逆行したヒカルと佐為が藤崎あかりを魔改造するお話   作:そとみち

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※注意
あかりのお姉ちゃんの名前が調べても出てこなかったのでオリジナルにしています。
筒井先輩準スタメンにして脳を焼きたいがための一歩目です。焦土にしてやりてぇ。


15 これから毎日筒井先輩の脳を焼こうぜ?

 

 ヒカルとあかりが小学五年生になった4月。

 視点はここ、葉瀬中学校に移る。

 

「あー、二年からの部活どうしよっかなー……」

 

 藤崎あかりの3つ上の姉である藤崎ゆかりは、中学二年生へと進級した現在、部活動選びに悩んでいた。

 一年生の頃は友人に誘われてバスケ部に所属していたが、ガチで全国を目指す感じの部活であり、雰囲気で入部したゆかりとはノリが合わず、3月に退部していたのだ。

 もっとも、原因は部員との仲が悪かったりという事ではない。

 練習の内容と時間がキツい、という事情での円満な退部であったことを申し添えておく。ガチ系の部活にはよくあることだ。

 

 さて、そんなゆかりが二年生になり、新たに部活を探すかどうか悩んでいた。

 部活に入部しなければならないという校則はないので、入部せず過ごすという選択肢もある。

 ただ部活に入って何かにハマり、部員と仲良くなって先輩後輩と楽しく……という学生生活の楽しみもある。

 バスケ部の練習はキツかったが友人関係は楽しかった。そんな経験があるゆかりは、この時期部員募集を行っている部活がポスターを掲示する掲示板に向かっていた。

 もし面白そうな部活があれば、見学だけでも……と考え、掲示板を眺める。

 

「んー……、ん?」

 

 大きなバスケ部のポスターの他、陸上部、将棋部、卓球部……と有名な部活のポスターが数ある中で、一つの小さな手作りのポスターがゆかりの目を引いた。

 『囲碁部』。

 掲示板の隅のほうにこっそりと張り付けられていたそれは、間違いなく去年は無かったものだ。

 ゆかりは妹であるあかりの影響で囲碁を覚えている。ある程度の興味はあったし、囲碁部があると去年の時点で知っていれば間違いなく様子を見たりはしただろう。

 しかし葉瀬中で一年過ごして囲碁部の話なんてとんと聞いたことがない。どういうことだろう。

 

「えっと……え? 1-1の筒井……まで? なんで?」

 

 ポスターの内容を見れば、部室や部活スケジュールなどの記載は一切なく、ただ個人あての案内が書かれているだけで。

 しかも宛名は一年生。まだ入学して一カ月もたっていない生徒の名前がなぜポスターに載っているのだろう?

 ヘンテコなポスターに、むしろゆかりは興味を引かれた。

 面白そうだ、と思ってしまった。

 

「……探してみよっか!」

 

 そうと決めれば善は急げ。

 一年一組の教室に向かい、放課後まだ数名の生徒が残っている教室内に乗り込んだ。

 いきなり知らない先輩が入ってきて驚く新一年生。

 そんな事はまったく気にせずに、近くにいた女子生徒にゆかりは声をかけた。

 

「ねぇ、筒井くんってどの子かわかる?」

「は、はいっ。筒井くんなら……」

 

 女子生徒が指さした先、藤崎ゆかりの乱入にも気づかずに自席で本を開いている、眼鏡をかけた幼さの残る顔立ちの少年の姿があった。

 彼こそは伝説の筒井先輩。

 かつての世界で、囲碁部の無い葉瀬中に入学してから二年以上も囲碁部の創立を独力で実施し続けた、愛すべき囲碁バカの鑑、筒井公宏である。

 

 女子生徒に礼を言い、ゆかりは筒井の座る席に歩み寄る。

 見れば、彼が手に持っているのは詰碁集だ。

 なるほど、ポスターと筒井という少年が繋がった。

 恐らくはかなりの囲碁好きなのだろう。教室で詰碁集を読むほどとは。

 

「うーん…………」

「……」

 

 すぐ傍まで近づいても筒井はゆかりに気付かず、詰碁の問題を夢中で解いている。

 余りの集中力に声をかけるタイミングを失ったゆかりが、筒井が解いている紙上の盤面に目を通す。

 少し考えて、答えはすぐに分かった。

 

 日頃からあかりと、時々ヒカルにも指導碁を打ってもらっているゆかり。

 中学に入ってからは囲碁を嗜む教師である理科のタマ子先生がたまに誘ってくれるので、暇つぶしの延長で学内でも石をつまんでいるが、しかしゆかりの棋力は初心者と比較すれば十分に高かった。

 特に、あかりの指導碁が気持ちよく道を示してくれるので、真剣に取り組んではいなくとも自然に成長していたのだ。

 悩める少年より先に答えが分かったゆかりはにやりと笑い、驚かせてやろうと悪戯心を発揮して、筒井の耳元で囁いた。

 

「……3の十四、4の十四、1の十六♪」

「っわぁっ!? え、え、え、え……!? え……っ!?」

「合ってるでしょ?」

「あ、あ! あ……あ、えっと……合って、ます……!!」

「だよね。やった」

 

 作戦成功。

 ゆかりはにやりと笑い、目の前で驚愕の赤面を見せる筒井に笑いかけた。

 いきなり耳元から女子の声がかけられ、しかもそれが詰碁の答えであり、解答を見れば見事に的中していたことで、筒井の脳は情報がオーバーフローした。

 

「筒井くんって君だよね?」

「えっ、あ、はい」

「私、二年の藤崎ゆかり。話があるからちょっと来てくれる?」

 

 とはいえ一年生の教室で二年生が長話できるはずもない。

 時々タマ子先生と囲碁を打つときに使わせてもらっていた理科室に筒井を連れて行き、そこで詳しく話を聞くことにしたゆかり。

 いきなり美少女の先輩に逆ナンされた筒井は、12年間の人生史上最大の混乱を伴いながら、ゆかりに促されて後ろをついて歩いて教室を出て行った。

 

 

 そして理科室にて、ようやく心臓の鼓動が落ち着いてきた筒井と、可愛げのある後輩の様子をにやにや眺めていたゆかりが、本題を話し始める。

 

「……で、筒井くんはなんで囲碁部のポスターを? あれ、自分で作ったんでしょ?」

「あっ、はい。その、ボク、囲碁が大好きで! へたっぴなんですけど、囲碁をみんなで、楽しんでやれればいいなって思って……!」

「ふむふむ。でも葉瀬中に囲碁部って無かったよね?」

「はい! 先生に聞いたらそうだというので、自分で立ち上げようと思って! 三人集めて大会に出られたら、学校にも認めてもらえるかもって話だったので!」

「なるほどなー。すごい情熱だね」

 

 話を聞いてゆかりは普通にすげーなこの子、と内心での心象を改めた。

 囲碁部の無い中学校で、ゼロから囲碁部を立ち上げようと入学してすぐに決意するほどの囲碁への愛。

 自分にはない物だが、大したもんだわこの子、とため息をついて熱く語る筒井を眺めていた。

 

「そ、そのっ! 藤崎先輩も、囲碁をやられるんですか!?」

「そんな堅っ苦しくしなくていいよー。ま、私はルール覚えてるって程度だけどね、大好きってほどでもないんだ、ちょっとポスターが気になっただけでさ」

「えっ、あの詰碁集の問題を解いたのに……?」

「あれは簡単な問題でしょー?」

「……!!」

 

 筒井は放課後の理科室で年上の美人の先輩と二人きりで話すというシチュエーションに緊張しつつも、しかし囲碁への愛からなんとか言葉を交わすことが出来ていた。

 そして、自分がじっくり悩んでも解けなかった詰碁の問題を簡単だとまで言い放ったこの先輩が、もし囲碁部に入ってくれたら……そんな希望が筒井の胸の内に浮かび、勢いのままに口にした。

 

「そっ、その!! 藤崎先輩! 囲碁部に入って、ボクと一緒に囲碁部を作ってくれませんか!?」

「えー? ……あー、ちょっと待って? どーしよっかな」

「えっ……」

 

 だがゆかりの答えは芳しいものではなかった。

 ゆかりは囲碁が大好きというほどではない。自分で言う通り、遊びでつまむ程度だ。

 先程は存在しない囲碁部のポスターと、そこに何故か一年生の名前が記されていたことから興味本位で話を聞きに行って、こうして呼び出したりもしてしまったが、実際囲碁部に入るかどうかと言われたら即答は悩まれた。

 ゆかりが求める部活は楽しくみんなでワイワイやる部活である。

 筒井くんも悪い子じゃないとは少し話しただけでもわかったけれど、後輩男子一人を相手にもくもくと囲碁やるのはなぁ……、というのがゆかりの感想である。

 

「じゃっ、じゃあ! ボクと囲碁で勝負して、勝ったら入部でどうでしょうか!!」

「おー?」

「囲碁部の人数を増やしたいんです! 囲碁の楽しさをみんなに分かってほしくて、ボク……!」

 

 だが筒井はめげなかった。

 このわずかなチャンスを逃したくない、囲碁部を大きくしてみんなで囲碁を楽しめるようにしたい……、と下心0%囲碁愛100%でゆかりに勝負を申し込む。

 

 真剣な筒井の表情にほんのちょっぴりドキっとしたゆかりだが、ここまで真摯にお願いされて、嫌だと言うのは流石に気が引ける。

 元々、筒井くんにしてみれば、思わせぶりな態度を取ったのは自分の方からなのだ。

 勝負で決めるというなら分かりやすいし、筒井くんの囲碁の腕前もちょっと気になる。

 もし負けてもこの子の性格なら入部を無理強いまでして来ないだろう、と考え、軽い気持ちで了承の意を伝えた。

 

「よし、いいよー。それじゃ打とうか。実は理科室の棚のここにね、折りたたみの碁盤と石置いてあるんだ。タマ子先生の私物だけどね。たまに私、先生と囲碁打って遊ぶんだよー」

「わっ……じゃ、じゃあ一勝負、お願いします!」

「そんなかしこまらないでー。私いっつも妹に負けててヘボだしさ、タマ子先生には流石に勝つけど先生こそそんなしっかり打たないし。筒井くんが勝つよ、きっと。でも勝敗に係わらず、私が入部するかどうかはしっかり考えさせてくれない?」

「も、もちろんです! これはボクからのお願いですから! 先輩がよろしければ……! でも、学校で囲碁が打てるなんて……葉瀬中に入学してよかった……っ!!」

「泣くほどかい。海王中だったら囲碁部がすごく強いんじゃなかったっけ? そっち目指さなかったの?」

「葉瀬中に囲碁部がないと知らなくって……それに、海王中だと私立で親にも負担掛けちゃうなって思って……成績も入試受かるほどじゃなくて……」

「あらま。メガネなのに?」

「メガネは関係なくないですか!?」

「あは、そりゃそっか。ごめんごめん、ふふ……ま、それじゃ打ちましょっか。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします!」

 

 夕方が近づいた夕暮れ時の理科室で。

 藤崎ゆかりと筒井公宏は、一年早い葉瀬中囲碁部の初対局を始めた。

 

 

 

 

 

 

「いや、弱っわ」

「ごめんなさい……ありません……」

 

 なお結果は筒井のボロ負けであった。

 

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