ウマ娘の登場はめちゃくちゃ後です。まずは競走馬編です。
よろしくお願いします。
はじまり
なんか、ぬめぬめしてる……?
なんだろう?
まっくらだ。
「・・・・!!・・・・──・・・・!!!」
「──!!!・・・・!!!」
おとこのひとたちのこえ?
ここ、どこだろう?
あれ?
わたし、なにしてたんだっけ?
おとこのひとがはなしかけてきてる…
ごめんなさい、なんていってるのか、よくわかんない。
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プランサスブレーヴは我々の「たからもの」とも呼ぶべき繁殖牝馬だ。
競走馬として我が「阿品牧場」に初めての重賞制覇をプレゼントしてくれたのが、このプランサスブレーヴだ。
馬主の横田氏としては4頭目の所有馬で、横田氏にとっても初重賞制覇だった。
そんなプランサスブレーヴも去年競走馬を引退し、繁殖牝馬となった。
繁殖初年度ということで少々奮発。
付けた種牡馬はイギリスから日本にやって来たメタルパイレーツ。英ダービーと英セントレジャーを優勝した2冠馬。当時は種牡馬3年目にして、既に重賞馬を複数輩出していた良血馬である。
そして、今日、ついに。
プランサスブレーヴの初仔、「プランサスブレーヴの20XU」が産まれた。
牝馬である。
産まれたてで完全には判別できないが、メタルパイレーツもプランサスブレーヴも鹿毛なので恐らく鹿毛だろう。
直感的に「かわいいな」と思わせる顔立ちをしている。
おそらく馬基準でも美少女なのではなかろうか。
興奮のあまり職員たちが喚き散らしているのを黙らせる。おいっ、大きい声を出すな、この子が萎縮しちゃうだろうが!
──で。
仔馬はぼんやりしている。
あ、あれ?
もう15分くらいは経ってるけど…。
立ち上がろうとする様子が全然ないな?
普通の馬なら立ち上がろうともがいてる頃合いなんだが…。
いやまぁ、個体差だよな。
──さらに30分後。
あ、あれ?
なんか寝転がったきり起き上がる気配がないな。
プランサスブレーヴが起き上がらせようとしているが、全然反応しない。
目も開いてるし、瞬きしてるし、呼吸も問題なさそうなのだが。
ただ、立ち上がろうとしない。
──さらに40分後。
流石に立ち上がろうとしなさ過ぎるので獣医に診てもらったが、体に異常はないらしい。ていうか、あんなにされるがままに診せてくれるものなのか??
獣医によると、むしろ産まれたてのサラブレッドとしては比較的強い身体らしい。え?じゃあ立ち上がらないのは??
「立つ気がないだけですね…」
マジか。
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思い出した。
私は死んだんだ。
兄に、刺されて。
でも、今こうして生きている。
なんで?
真っ暗だった視界に光が入ってきた。
おかげで状況が飲み込めてきた。
私、馬になったらしい。
は?
……は?
ちょっと侍ってほしい。違う、待ってほしい。
死んだまではまぁいいよ。よくないけど、言っても仕方ないから。
馬?
は?
なぜ馬??
縁もゆかりもなさすぎるんだけど…。
周りの男の人たちは多分牧場?かどこかの人たちかな?
そして目の前にいるのがおそらく母馬だ。
馬なんて初めて実物見たけど……。
大きいのに、不思議と怖くはないな。
まぁ、意外と身体自体は馴染めなくもない感じだから一旦いいや。
問題は、えっと。
この空間で私はどうしたらいいんだろう?
なんかみんな私を見てるけど、どうしたらいいの?
泣く?
お母さん(と思しき馬)に擦り寄る?
わかんない。
とりあえず今は楽な姿勢かと思って寝転がってるんだけど。
男の人たち、心配そうな感じで見てない?
えっ、何?
うわ、触って来た!
なになに、なんなの!?
……触診?
なら、まぁ、いいのかな?
どれくらい、寝転がってたんだろう。
お母さん(と思しき馬)が心配そうに鼻を擦り付けてきた。
……そうだよね。
動かないと、心配しちゃうよね。
あ。
なんだ。
全然4足歩行できるじゃん。
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すくっと立ち上がった仔馬。
は?
……は?
いや君……。
「立てるんかい!!!!????」
「柳沢さん、うるさいっスよ…」
頑張ってください。