低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記 作:タナボルタ
思いついた流派名が普通にダサい……(技名は格好良いとは言ってない)
まぁいいかよろしくなの精神を持たなくては……
???「決して諦めるな。自分の感覚を信じろ」
それではまたあとがきで。
チャンネル登録者数が跳ねあがった朝────から、更に数日後の休日である土曜日の午後。ランはいつもの装備でまたも“邪妖精の巣窟”へとやって来ていた。
毎度のように無表情であるが、見る者が見れば違いが分かる。今のランは少々気分が落ち込んでいた。
無論チャンネル登録者が千人どころか千五百人を超えたことは嬉しく思っているが、その喜びを素直に享受出来ないくらいに面倒な事態に直面していたのだ。
一応SNSにて喜びの声を上げはしたが、今日まで配信活動をする気にはならなかった。
「うー……ん、っと。ドローンさん、そろそろよろしくね」
ランは意識を入れ替える為に一度伸びをし、配信者の“るぷす”として傍らのドローンさんに声を掛ける。今この時から自分はダンジョン探索者ではなく
「お久しぶりのこんるぷすー。美少女ダンムーバーのるぷすです。しばらく配信出来なくてお待たせしましたー」
:こんるぷすー
:きちゃー!
:久しぶりのるぷすちゃんだー!!
:うおっ マジで可愛い……
:ひゃっはー! 久しぶりのこんるぷすだぜー!
:初見です!! 本当に可愛い!!
:こんな可愛いロリ初めて見た……義娘になってくれ
:俺は普通だったのに……君のせいで今大変なんだから……なんとかしてくれよ
:登録千五百人突破おめでとー!!
:おはがる……ってこんるぷすかー
:初見ですー マジでこの見た目でJKなのか 世界は広いな
:うひょー! マジもんの合法ロリだー! え? JKは合法じゃない?
:初見です 一目惚れしました 結婚して下さい
:るぷすちゃんこんるぷすー
:“待”ってたぜェ!! この“瞬間”をよォ!!
:何か今回けっこう間が開いたけど何かあったの? それはそうとこんるぷすー
“るぷす”の配信が始まった。いつも(?)の挨拶をすると今までとは違い、コメントが流れるのが速い。少なくとも今までの自分の配信では見たことの無い速度だ。多くのコメントがるぷすの容姿を褒めるもので埋まっている。自分の容姿が大好きなるぷすは他人に容姿を褒められるのも大好きだ。それらのコメントを読むことでるぷすの気分も上向いてくるが、それでも“無”のドヤ顔を披露するほどには回復しなかった。
しかし付け加えて同接数もかつてない数字をたたき出している。休日とは言え土曜日の昼頃に百五十人近い視聴者が集まっているのだ。これも初めてのことである。
「おお、初見さんがこんなに。つまり
るぷすは唇を尖らせ、可愛らしくではあるが暴言を吐く。初見の視聴者達に取る態度ではないが、それも察せられる理由が理由なので皆は気にしない。むしろそれをネタに弄りだすくらいだ。
:あれは中々のインパクトでしたねぇ
:いやー まさかるぷすちゃんからあんな言葉が聞けるとはなー!
:恥ずかしくなーい……恥ずかしくないよー?
:フフフ……セックス!!
「やめないか」
るぷすは
:やめないか!
:やめないか!
:やめな
:ヒエッ
:音がすっごい
:このネタも知ってるのか
「おとーさんがおかーさんに隠れてプレイしてたゲームが元ネタなのは知ってる。あとZガ○ダム」
:ちょw
:草
:おwとwうwさwんw
:何で配信でバラしたしwww
:お父さん可哀そうwww
「それはそうとチャンネル登録が五百超えて千超えて千五百人突破しました。バズり方は不本意だったけどみんな登録ありがとうね。ほら、美少女の感謝の笑顔だよ」
そう言ってるぷすは頬に指を当ててドローンさんのカメラに顔を寄せる。もちろん清々しいまでの無表情である。
:おめでとー!
:ぎゃわいい!
:あっ(昇天)
:相変わらず口角が一ミリたりとも上がってないんだよなぁ
:やっぱ本人的には不本意よねw
:可愛いけど……何か思ってたキャラと違うな
:くそかわ! しかし案外愉快なロリだ
:うわ ノーメイクでこんな可愛いの?
:マジだ ノーメイクだ!
:うーん 何か解釈違いだわ
「本当ならすぐに記念配信をしたかったんだけど、ちょっと今週は忙しくって。というのも、なんかギルドの方から呼び出しがあった」
思い出すだけで溜息が出る。るぷすは相変わらず無表情であるのだが、彼女から発せられるオーラというか雰囲気というか、それが明らかに不機嫌な色をにじみ出していた。
:ギルドから呼び出し?
:何かあったか?
:配信がグロすぎるとか?
次々と予想を立てていく視聴者達を見やり、るぷすはてくてくと歩きながらギルドに呼び出された理由を語る。
「何か、探索者だと偽ってダンジョンに不法侵入してる子供がいる……って私を名指しした通報があったらしくて、しかもそれを新人職員さんが真に受けちゃったみたい」
:え マジで?
:それで呼び出しはおかしくなーい?
:んー……でも正直に言えば分からんでもない
:あんまり言いたかないけど外見が外見だしね
:うん……小学生にしか見えないからなぁ
流れるコメントも通報の内容に関して否定は仕切れない様子だ。しかし、今まで何事もなく配信が出来ていること自体がるぷすの正当性を証明しているのも事実である。
「ダンムビの配信ってギルドの探索者資格とも紐付けされてるから、配信出来てること自体が私がちゃんとした探索者である証拠なんだけど……どうも通報した人はギルドの別の職員さんにそう言われたら『偽造だ』とか『ギルドが捏造したんじゃないのか』とか、相当に噛み付いたみたい」
:は? 何やそいつ
:失礼にも程があんだろ
:探索動画には捏造疑惑が出てるしそんなもんじゃねーの?
:捏造疑惑とか初耳なんだが
:クソザコとはいえ魔物があんな風に弾けるわけねーだろ 脳みそ使えよカス
:何だお前
:えらいケンカ腰やな
「ん……? コメントでケンカはしないようにね。あんまり酷いとBANしちゃうよ。……ドローンさんが」
:相変わらず優秀なドローンさん
:何でも出来るなるぷすちゃんのドローン……
:アニメの録画予約すら出来るからな
:マジかよ 俺も欲しい
るぷすがコメントの不穏な空気を察知し、ドローンさんを話題に出すことで何とか流れを修正する。しかしまだまだ油断は出来ず、出来れば他にも決定的な何かが欲しいところだが……そんな時に、進行方向の横穴から一体の魔物が現れる。
「ギイィ……?」
「ん? あれ、
:ホブ? こんな浅いとこに?
:マジだ ホブゴブリンだ
るぷすの前に現れたのはゴブリンの派生種の一にして進化種のホブゴブリンであった。力あるゴブリンが長い年月を経て進化するという種族であり、その外見はゴブリンから大きく変わっている。
肌の色はそのままだが手足は伸び、骨と皮だけだった四肢に筋肉が纏わりついている。腹も引っ込み、まだ猫背気味ではあるが身長もまた大幅に伸びている。おおよそ成人男性程度といったところだ。当然、るぷすからすれば見上げるような大きさである。
確かにホブゴブリンも邪妖精の巣窟に生息している魔物である。が、ホブゴブリンのように通常種とは違う派生種・進化種はダンジョンの入り口にほど近い現在地に現れることは本来ならば有り得ないことだ。
何せホブゴブリンは強い。ホブゴブリン一体で通常種のゴブリン数体分~十体分の力を持つとされており、大抵の場合はゴブリン達のリーダーとして群れを率いているような存在である。駆け出しの探索者ではまず勝てない存在なのだ。ギルドでの新人講習でも出会ったらまず逃げろと注意喚起までされている。
このようにある程度の強さを持った魔物はダンジョンの出入り口付近には生息せず、もっと深く、深層に生息しているはずなのだ。では、なぜホブゴブリンがこのような浅い位置に現れたのか。
「……? 奥の方で女の人の悲鳴、と……たくさんのゴブリンの鳴き声……!」
:マジか!? こっちは何も聞こえんぞ!?
:ドローンが拾えない音が聞こえてる……?
:はー? テキトーこいてんなよクソガキ
:いや 音量を最大にまで上げたら聞こえた! 確かに女の声だ!
るぷすの耳はダンジョンの奥で争う音を捉えた。それは争いというには聊か一方的な物であるようだが、とにかくこのダンジョン内で女性がピンチに陥っていることは確かである。
邪妖精の巣窟は人気のないダンジョンであり、こうして内部で他人とかち合うことは滅多にない。それだけゴブリンという種族へのマイナスイメージが強すぎるせいなのだが、そのマイナスイメージに相応しい生態をしている事もまた事実。
ゴブリンという魔物は他種族とも交配が可能であり、それには人間も含まれているのだ。
:それで? 捏造動画を上げてるるぷすちゃん(笑)はホブゴブリン相手にどーすんの?w どうせ勝てねーんだしさっさと逃げれば?www
:やったれるぷすちゃん!
:いつもみたいに頭をパーンするんだ!
:ああーどうせならそいつにヤられたら? これで登録者も更にうなぎ上りだなぁwww
:さっきからキモイのが湧いてんな
:馬鹿に構ってやらないでるぷすちゃんの応援しようぜ
「キヒヒ……!!」
ホブゴブリンがるぷすを獲物と定め、前傾姿勢を取った。弱い魔物として知られるゴブリン種だが、それでも一般人には到底勝ち目のない身体能力を有している。進化種のホブゴブリンならば猶更だ。その瞬発力は想像を絶するものがある。
しかし────。
:こんなガキが魔物をどうにか出来る訳ねーだろがカス共が ああ バカだからあんな捏造動画を信じちゃうんでちゅね~www マジで頭おかしいんじゃねーの?www 俺なら自殺モンだわマジでwww
「邪魔」
一瞬、るぷすの姿がぶれ、次の瞬間には力強い踏み込みと共にホブゴブリンの胸へと掌底を叩き込んでいた。瞬間、バァンッ!! とホブゴブリンの上半身が粉々に砕け散り、壁面に血や骨、肉片がこびりついた。
「さっきの悲鳴はこの横穴の奥から聞こえてきた。多分、ホブゴブリンがこんなところに居たのと関係があるはず」
ホブゴブリンの死体や素材などもはや一顧だにもせずにるぷすはそう呟き、全力でダンジョン内を駆ける。その速さは明らかに人間が出せる速度を遥かに超えている。魔物と戦える探索者は超人的な力をその身に宿す。まさにるぷすもその超人の一人であるのだ。
:よっしゃ一撃!
:るぷすちゃんカッケー!
:……あの ホブゴブリンが弾けたんですが
:は? ……は?
:急げや急げ 目指すは悲鳴のところまで
:相変わらずるぷすちゃんの攻撃は速過ぎて何も見えなぅえおっ あ みんなごめ おぅぇえええ゛え゛っ゛!!
:こ コメント音声入力ニキー! お前またモザイクかけ忘れたんかー!?
:あ さっきのグロで同接数がごっそり減った
:グロってよりゲロのせいかもよ?
:ほんとごめぇ゛え゛え゛ぇ゛っ!! げぉぼぇえ゛!?
:だから無理すんなって言ってんだろ!?
るぷすは前だけを見据えて奥へ奥へと走る。途中で出くわした何体かのゴブリンを鎧袖一触に肉塊へと変え、ついに悲鳴が普通に聞こえてくる距離にまで到達した。
「ひえぇぇぇええぇ……!!」
「もうすぐ……」
:るぷすちゃん足はっや!
:俺にも悲鳴が聞こえてきた!
:画面ぐるぐるしてまた気持ち悪くなってきた……
:もういい……休め……!
「ひやああああああ!! お助けえええええええっ!!?」
「居た……っ!」
:見つけた!
:うげ マジでピンチやんけ!?
:何やってんだあのゴブリンども……?
狭い通路を抜けて辿り着いた先、広間とも言える空間に悲鳴の主は居た。誰もがイメージする魔法使いを体現したような装備をした、まだまだ若い女性だった。その女性は数匹のゴブリンに追われ、大きな湾曲した杖を胸に荒い息を吐きながらも何とか逃げ続けている。周囲には多数のゴブリンが下卑た笑い声を上げながら緩い投石で逃げる女性の進路をコントロールしており、るぷすが現れた出口へと向かわないようにしていた。
しかしここにるぷすが現れたことでゴブリンの投石が止み、視線が集中する。逃げる女性も投石が止んだことに気付き、これ幸いと出口へと足を進め────るぷすの姿を目にした。
「────女の子……っ!?」
るぷすを見た女性は驚きに目を大きく開くと、歯を強く食いしばり、反転して転びそうになりながらもるぷすの前で静止。自らの背にるぷすを庇い、ゴブリン達に対して杖を構えて立ち塞がってみせた。
女性の背中は震えている。それでも決して振り返ることなく、るぷすの前から離れる意思を見せない。その姿にるぷすの視聴者達も届かぬと知りながらも言葉を投げる。
「こ……こ、こはっ、私、が、何……っとかする、から……! あな、たは、逃げて……!!」
:おいおいおい言ってる場合か!?
:逃げるんは君の方だって!
:来てる来てるゴブリンが来てる!?
:るぷすちゃんに任せなって!
呼吸も全く整わず、弱々しくもある語気。しかし、その言葉に込められた意志は何よりも頑強な響きを宿している。脚はがくがくと震え、今にも倒れてしまいそうに見える女性は、それでもるぷすに笑顔を見せる。
「こう、見えて私、魔法使い、だから……。だか、ら……きっと、守って、みせるから。だから……はやく、逃げ────」
「キヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」
女性が言い終わるよりも早く、数体のゴブリンが飛びかかる。息も絶え絶えな今の女性には、例え一体だったとしても対処は難しかっただろう。女性の脳裏に最悪の展開が過ぎる。
「────大丈夫」
「え」
女性の耳に涼やかな少女の声が届いたかと思えば、気付かぬ内に眼前にるぷすが立っていた。そのことに女性の脳が理解を示す間もなく。
バン、と。飛びかかってきたゴブリン達の頭部が弾け飛んだ。
「だって私は強いから」
血を撒き散らしながら地に墜落していくゴブリン達。不思議とるぷす達に返り血が降り注ぐことはなく、まるでそこだけ雨の降ることの無い安全地域となっているかのように円形の空間が出来ている。
「………………え? えぇっ!? ひえぇ首が無いいぃっ!?」
:キャアアアア! るぷすちゃあああああん!!
:最高やでるぷすちゃん!
:かっけええええええ!!
女性は首が折れんばかりの勢いで周囲を見回し、ゴブリン達の首の無い死体に悲鳴を上げる。これには女性だけでなく、ゴブリン達も戸惑いの声を上げていた。
相手はたったの二人。だが、それに対し複数で掛かった結果、首の無い死体を晒す事になった。ゴブリン達は考える。予測の出来ないこの事態を切り抜けるための方策。鋭い檄の声を発し、一体の大きなゴブリン……ホブゴブリンがるぷすを指差した。
彼のホブゴブリンが下した命令。それは『全員で一斉に掛かれ』である。知能の低いゴブリン達は自らのトップの命に何ら疑問を浮かべることなく、雄叫びを上げながら突っ込んでくる。
「全部で……十七体。さっきのと合わせておおよそ一個の群れと同数」
冷静にゴブリンの数を確認しながらるぷすは構える。左手を前に、右手を胸の前に。やや大きく足を開き、どっしりと重心を落とす。────全身にピン、と気が漲る。
扇状に広がって迫るゴブリン達を前に、るぷすは左足を大きく右前に踏み込み、そこを軸に大きく、速く、鋭く回転。
「
そのままの勢いで左手が大きく振るわれる。瞬間、ゴブリン達は
「────
その爪が閃き、ゴブリン達は全身を引き裂かれた。間合いに入ったゴブリンだけではない。
少々の残心……構えを解く。その時、一つのコメントがるぷすに届く。
:るぷすちゃん ホブゴブリン!
「うん、分かってる」
この場の死体にホブゴブリンは居ない。群れの長は部下達に命令した後すぐに逃げ出したのだ。今彼の長はるぷすが入ってきたのとは別の横道を走っている。そして、それはるぷすも把握していた。
るぷすは足元の石を爪先で蹴り上げて手に取り、それを思い切り投擲した。直後、くぐもった声のような音と、何かが弾ける音が小さく響く。
「手下を捨て駒にして逃げるような奴にはこれで十分」
るぷすは鼻を鳴らし、そう言った。今ここに、ゴブリンの一つの群れが消滅したのだ。その事実を前に、衝撃映像の連続で硬直していたコメントも爆発したように流れ始める。
:うおおおおおおお!!
:一撃!? あの数を!!? どうやって!!??
:るぷすちゃん最強! るぷすちゃん最強!!
:マジでかっけええええええ!! いやかわいいいいいいい!!
:魔法使いの女の子も助かって良かった!
:うひい 何かあった後でなくて良かった……
:ゴブリンに襲われるって精神的にキツイ物があるからな……よく持ちこたえたわ
:るぷすちゃんさっきの何をどうやったの!?
:何か腕振ったらゴブが全部バラバラになったんだが!?
:ここまでくると逆にグロくないな
:ゴブとはいえあの数を一瞬て
:部下を置いて逃げた奴を投石でやっちゃうのかっこよすぎる
:俺もるぷすちゃんに引っ搔かれたい!!!!!
中には変態的なコメントも混ざっていたが、ほとんどが自分を称え、女性の無事を喜ぶコメントで溢れていたのでるぷすは大変気分が良くなる。ここ最近の憂鬱な気分も吹っ飛ぶ心地だ。
「むふー」
:“無”のドヤ顔いただきましたぁ!
:何か久しぶり
「さて」
「ふぇ」
るぷすは振り返り、いつの間にか腰を抜かしてぺたりと座り込んでいた女性に向き直る。女性は今も現実感が無いのか、るぷすを見上げる目はどこか呆然としている。
「……お姉さん、大丈夫?」
「………………はっ! あっ、あのあのあのあのあのっ! たっ、たたすけてくれて、ありありありがとうございます!!!」
表情は変わらないが、それでも心配そうなるぷすの声にようやく正気に戻ったのか、女性は身体を大きく跳ねさせながらも頭を下げて礼を言った。
「あ、あのままだったら私どうなってたか……! 守るなんて大きなこと言っちゃったけど、私じゃあ全然どうにもならなかっただろうし……!」
女性は涙ぐみながら早口で捲し立てる。助かったことによる安堵と、身の程を弁えずに大口を叩き、その結果逆に助けられたことによる羞恥。そして自らの劣等感がそうさせているのだろう。女性の口には自嘲的な笑みすらも浮かんでいる。
「お姉さん」
「ごめんなさい。私、何をやってもダメで、探索者になっても配信者になってもダメダメで……」
「お姉さん」
「魔法使いなのに魔法も使えない、ドローンもゴブリンに壊されちゃったし配信者としてもダメダメでC級からD級に戻されるんじゃないかとかギルドでも聞いたし探索者としてもダメダメで妹にもいつもよく怒られるしこんな私が誰かを守れるなんて思い上がって……」
:おおう……
:いかん ネガティブスパイラルに陥っとる……
「お姉さん」
「……え?」
どうにもまともな返答を返せない女性。しかし、るぷすが声に『力』を込めた言葉により、ようやくるぷすの顔を見返す。
「ありがとう、お姉さん」
:……?
:るぷすちゃん?
:何がありがとうなんや?
そのるぷすの言葉に、誰もが疑問を覚えた。
「確かに私は強くてお姉さんは弱いかもしれない。でも、お姉さんは私の為に戦おうとしてくれた。私を助けようとしてくれた」
「それは……でも、結局私は逆に助けられて……」
女性は目を伏せ、言葉に詰まる。だが、るぷすは首を振り、それを否定する。
「自分が弱いと知ってて、それでも誰かを助けようとするなんて普通は出来ない。さっきのホブゴブリンみたいに誰かに押し付けたりすることも多いと思う。でも、お姉さんはそれをしなかった。どうしようもない現実があってそれを理解してても、それでもお姉さんは私の前に立ってくれた。それは、とても勇気のいること」
女性がるぷすを見る、その目には涙が溢れ、今にも零れ落ちそうだ。
「だから────私を助けようとしてくれて、ありがとう、お姉さん」
「……っ、ぅ、ううぅ……っ!」
それがとどめだった。女性の目からは涙が零れ、雫が頬を、服を濡らす。こんな自分でも目の前の少女は肯定してくれた。その事実が女性の胸に熱を込み上げさせる。
るぷすは腰のポーチからハンカチを取り出し、女性の涙を拭う。優し気に目を細め、るぷすは女性に最大級の敬意を表す。
「誰にも負けない勇気を持つお姉さんは────とても、美少女」
「……うんっ! ────うん……?」
:ん?
:はい?
:なんて?
:美少女……?
:いや確かに美少女だけど何か関係あるか?
るぷすの言葉を聞いた全員が戸惑いを覚えた。
「今は確かに魔法使いとしてはダメなのかもしれないけど、お姉さんは探索者として確実に美少女。私は誰が何を言おうと美少女であるお姉さんの味方」
「え……? あ、はい……どうも、あり……が、とう……???」
「うん」
:??????????
:どういう……ことだ……!?
:まるで意味が分からんぞ!?
:俺の……俺の分かるように説明しろぉ!!
:魔法使いちゃんもガチ困惑してるじゃん
:イイハナシダッタノニナー
女性の頭には大量のクエスチョンマークが飛び交っている。るぷすはそれに気付かず、「むふー」とどこかやる気に満ち溢れている。女性はとりあえず何も分からないままに笑顔を浮かべ、場の空気を壊さないように努めるのだった。
「あ、忘れてた。初めましてのこんるぷすー。美少女ダンムーバーのるぷすです。自己紹介が遅れてしまってごめんなさい」
「その挨拶今必要だったかなぁ!?」
これには流石の女性もツッコんだ。しかし助けてくれた相手に名乗られてそのまま放置するのはどうかと思い、女性も
「えっと……あ、あなたも私と一緒に見てミーヤ! 魔法使いのミーアです!」
:思ったよりノリが良い!?
:いやこれただのヤケクソじゃね?
:もう可愛いから何でもイーヤ!
:ん? 魔法使いのミーア……って確か現役JKダンムーバーだ!
:るぷすちゃんと同じく現役JK探索者!?
:現役JKが二人……!! 来るぞ遊○!!
:来ねーよアス○ラル!!
先程までの感動的な雰囲気も吹っ飛んで、コメントも緩くなる。
こうして二人は出逢った。これから先、長い時を共に過ごす事になる友との、これが始まりの記録。
:そういやあのキモイコメントの奴いつの間にかいなくなったな
:ドローンさんにBANされたんじゃねーの?
:どうでもいいだろあんなの それよりこの光景を目に焼き付けようぜ
:ああ……天然無表情ロリと優しそうなおっとり系敬語お姉さんとの絡みだからな……
:デュフフフフフwww
:キモ過ぎワロタ
何やら、邪悪な
かっこいい流派名と技名が思いつかない(二回目)
個人的には九○年代二○○○年代のバトル漫画系をリスペクトしたい。
『邪王炎殺拳最大最強奥義炎殺黒龍波』とか最高ですよね。『草薙流古武術裏百八式・大蛇薙』も良い……『モーゴス流絞殺法最終奥義人形使い』も捨てがたい……。
それではまた次回。