ちょっぴり大人っぽいサトシくんの冒険記録(レポート) 作:波導の勇者サトシくん
今回はジム戦……では、ありません!
ライバルとの作中2回目(描写外ではn回目)となるバトルです。
バトルの描写を日記で表すのが難しくて少し長くなってしまいましたが、ご了承ください。
a月m日 ジム戦の前哨戦!? VSシゲル(2回目)
やはり『波動超速安眠術』の効果は絶大だった。
まるで細胞が全て新しく生まれ変わったかのような万能感。博士とのバトルに勝った日と同じ感覚だ。
頭がスッキリとして、思考が極めてスムーズになる。
これは常用すると感覚が狂いそうだ。ここぞという時にだけ使うようにしよう。
気分転換のため街の外でポケモン達と散歩していると、再びタケシの父親であるムノーと出会った。
顔を合わせればムノーの方も俺の事を覚えていたらしく、昨日と同じくニビジムへの挑戦を思い留まらせるような言葉を掛けてきた。
流石にそこまで言われるとムッとしたが、水タイプや草タイプは居ないのかと聞かれると言い返せない。
確かに
当然だが、無策で挑むつもりはない。ちゃんと秘策はある。
そう伝えてもムノーは厳しい表情を崩さなかった。
自分が挫折した経験があるため、挑戦する事の難しさをよく知っているからこそだろうか。
そんなに気になるならジム戦を観に来るといい。そう言うと、押し黙って去ってしまった。
どうやらまだ顔を合わせる勇気はないらしい。
その後、ニビシティから少し外れたところで、昨夜寝る前に伝授した秘策を確認した。
対象はピカチュウとニドランだが、特にピカチュウは既にかなり使いこなしており、実戦でも充分に通用するものになっていた。ゴローンとのバトルが良い経験になったようだ。
ニドランはまだ練度が甘いけれど、野生のポケモン相手に試した所感では使い時を誤らなければ問題ないだろう。
幸いな事に肝心のやる気に関しては全員あるので、予定通りピカチュウとニドランに任せる事にした。
他のメンバーには、また別に機会を用意する事を約束した。
しばらくしてポケモンセンターに戻ると、タイミングよくカスミも起きてきた。
服装を見て外に出ていた事を察したようで何をしていたのか聞かれたが、後のお楽しみだと答えれば意味ありげに笑って、それ以上の追求はやめてくれた。
代わりに、どんな作戦があるのか楽しみにしてるわね、と言われてしまったが期待を裏切るような事は多分ないはずだ。
カスミにも昨夜タイプ相性の件で心配されたのだが、その時に策はあると言ったら納得してくれたのだ。意外とカスミからの評価が高くて、少し驚いたものである。
朝食を済ませて準備を整えた後、早速ニビジムに向かった。
しかし、その途中でジムの方角から歩いてくる見知った顔に足を止めれば、相手も同じく俺に気付いて立ち止まった。
まあ、シゲルなんですけどね。旅立ち以来、初遭遇だ。
この前は何か思い悩んだような表情だったが、今はいつも通りに見えた。いや、少し嬉しそうだったかもしれない。
気になったので聞いてみれば、どうやら一足先にニビジムに挑戦してジムバッジを手に入れていたらしい。
俺の前だからか表情を取り繕って「余裕だったけどね」なんて言っているが、どうせ嘘である。
シゲルが選んだポケモンはゼニガメだったので、苦戦はしなかっただろうけど。
そこで、シゲルからバトルを申し込まれた。
これからジム戦の予定なので当然断るが、カスミから多分すぐには挑戦出来ないと言われた。
シゲルとのバトルで使用したジム戦用に調整したポケモンを休ませている最中のはずなので、どちらにせよ待たないといけない可能性が高いとのこと。
なるほど。確かに言われてみれば道理である。
流石はジム関係者と言うべきか、ジム側の内情に詳しい。
ちなみに、知り合いであるはずのシゲルとカスミは軽く会釈した程度の反応だった。
そういう事情があるなら、シゲルの提案も吝かではない。
ジム戦に出す予定のピカチュウとニドランは温存し、他の手持ちで相手をする事にしよう。
みんなに約束した機会が早速やって来た。
ルールは3対3の交代1回までを提案して、シゲルもそれを飲んだのでバトルが出来そうな開けた場所に移動した。
審判はカスミが担当してくれた。サンキュー!
ニビシティの外、バトルをするのに問題ない程度の広さがある場所で俺とシゲルは向かい合う。
俺が1匹目に選んだのはポッポ。シゲルはコラッタだった。
お互いに様子見といったところだろうが、俺のポッポはボールから出ると同時に早速仕掛けた。
突風と共にシゲル側に向かって大量の砂煙が襲い掛かる。
まるで局所的に砂嵐が起きたかのような有様で、何も対策をしていなければ前を向く事さえ出来ないだろう。
これは『すなかけ』と『かぜおこし』の合わせ技。
巻き上げた砂を小さな竜巻に乗せて飛ばし、相手陣地に対する目眩しとダメージを与えるのが目的の初見殺しだ。
しかも、俺のポッポの特性は『するどいめ』であるため、砂煙で視界が悪い相手側に飛び込んでも問題なくコラッタの姿を目視出来る。
追撃として『たいあたり』を指示すれば、全く臆する事なく砂煙の中に飛び込んでいき、同時にコラッタとポッポの悲鳴が聞こえてきた。
疑問に思う暇もなく、砂煙の上側を突っ切って出てきたポッポの脚に、コラッタが噛み付いているのが見えた。
何故か『すなかけ』が効いていない様子に思わず動揺したが、目を凝らして見ればコラッタの尻尾に大量の砂が付いていた。
恐らく、コラッタは尻尾で目を隠す事によって砂が目に入るのを防いだのだろう。
この対応は間違いなくトレーナーによる指示だと、薄くなった砂煙の奥に居るはずのシゲルを見れば、さっきまでしていなかったサングラスを少しだけズラしてニヤリと笑う姿が見えた。どうやらしてやられたらしい。
あの体勢では『たいあたり』も『かぜおこし』も当てようがない。
それなら敵の攻撃を利用するまでだ。
ポッポに『オウムがえし』を指示すると、小さな嘴で噛み付くようにコラッタに攻撃をした。
この技の効果は、相手が最後に使った技を真似する。
つまり、コラッタが使った技は『かみつく』辺りだったのだろう。
コラッタが背中に走った痛みにくぐもった悲鳴を上げるが、それでもポッポを離さない。
次の瞬間、ポッポの身体を瞬時によじ登って、その胴体へと力強く前歯を突き立てた。
ポッポが力を失い落下し始めるのを確認して、ボールに戻す。
コラッタは着地したが、ダメージが大きかったのかそのまま目を回して倒れ込んだ。
結果、互いの1匹目は相打ち。
最初の奇襲が決まったと油断した隙をシゲルは見逃さず、あの状況から引っ繰り返されてしまった。
最後のコラッタの攻撃は一瞬見えたエフェクトから推測するに『カウンター』の可能性が高い。
遺伝技のはずだが、あのコラッタ良い技を覚えている。
それに、あの迷いのない動きは事前に決めてあった行動なのだろう。
致命的なダメージを受けた時、相打ちに持ち込めるように『カウンター』を打つという決め事をしていれば最悪でもイーブンに持ち込める。
流石はシゲルだ。伊達に俺が今日まで最もバトルした相手だけあって、後の先を突く見事な戦術だった。
続けて、同時に新しいポケモンを繰り出す。
俺が選んだのはオニスズメ。シゲルはニドラン♀だった。
連続で飛行タイプを出した事で先程の擬似『すなあらし』を警戒したのか、再びサングラスに手を伸ばしたシゲルを見てほくそ笑む。
俺の表情に気付いたシゲルが慌てて何かを指示しようとするが、残念ながらそれでは遅い。
当然ながら、ポッポとオニスズメでは種族も性格も異なる。
自然と、育成の仕方も全く違ってくるため、同じ戦い方をするわけがないのだ。
ポッポが小技が得意な器用なタイプなのに対して、このオニスズメは気性が荒いとされるオニスズメの中でも群を抜いて気が強い個体で、非常に攻撃的な技構成をしていた。
故に、真っ向勝負あるのみ。初手で指示もなく『ゴッドバード』を溜め無しでかっ飛ばすと、相手には何もさせず急所に一撃で倒してしまった。
自分のポケモンながら、何でコイツ溜めを無視して打てるんだと疑問に思う。紛れもなく
シゲルが悔しそうに顔を顰めてニドランをボールに戻した。
とはいえ、不運な事にオニスズメが少しふらつくような様子を見せた事から、ニドランの特性『どくのトゲ』をもらって毒状態になってしまったのだろう。
これは仕方ない。確率は敵だからな。
シゲルもオニスズメの様子からニドランが一矢報いていた事に気が付き、僅かに表情が緩んだ。
最後のポケモンにシゲルが選んだのはピジョンだった。
反射的に図鑑で確認したところLv.15だったので、リアル特有の謎進化をした個体のようだ。
ピジョンとオニスズメでは攻撃と素早さの種族値は互角。それ以外は全てピジョンの方が上回っている。
本当なら小技で立ち回りたいのが本音だが、同じ鳥ポケモンが相手だと気の強さが裏目に出て絶対に真っ向から敵を捻じ伏せようと
波導パワーで読み取ったオニスズメの意地を尊重して、『ゴッドバード』の許可を出した。
だが、二度も同じ攻撃が通じるほどシゲルは甘くない。
ピジョンに『ふきとばし』を指示すれば、強烈な突風がオニスズメの猛進の勢いを削ぎ落とす。
何とか強風の中を突っ切ったが技は躱されてしまい、無防備な背中に『エアカッター』が直撃して、更に『でんこうせっか』まで決まる。
錐揉みしながら落下していくオニスズメだが、ここで諦めないのが俺のオニスズメだ。
即座に体勢を立て直すと、仕返しの『でんこうせっか』からの『みだれづき』をお見舞いする。
オニスズメを倒したと油断していたらしいピジョンはそれをまともに喰らうが、反撃の『つばめがえし』を受けて流石の意地っ張りもノックアウトされてしまった。
ポッポとオニスズメは頑張ってくれたが、現実は無情である。
それでも奇跡を起こせばいいと、残る最後の1匹を出せば珍しくシゲルがポカンと口を開けて固まった。
割と満身創痍とはいえ、ピジョンの前にキャタピーを出したらそんな表情にもなるだろう。
俺のキャタピーは威勢良く飛び出したかと思えば、目の前のピジョンを見て蛇に睨まれた蛙の如く固まってしまった。
しかし、この瞬間が千載一遇のチャンス。
ここを逃せば『エアカッター』で削り切られるだけだと、『いとをはく』の糸をその場で回転しながら発射するように指示を出した。
シゲルの指示がなくて背後を振り返っていたピジョンは反応が遅れて、咄嗟に回避しようとしたが片翼を糸に絡め取られてしまう。
それによって空中でバランスを崩したピジョンにキャタピーの『たいあたり』が当たり、吹き飛ばされながらピジョンが片翼だけで放った『エアカッター』が空中で身動きの取れないキャタピーに直撃した。
同時に地面に落ち、沈黙する。
俺とシゲルが必死にキャタピーとピジョンに声を掛ける。
立ち上がった方の勝利。審判を請け負ってくれたカスミも、虫嫌いを忘れて固唾を飲んで見守る。
そして、トレーナーの声に応えて2匹が立ちあがろうとして、途中でピジョンはうつ伏せに倒れ込んでしまった。
その場を沈黙が支配する中、全員の視線が身体を震わせながらも立ち上がったキャタピーに向く。
俺とカスミの視線が交わり、判定が告げられた。
「ピジョン、戦闘不能! 勝者は、キャタピーとサトシ!」
瞬間、俺とキャタピーの勝鬨が重なった。
同時にキャタピーが真上に糸を吹き出して繭を形成して光り輝き、進化の兆候を見せる。
そして、光が収まったところには、さなぎポケモンのトランセルが居た。
しばらく俯いていたシゲルが顔を上げて、互いに相手を讃えながら握手を交わす。
いつもなら平気な顔を取り繕うシゲルが悔しさを隠しきれず、人を喰ったような笑顔も引き攣っている。
確かに、今回のバトルは今までの中で初めてのバトルをした時と並んで僅差の結果だった。
最初のバトル以降、俺は圧倒的に勝ってきたため、どこかで慢心もあった。
キャタピーの根性に助けられて勝ちを拾えただけだ。
勿論、俺は今回ピカチュウを出していないし、シゲルもゼニガメを出していないので全てを出し切ったわけではない。
けれど、シゲルは間違いなく俺のライバルなのだと、このバトルで改めて理解させられた。
今はまだ前世の知識とそれを活かした発想で有利を得られているが、日に日に差が埋まっていっている事にようやく気が付けた。
良い機会だった。俺はまた調子に乗るところだった。
シゲルに「次も俺が勝つ」と告げれば驚いたように目を見開いて、徐にサングラスを掛けて背中を向けた。
生意気そうに鼻を鳴らして「次こそ僕が勝つさ」と、それだけを告げて去っていった。
その声が震えていた事を指摘するのは、野暮というものだろう。
不思議と、シゲルの背中が大きく見えた気がした。
なお、その後すぐにポケモンセンターで顔を合わせる事になったのは、ご愛嬌である。
-追記-
結局、今日中のジムへの挑戦は見送った。
シゲルとのバトルで反省点がたくさんあったので、その反省会とジム戦の戦術を練り直した。
秘策を用意したとはいえ、擬似『すなあらし』戦法のように失敗しないとは限らず、それに固執する事の危険性を理解した。
そのため最低でも次善の策を用意していなければいけないと思い、あの後でピカチュウとニドランに仕込んだ。
明日の相手は、ジムリーダー。
シゲルよりも経験が多く、当然対応力も高い。
俺のバトル経験のほとんどが、シゲルただ1人であるということを忘れてはならなかった。
無自覚のうちに勝ち続けて慢心が生まれていた結果、大一番で負けるなんて事になったらしばらく立ち直れない。
本当に、今日は実りの多い1日だった。
『サトシのポケモン』
・ピカチュウ(Lv.16)
・オニスズメ(Lv.10→Lv.11)
・ポッポ(Lv.10)
・ニドラン♂(Lv.13→Lv.14)
・トランセル(Lv.8→Lv.10)←NEW
本当はVSタケシの予定だったけど、改めて作中の時間経過を確認したら3日でニビシティは早すぎて、急遽シゲルくんに登場して頂いたという裏話。
アニポケの原作とはイベントが起きるタイミングが変わってると思ってもらえると助かります。
このための原作改変タグと独自設定タグだったのだ!(ナンダッテー!?)
今後の更新は2、3日に1話の頻度になる予定ですが、投稿する時間についてアンケートを取ります。作者の都合で無効となる可能性もありますが、宜しければお答え頂けると助かります。
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