魔法使いはヒーローなのか   作:千川 悠汰

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久しぶりの投稿です
思ったより書けたのでこちらを先に投稿します


ヒーロー、或いはただのバカ

  いきなりだがステージギミックと称された一際デカいこのロボット。一見すると単なるデカくて強い理不尽の塊のような存在だが、このロボットはそれ以上に重要な意義がある。

 

 端的に言えばデカいロボットは妨害用オブジェクトであると同時に評価用の器具でもあるのだ。圧倒的脅威によって周囲の人間が危険に晒された時、受験者たちはどんな行動を取るのか。それを雄英の教師たるプロヒーローが確認し採点する。

 

 これは救助活動P(レスキューポイント)と呼ばれ、(ヴィラン)の制圧に並ぶ基礎能力を数値化したものだ。審査制のため主観が混じることは避けられないがそこは雄英。複数人による審査で厳正に採点される。

 

 …と、長々書いたはいいものの何を言いたいのかというと、要は救助活動をした時はちゃんと見てるし得点になる。さらにその状況はデカいロボットが積極的に引き起こしますよということだ。だから受験者はただステージギミックを避けるのではなく、関わっていく必要もあるのだ。

 

 では仮に、立ち向かって行ったのが単純にデカいロボットと闘いたいだけのバカだった場合は?

 

 ◇ ◇ ◇

 

 目線の先には暴れ回るデカいロボット。それの足元には転倒や瓦礫に巻き込まれるなどして身動きの取れない受験生が数名。それプラス逃そうとして悪戦苦闘している何人かが居るといったところか。取り敢えずあの10人ちょいを退かさないとどうも出来んな。

 

「《転移VI》。…ん、ちゃんと来たな」

 

 後ろを振り返ると、あまりに急な転移に驚いたのか飛ばされた全員が硬直している。まあ、流石にずっと呆けているって訳じゃないだろうから忠告だけでいいだろう。

 

「あと怪我してたら動きも制限されるか。えーっと《上位回復III(ハイヒール)》かけて…危ないからここから動くなよ?」

 

 《跳躍V》、《重力制御II》、《魔力制御VII》と…まあこんなもんか。あんまり魔法を重ね掛けても過剰威力になるだけだしな。

 

 デカいロボットの真ん前に飛び上がり堂々と仁王立ちをかます。ロボットはこちらに気づいていなかったようだが、奇襲を仕掛けても面白くない。折角元の世界にはなかった巨大ロボットとの闘いなのだから、真っ向からやり合って楽しみたい。

 

「しっかしほんとスゲェな!銃火器すらデケェし数多いし、楽しめそうだ!!!」

 

 俺の声にロボットが反応した。いっぱい目がある顔を物々しく動かし、戦闘の意思を見せてくる。そして1、2、3Pのロボットたちと違って発声もせずに躊躇なく攻撃してきた。うん、殺意はこっちの方が断然上だな。

 

「ま、反撃出来ないってほどじゃないな」

 

 強化した素手で思いっきり殴り飛ばし軽くその場で足踏みさせる。うーん…本当は転倒させるつもりで殴ったんだけどな。どうやら一筋縄ではいかないようだ。

 

 とはいえ時間稼ぎにはなったのでついでに腕とかを捥いでおく。《アクアランスIV》を1本ずつ左右に発動する。魔法陣から生成された水が波打ちながら槍の形に瞬時に変形し、また水の色に至っては魔力の濃度や密度の関係で光を吸収して軽く黒っぽく見えるほどだ。我ながら良い出来だと褒めたい。

 

 まさか魔法の発動を見て焦った訳ではないだろうが、バランスを崩していたロボットが多様な武器をこちらに向けその巨体からは想像つかないアクロバティックな動きで攻撃を仕掛けてくる。想定より立ち直りが早いが…迎撃するこを加味してもやる事は変わらない。

 

 槍を2本を射出し、左右の前腕部を粉々に粉砕する。っと、落下する破片のことを考えていなかった。《拘束IV》で取り敢えず元の位置に固定して粉砕してもその場に止まるようにすればいいか。

 

 ひとまず、たった2本で両腕を破壊できたことに威力を確信し、片手を挙げて空中に大量の魔法陣を展開する。若干数が多いかな?とは思うものの、確実に壊すことを目的とするならばこれぐらいがちょうどいいだろう。てか両腕無くなっても攻撃止めないのかコイツ…

 

 大量の水の塊がビュンビュンと風切り音を立ててロボット目掛けて飛んでいく。1本当たる度にロボットの金属の体がギィィィン!!!と音を立てながら粉々になっていった。

 

「ラス1っ!仕舞いだオラぁっ!!!」

 

 ロボットのド真ん中に槍を思いっきり叩き込む。金属の体全体に細かい亀裂が走り、最後の一片になるまで粘り強く動いていた巨体が完全に停止した。いやはや、機械ながら見事な執念だった。人工知能にあそこまでの執念を持たせるとは…雄英とは随分恐ろしい場所である。

 

 ロボットの残骸の近くに受験者がいない事を確認してから重力制御を切った。身体を包んでいた浮遊感がなくなると同時に、金属片になった残骸が落下し始めた。体を形作っていた金属片や粉末が真っ直ぐ落ちてくる。

 

「ふーむ…まあまあまあ。うん、もうちょい術式の選択考えないとな」

 

 今回は事前に想定したいたものよりも事前準備の不足から来る咄嗟の行動が多くなってしまった。前世の、それこそ戦闘に重きを置いていた頃なら戦闘能力の推測や対処の為の手段考案まで含めてもっとスマートに行っていただろう。かなり腕が落ちたなと自分のことながら思わざるを得ない。

 

 やはり一度本格的にヴィランやらを相手に稽古した方がいいかもしれん。魔法というこの世界にない技術に胡座をかいて負けたら大恥だ。

 そして何よりそうなると俺自身が耐えられなくて自決を行なう可能性がある。あー、でもヒーロー免許とかの問題点があったな。

 

 だったら今の世界から上位存在が溢れかえっている元の世界の高位次元に行けないか試してみるか。あんまり気乗りしないが…手っ取り早く上のフェイズの感覚に慣れるのを考えたらこっちの方がいいんだよな。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「な…なんだったのアイツ…」

 

「単純な身体強化だった…のかな?」

 

「そしたらあの()の説明がつかないだろ。ていうか浮いてたし」

 

「液体操作系じゃない?血液とか空気中の水分とか」

 

 明慈は預かり知らぬところではあるが、強制転移を用いて集めた受験者たちを中心に同会場にいた受験生、そして救助活動Pの採点をしていた教員たちの間で大きな混乱が起こっていた。

 

「えっと…彼の個性は?」

 

「《魔法》だそうです。願書の添付書類にもそう記述されていますので間違いはないかと」

 

「ってことは!!あの男子リスナーはマジェスティックのファンボーイってか!!」

 

「まあその辺の真偽は兎も角、彼を評価しない訳にはいかないね」

 

 敵Pでトップ争いをし、救助活動Pに至っては10名弱を危険域から救出した挙句大元のロボットの破壊。《個性》の不明瞭さなど歯牙にも掛けない大活躍であり、筆記試験次第ではあるものの不合格など到底言い渡せないレベルの試験結果だった。

 また、具体的な評価こそ出来ないが巨大ロボット討伐時には周囲への被害を考えた動きも見せており、実際に現場で働くプロヒーローたちからの印象もかなり良くなっているのも合格に有利に働いたと言えるだろう。

 

 なお、本人はフェイズ3での魔法出力の威力の確認をしたかっただけ。…なんて話以前のただ目の前にデカいロボットがあったから闘いたかったとかいう超私的理由で前に出たのである。とはいえ本人の思惑が分からなければただの善意に見える行動なんてのは古今東西どこでもよくある話だ。

 ちなみに更に言えば本人の精神年齢はイレイザー・ヘッドどころかミッドナイトをも上回るおっさん*1なので、前世の経験分も考えると寧ろだいぶ悪手打ちまくりの私欲を優先したカス中年なのだが…残念ながらそれを知る者は本人以外にはいないのだ。

*1
享年26歳に+15歳なので41歳。一応肉体に引っ張られてだいぶ若々しい感性に戻っている




恒例の蛇足
ご覧の通り我欲は強いしそれを満たすためにバカになることも多いです。ただ、魔法使いとしてのポリシーがあるので非関係者にはなるべく被害が出ないよう気をつけてはいます。それはそれとして自分第一優先で動くこと多め。
というかそれぐらいおかしくないと前世で上位存在に刃向かおうなんてヤツになりません。
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