低身長美少女配信者のダンジョンすくすく成長記 作:タナボルタ
今回はコラボ配信回。一体誰と誰がコラボするのか……!?
はい。
それではまたあとがきで。
ランは学校から家に帰るとパソコンを立ち上げ、ダンムビを開いた。冷蔵庫から取り出したキンキンに冷えたコーラをお供に、とある動画を視聴する。
その動画は美奈からの“お願い”に関わりのある物であり、それがなくともとある考察の確度を高めるためにと視聴したのだが……。
「うーん……私が言うのもなんだけど、これはひどい……」
ランが視聴している動画はあらゆる意味で酷かった。まず動画の画質があまりにも悪く、次いで音質も酷い。時折画面にノイズも走り、鼓膜を打つような鋭い音も発せられる。聴覚が優れているランにとって、これが特に我慢ならなかった。
ヘッドホンで動画を見ていたランはジジッと大きなノイズ音が走ると身体を大きく跳ねさせ、速攻でイヤホンジャックを抜き去り動画を一時停止させる。
その後パソコンに繋いだスピーカーからもノイズ音が発生するが、我慢できる範囲ではあったためそのまま視聴を継続する。
動画の内容を精査し、自分の中の知識と照らし合わせ、本人から聞いた話とネットで語られていた情報を反芻し……結論が出た。
「……これで合ってるはず。後は直接見せてもらえば……」
ランは一つ頷くと、夕食の準備をしに台所へと向かう。視聴していた動画は一本一本は短いのだが、それなりの量があった為、見始めてから既に数時間が経っていた。今日の献立はチャーハンとインスタントの中華スープ。
ランは“オタクとはチャーハンが得意料理である”という謎の固定観念を持っており、チャーハンだけはそれなりに美味しく作ることが出来る。
「後でいいんちょに連絡して……学校でいいかな? まだ普通に起きてるだろうけど……うーん」
色々と考える内に面倒臭くなったので、ランは翌日に学校で美奈に“了承”の意を伝えることにした。
そうして時は過ぎ、また週末の土曜日の午後。ランは“るぷす”として、とあるダンジョンの前で
「今日は二人でこんるぷすー。美少女ダンムーバーのるぷすです。今回は告知通りコラボ配信だよ」
「あなたも私と一緒に見てミーヤ! 魔法使いのミーアです」
:こんるぷすー
:こんるぷ……連続でこんるぷすだー!
:おはがr ちくしょう交互に変わるのかと思ってたのに!
:動揺してちゃんと打ててないやつがおるw
:こんるぷす
:こんー
:おお ミーアちゃんだ!
:ミーアちゃん元気そうでよかった
:ああ 今日も元気に揺れてるぜー!
:ムホホホホw
そう、今回の配信はるぷすとミーアのコラボ配信。以前の配信から今日までにるぷすは何度か配信を行っていたが、視聴者たちのコメントでミーアについて触れられることも多く、ミーアもSNSで呟きはするもののドローンが壊されたことによって配信が出来ず、今回のコラボでミーアの元気な姿を見れたことによって視聴者たちも一安心と言ったところだ。
:るぷすちゃんミーアちゃんを助けてくれてありがとう
:あの時のるぷすちゃんかっこよかったよー
コメントにるぷすへの感謝を送る者達も未だに居る。それはミーアをずっと応援してくれているファン達だ。彼らはるぷすの配信でも何度も感謝のコメントを打ってきており、るぷすとしてはもう苦笑するほかない。(当然のように無表情)
「るぷすちゃん、今日はコラボの依頼を受けてくれてありがとうございます。妹からるぷすちゃんにキャリーしてもらえって言われてダメ元での依頼だったんですけど……」
「
:お ミーアちゃんの妹ちゃんはるぷすちゃんとリア友なんか?
:ほーん 意外と世間は狭いんだな
:凄い偶然だな
るぷすによるミーアのキャリー。これが美奈からのお願いの内容だった。その為にるぷすはミーアの動画を視聴していたのである。
「まあダンムーバーとしてはまだまだ底辺の私がキャリーするも何もないと思うんだけど」
「それでも私の一○○倍以上じゃないですか……」
:格差えぐい
:ダンムーバーは数万以上の登録が基本みたいなとこあるしな……
:るぷすちゃんもじわじわと登録増えてんだけどね
:ミーアちゃんの場合は画質音質のせいでまともに見るのもキツイからなー
現在のるぷすのチャンネル登録者は一九○○人程度となっている。対するミーアは十七人だ。やはり規制されているとはいえモザイク込みならば鮮明な映像で配信を見ることが出来るるぷすと、そもそもまともに見ることすら難しい画質のミーアでは色々な意味で比べるまでもない。
「ちなみに先輩のドローンさんは修理に出してて、来週にはちゃんと配信が出来るようになると思う」
「るぷすちゃんのお陰で修理費もかなり安くなって……本当にありがとうございます」
ミーアは改めてるぷすに頭を下げる。二人が出会ったあの日の帰り道、るぷすはふらふらのミーアを支えながら自宅の近くに住む、昔から世話になっている人物を紹介した。
その人は
:るぷすちゃんのお陰?
:何か伝手でも持ってんのかな?
:るぷすちゃんにドローンを譲った人だったり?
「ふふふ、秘密」
るぷすはコメントにニヤリと無表情に笑って答えた。無表情に笑うってどういうことだ。
「さて。今回の配信内容なんだけど、簡単に言えば先輩の魔法の特訓」
るぷすはそう言い、ミーアに視線を向ける。ミーアはその視線を受け、ごくりと喉を鳴らし、緊張を顕にする。
:魔法の特訓?
:ミーアちゃんの魔法かー
:特訓で何とかなるかな……?
:そもそも何をどうすれば?
:あれだもんねぇ
:ん? 何かコメントおかしくね?
コメントにはミーアの魔法について懸念の言葉が並ぶ。それはミーアについて知らない者が見れば違和感を覚えるものだった。るぷすのドローンさんが表示するコメントを見て、ミーアは恐縮するかのように縮こまる。
「実は私、魔法使いなのにまともに魔法を使えなくて……」
恐る恐る、といった風にそう告げる。この反応は今まで魔法使いなのに魔法が使えないことに対し、それはもう“色々な意見”を言われてきたがためだ。
:そんなことあるんか
:ちょい待て今までどうやって探索してきたんだ
:確かに 魔法無しで一体どうやって?
:ミーアちゃんには最終兵器『杖で殴る』がある
:草
:確かに立派な杖だけどもw
「……あれ?」
皆の反応はミーアが思っていたものとは違い、朗らかな空気が流れていた。いつもなら魔法が使えないと分かれば様々な言葉で罵られてきたものだが、るぷすの視聴者たちは特にそう言った反応を見せてこない。からかうような発言はあるが、自分を貶めようとはしていないそのコメント達にミーアは首を傾げる。
るぷすの視聴者たちはある意味特殊な訓練を受けている。るぷすと様々な漫画・アニメ作品についてディープに語り合ったり、突然のグロ映像を見せられたりと普通のダンムーバーの配信ではあまり見ないようなものが多く、るぷすの価値観なども共有されているのでコメントが荒れたりなどは滅多にない。
今回の場合についても「まあそういうこともあるよね」程度の認識だ。他にもミーアについて好意的なのには理由がある。
:配信やってる魔法使いってほとんど鼻持ちならない連中ばっかだしな
:やたらと見下してくるよな あいつら
:その点ミーアちゃんは天使やでぇ……
ダンジョン探索をする魔法使いは変わり者である。少なくとも日本にはそういった共通認識が存在する。故に日本のダンジョン探索者は一〇〇人にも満たず、また強烈な自己を持った者が多い。それは特に選民思想にも近い意識であり、魔法を使えない一般人や探索者を見下す傾向にある。
ミーアは魔法使いであるが
「それで、今回特訓の場所に選んだのは多分C級で一番広いダンジョン、『
るぷすが指を差すその先、巨大な石造りの門
ダンジョンは一○○有余年前に突如として出現した。それは何も洞窟が現れたり、塔が出現したり、島が形成されたわけではなく。どこか謎の空間へと続く不思議な入口、ダンジョンへと続くゲートが出現したのだ。
それは様々な形状をしており、門や扉、階段、穴、果ては光や黒い球体に吸い込まれたりなど実にバリエーション豊かだ。共通点としてはほとんど場所を取ることが無い、というところか。故に
今回の場合はオーソドックスに門をくぐるタイプ。その門をじっと見たミーアはくるりとるぷすに向き直り、涙ながらに抱き着いた。
「やっぱり止めましょうよー! あそこには入りたくありません―!」
「でも人気が無くて広くて安全に進めるのはここくらいだし……」
「どこが安全なんですかー! ここは
:うげ ゴーレムのとこ!?
:安全!? どこが!?
:え ゴーレムってそんなやばいの?
:オーガと同じくらいのやばさ
:なるほど そりゃやべえな ……どこが安全なの!?
稼働石像の巣窟。このダンジョンはC級の“巣窟”でありながら、他のダンジョンとはいささか様相が異なる。それはD級ダンジョンの“巣”と同じように、単一の種しか出ない点だ。
例えばるぷすがよく出向いている邪妖精の巣窟だが、あそこはゴブリンだけでなくその派生種、進化種が出現する。逆にD級の“ゴブリンの巣”では派生種も進化種も出てこず、ゴブリンのみが生息している。
では、なぜ派生種も進化種も出現しない稼働石像の巣窟がC級に分類されているのか。それは、それだけゴーレムが強力な魔物だからである。
人間の数倍はある体躯、圧倒的な打撃力、驚異的な防御力、無限にも思える体力。C級探索者では数人がかりでも太刀打ちできないと言われている、言わば“B級資格への壁”とも呼べる魔物。それがゴーレムなのだ。
「大丈夫。私は強い美少女。ゴーレムは普通に倒せる」
「ええええぇー……?」
るぷすはミーアの目をまっすぐ見て断言するが、それでもミーアは及び腰だ。るぷすの強さを間近に見たミーアでも、流石に巨大なゴーレムを倒せるとは思えないらしい。
:るぷすちゃんはギルド職員からB級上位並みの実力があるってお墨付きらしいが……
:マジか!? なら余裕じゃない?
:うーん 確かにるぷすちゃんは強いと思うけど
:基本的にゴブとかを蹂躙してることが多いからなー
コメントも今回に限っては懐疑的な意見が多い様子。それを見たるぷすはふんすと鼻息荒く、ミーアを引きずって門へと向かいだした。
「ちょちょちょ、るぷすちゃーん!?」
まるで重さを感じさせない足取りでるぷすはずんずんと進んでいく。ミーアはもう涙目だ。
:おいおいおい 大丈夫か?
:ここまで強情となると本気で大丈夫そうだな
:るぷすちゃんも自分の力量とかは弁えてるしね
:ミーアちゃん頑張れ……! 俺たちは応援しか出来ないけども!
コメントにも応援され、ついにミーアは覚悟を決めて自分の足で歩き始めた。やや腰は引けているが、それでも立派なものである。
「先輩、心配しなくて大丈夫。先輩には傷一つ付けさせないから」
「ううう、頼りにしてます」
軽く言葉を交わし、二人は門をくぐった。瞬間、二人の目の前の景色は切り替わり、邪妖精の巣窟よりも遥かに広々とした洞窟内に移動していた。
「ここが、ゴーレムの……」
初めて入るダンジョンの広さにミーアは感嘆の声を上げる。るぷすは辺りを見渡し、目的の横穴を見付けるとそちらへミーアを誘導する。
「私もここに来るのは久しぶりだから、ちょっと手間取っちゃうかも」
「……本当に来たことあるんですね」
「うん」
るぷすは周囲を確認しながらも、迷いのない足取りで奥へ奥へと進んでいく。時折周囲を確認するのは道の確認か、それとも敵の襲撃に備えてか。ミーアには判断が付かない。
:マジで広いな
:いつも思うけど何でダンジョンってそこそこ明るいんだ? 電灯とかないのに
:そういや何でだろうな
「ダンジョンが明るく見えるのはダンジョンを構成する石とかが特殊な電磁波を放ってて、それが人間の視覚を通して脳に直接情報を伝達してる……とかだったはず。ここら辺はあんまり詳しくないから自信ないけど」
「ほぇー……え、それって大丈夫なんですか?」
「不思議な事に人体には無害みたい。それにドローンさんやスマホにも何の影響もないし、ペースメーカーや時計とかも同じく」
「……そういえばそうですね」
:そういう仕組みやったんか
:けっこう博識ね
:ん? それってつまり壁とか石とかが光ってるってことなのでは?
コメントに質問が寄せられた。それを見たるぷすは立ち止まり、先を指差す。ある程度までは道が続いているのが見えるのだが、途中から帳が落ちたかのように闇が広がっている。
「光ってるわけじゃないみたい。ほら、光ってるならもっとずっと先の方まで見えるはずだけど、一定の距離から先は
「本当ですね……どういうことなんです?」
「多分だけど、あそこら辺の石から発せられる電磁波がこっちに届いてないから暗く見えるんだと思う」
「な、なるほどー……」
:確かに光ってるならもっと見通しが良いよな
:ダンジョンは不思議やな……
「中には本当に光ってたり、もっと奥まで見えるダンジョンもあるみたいだけど……そこら辺はB級以上のダンジョンがほとんどだから私は入れないし」
:なるほどなー
気を取り直して二人は進む。ペースはオドオドビクビクとおっかなびっくり歩くミーアに合わせている為かやや遅いが、不思議とこういうのも悪くないとるぷすは感じる。るぷすは沈黙を苦にしないタイプだ。だがミーアは自分のせいで気まずい空気が流れているのではないかと気を使い、るぷすに質問を投げかけようとする。が、しかし。
「ストップ。先輩、止まって」
「えっ」
前を歩くるぷすは手を広げてミーアに停止を告げる。思わず身体を跳ねさせるミーア。
「すぐそこ、ゴーレムが擬態して隠れてる」
「ええっ!? ど、どどどどこですか!!?」
:んん!? ゴーレム!?
:マジで!? どこだ!?
:あの岩か!? それともあの岩か!? もしかしたらあの岩か!?
:どれだよ
ミーアだけでなく視聴者たちまで慌てだした。しかし画面に動きはなく、次第にミーアにも余裕が出てくる。
「えっと……あっ、もしかしてあの岩ですか? 何か一つだけ他と質感が違う気がします」
「うん、正解。先輩には“るぷすポイント”を五○点進呈」
「え、あ、ど、どうもありがとうございます……?」
:おお 確かに他と質感が違う
:よく分かったな……流石眼鏡っ子だ
:何の関係だよ
:っちゅーかるぷすポイントって何!? 何なのぉ!?
るぷすは戸惑うミーア達をよそに、足元の手頃な石を拾い上げて擬態しているゴーレムへと投げる。
「あ」
:あ
:あ
:あ
山なりに投げられた石は見事命中し、岩が大きく揺れ始める。その揺れが地面にも伝播したかと思った瞬間、岩の横の地面から巨大な手が突き出し、次いでその巨体をるぷす達の前へと曝け出した。
「ひっ……!?」
「イデ○ンみたい……!」
ミーアの目は恐怖に染まり、るぷすの目は無限の力に輝いている。
:言うとる場合かー!!
:いや俺もちょっと思っちゃったけども!!
:でかいでかいでかい!?
:ほんとにかてんのかこrr1?
るぷす達の前に現れたゴーレムは全長が五メートル程はあろうか。ロボットアニメに出てくるような巨大さではないが、それでもその脅威が分かりやすいある意味
ゴーレムはるぷす達を睥睨し、その巨大な左腕を引いて殴り掛かろうとする。────るぷすが悠然と前に出る。
「るぷすちゃ……っ!?」
ミーアがるぷすの名を最後まで声に出す前に、ゴーレムの拳が振り下ろされる。対して強烈な踏み込みと共に打ち出されるはるぷすの右掌底。手首を上に向け、弾丸の勢いで巨拳を迎え撃つ。
「────
拳と掌底がぶつかり合う────瞬間、るぷすは掌底を一八〇度回転。
「ッッッ!?!?!?」
ゴーレムの左腕が
何が起こったのかも分からず、体勢を立て直すことも出来ず。既にゴーレムの頭部にはるぷすが右の前蹴りを放っている。
「
前蹴りがゴーレムの頭に着弾する。刹那、るぷすは軸足を回転させ、それに連動するように身体を、蹴り足を回転させる。旋回の力が加わり、威力を増加させた蹴りはゴーレムの身体を突き抜け、その圧倒的だったはずの石の身体を粉々に粉砕せしめる。
前蹴りを放ったはずのるぷすはまるで裏返るかのように後ろ蹴りの体勢になっており、僅かな残心の後、軽く息を吐いてミーアへと向き直った。
「びくとりー」
「……ええぇ」
両手でピースしつつの気の抜けたるぷすの言葉に、気の抜けた声にもならぬ声を返すしか出来ないミーア。目の前の光景があまりにも現実離れをしていて、脳の処理が追い付いていないのである。
そんなミーアの代わりに、コメントが爆発した。
:うおおおおおおおおお!!?
:すげえええええええええ!!
:マジで倒した!! ゴーレムを!! あんなあっさりと!!
:何がどうなったんかは全く分からんがとにかくすげえ!!
:るぷすちゃん最強すぎんかこれ
:無表情ダブピかわえええええええ!!
:ポカンとしたミーアちゃんも可愛いぞ!!
:るぷすちゃん可愛い!! ミーアちゃんも可愛い!!
自分(とミーア)を褒め称える言葉にるぷすは大満足だ。これでミーアの懸念も晴れただろうと胸を張り、満足げに息を吐く。
「むふー」
:“無”のドヤ顔いただきましたぁ!
「先輩、大丈夫?」
「ああ、はい。大丈夫です……」
ミーアはるぷすに腕をつつかれ、ようやく正気を取り戻した。頭をふるふると振り、疑ってごめんなさいとるぷすに頭を下げる。るぷすも特に気にしていないのでそれを受け入れ、改めて目的地まで進んでいく。
目的地までの道のりはそれなりに険しかったものの、探索者ならば特に問題にもならないようなもの。それからはまたゴーレムが数体襲い掛かってきたが、その全てをるぷすが粉砕してみせた。
全くの無傷での勝利にミーアの目が遠くの方を見ている。自分との出来の違いにちょっと悲しくもあり情けなくもあり、だ。
そうして進み続けること数十分、ようやくるぷす達は目的地へと到着した。
「到着ー。ここが目的地、“何か意味ありげな広場”ー」
わー、と両手を広げてるぷすは到着した広場を紹介する。その場所は今までの道とは異なり、一〇〇メートル四方はありそうなほどに広大な広場。だというのにまるで整地されているかのように岩一つなく、遮蔽物の無い全体を見渡すことが出来る。
「ちなみにここにはゴーレムは入ってこない。ただボス級の個体は侵入してくることもあるけど、それも滅多にないかな」
:うおお 本当に意味ありげな場所だ
:魔物が入ってこずに 来てもボス格だけ……本当に何かありそうだ
:何か前のゴブの広場もこんな感じじゃなかった? いやあれはゴブ共がたむろしてたから違うか
:確かにちょっと似てたかもな
「……さて、先輩」
「────っ、────っ! ……っ、──。────、……!」
:また前みたいなことになっとる
:足ガックガクでえろい
:いやこれにエロスを感じるのはどうかと思うけど普通にエロイなこれ
:草
るぷすはまたも疲労困憊で息も絶え絶えになっているミーアを見て、頭をぽりぽりと掻く。とりあえず、ということで腰のポーチからキャンプなどで使用する小型の折り畳みの椅子を取り出すと、ミーアに座るように促した。
「先輩、座って」
「は、はぃー……」
「それからスポドリ」
「あ、ありがとうございますぅ……ああ、ぬるめなのが逆に身体に沁みますぅ……」
はひー、はひーと苦しげに息をするミーアを見て、るぷすはドローンさんに近付き、休憩を取ることを伝える。流石にミーアがこの状態では特訓どころではない。るぷすは休憩もしっかり取るタイプだ。
「先輩が回復するまで十分……一五分ほど休憩を取るね。その間にみんなはトイレとか済ませておくといいよ」
:るぷすちゃんの配信で休憩って珍しいね
:ミーアちゃんがお疲れだからね
:息の荒いミーアちゃんって妙に色気があるよな……
:大きく息をするたびにあの大きなお胸が上下に……ふう
:ちょっとトイレ
:その流れだといかがわしく聞こえるなw
:草草の草
休憩の間、ドローンさんは珍しく定点カメラとして機能していた。ミーアが休んでいる画を中心に、るぷすが画面内をちょろちょろと動き回る姿が映される。
るぷすが奥に移動していったかと思えば、いつの間にか拾っていたのか、一抱えはありそうな大きな岩をポーチからぬるりと取り出し、三段重ねにする。それはまるで的のようだ。
それが終わればミーアの状態を観察しているのか、ミーアの周りを一周し、今度は画面外に消えていく。かと思えば、カメラの画角の下からひょこっと顔を出し、スライドするかのように動いてまた画面外へと消える。
一連のるぷすの動きにコメントには昇天する者、吐血をする者、息を引き取る者など、様々な反応が見られた。(笑)
:は あ あ あ あ ぁ(恍惚)
:何か今日のるぷすちゃんテンション高いな
:何つーかはしゃいでる?
:いつもボッチ探索だったし 友達と一緒に探索出来るのが嬉しいんじゃないかな?
:それはあるかも
「るぷすちゃーん、もう大丈夫ですー」
「分かった」
休憩からきっかり一五分。ミーアの体力も回復し、ようやく魔法の特訓が開始されることになる。ミーアはやはり緊張した面持ちで、杖を握る手に力が入る。
「ではまず先輩。あそこに的を用意したから、あれに向かって魔法を撃ってほしい」
「は、はいっ」
「使う魔法はみんなにも分かりやすく、
「分かりましたっ」
:いよいよやな
:汎用魔法と言えばのファイヤーボール
:ミーアちゃん頑張れ……!
:……今更なんだがもしかしてるぷすちゃんが先生役なのか?
:え?
:そういえば……何かそんな立ち位置に見えてきたな
:るぷすちゃん魔法は使えないはず……だよな?
特訓が始まる段階に入り、コメントにてそもそもの疑問が発生した。
【────来りて爆ぜよ、破壊の
ミーアは身の丈程ある杖を高らかに掲げ、炎の呪文を唱える。杖の上部に発生する直径三○センチ程の火球。ごうごうと唸りを上げ、解き放たれるのを今か今かと待ち受けるその姿は、まさに破壊の象徴と言えるだろう。
【ファイヤーボール────!!】
杖を振り下ろし、遠くの的を指し示す。上部の火球は的を目掛けてその威力を発揮────することはなく、そのままミーアの上空で爆発した。
ぱらぱらとミーアとその周囲に火の粉が落ちる。るぷすも、コメントも何も言わない。何も言えない、とも言うが。
「………………るぷすちゃぁん」
泣きそうな声でミーアがるぷすの名を呼んだ。実際にミーアの目には涙が溜まっており、今にも零れ落ちそうだ。
「……」
対するるぷすは顎に手を当て、何かを思案しているようだった。ミーアの言葉にも、コメントにも反応を示さない。もしかして呆れられてしまったのか、とミーアの不安が募った頃、るぷすは一つ頷いた。
「
「……何がですかぁ……?」
るぷすの呟きにミーアの情けない声が返ってくる。やはり呆れたのだろうか? ミーアの心が悲鳴を上げそうになる。
「元々当たりは付けてたけど、今の魔法を見て確信は強まった」
「……?」
るぷすはミーアの目を見つめ、それを口にした。
「先輩が魔法を失敗する理由。それが分かった」
「────っ!?」
:おおー さすがるぷすちゃんだ
:何……だと……!?
:マジで!?
:いったいどういう事だってばよ!?
:そもそも何でるぷすちゃんにそれが分かんの!?
確信を秘めたるぷすの言葉にミーアのみならず視聴者も驚愕する。その言葉に偽りなく、るぷすはミーアが抱える問題点を確かに見抜いていた。
お疲れ様でした。
本文で出てきた旋貫掌ですが、これはいつもるぷすがゴブリンに使用して身体をパーンさせている技です。
格ゲーでのコマンドは『→+AorBorC』とかでしょうか。
次回は拙作における魔法使いとは、魔法とは何ぞやみたいな解説回になります。
上手いこと良い感じに説明出来るかな……?
それではまた次回。