逆行したヒカルと佐為が藤崎あかりを魔改造するお話   作:そとみち

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土日も勢いで二回行動します。反応が255になってる。


13 そこだ!! いけーっ!! つよつよ幼馴染概念でクソボケ本因坊を中押し勝ちしろーっ!!

 

 

 クリスマスデートと言えども、小学四年生ではやれることはたかが知れている。

 公園を散歩したり、時折書店に寄って囲碁関係の本や棋譜などを立ち読みしたり、背伸びしてアパレル系の店をウインドウショッピングしてみたり、お昼はやっぱりラーメン食べて、カフェでお茶しながらもついつい癖で予想碁をお互いの脳内で盤面を組み上げて一局打ったりして。

 いつもとそこまで変わらない、しかし確かな特別感のある二人きり(+α)の時間を過ごしたヒカルとあかり。

 楽しい時間が過ぎるのは早く、もう間もなく空の帳が夜を迎えようとしていた。

 小学四年生の二人は、暗くなった時間にあまり外を出歩いていられない。

 18時には帰るようにお互いの親に言われているので、家に向かう大通りを抜けて帰路についていた。

 

「楽しかったな、今日は」

「うん! アクセサリーも買っちゃったし……ヒカルと一緒だったから楽しかった!」

「あはは。俺もあかりといて楽しかったよ。たまにはこうやってのんびりするのもいいな」

『(喋るなと言われたので口に×マークのマスクをつけている佐為)』

 

 普段の囲碁を打ちあう大切な時間とは別に、こういう何でもない日常も楽しめる余裕がヒカルにはあった。

 もうこの世界で何年も過ごしているが、夢のような世界だという認識は変わらない。

 大切な存在である佐為と出会い、前の時よりも長い間、囲碁に没頭できているのだ。

 さらにあかりまで自分に並ぶ成長を見せて。

 この時間が失われないという保証は無いが、だからこそ毎日を大切に、焦る事なく、悔いなく過ごそうと考えることができていた。

 

「…………ねぇ、ヒカル」

「うん?」

 

 そしてお互いの家が見えてきたところで、あかりがヒカルに切り出した。

 切り出す内容は、お別れ前のキス……なんていうしゃれたものではなくて、もっと大切な聞きたかったこと。

 

「ヒカルはさ。囲碁のプロに……なるんだよね?」

 

 前々からあかりが聞こうとして聞けなかったこと。

 言おうとして、言わなかったことだ。

 これをはっきりさせてしまえば、お互いの距離が変わってしまうから。

 でも、今日という特別な日をきっかけに……覚悟をもって、距離を詰めることをあかりは選んだ。

 

「────……ああ。オレはプロになるよ」

『……』

 

 ヒカルの答えは、肯定だった。

 碁のプロになる。

 それは、ヒカルが佐為という存在を知った時点で、果たさなければならない絶対条件。

 神の一手に向けて歩むことを、ヒカルは目指していくと。

 

「……そうだよね、やっぱり。テレビとかでプロがやってる対局を見ても……ヒカルの方が強そうだな、って思う事あるし。佐為のおかげで私もヒカルも強くなったけど……ヒカルは将来、囲碁のプロになるんだね」

「ああ。来年から本格的に動いてって……中学上がるころにはなれたらいいなって考えてる」

「そうなんだ……」

『あかりちゃん……』

 

 あかりに嘘を言う事は躊躇われた。

 ヒカルとしても、これまでずっと一緒にいたあかりが、自分がプロを目指そうとしていることを察しているだろうとは思っていた。

 その上で、実際に碁会所巡りとか大会とかに出てみて、本人にその気がありそうならプロへの道も案内してみようか、とも思っていたのだが。

 しかし、女子とはえてして男子に比べて早熟なのだ。

 

「……じゃあ、私もプロになる!」

「!!」

『まぁ……! 自分で選んだのですね、あかりちゃん!』

「決めたの! ヒカルがプロになるなら、私もプロになる! もっとヒカルと一緒にいたいし……私も、私だけの宇宙を創ってみたいって思うの! 二人が初めて見せてくれたあの盤面に負けないくらい綺麗な一手を、私も目指したい!」

 

 あかりは、自分もプロになることを決めた。

 ヒカルの傍から離れたくないから。

 自分でも、ヒカルと佐為が見せたような魂を込めた一局を打ちたいと。

 そう、ヒカルと佐為の前で宣言した。

 

 そして、もちろん、あかりが自分からそう決めたのなら、ヒカルの答えは一つだった。

 

「そっか。じゃあ、これからももっと囲碁の勉強頑張らないとな。俺もあかりがプロになるって夢、心から応援する」

「ホント? ……ヒカルは、私がプロになるの、応援してくれる?」

「ああ! 楽しそうじゃねーか! あかりはこれからもっと棋力伸びるだろうし、オレも負けないくらい強くなるから! 俺に追いついて、追い抜くくらい強くなってくれよな、あかり!」

「……うん! いつかきっと、ヒカルにも佐為にも互先で勝てるくらい強くなるね!」

「おう! 二人でタイトル総ナメしちまおうぜ!」

『ふふ……その意気ですよ、二人とも』

 

 ヒカルの心は喜びで満ちていた。

 前の世界よりも随分と早く囲碁に興味を持ってくれたあかりが、自分たちと同じ道を目指してくれる夢を持ってくれた事に感謝した。

 ならば、自分はより一層の指導を。あかりがもっと強くなってくれるように。

 そんな誓いをお互いに果たして、10歳になった二人はまた一歩心の距離を縮めた。

 距離が縮まったことに、ヒカルは喜んだ。

 あかりも喜んだ。

 

 だがあかりは強欲だった。

 心の距離を縮めたのだから、体の距離も一歩縮めたかった。

 

「……あ、UFOが空飛んでる」

「は?」

『えっ!? どこ!? どこですかあかりちゃん!? テレビでやってたゆーふぉーが飛んでるんですか!?』

 

 空を指さして、当時流行していた都市伝説のUFOが飛んでいると急に言い出すあかり。

 ヒカルは唐突な幼馴染の発言に思わず隣を歩くあかりの顔を見るが、好奇心旺盛な佐為は未知の飛行物を探そうと夜空を見上げてわたわたと探して。

 

「────」

「────っ!?」

『どこですか!? どこにもいませんよー……あっあれ!? あれですかもしかして!? 動いてますか!? ただの星のようにも見えますが……!?』

「──…………えへ♡」

「……お前、なぁ……」

『ちょっと!? あかりちゃんどのあたりに見つけたんですか!? ヒカルも探しましょう! UFOですよUFO!!』

 

 どれだけ夜空を探しても見つからずに、ヒカルに助けを求めて視線を下げる佐為。

 しかし夜の帳を下ろしたこの場では、はにかむあかりと困惑するヒカルの頬の色を識別することはできなかった。






この辺りでプロローグ終了。次回から脳焼きターンが始まります。
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