やったぜ、頑張った俺!
もっと褒めてもいいのよ
というわけで、かなり突っ走って書いた感じはしますが、今回もどうぞよろしくお願いします。
未だ薄暗い海上には、静かにさざ波が立っている。レンズ越しに見える風景は、赤道直下の暑さとはかけ離れた涼しさを感じさせた。普段と変わらぬ海の様子に、彼女は安堵する。
「時間です、姉さま」
横に控える副官が、彼女の耳元に小声で告げる。それに小さく頷いた彼女は、覗いていた潜望鏡から目を離すと軍帽をかぶり直し、赤いランプで照らされる司令塔内に命令した。
「潜望鏡下げ。タンクブロー、“ミルヒクー”浮上」
すぐさま司令塔の両側から鈍い音が響き、足元に浮遊感が伝わる。彼女たちの乗り込む潜水艦“ミルヒクー”は、潜望鏡深度から海面へと浮上を始めていた。
周囲に敵影はない。先程回収したプローブからも、敵艦の接近は確認されなかった。この邂逅海域が安全と判断した彼女は、予定通りに浮上を命令したのだった。
“ミルヒクー”の浮上が止まる。波間を突き破った艦体が、その浮力が釣り合う位置で海上を漂っているのだろう。
「オイゲン、ここは任せたわ」
「了解です!」
副官の返事を待って、垂直のラッタルに手を掛ける。頭上のハッチを押し上げ、司令塔の上に出た。首から提げた双眼鏡のレンズを拭き、覗き込んで周囲を見渡す。やはり、敵影は認められなかった。
―――大丈夫そうね。
安全を確認した彼女は、艦内通信機を取る。その間も、もう一人上がってきた見張り員が周囲を警戒していた。
「こちら艦橋。第一、第二ポッド出撃準備」
了解の声と共に、艦橋後部の出撃ポッドが慌しくなる。中に収められた艤装を、着装者が着ける準備に入ったのだ。
「511、一応“ゼーフント”の準備もしておいて」
『ん・・・わかった』
と、そこでもう一人、艦橋に上がってくるのがわかった。その人物について大体の想像がつく彼女は、小さな溜め息と共に件の人物を迎えた。おかげで、ただでさえ狭い艦橋がさらに狭くなった。
「どうだ?」
なんとも無い様子で聞く彼に、彼女はさっと周りを見回してから答える。
「今のところは異常ナシよ。それより、なんでアドミラールがここに上がって来てるの?」
「そりゃあ、ここが好きだからだな」
大きく息を吸い込む彼に、呆れを隠せない。まあ、出会った時からこんな感じではあったが。
「それにしても」
彼への文句はとりあえず頭の片隅に追いやって、基地を出てからずっと気になっていたことを、彼女は問うた。
「どうしてわざわざ、“ミルヒクー”まで出して出迎える必要があるの?こんな回りくどいことしないで、直接基地に来てもらえばいいじゃない」
「一応、正式に同盟したわけじゃないからな。同盟国でもない相手に、最高軍事機密の基地の場所を案内するわけにはいかないさ」
「・・・もっともらしいこと言ってるけど、うちの基地は国って言えるほどのものじゃないでしょう。精々集団疎開所っていうのが関の山じゃない」
「それほど悪いものじゃないだろう」
「・・・まあ、そうね」
お互いに、もう一度双眼鏡を覗き込む。朝陽の中の波間は美しく輝き、その揺らめきには一点の曇りも無い。青い光は先程と変わることなくそこにあった。
『第一、第二ポッド出撃準備よし』
「了解。ハッチを開放してちょうだい」
重い鉄の音。完全防水加工が施されたポッドのハッチが開き、警告灯が点灯する。艦前部に一つ、後部に二つの直径二メートルほどのやや細長い円筒は、艤装の着脱をサポートするものだ。船体に据えられた出撃ポッドは発進レールに繋がれ、その先が海面になっていた。
『Z1、出撃準備よし』
『Z3、出撃準備よし』
駆逐艦の呼び出し符号である“Z”と番号を名乗る二つの声が、レシーバーを通して艦橋に届いた。彼女は後部を見、次に前部から来る波を見て、通信機を取った。
「出撃!」
乾いた圧搾空気の音が響く。後部左舷側の第一ポッドから艤装を装着した少女が海上に踊りだす。水兵用のセーラー服に略帽を被った彼女は、そのまま白い航跡を引いて“ミルヒクー”から距離を取っていった。続いて右舷側の第二ポッドからも、同じような服装の少女が海面に立った。
二人の駆逐艦少女は、滑らかに水面を切り裂いて、平行に進んでいく。
「さて、俺は引っ込むかな」
「ほんっと、勝手ねアドミラール」
出撃だけ見届けた彼の勝手な言い分に、もはや呆れの溜め息も出てこない彼女は、どうぞご勝手にとばかりに双眼鏡を覗き続ける。それをなぜか満足そうに確認した彼は、慣れた手つきでラッタルを滑って艦内へと戻っていった。
『こちらレーベレヒト・マース。探信を開始するよ』
「了解。くれぐれも気をつけてちょうだい」
いくら敵影が無いと言っても、それは今だけのこと。だから対潜行動時は二隻が一組になって、片方が探信、もう片方が周囲の警戒を行う。そして見つけ次第、警戒役が探信役の指示の下に敵潜を叩くのだ。
とは言っても、今回はちょっと特殊な任務だ。探しているのは敵の潜水艦ではない。彼の言い方を借りれば「最高に面白いもの」、彼女に言わせれば「最高に面倒くさいもの」だ。まあ、これからの深海棲艦との戦いにおいて、この邂逅が重要なのは理解できるが。
それは時間通りに捉えられた。
『潜水艦を発見』
「符丁を打って」
固唾を呑む。もしこれが、敵の潜水艦だったら?下手をすれば、洋上に姿を曝している本艦が狙われるかもしれない。
『長符三回。味方だよ』
ほっと胸を撫で下ろした。探信音を利用した水中通信は、海中に潜む潜水艦が味方のものであると返してきたのだ。彼女は、手にしたままだった通信機のスイッチをもう一度入れて、駆逐艦、続いて艦内へと新たな指示を飛ばした。
「了解。護衛をよろしくね。整備班は収容の準備を」
再び、先程とは別の理由で慌しくなる艦内の空気を感じて、彼女はもう一度確かめるように、双眼鏡越しに右舷側の海面に目を向ける。二人の駆逐艦が輪を描くように航行する、その中央付近が、ゆっくりと盛り上がった。隆起した水面が砕けて、ヒョッコリと二つの頭が顔を出す。水に濡れた、ピンクのショートと、青いテールの二人の潜水艦が、久しぶりの再会となった二人の駆逐艦少女とハイタッチを交わした。
彼女たちの潜水艦より航洋性に優れた設計をされているという二人の潜水艦は、駆逐艦に護られるようにして、彼女の“ミルヒクー”に近づいてくる。朝陽の差す中、きらめく波を掻き分け進む姿は、流麗さと精練された機能美を感じさせた。
リランカ島沖。出会った二つの勢力は、深海棲艦との戦いに、新たな変化をもたらそうとしていた。
◇
鎮守府正面の演習海域。
光の加減で、うっすらと茶色がかった髪が輝くように見える。美しくたなびく長髪が、後頭部で結われたリボンとともに、海風の中に揺れていた。淡い橙色をグラデーションとした、儚さすら感じる衣装を凛々しく着こなし、軽巡洋艦娘“神通”は洋上に立っていた。その視線はわずかに不安を含んで、優しく一点を見つめている。
『陽炎隊、突撃します!』
「了解です。目標はイ一から三、突撃始めてください」
海を少し隔てたところ、いくつかの標的ブイと六人の艦娘が浮かんでいる。そのうちの三人が加速を始めた。目視、そして水上機を使って彼女たちを見守るのが、演習監督官と教官を兼ねる彼女の役割だった。
第二水雷戦隊と呼ばれる高速水上部隊を率いる彼女は、普段から駆逐艦娘の教導を務めている。彼女と、他に二隻の軽巡、そして三個駆逐隊からなる、水雷戦及び護衛任務を帯びた部隊で、現在は二水戦以外にも、阿武隈の率いる一水戦と川内の三水戦、そして那珂隷下の仮設四水戦があった。もっとも、通信や秘匿性などを考慮して、一個艦隊が六隻編成となっているため、この括りはどちらかというと訓練や哨戒のローテーション用にあるようなものだが。
とはいえ、水雷戦隊は水雷戦隊。彼女はその旗艦として、駆逐隊の練成に励んでいた。だからだろうか、こうして二水戦としての訓練が無い日も、自主訓練の監督官―――というよりも教官として、熱心な駆逐隊から声が掛かることが多かった。
今日監督しているのは、二人の新任艦娘を含む第十八駆逐隊。今週末には恒例の新任艦娘歓迎会が開かれる予定の二人が、二水戦の訓練に遅れを取らないようにと、陽炎から申し出があった。
『砲撃戦用意!』
基本的に、彼女は訓練に口を出さない。何をやるかは自分で考えさせ、技術指導について助言を求められればヒントを与える。そういうやり方だ。どちらかといえばぐいぐい自分で引っ張っていくタイプの姉とは、対照的といえる。
『天津風、遅れてるわよ!しっかり合わせて!』
『了解!』
―――あまり、無理をし過ぎないようにね。
心の中で思っても、口には出さない。無理をし過ぎているかどうかは、彼女たちが自分で判断するはずだ。俯瞰している自分が口を出して流れを切るべきではない。
突撃。講評。アドバイスと確認。そして再突撃。駆逐艦娘たちの訓練は、日が沈むぎりぎりまで続いた。
「お疲れ様」
ハアハアと肩で息をする六人の駆逐艦娘を迎える。最後に頼まれて艦隊運動を先導した神通もまた、涼しい顔をしてはいるもののうっすらと汗をかいていた。そこに当たる夕陽の風が心地よい。大きく深呼吸をして、七人の艦娘は埠頭に帰っていった。
ドックで艤装をはずし、工廠から出たときには、陽は背後の鎮守府にほぼ重なろうとしていた。
「報告書は、夕ご飯の後でいいですよ。まずはお風呂と、整理運動をしっかりやっておいてくださいね」
はーい、と返事が重なる。威勢の良い声にそっと笑顔を浮かべて、神通は六人の駆逐艦娘と別れた。
―――少し、海風に当たっていきましょうか。
夕食までは時間がある。お風呂に行ってもいいが、その前に少しだけ、涼やかな風に当たっていたかった。
埠頭のところから、夕陽に照らされる海を見つめる。オレンジ色の光は、もう間もなくで見えなくなる。その前の一瞬が、一際美しい。それが過ぎ去れば、海面を照らすのは星の輝きだけとなる。
夕闇にたそがれる神通の後ろから、カツカツと足音が近づく。風の中にその音を聞き取った神通は、ドキリと心臓を高鳴らせてしまう。リズムだけで、その人物が誰かわかるほどに、彼女と彼の仲は長く、そして深いものと言えた。
「やっぱりここにいたんだな」
「・・・あ」
ゆっくりと神通の横に並んだライゾウに、チラッと視線を向ける。第一種軍装を着込んだ、体格のいい若い男性の横顔を伺い、もう一度海に向き直る。ほんのわずかに頬が熱くなった気がした。
「しっかし、相変わらず駆逐艦は元気だな」
彼はそう言って伸びをする。鍛えられた体が、制服越しにはっきり見て取れた。
「そうですね。こちらも、ついていくのがやっとで」
―――あ、だめ。
この人の前だと、どうしても以前の自分が出てしまう。気弱で、自分をひがみ続けていた頃の、身勝手な自分が―――克服できたと思っていた、自分の弱さが。それをこの人の前で曝け出しそうになるのは、安心のためか、それとも甘えなのか、彼女にはよくわからなかった。
「・・・でも、元気なのはいいことですね。彼女たちのおかげで、この鎮守府があるようなものです」
「そうかもしれないな」
ライゾウの答えは短い。ただし、それ以上の想いが籠もった手が、背丈の低い神通の頭に伸びて、優しく叩いた。
「あ・・・」
「駆逐艦が元気でいられるのは、神通含めた軽巡たちがしっかり見守ってやってるからだ。だから、あいつらは安心してあんなに元気でいられる」
今にも蒸発しそうなほど沸騰した神通の頭を、ふわりと撫でる。もちろん、ライゾウ自身は気づいていない。神通は神通で、頬の赤さを夕陽のせいにしていた。
「もっと胸張れとは言わんが、せめて俺ぐらいには礼を言わせてくれ。ありがとう」
「・・・いえ・・・はい」
―――どうしよう、汗臭くないかな。
手袋越しに伝わる体温にますます心臓が早鐘を打ち、ともすれば思考が飛びそうになる。これがもう少し熱い季節か、海風が無かったら、神通はいっぱいいっぱいで鼻血を出して倒れてしまったかもしれない。ただ、湯立ちそうな頭の中でも、神通は確かに幸福感を感じていた。
「―――さて、飯食う前に風呂だな。どうだ、一緒に入るか?」
「も、もう!からかわないでください!!」
離れた彼の手を少し名残惜しく思いながらも、ひらひらと手を振っている彼を精一杯睨む。こうやって、いつも辛気臭い話の後にふざけたしゃべり方をするのが、彼の癖だった。
艦娘寮とは別の、司令部庁舎へ去っていく背中を見つめる。提督とは違う将校。自分を、今の自分に押し上げてくれた人。時たまこちらへ来ては、駆逐艦娘を優しく見守る、少し歳の離れた従兄のような存在。今は彼に振り回されてばかりだ。でも、いつかは―――
海を振り返る。オレンジから白を含んだ柔らかい色になった光が、彼女を不思議そうに見つめていた。
神通は踵を返して、訓練の疲れを取るために艦娘用の大浴場へ向かう。もしかしたら、夕食の頃にはもう一度彼と会えるかもしれない。
◇
「悪かったね、急に秘書艦をお願いしちゃって」
一通りの書類仕事を終えて、秘書艦の淹れてくれたお茶で一息を吐いた司令官は、自分用の湯飲みを秘書艦机に置く彼女に申し訳なさそうに言った。吹雪は、それに微笑を浮かべて首を横に振る。
「いえ、久しぶりで懐かしいです。訓練もなくて暇でしたし」
吹雪も席に座って、お茶をすする。はあ、と息を漏らした彼女は、台所から出した赤城と加賀特選のお茶請けに手を伸ばした。今日はカステラをチョイスしている。
「ふぉれに、おいひいふぁふてらもいふぁだけましふぁし」
「うん、赤城みたいに口に入れたまましゃべらないの」
相変わらず元気な吹雪の様子に、司令官も苦笑を浮かべる。わずかに頬を赤くした吹雪は、口の中のカステラをしっかり味わいながら咀嚼して、最後にもう一度お茶に口をつけた。甘くなった口の中が、熱いお茶の香りで洗われていく。
「おいしかったです。さすがは赤城さんの選ばれたカステラですね」
「本当においしいね、これ。いつもどこから見つけてくるのか」
「以前、鳳翔さんが長期休暇から戻られたときのお土産だったそうですけど・・・」
「ああ、あの時の」
今日に限って、吹雪が秘書艦を務めているのには理由があった。本来今日は扶桑が担当する日だったのだが、艤装の不具合を調整するために工廠から呼び出しがあり、朝からそちらに付きっ切りだった。しかも、長門は大和の鍛錬、赤城は休日、加賀は瑞鶴と艦隊演習中で、どうしても午後からでなければ秘書艦業務に就けそうになかったのだ。
そこで度々秘書艦経験のあった吹雪が、午前中のうちは臨時に秘書艦を務めることになった。
「そうか、そんなこともあったな―――色々とあったんだよな。この一年と少し」
司令官は懐かしむように呟く。今でこそ、百名以上の艦娘と数十人体勢の工廠部が所属しているが、この鎮守府が開設されたとき―――吹雪と司令官が着任したばかりの頃は、庁舎も寮もガラガラの、寂しいものだった。その頃の思い出を共有するのは、二人と工廠長、後は工廠に詰める妖精さんたちぐらいだ。
「そうですねえ。懐かしいです、初出撃のときの司令官のうろたえっぷり」
「や、やめてくれよ吹雪。自分でも思い出すのが恥ずかしい」
ふふっと手の甲を当てて、吹雪は笑った。こういう司令官は珍しい。
「まあ、あの時の経験があったからこそ、今こうしてやれてるんだろうけどね」
「一理あるかもしれませんね」
手探りでの試行錯誤、その繰り返しの上に、今の鎮守府がある。ある意味で、鎮守府そのものが吹雪の思い出と言えるかもしれない。
「最初はどうなるんだろうって不安でした。今だから言えることですけど」
「・・・そうか」
吹雪はそっと湯飲みの縁をなぞる。そろそろ中天に昇ろうかという太陽が、斜めに執務室に差し込んでいた。
「・・・って、なんだか辛気臭いですね」
すみませんと、吹雪は苦笑した。立ち上がって、空になった二つの湯飲みとカステラのあった皿を台所へ片付ける。その後姿を、司令官は黙って見守っていた。
蛇口から水の流れる音と、その中で洗い物をする吹雪の鼻歌が聞こえてきた。なんとなく、通い妻みたいだなという感想を抱いてしまったのは、吹雪には内緒にしようと司令官は思うのだった。
「・・・なあ、吹雪」
「はい?」
洗い物を終えた吹雪は、手を拭きながら司令官の問い掛けに答えた。
「俺は、絶対に吹雪を沈めたりしない。吹雪は俺にとって大切な存在だ。もちろん、みんなも。大切な人を守れるなら、何だってする」
司令官の言葉に、不覚にもドキリとしてしまう。当然の如く、顔の温度が急上昇していくのが、はっきり感じられた。口を開けずに、司令官の話に耳を傾け続ける。
「だから、吹雪には―――みんなにも、何かあったら頼って欲しいし、たまには甘えて欲しい。そう勝手に思ってる」
司令官の考えは、吹雪も日頃からよくわかっているつもりだった。彼は今自分で言ったように、少しでもみんなの頼りになろうと、その距離を縮める努力をしている。積極的に声を掛け、環境改善の要望には真摯に対応し、暇さえあれば演習や新兵装の試験に立ち会う。新任艦娘の歓迎会の提案があったとき、一言目には賛意を表明して各種調整をこなしてくれた。
そして、最たるのが食事だ。士官ともなれば、普通は多少豪華な食事になるのに、わざわざそれを司令部に断って、艦娘と同じものを食べている。今では色んな艦娘に混じって、日々の定食メニューに悩む毎日だ。ちなみに、始めは「みんなが気を使うから」と遠慮して執務室で食べていた司令官を食堂に引っ張り出したのは、吹雪だったりする。
「だからその・・・。―――いや、やっぱりなんでもないよ」
―――わかってますよ、司令官。
吹雪には、司令官の言い掛けたことがよくわかる気がした。それは、もしかしたらそれだけ長く、彼と共にやってきたからかもしれない。
司令官の言葉に頬の緩みが止まらない吹雪は、それがとりあえず収まるまで、ゆっくりと手を拭く。初夏とは別の、司令官の優しい温かさに、吹雪はささやかな幸せを感じていた。
吹雪の出番が無理矢理な気がする?気のせいだ
本当はもう一つぐらいエピソード(摩耶様となっちゃん)があったんですけど、それはまた別の機会に・・・
後、すごくどうでもいいんですけど、この話の中の金剛型改二については、『大和撫子紫電改』シリーズに登場する雲仙型を参考にしていたりします。
まあ、あっちはさらにぶっ飛び性能だったりしますが。しかも戦艦じゃなくて超巡洋艦ですし。
読んでいただいた方、ありがとうございます。いつもこれぐらいのペースで書けるといいのですが・・・。