ちょっぴり大人っぽいサトシくんの冒険記録(レポート)   作:波導の勇者サトシくん

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続けて同日なので初投稿。


3.はどうの ちからって すげー!

 

 

 

 

 

 

 

 a月g日 本格始動、【サトシくん波導の勇者計画】

 

 

 本日より遂に、前世の記憶が蘇って以降ずっと温めてきた計画を実行に移す事となった。

 これは思春期の子供らしい痛々しい妄言ではなく、極めて実現性が高いからこそ発足まで至った計画である。

 

 まず、波導とはなんぞや? 

 前世では様々な創作物の中で架空のエネルギーとして登場していた波導だが、この世界でも似たようなものだ。

 超能力者やオカルト研究家のような存在も居るし、世界全体でみれば少数ではあるが特殊な能力を持つ人間というのは決して珍しい話ではない。

 ポケモンだけでなく、そういう意味でも前世の記憶からすれば創作物めいた世界だと言える。

 俺は前世の記憶があるだけのサトシくんであるからして、超能力もオカルトも、ただ()()()()()()()()()と素直に受け入れる事は難しくはなかった。

 

 けれど、まさか自分自身にそういう素質があるというのは俄かに信じ難い事だった。

 アニポケの劇場版『ミュウと波導の勇者ルカリオ』。

 俺の記憶が正しければ前世で最後に見たポケモンの映画なのだが、ここでサトシくんは昔に勇者と呼ばれた人物と同じ波導を持っていると言われていた。

 昔の事なので詳しい内容は忘れてしまったが、普段特別なポケモンなどに巻き込まれる形で介入していくサトシくん自身に特異な才能があるという初めての展開だった*1ので、記憶に残っていたのだ。

 

 サトシくんは前世のネット上ではスーパーマサラ人なんて呼ばれて玩具に話題にされるほどの身体能力を画面の中で見せつけていた。

 アニメの描写の都合上でそうなっているだけと言う者も居れば、本当にそうだと信じ込んでいる者も居ただろう。

 俺はどちらかと言えば、サトシくんの事をスーパーマサラ人だと信じていた側の人間であり、その根拠となるものが前述した波導パワーによるものだと考えていた。

 さながら火事場の馬鹿力のように無意識のうちに波導パワーを発揮する事で、時に200kg以上の丸太を軽々とぶん回し、時に13m超の大ジャンプをしたり、時にポケモンの技を使用したりという人外めいた事が出来たのだと推測している。

 

 そして、俺の推測は正しかった可能性が非常に高い。

 前世で死んだ瞬間の記憶はないが、恐らく死んだと思われる経験をしていたからか、または優れた素質の持ち主だからかは不明だが、確かに波導の存在を認識したのが今から1ヶ月ほど前の事だ。

 ポケモンの勉強をする傍らで体を鍛えながら、暇潰しくらいの感覚で色々と試していたらいつのまにか波導を感知していた。

 それ以来ずっと遊び感覚で波導パワーを操って色々としていたが、これを機に本格的に波導を鍛えてみようというのが【サトシくん波導の勇者計画】の概要である。

 とはいえ、師匠なんて居るはずもないので全て独学。前世で学生時代に培ったサブカルチャー知識を総動員したトレーニングでしかないので、すぐに頓挫する可能性が高い事は百も承知の上だった。

 

 

 

 -追記-

 

 はどうの ちからって すげー! (ノルマ達成)

 

 

 

 

 

 a月h日 ポケモンマスターへの道

 

 

 突然だが、ポケモンマスターとは何だろうか? 

 

 ぶっちゃければ俺自身にもよく分かっていない事だった。

 何をどうすればポケモンマスターになれるのか、全く見当もつかないほどに意味不明な存在。

 アニメポケットモンスターが完結する前に死んでしまったので、サトシに転生しておきながら自分でもよく分かっていない。

 

 マスターという言葉が示す通りなのであれば、ポケモントレーナーとして最強のチャンピオンになり、ポケモンブリーダーとして最高のトップブリーダーになり、ポケモンコーディネーターとして最巧のトップコーディネーターになり、全ての道を極めた先にあるのだろうか。

 当然そんなものは荒唐無稽な夢物語でしかない。

 人間一人が一生のうちに出来る事なんて高が知れているし、そんな才能もなければ時間だって足りない。何千年と生きられるのであれば、或いは実現性も出てくる。

 

 俺はひとまずの目標として、シゲルとの約束もあるのでポケモンリーグに挑戦するつもりではいる。

 地方リーグで優勝して、その先のチャンピオンリーグでも優勝して、各地方の現チャンピオンに挑戦して、名実共に世界最強のポケモントレーナーになる。

 簡単に言っているが、今の俺ではビジョンすら見えないほどに過酷な目標であり、実際可能かも不明瞭な夢物語だ。

 もしかしたらアニメのサトシくんと違ってバトルよりもコンテストの方が向いている可能性だってあるのだから、現状では子供の戯言に過ぎなかった。

 

 つまり、全て仮定の話となってしまうが、もし世界最強のポケモントレーナーになれたとする。

 その時に自分がポケモンマスターになったと納得出来なかった時、俺は今度はポケモンコーディネーターとしての道を進むのだろうか? 

 それでトップコーディネーターと呼ばれるまでになれたとして、また今度は別の道を極めんと新たな事に挑戦する。

 明確な目標がないままでは、そうなってしまいそうな未来が見える。

 記憶を取り戻したばかりの頃に目標を定めたが、今思えば非常に漠然としたものだった。

 

 最終目標のポケモンマスターは前述したように定義が極めて曖昧だし、チャンピオンリーグで優勝する前には地方リーグで優勝しなければならない。

 現時点で明確にビジョンとして見えるのは、アローラ地方で島巡りを終える事だけである。

 取り敢えず、アニメと同じようにカントー地方から順番にジョウト、ホウエン、シンオウと旅をする予定なので、アローラに行くのは早くてもシンオウ以降になるだろう。

 実際のところは順番が前後する事もあるかもしれないけれど、これはイメージし易い。

 

 先日シゲルとした初めてのポケモンバトルは、まだ記憶に新しい。

 選んだポケモンのタイプ相性では不利な展開もあったが、それ以前に俺には前世の記憶という途轍もないアドバンテージがあったのだ。

 しかし、結果は僅差で薄氷の勝利。辛勝というのも烏滸がましいくらいにギリギリで運に助けられた勝敗だった。

 もちろんシゲルだってオーキド博士の孫でスクールにも通っている以上はポケモンに造詣の深い、言うなればエリートトレーナー候補生のような立ち位置ではある。

 けれど、今の時点でどちらが有利かと言えば間違いなく俺のはずだったのに、あんなにも苦戦させられた。

 もしシゲルが『かなしばり』の効果を知っていれば負けていたのは俺の方だったかもしれない。とてもではないが、こんな状態でポケモンリーグ優勝なんてイメージ出来るはずもない。

 

 シゲルは以前までの俺を見下していたが、俺もシゲルを無意識に見下していたのだ。

 いや、シゲルだけじゃない。レッドなどの一部例外を除いて、この世界のトレーナーそのものを俺は下に見ていたのかもしれない。

 実際ポケモンリーグの映像を見ても「俺の方が上手くやれる」なんて考えていた節がある。

 この世界のトレーナーはあまり変化技を使わない。記録映像でも『こうそくいどう』や『かげぶんしん』、或いは『まもる』『みきり』『みがわり』くらいだ。

 あとは『ほろびのうた』『みちづれ』なんかも見掛けた記憶はあるが、大抵は攻撃技でぶん殴る戦い方が多かった。

 ゲームで死ぬほど変化技の厄介さを学んでいたからこそ、キッズみたいに殴り合いしかしていないように見えてしまった。誤解してしまった。

 とんだ節穴である。無知とはまさに俺のことだった。

 

 結局のところ、トレーナーの事もバトルの事も嘗めていたのだろう。

 所謂、机上の空論というやつだ。

 この数ヶ月でゲーム知識も合わせて理論ばっかり達者になって、ポケモンバトルを理解した(わかった)つもりでいた。

 現実とゲームは違うなんて嘯いておいて、全然これっぽっちも理解していなかったのだから笑い話にもならない。

 ターンごと素早さの数値が高い順にお行儀よく順番を守って指示するわけじゃないからこそ、トレーナー同士の読み合い、作戦、駆け引きやポケモンの技の練度、使用制限などが大きな意味を持つ。

 ポケモンのレベルや種族値が高くても、トレーナーがお粗末では勝てるバトルも勝てない。

 

 だから、本当に良い機会だったと思う。

 旅立つ前に致命的な誤解にも気付けたし、無意識の慢心もシゲルのお陰でなくなった。

 ノリで定めた目標が如何に実像を伴わない荒唐無稽な妄言だったかも分かったし、今後は理論と同等以上に実践的な経験に伴う知識が必要だと実感した。

 俺がゲームで得た知識とこの世界で学んだ理論を照らし合わせて昇華させた新理論とでも言うべきものを構築出来れば、リーグチャンピオンなんかもイメージ出来るようになるのではないだろうか。

 

 今の俺には、何よりも経験が足りない。

 頭でっかちの理論バカは嵌れば強いが想定外に弱い。予測を外れた途端に脆く崩れ落ちるのが関の山だ。

 旅立ちの日まで既に半年を切っている現状、目指す場所があればこそ出来る事は限界までやり切ってから当日を迎えたい。

 シゲルもあれ以来スクールで今まで以上に張り切って勉学に励み、生徒同士でのバトルでも色々と試しては勝って負けてを繰り返していると聞いている。

 

 なんだか途中から何を書きたかったんだか分からなくなってしまった。

 そもそも自分のポケモンも持ってない現時点でポケモンマスターだとかチャンピオンだとか、改めて考え直せばちゃんちゃら可笑しい話である。

 今はただライバルに、シゲルに負けたくないという気持ちがあるだけでも上等だろう。

 きっと、そうして一歩ずつ進んだ先に、ポケモンマスターへの道が続いているはずだから。

 

 

 

 

 

 a月i日 旅立ちの日、前日

 

 

 遂に明日、俺はマサラタウンを旅立つ。

 あっという間だったという感想と、やっとトレーナーになれるという気持ちが同居している。

 前世の記憶を思い出してから、もう1年が経ったと思えば時間の流れが早く感じるし、この1年でした濃密な努力を思えば時間の流れを遅く感じるのも当然の事だろう。

 

 それに、何と言っても明日から俺は憧れたポケモントレーナーになれるのだ。

 スタート地点に立っただけだが、これまでと比べれば格段に夢へと近づく大いなる第一歩に違いない。

 あれからママさんやオーキド博士にも協力してもらって、額面以上に貴重なポケモンバトルの経験を積めたお陰で、確実に成長は実感出来ていた。

 少なくとも出来る事は全てやったと言えるし、もっとやれたという後悔がないなら上出来だ。

 

 もちろん期待も不安も、どちらともある。

 今ここで日記に書き綴れば一緒くたに誤魔化して安眠を得られるかもしれないが、個人的に嫌な感覚ではなかった。

 しはらく家には帰って来れないだろう。ママさんやオーキド博士、あとはナナミさんにも気軽に会えなくなると考えれば、少しばかり落ち着かない気分にもなる。

 こうして考えれば考えるほどに様々な感情が湧き上がってくるけれど、それが心地良かった。

 

 しかし、明日の事を思えば寝坊なんて馬鹿な真似は出来ない。

 祝うべき新たな門出の日に寝過ごして遅刻するなんて、あまりにも縁起が悪い。

 前世なら子供の年齢だが、この世界では成人なのだ。

 記憶を取り戻して以来ママさんに起こされるような事は一度だってしてないし、今回は念を入れて目覚まし時計を2つも用意する徹底振りだ。

 罷り間違っても起きられないなんて醜態は晒さないだろう。

 

 そうと決まればさっさと寝よう。

 本来なら自然と眠りに就ければ最高なのだが、それが出来ればダラダラと日記なんて書いていない。

 こうなると仕方がないので、俺がこの半年で編み出した『波導法108式』のうち『波導超速安眠術』*2によって眠る事にしよう。

 波導パワーで肉体を介して精神を落ち着かせて心身共に快適な眠りに落ちる。懸念点を挙げるとすれば編み出して以来、今回が初めての使用だという事だが、まあ問題はないだろう。

 何とかなるさ、多分……きっと。メイビー。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
多分。異論は認める。

*2
3秒で眠れる。





転生して、改めて現実を見つめ直したサトシでした。
ずっと浮かれ気分だったのが、ようやく地に足をつけたというところです。

今後の更新は2、3日に1話の頻度になる予定ですが、投稿する時間についてアンケートを取ります。作者の都合で無効となる可能性もありますが、宜しければお答え頂けると助かります。

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