前に伸ばし、左手を腰に当て、すすす……と後ずさりして画面から消えた。

 

 

:ダンディ!?

:ダンディ坂野じゃねーか!

:ダンディ坂野www

:るぷすちゃんダンディ知ってんの!?

 

 

「……ど、どーもー! 私たち、“とらい☆りっぱー”です!」

 

 るぷすのネタに少々虚を突かれたのか、やや戸惑ったようにつまりながらも今回の豪華ゲスト、とらい☆りっぱーの三人が画面に入ってくる。

 

 

:とらい☆りっぱー!!

:やっぱとらい☆りっぱーだ!

:みんな怪我が治って良かった

:安心したわ……

:うひょー! 推しと推しのコラボが見られるなんてー!

:三人も怪我が治ったようで何より

:ダンディネタのせいか若干勢いがwww

:るぷすちゃんのせいでとらい☆りっぱーが困ってるでしょ!

:ダッケルで見たけどホントに治ってるみたいだな 良かった

 

 

「るぷすって本当に私たちより年下なのかしら……」

「何か色んなこと知ってるよねー!」

「サブカルとかも詳しいよね」

「ふふふ……遂に私も有名人とコラボ……自己顕示欲が満たされまくって脳汁が凄い……」

「なんかダメな感じに震えてる!」

「BANされたらどうする気よ!?」

 

 とらい☆りっぱーはるぷすを追いかけ、三人で囲む。左右に理央と来夏、そして後ろに千華だ。千華はにこにこと笑顔でるぷすに腕を回し、軽く抱き寄せる。身長差は頭一つ分と言ったところであり、丁度るぷすの後頭部に千華の胸が当たる位置だ。

 それはそうとるぷすが色々とダメな感じにキマってしまい、無表情だというのに放送事故寸前である。

 

 

:ちょwww

:あら^~

:いいですわゾ^~これ

:脳汁キマってんねぇ!

:浮気か……?

:千華ちゃんにっこにこ

:ミーアちゃんとミーナちゃんが黙ってねーぞ!

:勝手にカップリングすな

 

 

 女の子同士の絡みが好きな御仁からのコメントが増え、何故かミーアたちの名を出すものも出だす。ついでにダメなるぷすにも言及と、中々の混沌ぶりだ。

 それはさておき、るぷすはその状態のままで今回の配信の内容を説明する。

 

「今日の配信はとらい☆りっぱーの特訓回。前後編に分かれてて、今日は三人の戦い方を見て、明日の後編で指導をするって感じになるのかな?」

「よろしくお願いします、るぷす先生」

「るぷす先生おなしゃーす!」

「まあ武器の扱いに関してるぷすはノータッチなんだけどね」

 

 

:るぷす先生回だ!

:でも三人の武器についてはなんもしないのね

:るぷすちゃんいっつも素手だしな

:じゃあ何を指導すんのよ?

 

 

 雑談を交えつつ、四人は森の中を進む。鳥の羽ばたく音、虫の鳴き声、獣の動く音などが聞こえてくる。森の中だからか、気温はダンジョン外と比べても低く快適だ。るぷすたちだけでなく、ダンジョン内に生息している魔物や()()()()()()()も過ごしやすいだろう。

 

「何か今日は穏やかだね」

「配信前にひと暴れしたしその影響じゃない?」

 

 そう。とらい☆りっぱーは配信前に一度各々の戦い方をるぷすに見てもらっている。なぜ配信でそれをしなかったのか? それは、三人の戦い方が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であったからである。

 

「ふむ。それじゃあ魔物が出てくるまでの暇つぶしでクイズを一つ。この豊穣の森で、一番繫栄していると言える魔物はなんでしょう?」

「お? 一番繁栄してる魔物?」

「……え、何だろう。トップ種族はラミアだけど……」

「でもラミアは個体数は少なかったはずよね? 卵はいっぱい産むけど成体になるまで育ち切るのが少ないとかで」

 

 

:うーん?

:何やろな 虫系の魔物……は他の餌にしかなってないし

:アラクネは強いけどラミアと同じく個体数少ないしな

:数だけならゴブリンか?

:確かにゴブはどこにでもいるけど森の中で最弱じゃん それならスライム……もちょっとな

:文化的な生活してるってんなら意外とオークとか あいつら綺麗好きだし

 

 

 るぷすが出したクイズはリスナーたちも交えて盛り上がった。強さで言うならばラミアかアラクネ、数ではゴブリン、文化ではオークなど、様々な意見が飛び交っている。このクイズで重要になってくるのは『何を以って繁栄とするか』にあるだろう。

 

「……とりあえず私たちの答えはオークにしたわ。リスナーの意見を採用ね」

「清潔感は大事っしょ」

「では答え合わせ……」

「ごくり」

「どるるるるるるるるるるっ」

 

 

:ドラムロールwww

:俺これ出来ねえんだよな

:俺の意見採用された!

:無表情でドラムロールおもろい

 

 

「でんっ。正解はゴブリンでしたー」

 

 るぷすは「わー」と両手を上げて答えを発表する。しかし、その答えにはあまり納得できない者も多いようだ。

 

 

:えー

:ゴブはないじゃろ

:ゴブリンにそういうイメージないな

:何だろう 嘘吐くの止めてもらっていいですか?

:何かそういうデータあるんですか?

 

 

「ふむ。じゃあ何でかと言うと……」

 

 るぷすは少々周りを見回すと、地面に落ちていた手頃な大きさの石をいくつか拾い、ジャグリングをしながら解説していく。

 

「この豊穣の森はそれぞれの種族が縄張りを形成していて、その縄張りに他の種族が入り込んだら当然狩られちゃうわけなんだけど……ゴブリンだけは例外。そもそもゴブリンは独自の縄張りを持ってない」

「そうなの?」

「うん。と言うのも、ゴブリンは全ての種族と共存・共生している。だからゴブリンは他の種族に狩られず、この豊穣の森の全域に生息してる。どこに行ってもゴブリンが居るのはそういう理由」

 

 

:へー そうなんか

:確かに森のどこに行ってもゴブリンの姿を見るんだよな

:ジャグリング上手いな

:縄張りが点在してる森の中でそれは確かに異常なことだわ

:何で急にジャグリングを?

 

 

「ゴブリンの役割としては……何て言ったらいいかな? 奉仕というかお手伝いさんというか……。狩りに行ったり縄張り内の整備をしたり、子供の面倒を見たり……。時には異種族間で繁殖まで行うみたいだよ」

「うげ、マジで?」

「あー、そういえばゴブリンって何故か色んな魔物と子供作れるんだっけ」

 

 

:不思議だよな

:ゴブリンの役割はご奉仕か……

:つまりゴブリンはメイドさんだった……?

:や め ろ

:うぼぇっ!

 

 

「何で異種族と繁殖出来るのかだけど、どうもゴブリンは外部からの影響による遺伝子の変化が異常に起こりやすいみたい。相手の体内で、自分の体内で()()()()()()()()()()に近い形に変化することで繁殖を可能にする……とか何とか。でもたまにゴブリンの特徴が強く反映された個体も生まれてくるんだって」

「うーん、さすがるぷす先生。物知りだ」

「どっからそんな知識を得てくんのよ?」

「じゃあゴブリンの派生種が異常に多いのもそれが原因なのかな?」

 

 るぷすの解説に感心しきりのとらい☆りっぱー。そこで千華がぽつりと呟いた疑問にるぷすが答える。

 

「そうみたいだよ。例えばゴブリンは自分たちが使う物とは明らかに違う素材……衣服とか、そういった物を手に入れると遺伝子が刺激されて、それに適した変化を起こす。……この間の配信でも話題に挙げたけど、水着を拾ったらスク水・ゴブリンになるとか。ちなみにだけど、そういう衣服によって派生種に変化したゴブリンたちのことを纏めてコスプレ・ゴブリンと呼んだり」

「噓でしょ!?」

「他にもブルマー・ゴブリンとか巫女服・ゴブリンとかセーラー・ゴブリンとか」

 

 

:うわあああああああっ!!?

:そんなのが居るなんて知りたくなかった!!?

:おぼろしゃああああっ!!

:地獄かよ……

:るぷすちゃん参考に今度イラスト描いてみて

:なにリクエストしてんだてめえええっ!!!???

:やめろおおおおお!!

:……そうか 俺が以前見たあれは幻じゃなかったのか

 

 

 コメント欄で悲鳴が上がった。以前るぷすが披露したスク水・ゴブリンのイラストがトラウマになっている者も多いようで、リスナーの一人がコスプレ・ゴブリンのイラストを描くように依頼すると、それを他のリスナーが必死に止めに掛かる。今回のことでるぷすが新たにコスプレ・ゴブリンを描くことはない。何故ならば既に何十枚ものイラストが完成しているからだ。今後、適当なタイミングで披露されることになるだろう……。

 

「さて、話が逸れちゃったけど。数が多い、他種族と共存・共生している、繁殖も出来る……。言わば、ゴブリンの縄張りは()()()()()()()()()。これが私がゴブリンがこの森で一番繁栄しているとする理由」

「確かに、それなら一番繁栄してると言えるのかも」

「意外だった」

「……ちょっとストップ」

「……そろそろね」

 

 ちょうどクイズの答えが出たところでるぷすが三人に声を掛け、足を止めさせる。三人も何故止まったのかを察し、各々の得物に手を掛ける。と、前方から人型で二メートルを優に超える巨体を揺らし、筋肉質な魔物が姿を現した。赤茶色の毛皮を加工した原始的な衣類を身に着けた灰色の巨人、トロールである。

 

「でっかい」

「トロールか……のろい分ラミアよりはマシだけど」

「こいつのパワーも厄介だよねー」

「でも三人なら大丈夫」

 

 トロール。豊穣の森に生息しているC級の魔物の中では強力な魔物の一体であり、とらい☆りっぱーでは千華以外の二人では単体では敵わない強さである。しかし三人がかりで挑めば危なげなく倒せるだろう。

 

 

:お? 三人で行くのか

:三人での連携は安心して見れる

:いったれいったれ!

:るぷすちゃんはお手並み拝見って感じかな?

 

 

 リスナーたちの応援コメントにも熱が籠る。そのコメントを横目に、るぷすは三人に号令を出した。

 

「それじゃ、れっつごー」

「りょーかい!」

「行くよ!」

「今度は無様なとこは見せないようにしないとね!」

 

 それぞれの武器を手に、とらい☆りっぱーがトロールとの戦闘に入る。その様子を眺めながら、るぷすは配信前の三人の単独での戦闘を思い返していた。

 

 

 




お疲れ様でした。

ちなみにコスプレ・ゴブリンは理由は完全に不明なのですが、何故か日本での目撃証言が群を抜いているようで……九割方日本で発見されています。
一体何故なのでしょうか……? 不思議だ……。

今回はちょっとキリが悪い所で次回に続きます。

それではまた次回。
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