逆行したヒカルと佐為が藤崎あかりを魔改造するお話 作:そとみち
一日二回投稿はもうしないと言ったな(言ってない)アレは嘘だ。
今週ほとんど日刊ランキング上位キープ&朝起きたら総合評価6666目撃&UA10万&お気に入り4000突破のご愛顧大感謝記念に金土日はいつもの時間で二回行動します。かしこ。
「『ネットアイドル☆囲碁天使ライトちゃん』ねぇ……」
「わ、すごい。可愛いイラストがあるー!」
『あかりちゃんが女の子だとバレてしまっているのでしょうか?』
ヒカルはあかりと佐為と共に眺める自宅のPCで、某掲示板で話題になっている『light』の擬人化萌えキャライラストを見てため息をついていた。
掲示板の書き込みには、『ライトたん萌え〜』、『ギザツヨス』、『ライトたんネ申』、『御三家の詳細キボンヌ』等のネットスラングが飛び交っている。擬人化されたlightのAA*1も大量に投下されていた。時代を感じる。
先日、ゆかりの部屋で筒井に指導碁を打つ中で、筒井からネット上でlight、sai、h-i-bが噂になっているという事を聞き及び、その評判とやらを見てみることにしたのだ。
チャイルドセーフティはこの時代にも存在したので、それをえっちらおっちら解除して、それぞれの名前で検索してヒットした某掲示板を見たのだが、そのスレタイにとんでもないパワーワードを伴ってlightの名前があったものだから、ヒカルは顎をすとんと落として茫然としてしまった。
「なになに……lightは『囲碁の天使。打てば打つほど実力が上がる幸運の女神。対局出来たらその出会いに感謝しよう』……ね。なるほど、あかりの棋風はネット民もすっかりご存知ってわけだ」
「うーん、自分では別にそういうの意識してないんだけどなぁ。ただお互いの石で出来る限り綺麗な宇宙が広がるようにって思って打ってるだけで……そっちの方が上手く打てるし……」
『それもまた才能ですよ、あかりちゃん。ところでヒカル、私達の風評はどうなっているのでしょうか?』
「あかりのそれは才能だよ、佐為もそう言ってる。んでオレたちの風評も気になるみたいで……どれどれ……」
囲碁スレでは自分たち三人の名前が頻繁に上がっており、正体不明の実力者として色んな考察なども上がっているようだ。
ヒカルたちはそれを眺めて退屈はしなかった。おおよそ的外れな内容ばかりだったが、天才小学生たちが放課後にやってるんじゃないか、とログイン時間で逆算した説を見た時はちょっとビビった。即座にスレで否定されていたが。
「……saiは神格化されてんな。ふふっ、『囲碁の神。神がネットに宿り人々を試している。神の一手を垣間見よ』だってよ。まぁ一柳プロも破ってるし……カリスマあるからなお前の打ち筋は」
『まぁ、神なんて畏れ多い。神の打つたった一手すらまだこの手に宿っていないというのに』
「saiの打ち方はたまに圧倒されちゃうくらい綺麗だもんねー。それで、ヒカルは? h-i-bはなんて?」
「オレは……オイ、なんでハイブなんて呼ばれてんだ。本因坊の略だっての! なになに……『囲碁の悪魔。悪魔的な実力を持つ。挑むなら死を覚悟して打たねばなるまい』……って、なんだぁーっ!? オレだけ風評酷くねーか!? 別に相手をいたぶる様な打ち方してねーぞ!?」
「あっはははは! おっかしー! きっとあれだね、私が天使で佐為が神だから、ヒカルは当てはめる形で悪魔になっちゃったんじゃない? 神と天使と悪魔でバランスいいから」
『こんな子供を捕まえて悪魔とは、ぱそこんの向こうの人たちはひどいですね! 中身はたまに悪魔のように意地悪になりますけれども!』
(うるせーぞ佐為! でもマジでひでぇ話だ……オレだけ二人と比較して対局申し込みが少ねーのってこれが原因かよ!)
それぞれの風評を確認し、ヒカルがなぜかネット上で悪魔扱いされていたことに憤慨する。
ヒカルのネット上での打ち筋は佐為と同じで、実力がはっきり劣る相手には指導碁に切り替えたりして丁寧に打っているというのに。悪魔って。
その後もスレを追えば、三人それぞれと対局したことのあるスレ民が棋譜を『うp』したりしており、かなり話題が活性化しているのが見て取れた。
さらに深くスレを探ってみようかと思ったが、ふと思い当たってヒカルはその手を止めた。
今この場には小学五年生のあかりもいる。
万が一lightの天使のような女の子のアバターのイラストで、秀策が耳赤の一手を打った年齢*2未満閲覧禁止のモノでも出て来ようものならあかりの教育に悪すぎる。この時代のインターネットは治安が悪いのだ。
ヒカルはそっとチャイルドセーフティを掛け直し、スレッド閲覧を終了した。セーフティのパスワードはあかりにバレないように更新しておこう。
「しっかしまぁ、思った以上に話題になってたんだな。こりゃ明かす時が楽しみだ」
「院生になるまでは三人の秘密、だよね? でもなんで?」
「院生でも何でもないガキがすごい棋力を持ってることに、中々納得できない大人ってのがいるんだよ。根掘り葉掘り聞かれるのもめんどくせーし……まぁどの道遅かれ早かれそういうのは多少はあるだろうけどな」
『前の世界ではそれはもう私のせいでヒカルに苦労を掛けましたからねぇ』
改めて自分たち三人のネット上での風評を確認し、ヒカルは嘆息する。
自分にもその気が無いとは言わないが、どうしても碁打ちというのは強い実力を持った相手を見ると、自分も打ちたい、と思わずにはいられないのだ。
誰に教えられたのか、俺と打ってくれないか、と途端に目の色を変えてしまう。
かつての世界ではそれで大変な苦労をしたヒカル。
saiが自分ではないか、と幾人からも疑われて、結局ネット碁がなかなかできなくなってしまった記憶が思い起こされる。
だが、この世界では前提条件が違う。
まず、saiとヒカルの棋力にほぼ差がない点。
実際にここ最近は、ヒカルと佐為が対局しても勝敗数はほぼ互角である。
お互いに棋力を高め合う最強のライバルにして相棒。そんな関係であった。
そのため、今後もしヒカルがh-i-bで、あかりがlightであるとバレたとして……じゃあsaiは誰なのか、と言われたら、ヒカルがもう一つの打ち方を試していた、と誤魔化すつもりであった。
実際にヒカルの手を介してしか佐為は碁を打てないのだ。何をバカな、と言われても事実それを見せつけてやれば相手は黙らざるを得ないだろう。お互いに秀策の棋風が根幹にあるため、類似点も多い。
そんな勝負を挑まれれば佐為が返り討ちにするし、将来的にはプロになってタイトル獲得を目指す予定だ。前の世界ほどの混乱は起きないと考えていた。
そして、もう一点の懸念事項として、あかりがそんな騒動に巻き込まれないかであるが。
これについても、ヒカルと佐為で意識共有は済んでいた。
「もしあかりがlightだってバレて、面倒な大人に絡まれそうになったら……オレと佐為が全部責任取るからよ。すぐオレの名前出していいからな。オレも棋院会館でお前から目を離すつもりはねーし、一人にするつもりもないから大丈夫だと思うけどよ」
「うっ……ん。あ、ありがと、ヒカル。頼らせてもらうね」
「おう。多分だけど、正体バレたらオレや佐為よりお前と打ちてーって人の方が多くなるくらいかもしれない。けどま、そこは相手を選んで打ちたい相手とあかりが打てばいいさ。あかりの経験にもなるしな」
『プロを相手にすることもあるでしょう。その時にあかりちゃんがどのような盤面を描くのか、とても楽しみです! 勿論無礼を働く様な輩には私とヒカルが容赦しません!』
「そうだね! 強い人といっぱい打てるのなら私も望むところ! もっと強くなって、早くヒカルに追いつくんだから!」
「おう、その意気だ!」
あかりの面倒はオレ(私)が見る。
ヒカルは彼女であり可愛い娘のような存在でもあるあかりに対し、全力で守り通すことを心に決めていた。
他の有象無象にあかりはくれてやらんと心に誓っていた。
囲碁の道に歩ませた責任は取る。立派なタイトルホルダーになるまで、互先でオレと佐為に追いつくまで、あかりの健全な成長を阻む者には容赦しない事にしていた。
過保護。