「じゃ、次やるときはどうするか会議でもしますか~」
七海がポテトをつまみながら、悪だくみモードの顔になる。
「逢瀬学園レベル高すぎ問題を、もっと世に知らしめるためにですね」
「やめろやめろやめろ」
青見が即座に止めに入る。
「これ以上ハードル上げてどうするんだよ」
「むしろ下がる要素あった? 今日」
「ないな」
惣一郎が即答した。
「むしろオレの女装っていう“変な伝説”まで増えたしな。黒歴史だよ黒歴史」
「大丈夫。写真撮ってないからセーフ」
「愛香のスマホに思いっきり残ってるよな」
「それは別腹」
「別腹ってなんだよ」
そんなやり取りを聞きながら、七海がぽん、と手を叩いた。
「じゃ、次は“追加メンバー”入れようか」
「追加?」
「うん。安生道場組とかもさ~。
前から思ってたんだけどさ、あそこも大概レベルおかしいじゃん?」
その言葉に、一番最初に反応したのは青見だった。
「……誰のことだ?」
「安生4姉妹。梨花、友香、ユイリィ、ルテア」
名前を並べられた瞬間、テーブルの空気がちょっとだけざわつく。
「あー……」
彩女が、妙に納得した顔でうなずいた。
「確かにあの4人来たら、見た目のインパクト倍増ね」
「ユイリィの銀髪が悪目立ちしそうだな」
惣一郎が、ストローをくるくる回しながら言う。
「他校勢、髪色ほぼ黒か茶ばっかだっただろ。
そこに“ガチ銀髪”ぶち込んだら、絶対視線持ってくじゃん」
「ルテアもストロベリーブロンドだしねぇ」
七海が補足する。
「銀とストロベリーブロンドが並んで歩いてきたら、
“どこのVチューバーですか?”ってレベルでしょ」
「そういう問題かよ」
青見が思わずツッコむ。
「ていうか、学校的にはあの髪色、どう扱ってんだっけ」
「“地毛なので問題ない”って公式見解でしょ」
彩女が、あっさり言い切った。
「入学のときにちゃんと確認されてたじゃない。家族写真とか昔の写真とか出してさ。
遺伝であの色なんだから、校則でどうこうできる範囲じゃないでしょ」
「そうそう」
七海がうなずく。
「“染めるな・脱色するな”ってルールはあるけど、“もともとその色”はさすがに止めようがないし。
理事長も“あれは地毛だから校則違反じゃない”ってハンコ押してたよ」
「伊集院さん、意外とその辺きっちりしてるよな……」
惣一郎は、ユイリィとルテアの顔を思い浮かべる。
(あの二人、ただでさえ可愛いのに、あの地毛の色だからな……)
想像する。
今日のボウリング場に、
銀髪ポニテのユイリィと、ストロベリーブロンドのルテアが加わった光景を。
(……他校勢、絶対ポカーンじゃない?)
その未来図に、思わず口元がにやっとしてしまう。
「でも、いいかも」
「お?」
「来てくれれば、逢瀬学園レベルたけぇ問題が――」
彩女は、ストローをくわえ直して、どこかいたずらっぽく言った。
「“個人の感想”じゃなくて、“普遍的事実”になりそう」
「言い方よ」
惣一郎が笑いながら肩を震わせる。
「“逢瀬学園? あそこは全体的にバグってる”って評判が固定されるぞ?」
「もう半分くらいなってるわよ、それ」
七海がケラケラ笑った。
「今日の他校組の反応、だいたい“レベルたけぇ”と“近づきにくい”の二択だったからね」
「後半どうにかしろよ」
「そこはほら。
“安生4姉妹”みたいな、明るくて距離感バグってる子たちに任せようよ」
七海は、手を数えながら言う。
「梨花先頭でガンガン絡みに行くでしょ。
友香は人当たり良いから、その場の空気柔らかくなるでしょ。
ユイリィとルテアは、見た目でインパクト残したあと、普通に喋ったらいい子ってギャップで人気出るでしょ」
「分析が的確なんだよなぁ……」
青見は、少しだけ遠い目をした。
「でも、あいつら連れてくると、別の意味でカオスになりそうだぞ。
特に梨花。あいつ、多分“合コン”って分かった瞬間、主導権握りに行く」
「それはそれで面白いからOK」
「お前は本当に主催者としてどうなんだ」
惣一郎が呆れながらも、どこか期待混じりに笑う。
「でも、面白そうではあるな」
「惣くんも、そう思う?」
「まあ、“普通の交流会”よりは、確実にイベントとしての完成度上がるだろ」
「評価基準そこなんだ……」
愛香は苦笑しながらも、どこか楽しそうだった。
「ユイリィちゃんたち来てくれたら、女の子同士でも話題増えるしね。
……惣くんの女装は、もういいかなって思うけど」
「そこは全力で賛成だわ」
彩女が即座に乗る。
「次やるなら、ちゃんと男の制服で来なさいよ。
今回みたいな“儚げ美少女ソウコちゃん参戦”は、一回でお腹いっぱい」
「いやオレもだよ!? さすがに二回目やったら本当に変な噂立つだろ!」
「“逢瀬学園には銀髪とストロベリーブロンドと女装美少女がいる”って?」
「やめろ」
全員、同時に吹き出した。
テーブルの上には、空になったグラスと、食べ終えた皿。
ファミレスのざわめきの中で、笑い声だけがぽん、と少し高く跳ねる。
次の交流会が本当に開催されるかどうかなんて、この時点ではまだ決まっていない。
けれど――
“安生4姉妹も呼ぶか”という一言が、
この先の二学期を、もう少しだけ騒がしくしてくれることだけは、
全員、なんとなく予感していた。