暇潰しに書いたモンハン二次   作:水代

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十話 休息

 ぷかぷかと、湯に浮かぶ感覚が心地よい。

 全身を弛緩させ力が抜けきったまま手足を投げ出すように広げてぷかぷかと湯に浮かぶ。

 義兄も義姉もこれだけは絶対に必要だ、と拘っている理由が良く分かる。

 

 自宅に風呂が…………それも温泉があるなど、さすがはG級ハンター、その中でもトップクラスだった義兄の家である。

 

「湯加減はどうですか?」

 そうして眠り心地に誘われながらゆったりと湯につかっていると、湯殿の外から声をかけられる。

「…………大丈夫、とってもいいわ、()()()()

 閉じていた目を開き、視界に飛び込んでくる高い天井と硝子なんて贅沢なものを使った大きな窓から見える外の景色に心揺さぶられながら、声の主…………義姉に返事する。

「そうですか、着替えは置いておきますから、ゆっくり入ってください」

 そう告げて、義姉の足音が遠ざかる。更衣所から出て行った辺りで扉を閉める音が聞こえ、そして後にはチョロチョロと湯船に湯が注がれ続ける音だけが流れる。

 

 

 

 黒い竜との闘いから三日が過ぎた。

 

 ベースキャンプに戻るとほぼ同時にリオの呼んだ緊急帰還用の迎えがやってきていた。

 街に戻るとリオはすぐ様、自身を連れてギルドへと向かった。

 

 黒い竜の報告にギルドが一時騒然となる。その時、一人の職員が口走っていた台詞が自身の耳にやけに残った。

 

“またか”、と。

 

 黒い竜の報告は実は以前から少しだけあったらしい。古龍観測所からの報告が一番最初であり、それ以降もここちらほら見受けられていたのだが、実際に襲われたと言うハンターがここ最近になって増えていると言う。

 すでに六名。新人ベテラン問わずそれだけのハンターが件の竜に殺されていると言う。襲われて命からがら逃げかえった自身たちのようなハンターも数人ながらおり、ギルドとしてもどうにか対策を考えてはいるのだが。

 

 黒い竜は常に移動しており、どこかに定住すると言うことが無い。

 

 それがギルドを悩ませる最大の要因となっていた。

 モンスターとしてはかなり異例なことではあるのだが、あの黒い竜…………ギルドで定められた呼称“アンノウン”は、縄張りと言うものを持たない。

 各地を飛び回り、気紛れにハンターに襲い掛かる天災であった。

 

 元は別の地方にいたらしいのだが、最近になってこちらへとやってきたらしい、と知り合いのギルド受付嬢が零していた。

 

 厄介なものである、普通G級などの強力な個体と言うのは自身の縄張りから出てこない。追い出された上位個体や、そこからさらに逸れた下位個体などを分類付けして難易度ごとにハンターたちに割り振るのがギルドの仕事だが。

 

 あの黒い竜はG級でありながら縄張りを持たない。それはつまり、下位ハンターたちの向かうような浅いエリアにでも姿を現す可能性がある、と言うことである。まさしく今回の自身たちのように。

 G級ハンターたちを配置して待つくらいしか打てる手が無い。だがそもそもG級ハンターの絶対数が少ない上に、いつ来るか分からない天災のようなモンスターを倒すまでの間、下位ハンター上位ハンターたちへのクエストを差し止める、などと言うこともできない。

 

 だから、近々ギルドの総力を上げての討伐戦を行う、そんな話が上がっているらしい。

 

 いくら縄張りを持たないとは言え、安全を確保した(ねぐら)の一つや二つはあるだろう、それを探し出し、待ち受け、塒に戻ってきた竜を討つ。

 

 

「…………ただまあ、私たちには関係の無い話よね」

 ぼんやりと外の景色を見ながら、呟く。

 G級モンスターの相手をするのは同じG級のハンターたちになる。今、この街にG級ハンターを招集しているらしい。分かってはいたが、下位ハンターである自身の出番などありはしない。

 

「…………悔しいわ」

 

 口惜しい、規則とは言え、戦うことすら許されないわが身の未熟に苛立ちさえ覚える。

 着実に力をつけている、その自負が自身にはある。かつては使うことのできなかった義兄の技を使うことができたのがその証左となりうるだろう。

 だがそれでも足りない。近づくだけではダメなのだ。

 

 真似ているばかりでは、いつまで経っても追いつけない。

 

 それが分かってしまう程度には才覚があってしまったからこそ、焦る部分もある。

 こんな調子で本当に義兄を見つけることができるのだろうか、と。

 

「…………ダメね、やっぱり」

 

 ざぱん、と湯船の中で体を起こす。たっぷりと湯を吸い込んだ長い黒髪の先からぽたぽたと雫が流れ出す。

 髪をまとめて摘まみ、きゅっと水気を絞りだす。そのまま立ち上がり、湯殿から出る。

 更衣所に置かれた大きな姿見は義兄の拘りらしい、様式美、とか言っていたがよく分らない。

 そこに映る女の姿を見る。

 

 背丈の頃は百六十弱と言ったところ、十六と言う年齢を考えればまあ育ったほうだろうか。長く腰まで届くまっ黒な髪、光を吸い込むような暗い色の髪とは反対に赤く紅玉のように輝く瞳。体にはハンターと言った職業にありがちな傷などもほぼ無い。元が雪山の麓の村の出身だからか、肌はやけに白い。ハンターとなって幾度も太陽の下で戦ってきたのだが、ほとんど焼けることが無い。顔はまあ他人曰く整ったほうらしい、正直自分では良く分らないし、こだわりもさしてないのだが、あまり顔に傷をつけるような真似をすると義姉が顔を暗くするのでその辺りは気をつけていたりする。

 見慣れた姿の女だ、姿身を見て、それから視線を下げる。

 僅かな起伏がそこに見え隠れするが、義姉と比べると、悲しくなるほど平たい、ほぼ誤差と言ってしまえる。いや、義姉の発育が良すぎるだけなのだろうが。

 ただ表情に関しては義姉よりも柔らかいと自負する。それも人間を取り繕ってきた結果と考えると、あまり良い物とは言えないが。

 

 更衣所から出るとすぐに食卓だ。見れば義姉がすでに座っていた。

「義姉さん、待っていてくれたの?」

 食卓に並べられた料理には一切手はつけられておらず、料理のレシピ本を読みながら座る義姉の姿を見てそう呟く。

 こちらの存在に気づいた義姉が本から視線をずらし、こちらを見やる。とそう言った何気無い仕草の中でも、どどん、とその存在感を主張する双丘に思わず視線が向く。いや、普段ならそこまで気になるようなものでは無いのだが、風呂上りなど…………自身の無さを実感した直後だけに思わず見てしまう。

「あらレティ、あがったんですね、じゃあ一緒に食べましょう」

 そんな自身の視線に僅かに首を傾げつつ、そう告げる義姉の言葉にはっと我に返る。

 ぱたん、と本を閉じて席を正す義姉に誘われるままに向かいの席に座る。

 机の上に並べられた料理を見ると、そう言えば朝から何も食べていなかったと思い出し、くう、と腹の音が鳴る。

 そんな自身の様子に義姉が微笑しながらどうぞ、と促してくる。

「それじゃあ…………えっと、いただきます」

 両の手を合わせそう告げる。不思議な習慣だと思う、少なくとも自身の知る限り他にこんなことをやっている人たちを見たことは無い。

 そもそも自身だって義兄に拾われてから教わった習慣であり、言ってみれば義兄が発祥みたいなものだ。

 ただ十年以上繰り返された習慣だけに、そうすることが最早自然であり、逆にそうしなければ違和感を覚えてしまう程度には繰り返してきた。

 

「なんだか久しぶりですね、こうしてレティと二人で食事をするのは」

 

 大皿に盛りつけられたパスタ料理を小皿に取り分けながら義姉がそう呟く。一人分に取り分けた小皿をこちらに差し出し、それをありがとうと告げて受け取る。

 

「最近は…………まあ、忙しかったから」

 

 元々は武器を新調するためにクエストを多くこなしていたし、例の個人依頼のせいで一週間くらいは取られたし、それが終わったらリオと試しに組んでクエストに行き、行ったと思ったら先日の黒い竜である。

 僅か一月足らずの間に、色々起こりすぎではないだろうか、なんて思いながらそう答える。

 小皿に取り分けられたパスタを、フォークで一口分ほどに巻いていき、口に運ぶ。

 ハンターと言うのはけっこう粗野な連中が多い。勿論中には例外もあるのだが、一般的なイメージとしては割とそんなものだ、何せクエスト先で狩った草食竜の肉をその場で焼いて食事にしてしまうようなことだってあるのだ、そんなところで上品さなど求めてはいられない。

 ただ自身の場合、街の中…………少なくとも、落ち着いて食べることができる時はきちんとマナーを守って食べている。

 そう言う風に仕込まれたからだ、目の前の女性に。

 

 ハンターとしてのレーティアは義兄が仕込んだ結果であり。

 人間としてのレーティアは義姉が仕込んだ結果である。

 

 自身の人間性や性格などは割と目の前の義姉の影響が大きい。

 死の恐怖から感情が狂ってしまった自身がまっとうな人間になるために、まっとうな人間に擬態するために、参考にしたのが当時義兄の傍にいた彼女だからに他ならない。

 年を追うごとに正常な感情を取り戻し、先日長年凍っていた恐怖と言う感情をも取り戻した今となってはもうそんな擬態にも意味は無いのだが、けれど長年続けてきた習慣染みた行動と言うのは中々変えられないものである。

 

「ハンター…………頑張っているみたいですね」

 

 僅かに眉根を潜めながら義姉が呟く。

 その心中が一体どうなっているのか今の自身には分からない。

 けれど義姉からすれば自身の内心などまるでお見通しなのだろう。

 

「あまり…………無理はしないでください。私は、大丈夫ですから」

 

 空気が重い…………感情を押し殺したその声に、けれど自身は答えない。答えられない。

 

「…………………………………………っ?! けほけほけほ」

「食べながら話すな、と言ったのは私ですが、話そうとしてそんなに急いで食べるものじゃありませんよ」

 

 義姉に答えようと、口の中のものを何とか片づけようと急い飲み込み、思わず喉に詰まらせ咽る。

 義姉が席を立ち、自身の背中を摩る。同時に目の前にカップを差し出してくれるのでそれを受け取り中の果実水を一息に飲み込む。

 ようやく口の中の物を飲み込み、人心地ついてから口を開こうとして…………けれど口を閉ざす。

 

 何と言うか、この空気で真面目な話はし辛い。

 

 やってしまった感はあるが、誤魔化せた感もあるので何とも言い辛いが…………まあいいか。

 

「私は…………私なりに意味があってハンターをやってるわ。だから、義姉さんが気に病む必要なんて無いの」

 

 それだけを口にして、再び食事に戻る。

 

 義姉はもう何も言わなかった。

 

 それを良いとも、悪いとも言わず。

 

 黙して同じような食事を続けた。

 

 

 * * *

 

 

 しばらく休息をしよう、とリオは街に戻ってきたその日に言った。

 ギルドからの簡単な事情聴取などもあったが、何とか報告も終え、解放された直後のことだ。

 

「その鉄刀もさすがにもう使えないだろう、代わりのものを用意する必要もある。けどそれ以上に、あんな怪物と一人で戦ったんだ、自分で自覚できない疲れが体中に溜まっている…………ゆっくりとそれを抜いておいたほうが良い」

 

 先輩からアドバイスだ、とリオがそう告げる。

 確かに、肉体的にもそうだが、あの黒竜との戦いは精神的にもかなりの疲労を感じた。生死のかかった状況だっただけに普段以上に疲労しているのは事実だろうし、そして生死がかかっていた状況だけに、それを自覚しきれていない部分もあるだろうことも事実だろう。

 そう言った疲労は普通に休んだだけでは抜けきらない。抜くには、戦わずゆっくりと過ごすのが一番だろう…………いざ、と言う時にその疲労は体を侵す猛毒となりかねない。だからリオの言葉に素直に頷く。

 

 それに、と少しだけうつむきがちに彼女は続ける。

 

「私は私でやっておきたいことができた」

 

 そう呟くリオの様子に、どこか違和感を感じつつも、そこで別れる。

 

 それから三日経つがリオからの連絡は来ない。

 ハンターカードを交換したので、お互いの連絡先や住所は知っている。

 もう数日様子を見て、来ないようならこちらから尋ねてみてもいいだろう。

 

 それよりも今は行かなければならないところがある。

 

 街の東側、職人通りと呼ばれるそこに目的地はある。

 街の中央を上下に分断するように流れる川に沿って建てられた工房の数々。

 あちこちからキンキン、カンカン、と槌を振るう音が聞こえてくる。

 

「さて、どうなってるかしらね」

 

 呟きながら、左手に持つ鉄刀を見る。

 見事にボロボロだ、鞘のあちこちに歪みがあり、刀身を抜いてみればあちこちに刃こぼれやひび割れが目立つ。

 よくこんなボロ状態で戦えたものだ、と改めて先の戦いの悲惨さを思い出す。

 

 行く先は…………まあ察しはついているだろうが、工房だ。

 

 元々リオとパーティーを組む前に依頼は出していたのだ。

 すでに素材とお金は渡している。ただ一本一本武器を手打ちする以上、一日二日で、とはいかないのが武具生産だ。

 あれから一週間ほど経っている。出来上がっているならそれで良いし、出来上がっていないならば借りていた鉄刀だけでも返しておこうと思い来たのだ。

 

 出来上がっていない場合、武器が無くなるが…………取りあえず今のところ新しい武器が出来上がるまで自身はクエストに出るつもりが無い。

 リオにもその旨は伝えてある。

 

 可能性の話ではあるが、今後もまたあのアンノウンのような規格外の個体と出くわさないと言う可能性は無いわけではないのだ。

 だからこそ、クエストに出る時はいつまたあのアンノウンに出会っても良いような出来うる限りの万全の準備をして出発したい。

 

 きっとまた出会ったとして、その時万全の準備をしても、きっと勝てはしないだろう。

 

 それでも、その爪の一本、鱗の一枚でも貰っていく。

 

 それだけの借りがあの黒い竜にはあると、思っているから。

 

 だから…………絶対、絶対に。

 

「今度会ったら、ただじゃおかないわ」

 

 そう、決めた。

 

 

 

 




下位、上位、G級のバランス調整ちう。

特にハンター側の武器バランスが難しい。

取りあえず参考資料は種類の豊富なフロンティア、あと元ネタとも言える2Gあたりかな。

因みに義兄が昔使ってた武器は、フロンティアの覇種武器くらいを想定してる。
分からない? 2GのG級の最上位くらい。
フロンティア基準のG級武器は多分出ない。出したらチートすぎるし。でもトンファーは出したい(


称号:ストレンジャー
名前:レーティア・ブランドー
HR:2/10

装備スキル【攻撃力UP小】【ダメージ回復速度+2】【防御+60】
習得スキル【体力+20】【ランナー】【一閃+1】【見切り+2】【抜刀改心】【体術+1】【集中+1】【業物+1】【剣術+1】【氷耐性+10】【耐雪】【酔っ払い】【暑さ倍加小】【寒さ半減】【回避性能+1】【受け身】【調合成功率+10%】【ハンター生活】【地図常備】【採取+1】【探知】【隠密】

EXスキル【断空】


称号:ストライダー
名前:リオレイシア・ハーティス
HR:2/10

装備スキル【攻撃力UP大】【防御+30】【隠密】【気絶無効】【装填速度+3】【反動軽減+2】【装填数UP】【狙い撃ち】【ボマー】【通常弾・通常矢威力UP】【貫通弾・貫通矢威力UP】【散弾・拡散矢威力UP】
習得スキル【体力-30】【鈍足】【腹減り半減】【早食い】【火事場+2】【見切り+4】【毒無効】【激運】【弱点特効】【軽銃技銃傑】
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