逆行したヒカルと佐為が藤崎あかりを魔改造するお話   作:そとみち

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44 筒井さんが全自動脳焼き鬼畜眼鏡に進化したよ! やったね!

 

 葉瀬中、春────。

 

 入学式を迎えて、早速新入生たちが部活動選びに邁進するころ。

 ここ理科室にて、囲碁を愛する四人が顔合わせを果たしていた。

 

「筒井さん! お待ちかねの新入部員連れて来たぜ! 三谷ってんだ!!」

「ありがとう進藤くん……!! とうとうこの理科室に、ボクと藤崎先輩以外の囲碁部員が!! 感謝してもし足りないよ!!」

「ちょっと待て? 藤崎、お前の姉貴ってもう卒業したんだよな? 囲碁部ってまさかこの先輩一人だけなのか?」

「うん。実はまだ部活として正式に学校に認められてなかったりして」

「マジかよおもしれー」

 

 新入部員として元気よく理科室にやって来たヒカルとあかり、そしてヒカルが手を引っ張って連れて来た三谷もそこに加わり、入部の挨拶をする。

 筒井は、藤崎ゆかりが卒業してから寂しく理科室の椅子を一人で温め続けていた春休みを思い返し、ヒカルがまさか大会に出場できる新入部員まで連れて来てくれたものだから、どばどばと滝のように眼鏡の奥から涙を流していた。

 三谷は部活というものだから、メンバー不足とはいえ多少の人数はいるのだろうと考えていたのだが、見事に梯子を外された。

 とはいえ、人が多くなきゃダメというものでもない。その分進藤と藤崎の二人と密に打てるだろ、と悪くない考えも浮かぶ。

 既に三谷は碁会所『囲碁さろん』に春休み中に入り浸っており、ヒカルとあかり、院生たちとも顔なじみになっていた。

 

「えっと、筒井サンだっけ? 早速打とうぜ。オレ、アンタの力はまだ見てないからな。進藤と藤崎とは春休みに打ったけど」

「あ、うん! 三谷くんだね、これからよろしく頼むよ! 早速打とう! 互先でいいかな?」

「うん。アンタは海王打倒を真剣に目指してるって聞いてる……ウデ見せてよ、オレに」

「っ……ああ、全力を尽くすさ! 実はタマ子先生にお願いして碁盤増やしてもらったから、進藤くんとあかりさんは一先ずそっちで打っててもらって……」

「あ、オレらも二人の勝負見たいからとりあえず大丈夫だよ筒井さん。どっちの弟子が勝つかなってね」

「うん、観戦したい!」

 

 話もそぞろに、早速三谷が筒井に対局を持ちかける。

 藤崎から聞いた、打倒海王中を目指す先輩の棋力。三谷はそれがずっと気になっていた。

 本気で勝ちたいって口にするなら、それに伴う実力がなきゃ嘘だ。

 もし見込み違いの実力だったら、オレが大将になってやらなきゃな……そんな、春休み中に進藤たちと打ったことで棋力が伸びて、密かに生まれた自信からくる鼻の高さも内心に抱え、中学校生活の初対局を始める。

 筒井も急いで碁盤を準備して理科室の椅子の上に置き、三谷の前に着席した。

 両隣でヒカルとあかりが碁盤を挟み込む形に眺め出す。

 

「……じゃあ、よろしくお願いします」

「よろしく」

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

(……こんなモンか?)

 

 三谷は、内心で筒井の棋力に少々の落胆を覚えていた。

 打てる。打てるし、ド素人とまでは言わない。

 石を掴む指先も慣れたものだし、簡単な定石はキッチリしてる。

 しかし……弱い。まるで初めて藤崎と打った時みたいに、三谷は自分の地をガンガン広げていけてしまう中盤までの攻防に首を傾げていた。

 

(オレが強くなったってのもあるかもだけど、にしたってこれはちっと……筒井サン、こんなんじゃオレにも海王中にも勝てるワケないぜ。チッ、進藤と藤崎は筒井サンに何度か指導碁してたって言ってたよな。もっとしっかり教えとけよな……それとも才能の限界ってヤツか?)

 

 中盤戦を経て、もうすぐヨセに入るほどにまで盤面が進めば、もう三谷の目から見れば己の勝利は確実であった。

 どうやってもこっからひっくり返せない。進藤か藤崎が打てば変な活路を見い出してくるかもしれないが、アマには無理だ。

 なんだよ、藤崎が強いって言うから期待してたのにこの程度かよ……と、そんな落胆が表に出てしまい、フン、と肩を竦めて鼻を鳴らし、失笑した。

 失礼に当たるかもしれないが、こんなに弱い先輩が悪い。

 

 三谷はちらりとヒカルの方に目をやって、もしかして騙したか? と無言で訴えようとした。

 ヒカルも三谷の視線に気づいて、視線の理由を察するが……しかし、ヒカルはそんな三谷に、にやりと笑って言葉を返す。

 

「なぁ三谷」

「なんだよ、その顔」

「お前の感じてること、わかるぜ。その上で一つだけ言わせてくれ」

「…………」

「最後まで笑っちゃいけないんだぜ、勝負ってのは」

「……は?」

 

 三谷は予想外のヒカルの一言に目を見開き、意味を咀嚼した。

 さっきの失笑が見えていたのだろう。そこを咎められたのかとも思ったが、それ以上に表情が楽しそうだったのだ。

 面白いものがこれから見れるぜ、とでも言いたそうなヒカルの笑み。

 対面の藤崎を見れば、こちらも期待感に溢れる表情を浮かべている。

 

 つまり。

 来るのか、ここから?

 

 

「────ッ!!」

「────っ!?」

 

 

 次の瞬間、筒井から応手と共に悪寒が放たれた。

 その気迫の変化に三谷は驚愕し、そして石が打たれた場所も己の想定外の位置だったため更なる衝撃に襲われた。

 そこに打って活きるのか?

 いや、しかし、まさか────。

 

 三谷は似つかわしくない少々の長考を経て、きゅっと表情を引き締め直し、ヨセに向かう手を放った。

 筒井はもはや迷いなしと言わんばかりに即座に応手。

 三谷も己の勝ち筋が消えるはずがない、とテンポよく応じて、そこからは早碁と見違わんばかりの電撃戦が始まるが……一手ごとに、三谷の地は削り取られて行った。

 

(ウソだろオイ! 藤崎と初めて打った一局並み……いや、前半戦との落差がデカい分こっちの方がヤバい! こんなマクり方あるのかよ!?)

 

 序盤はヘタなのに、中盤を越えてヨセに入ってからプロ顔負けの捲りを果たしてくる怪物。

 そんな感想を筒井に覚えて、終局まで打ち切り、整地までしたうえで三谷も勝敗を理解した。

 

「……二目半差、か。なるほどOK、バケモンだアンタ」

「恐縮だね。ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

 三谷が負け、筒井が勝利した。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

「どんな教え方したんだよお前ら」

「自然とそうなったというか……そこしか伸ばせなかったというか……」

「こら、ヒカル! でも筒井さんのヨセ、本当に上手くなってる。私でも失着って思える部分はなかったもん」

「ホント? 嬉しいよ、ありがとう!」

「筒井サン、もしかしてオレに前半戦で手加減とかした?」

「いやいやまさか、そんな失礼なことしないよ! 本気だったさ! でも、ボクはどうしても序盤から攻めるのが苦手でね……盤面に石が置かれてないと色々迷いすぎてダメなんだ」

「なんでもう序盤中盤は完全に守りに徹させて、後半から巻き返すスタイルにオレとあかりで矯正したワケ」

「どんな教え方してんだよお前ら」

 

 対局後の検討をする中で、筒井の碁の特異性に三谷がツッコみ、ヒカルもあかりも、筒井も苦笑を零して答えた。

 どうしてこうなったのか。ヒカルは首を傾げるが、しかし藤崎家のゆかりの部屋で色々試しても、やっぱりこうするしかなかったのだ。

 筒井は本当に序盤中盤の打ち方が伸びない。

 であれば、もうそこは切り捨てて得意の終盤で巻き返せる打ち方を叩き込むしかない。

 そんな方針で元本因坊のヒカルと異常の極致たるあかりが熱心に指導をした結果、筒井の棋風もまた異常なるものに進化を果たしていた。

 

 巻き返しの鬼、ヨセの達人。

 しかも初見殺し性能アリ。

 大会でも十分に台風の目になれるだろうこの筒井の棋力に、三谷も納得した。

 

「よし、それじゃ次は進藤くんとあかりさんも打とうか」

「そうだね。んじゃ三谷、打とうぜ。お前はヨセ入ってから結構甘い手があるから、その辺指導碁で矯正してやるよ。三子な」

「チッ、相手が悪すぎただけだっての」

「じゃあ筒井さんは私と打とっ! ヨセに至るまでの地の守り方、また教えるね!」

「うん、お願いするよ!」

 

 さて検討も終われば、早速囲碁部らしく、院生の二人が指導する形での勉強会を始めようとする。

 二つ目の碁盤を準備しながら、和気あいあいとした雰囲気で対局に入ろうとした四人だったが、ここで闖入者が現れた。

 

「────よぉ筒井、お楽しみなとこワリィな。ちょっとかくまってくれ」

「加賀っ!?」

 

 唐突に理科室の窓から乱入して来た加賀。

 その口元には火のついたタバコがあり、ヒカルはこの光景に懐かしさとトラウマを思い出した。

 

「おう進藤、コレたのむ」

「投げんなーっ! ケムリ散らせケムリっ!」

 

 しかし二度目なら慣れたモノ。

 ピンッと加賀が指ではじいた煙草をはっしと受け取って、理科室の水道で即座に火を消す。

 適切に指示を出したヒカルの言葉で茫然としてた他三人も慌てて煙を手で仰いで散らした。

 瞬時の判断でおおよそ痕跡が消えたところで、ぬっと生徒指導のカツマタ先生が窓枠から室内を覗き込んだ。なお加賀はカーテンの影に隠れている。

 

「……筒井。加賀を知らんか」

「…………知りません」

「そうか。アノヤロ~……!」

 

 教師の乱入をやり過ごす筒井。囲碁部発足のこんな時に問題など起こされてはたまらない。

 去っていくカツマタ先生の背を見送りつつ、しかし筒井は同時に、ちょうどいいと考えを改める。そのために加賀を庇った。

 団体戦に挑むメンバーがたまたま揃ったのだ。初顔合わせである。

 

「……ワリィワリィ、助かったわ」

「加賀っ! せめてタバコ吸わずに来てくれよ! せっかくもう一人のメンバーもいるっていうのに……!」

「おォ、揃ったのか! 進藤に藤崎妹に……コイツだな? ハッ、やる事が早いぜ」

「……藤崎、コイツ誰?」

「うん、加賀先輩。将棋部の部長で囲碁が強くて、大会の団体戦のメンバーの一人で、あと不良でウチのお姉ちゃんに頭が上がらない」

「ハァ!? コイツがメンバーの一人!? なんだそりゃ!?」

「ハッハッハ、ホメんなホメんな藤崎妹。……で、この生意気なガキは使えんのか?」

「ガキだぁ!? オレは三谷だ! いきなり現れてなんだよテメーは!!」

「吠えんじゃねぇよ、うるせーガキだな。弱く見えるぜ? 名前呼ばせたけりゃオレに実力を見せるんだな。オレは強いヤツしか認めねーんだ」

「言ったな! だったら見せてやる! ニギれよ、自信あんだろアンタ!!」

「ヘッ……威勢は悪くねェ。こいよガキ、10分で終わらせてやるぜ」

「終わるのはアンタだよ!」

 

 顔合わせは早速の衝突から始まった。

 意地の対局を始める二人に、筒井があわあわと慌てて、ヒカルがあんまりにもらしい二人に苦笑を抑えきれず、あかりは割とこの二人仲良くなりそう、と謎の直感を得ていた。

 ぱち、ぱち、と碁石の打つ音が響く理科室は、確かに囲碁部の始動の息吹を感じる活気にあふれていた。

 

 

 

(クソ、やるなコイツ……! これでホントに将棋部かよ!? 読みが鋭い!)

(悪くねェ……筋はしっかりしてらァ。進藤と藤崎妹で磨けばモノになるな。ヘッ、大会が楽しみになってきちまったぜ)

 

 ちなみに三谷と加賀はこの対局でお互いの棋力を認めて、しかしその後も顔を見れば三谷がつっかかり加賀がのらりくらりと交わす、なんとも奇妙な関係に落ち着いたという。

 

 






■現時点の囲碁部メンバー棋力(比較対象込)
ヒカル=佐為>あかり>>>和谷たち>(プロの壁)>ヒカルの祖父>筒井≒加賀>三谷≧ゆかり>碁会所の中高年平均棋力

■アキラくん葉瀬中カチコミ騒動
ヒカルが小六で団体戦に挑まなくなり、ヒカルの入学先を知れなくなったので来ませんでした。
アイツ原作で他所の中学校に制服で突入して挙句の果てには図書館にいるヒカルの所にまで声掛けに行くとかメンタルオバケすぎんか??
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