ちょっぴり大人っぽいサトシくんの冒険記録(レポート)   作:波導の勇者サトシくん

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今回はタマムシジム戦の1本でお送り致します。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです。


19.自然を愛するお嬢様

 

 

 

 

 

 

 

 a月#日 脅威、タマムシジム! VSエリカ

 

 

 昨夜は大変、というか大騒ぎになった。

 突然ゲームコーナーの地下から爆発が生じて、炎と煙が地上に上ってきたかと思えば、大量のロケット団員と組織に従事していた研究者が現れたのだ。

 

 タマムシシティに居た警察や自治団体だけでは抑え切れず、偶々ゲームコーナーの近くに居た俺を筆頭とするトレーナーも力を貸し、タマムシジムのジムトレーナーとも協力して鎮圧に成功した。

 まあ、ジム戦前の良いレベル上げにはなったな。

 何があったかは知らないけど、どうせ秘密裏に所持していた爆発物が引火でもしたに違いない。

 因果応報、自業自得とはまさにこの事だろう。

 

 これによってロケット団員や協力していた研究者を捕縛する事は出来たが、タマムシシティの地下にロケット団のアジトが有った事が白日の元に晒された。

 警察内部に内通者が居ただとか、土地の利権者もグルだったとか、今朝には様々な噂が既に広まっていた。

 まあ、そんな裏事情は旅のトレーナーでしかない俺には関係ないし、事実が明るみになった時点で自然と自浄作用が働いていく事だろう。

 

 そして、ジムリーダーのエリカ及びタマムシジムだが、昨夜のうちにアテナというジムトレーナーが行方不明になったらしい。

 彼女の部屋から荷物なども全て引き払っており、拉致や誘拐ではなく自らの意志で姿を消した事が分かる。

 タイミング的にもロケット団との関与があった可能性が高いため、タマムシジムにも監査の手が入ったようだが、ジムの経営や他のトレーナーはロケット団と何も関係がなかった事が判明しただけだった。

 むしろアテナによってゲームコーナー周辺は治安が悪いから近づかない方がいい、と誘導されていた事が発覚したので、今日の昼頃にはタマムシジムの疑惑は完全に晴れた。

 

 これに対してカスミとタケシが「当然だ(よ)!」と憤っていたが、疑いが晴れたのだからいいじゃないかと宥めて、ジム挑戦の申し込みにいった。

 つい先程まで調書を取られたりなど色々あったので、もしかしたら後日になるかもという予想は杞憂だった。

 受付のミニスカートの女性はカスミとタケシが入って行った香水店で見た顔であり、彼女は俺を見て首を傾げてから背後の2人に気付いて納得の表情を浮かべたのだ。

 

 昨日のうちに2人が話を通してくれていたらしく、申し込みはすんなり済んだ。

 何故か香水が好きか嫌いかを聞かれたが、個人的には好きや嫌いではなく他人に対するエチケットだと思っている、と伝えた。

 強いて言えば、いい香りがすれば気分がいいのは全人類共通じゃないですか?とも。

 

 勿論そう言うだけあって、俺は香水を常備している。

 前世でも匂い対策で使用していたので変な偏見や抵抗感もなく、自由なタイミングで汗を流さない旅の中では必須アイテムとも言えるだろう。

 リュックには汗拭きシートや消臭スプレーも入っているが、日中は香水で誤魔化していた。

 旅を始めた当初は男性の俺が香水を使う事に驚いていたタケシだが、前述した理由を話せばすぐに理解を示し、同じく匂い対策をするようになった。

 

 そうした話も既に伝わっていたのか、彼女は「タケシ君から聞いた通りの子ね」と俺から微かに漂う香水の香りに頷いて、ジムの奥へと案内してくれた。

 道中で話を聞けば、ジムリーダーのエリカは香水店の店長も兼任しており、ジムトレーナーの多くも店で働いているのだとか。

 もしかして香水の原料はポケモンから採取しているのかと聞いたタイミングで、横道からクサイハナが姿を現した。

 

 クサイハナはまず受付の女性に気が付いて近づいてくると、順番にカスミとタケシ、最後に俺を見て首を傾げた。

 親しげに2人が声を掛けている辺り、知り合いのポケモンらしい。

 取り敢えず、挨拶をする前に涎を拭いてやってから、自己紹介をして顎下を優しく撫でてあげる。

 波導による感知で瞬時に気持ちいい場所を見極めれば、嬉しそうな鳴き声を上げて溶けた。

 

 それにしても随分と育てられたクサイハナである。

 手持ちのクサイハナと比べて花の艶や瑞々しさも大したものだけど、バトルでもかなり強いだろう。

 なんて事を考えていたら、クサイハナが来た通路から優しく名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

 現れたのは、色違いのミニスカ衣装に身を包む、青色掛かった黒髪の10代後半くらいの女性だった。

 彼女は俺に撫でられてリラックスしているクサイハナを見て、あらまあと口元を片手で隠しながらお淑やかに驚きを表し、優しく微笑んで歩み寄ってきた。

 どうやら女性のクサイハナだったらしく、挨拶代わりによく育てられたクサイハナですね、と告げながら撫でるのをやめて手渡す。

 

 そんな俺を見て慌てたタケシから、「その方がジムリーダーのエリカさんだ!」と教えられた。

 こんな髪色だっけ?と疑問に思いながらも、タケシが言うならそうなのだろう。

 マサラタウンのサトシだと名乗り、ジム挑戦を申し込んだ。

 急な申し出だったが、エリカは「負けませんわよ」と気品のある表情の中に確かな闘志を滲ませて快諾した。

 

 

 

 場所を移して、バトルコートで対面する。

 俺の持っているバッジの数は3つという事で、ルールは3対3の挑戦者のみ入れ替えありだ。

 こちらの1匹目はピジョン、エリカはモンジャラを出してきた。

 ちなみに、ピジョンには昨日購入したばかりの『きあいのタスキ』を持たせている。

 

 まずピジョンには『おいかぜ』を指示する。

 本来レベル的に覚えられないはずだが、オーキド研究所に『おいかぜ』の技マシンがあったため、当然覚えられるポケモンには習得させてある。

 まさか技マシンがあるとは思っていなかったので驚いた*1時の事は、まだ記憶に新しい。

 

 対するモンジャラは『げんしのちから』によって、大量の石飛礫を浮かべて飛ばしてくる。

 だが、素早さが2倍になったピジョンを捉える事は簡単ではない。

 石飛礫を全て躱した後、『かぜおこし』の突風を地面にぶつける事で小規模の竜巻を作り出し、更に竜巻を『かぜおこし』で巨大な竜巻にしようとしたところで、作戦を逆手に取られた。

 

 エリカが竜巻の中に『しびれごな』を放出するように指示した事により、バトルコート内に粉塵が舞い散ったのだ。

 草タイプのエキスパートらしいトリッキーな戦術だな。

 これはやばいと即座にボールに戻せばよかったものを、俺は粉を浴びてしまう前に『とんぼがえり』で攻撃するついでに入れ替えようと欲張ったのが悪かった。

 

 元々防御種族値が高いモンジャラが『ねをはる』で体を固定してピジョンの攻撃を受け止めると、そのまま『からみつく』によって動きを封じられてしまったのだ。

 しかも、そのまま降ってきた『しびれごな』を浴びて麻痺した上に、『げんしのちから』が容赦無く襲い掛かる。

 咄嗟に『からげんき』を指示すれば、気合いで動いたピジョンが現状最高火力の攻撃を叩き込むのと、トドメの『げんしのちから』が直撃したのは殆ど同時だった。

 

 残念ながらピジョンはそれで戦闘不能になってしまったが、耐久力に自信のあるモンジャラと言えど、密着状態から威力2倍のタイプ一致『からげんき』が急所に入れば軽いダメージでは済まない。

 エリカはフラフラと体を揺らすモンジャラを見ながら、「あら、お強い。急所に当たりましたわ」と言っているが、まだ表情には余裕があった。

 今のは後の先で上回られた事で焦りが出てしまい、勝負を急いだ俺のミスだろう。

 最後に意地を見せてダメージを稼いでくれたピジョンを労ってからボールに戻して、2匹目にはリザード*2を選んだ。

 

 実はリザードだが、進化後は思春期っぽい雰囲気を感じさせており、慎重な対応をしないと拗らせそうな気配があった。

 しかし、直後にサントアンヌ号沈没事件によって俺が死んだと勘違いした衝撃により、一瞬で思春期を抜けて微妙に素直になりきれない感じを残しながらも反抗期には至らなかった。

 リザードが優しい子だったから最良の結果に落ち着いたが、場合によっては捨てられたと完全にグレていた可能性もあったかもしれない。

 

 何はともあれ、素直なリザードに『ニトロチャージ』を指示して、『おいかぜ』の効果が続いているうちに素早さを補強する。

 同時に、未だ降り掛かる『しびれごな』を全身に纏った炎で焼き尽くす事で対抗した。

 その間もモンジャラは『ねをはる』の効果で体力を回復させながら、『げんしのちから』で狙ってくるがリザードの速度に追いつけない。

 

 更に、モンジャラを中心にグルグルとバトルコートを走り回るうちに、次第に中心部に熱が籠って乾燥していく。

 エリカが気付いた時は既に遅く、そこにすかさずリザードが『ほのおのうず』を撃ち込んだ瞬間、巨大な炎のドーム型の渦になってモンジャラに襲い掛かった。

 モンジャラは『げんしのちから』で操った石飛礫で身を守ろうとしたが、その程度では壁の役目も果たせずに戦闘不能に陥った。

 

 すぐにモンジャラはボールに戻されて、2匹目に出てきたのはウツドンだった。

 即座に『かえんほうしゃ』で仕留めに掛かるが、『ねむりごな』を射線上に噴射する事で粉塵爆発を誘発してテクニカルに防がれる。

 しかも、爆発に紛れる形でさりげなく『クリアスモッグ』が撒かれており、いつのまにか能力値が戻されていた。

 素早さが下がったリザードが戸惑い動きを止めた隙を見逃さず、『どくどく』を喰らってしまう。

 

 ここまでは、完全に後手に回っていた。

 仕切り直すためにもリザードを一度引っ込めて、最後のゴルバットを出した事で戦況が変わり始める。

 

 まず、初手『ちょうはつ』によって変化技を封じた。

 エリカは技の効果を知らなかったのか、不思議そうな表情を浮かべながらも『ねむりごな』を指示して、異常に気が付いた。

 ゴルバットの挑発に怒ったウツドンが、トレーナーの指示を無視して突撃して行ったのだ。

 

 真っ直ぐ愚直に突っ込んでくるウツドンを『いやなおと』で出迎え、エリカの制止の声を阻害する。

 黒板を引っ掻いたような音が響き渡り、防御が下がったところに『アクロバット』によってウツドンが勢いよく弾き飛ばされた。

 ゴルバットには何も持たせていなかったので『アクロバット』の威力は2倍、防御2段階ダウンに効果抜群の攻撃が直撃したウツドンは、目を回して倒れていた。

 

 これでエリカの残るポケモンは1匹。

 そっと口元を隠したエリカが「まあ、そんな……」と、ウツドンが一撃で倒された事に驚きを見せる。

 まあ、無傷の状態からワンパンキルなんて普通はレベル差がなければ早々見れないからな。

 

 そして、次はクサイハナを出してくるのかと思いきや、俺とのバトルを嫌がっているらしい。

 無理に戦わせても良い事はないため、別のポケモンを使う事になった。

 3匹目のポケモンとして選ばれたのは俺も持っているクサイハナの進化形、ラフレシアだった。

 図鑑で確認すればLv.34だったが、数値以上に鍛えられているように見えた。

 実力自体は、あのクサイハナ以上だろう。

 

 

「この子は、ジムバッジ4つ以下のトレーナーに使用するポケモンの中で、最強のエースですのよ? 手加減なんてなさらず、さあ存分に! ラフレシア、お相手して差し上げて!」

 

 

 ラフレシアの『にほんばれ』から、最後のバトルが始まった。

 ゴルバットの『ちょうはつ』の仕組みを理解したエリカが、ラフレシアに目を瞑るように命じた結果だ。

 どれだけ挑発されようが、目を合わせなければ確かに挑発もクソもない。

 ポケモン同士で喋っている言葉は伝わるため苛立ってはいるようだが、先程のウツドンと比較すれば一目瞭然である。

 

 特性は予想通り『ようりょくそ』らしく、突如ハイテンションになってバトルコートを縦横無尽に駆け回り始めた。

 当然ただ走り回っているのではなく、さりげなく『あまいかおり』を撒いてゴルバットの集中力を奪おうとしてきたので、全力の『ふきとばし』で甘ったるい香りを退ける。

 けれど、その間にラフレシアは陽の光を吸収し切っていた。

 

 そして、ゴルバット目掛けて放たれた『ソーラービーム』は、今まで見た事がないほどの規模と破壊力だった。

 タイプ相性的にダメージを4分の1に出来るはずが、もう1〜2発受ければ戦闘不能になり兼ねない威力。

 明らかに俺が知る『ソーラービーム』とは違った。

 

 仕組みは極めて単純である。

 説明を受けるまでもなく分かったが、『にほんばれ』の時に限界以上に光を溜め込む事で、通常の倍以上の威力を発揮可能になるのだろう。

 原理は単純で分かりやすいが、肝心のラフレシアはハイテンションでコート内を高速で駆け回りながら『あまいかおり』を撒き散らし、同時に『ソーラービーム』の準備までしている。

 先程のように『あまいかおり』に対処すれば『ソーラービーム』は防げず、『ソーラービーム』を妨害すれば『あまいかおり』に対処出来ない。

 

 

「うふふ。美しい花には、毒がありましてよ?」

 

 

 極めて厄介で、完成された戦術だ。

 ここに『つきのひかり』か、覚えているのなら『こうごうせい』で回復をしてくるのだろう。

 この分だと、回復技も走りながら使えるようにトレーニングをしていそうだ。

 単純であるが故に、対処法が限られる。

 

 試しに『いやなおと』で動きを止められないかと思ったが、技自体は効いているだろうに興奮状態だからか、全く走るのをやめない。

 結局ゴルバットは甘ったるい香りを嗅いでしまい、意識が逸れたところに特大の『ソーラービーム』が再度直撃した。

 

 運良くギリギリで耐えられたが、次は耐えられない事は明白だ。

 相変わらず走り回るラフレシアに覚悟を決めて『アクロバット』を仕掛ける……と見せ掛けて、途中で充填を止めて『ソーラービーム』の発射体勢に入ったラフレシアに『ちょうはつ』をかました。

 当然ながら攻撃を躱わす余裕はなく、ゴルバットは戦闘不能になってしまった。

 

 これで取り敢えず、『にほんばれ』と回復技を封じた。

 ラフレシアが冷静さを取り戻すまでに倒し切らなければ、俺の勝ち目は完全に無くなるだろう。

 残るポケモンは猛毒を受けたリザードだけだが、晴れ下である事はこちらにとってもまたとない追い風となる。

 

 

「リザード、キミに決めた!」

 

 

 モンスターボールから飛び出してきたリザードは、「いけるか!?」という問いにサムズアップで応えた。

 その頼もしい姿に、自然と笑みが浮かんできた。

 

 最早ここに至っては小細工など無用。

 相手が限界を超えてパワーを溜めるなら、こちらも同じようにするまでだ。

 リザードに次の攻撃に全てを賭けるぞ!と告げれば、尻尾の炎が激しく燃えて全身が赤く染まり始める。

 これは覚えさせて以来、負担が大きくて未だ練習不足の技だが、ラフレシアの『ソーラービーム』を打ち破って一撃で倒し切るには、今使える最強の技でなければならないだろう。

 

 ラフレシアが足を止めて発射体勢に入る。

 リザードも同じタイミングで準備を終えた。

 

 

「ラフレシア、今ですわ! 『ソーラービーム』!!」

「勝つぞ、リザード! 『オーバーヒート』!!」

 

 

 そして、『ソーラービーム』と『オーバーヒート』がバトルコート中央で激突した。

 赤と緑がぶつかり合うが、明らかに優勢なのは緑だ。

 通常の2倍のパワーを溜め込んだ『ソーラービーム』と最終進化形であるラフレシアの優れた能力値が、晴れ下かつ道具を含めたリザードの『オーバーヒート』の威力を単純に上回っていただけの話。

 

 ジワジワと緑の光線に押し込められてしまう。

 苦悶に顔を歪めながらリザードは必死に耐えていたが、このままでは厳しいかと、そう思った瞬間だった。

 突如として尻尾の炎が更に激しく燃え上がり、見て分かるほどに火勢が増したのだ。

 

 波導による感知で、この現象はすぐに特定出来た。

 猛毒に蝕まれたリザードの生命力が一定を超えて低下した途端、瞬間的に炎の気配が強まったのだ。

 HPが3分の1以下になった時に炎技の威力が1.5倍になるリザードの特性『もうか』……それが発動したという事だ。

 

 先程まで押し負けていた紅蓮の炎が勢いを増して、深緑の光線が跳ね返されていく。

 瞬く間に『オーバーヒート』が『ソーラービーム』を焼き尽くし、ラフレシアを呑み込んで────大爆発を起こした。

 

 炎の勢いは『ソーラービーム』によって減衰していたとはいえ、かなりのものだった。

 勿論そんな攻撃を耐えられるはずもなく、爆炎が晴れた後には戦闘不能になったラフレシアが倒れ伏していた。

 審判が俺たちの勝利を宣言してから、一拍遅れてリザードも膝をついた。

 

 

 

 バトルが終わると、俺とエリカは互いのポケモンに急いで駆け寄って『どくけし』や『キズぐすり』で応急処置を施して労ってからボールに戻した。

 麻痺していたピジョンも治してやり、ゴルバットも含めて簡単な治療をして、不甲斐ない指示をした事を謝罪する。

 

 エリカとのバトルは、これまでのジム戦と比べて最も厳しい戦いになった。

 これは変化技を多用するというバトルスタイルが似ていた事もあり、咄嗟の判断力を筆頭としたトレーナーの腕の差が如実に出たのだろう。

 俺の判断ミスの所為でピジョンは初の公式戦なのに碌な活躍も出来ずに敗れてしまったし、ゴルバットも技選択を誤った事でラフレシアには好きなようにやられてしまった。

 試合に勝って、勝負に負けたような気分だった。

 

 そうして喜びよりも悩むような表情をしていたのだろう。

 実際ジムバッジ4つ目でこの調子だと、この先が思いやられると考えていたのは事実だ。

 近寄ってきたカスミとタケシもどう声を掛けたものかと、互いに顔を見合わせて困った顔をしていた。

 だが、エリカはそんな俺の葛藤を敢えて無視して、レインボーバッジを渡してきた。

 

 エリカはすぐに手を伸ばせなかった俺の手を取り、バッジを掌に乗せて握らせる。

 反射的に何かを言おうとしたのを指先で制し、俺に向けてポケットから取り出した香水をワンプッシュする。

 フワリと漂ってくるのは目の前のエリカと同じ華やかな香りで、突然の事に戸惑いを隠せなかったが、不思議と焦っていた気持ちは落ち着いた。

 

 そんな俺を見て嫋やかに微笑んだエリカは、そっと目を閉じながら「お花も人も、勿論ポケモンも……一朝一夕には成長致しませんわ」と優しく言い含める。

 旅に出てから1年も経っていない新人トレーナーである事も2人から聞いていたらしく、純粋に経験が足りないのだと告げられた。

 

 既に荒削りながらも実力は高いため、じっくりと腰を据えて成長を待つ事が肝要な時もある。

 たくさんのトレーナーと対戦して経験を積み、どんな風雨にも負けない地盤を作らなければ、成長したくても根を伸ばす事が出来ないでしょう? と。

 まるで、目から鱗が落ちるような思いだった。

 

 確かに俺は事を急ぎすぎていたのかもしれない。

 春先に旅を始めてから約2ヶ月が経過したが、ポケモンリーグ・セキエイ大会の開催は来年の春だ。

 大会前の本格的な修行期間として2ヶ月は最低でも欲しい事を考えると、ジムバッジを集める旅に使える期間は残り8ヶ月ということ。

 スケジュール的には、かなりの余裕があった。

 

 ここら辺でひとつ、修行期間を設けるのも悪くないかもしれない。

 ジムバッジ4つというのも区切りがいいし、ジムへの挑戦というのは5つ目からが本番だと言われるほどに難易度が急激に上がるらしい。

 それなら一度挑戦して直接肌で難しさを感じてから、勝敗に関係なく修行のための時間を作るべきだな。

 

 今は一先ず、ジム戦に勝利した事を喜ぼう。

 掌に握らされたレインボーバッジを掴み上げて掲げた。

 

 

「レインボーバッジ、ゲットだぜ!」

 

 

 いつもの調子に戻った俺を見て、カスミとタケシ、エリカやジムトレーナーたちも拍手で祝福してくれた。

 課題は多く見つかったが、焦らず頑張っていこう! 

 

 

 

 -追記-

 

 香水の原料はクサイハナやラフレシアから採取しているとの事だったので、特別に一部の香水の作り方を教えてもらった。

 カスミとタケシが気に入って購入した香水とジム戦後に俺が選んだ香水、あとは普段からエリカが付けているというお気に入りの香水の4種類だ。

 本当は俺たちが購入した物だけの予定だったのが、同じナゾノクサ系を使うトレーナーとして気に入られでもしたのか、「こちらの香水、オススメですわよ?」と勧められたのでお言葉に甘えた。

 あれだけオススメされたわけだし、気分を変えたい時にでも偶にエリカの香水も付けてみようかな。

 

 ちなみに、どれもがラフレシアからでも作れるという話を聞いて、そういえばとクサイハナを『リーフのいし』でラフレシアに進化させた。

 エリカのラフレシアと比べると見劣りしてしまうが、バッジを集め終わってからでなければ本格的なトレーニングに集中出来ないため、仕方ない部分はあるだろう。

 今回のジム戦は特に参考になる戦術が多かったので、そのまま使える物は取り入れたり、或いはアレンジして使わせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

*1
SVで実装された

*2
『もくたん』所持





『サトシのポケモン(合計21匹)』
・ピカチュウ(Lv.36→Lv.37)
・オニドリル(Lv.32)
・ピジョン(Lv.32→Lv.34)
・ニドキング(Lv.34)
・バタフリー(Lv.32)
・ラフレシア(Lv.30)←NEW
・サンドパン(Lv.33)
・ピクシー(Lv.30)
・コイキング(Lv.41→Lv.42)
・ゴルバット(Lv.31→Lv.33)
・フシギダネ(Lv.30)
・リザード(Lv.32→Lv.34)
・ゼニガメ(Lv.32)
・キングラー(Lv.32)
・イーブイ(Lv.25→Lv.29)
・ニドクイン(Lv.27)
・ロコン(Lv.28)
・カイリキー(Lv.30)
・ストライク(Lv.30)
・オコリザル(Lv.30)
・ポリゴン2(Lv.26)

次回はシザーストリート、P1グランプリ、グンジョシティの予定です。
作者のモチベ維持のためにも高評価、お気に入り登録、感想、ここすき等、いつも楽しみに待っているのでよろしくお願いします!
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