蒼い悪魔の英雄譚   作:魚の目108

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悪魔のいない世界で

 ナジームとの闘いから数日が過ぎた頃、バージルはとある町の公園のベンチに座りながら片手で頭を抱えていた。

 端的に言えば、これ以上ないほど困り果てていた。

 

 何故か。それはこの人間界、というよりは、この世界が自分の元居た世界と全く異なる異世界だったためだ。

 最初に違和感を覚えたのは、ようやく辿り着いたとある町で情報収集をしていた時だった。

 

 酒場で話を聞こうとしたところ、客たちがとあるものに熱心に注目していた。

 よくよく見てみると、酒場に置いてあるテレビに映し出されていた映像。

 そこにはまるで闘技場のような場所で、2人の男女が向かい合っている。

 そしておもむろにお互いの手から剣が出現し、試合開始の合図と共に戦闘が始まり、剣戟が始まる。

 

 最初は何かのアクション映画だろうかと、バージルはそこまで気にはしなかったが、ふとナジームとの戦闘を思い出す。

 奴もまた同じように武器を出現させていなかったか?――と。

 更に驚いたのは剣戟を行っていた男が、急に自らの剣に炎を纏わせたのだ。

 バージルの知る限り、こんな真似ができるのは悪魔の武器――魔具だけだ。

 だが、このように何も知らぬ一般人の前で堂々と振るわれるものではない。

 

 テレビの中の男は対戦相手の女を焼かんと激しく剣を振り回す。

 防戦一方となっている女はその攻撃を果敢に受け流すが、防御が破られるのは時間の問題だろう。

 このまま行けば男に軍配が上がると思われたが、突然画面から女の姿が消えた。

 突如、女が男の背後に現れ、男を斬り伏せる。

 テレビには恐らく女の名前であろう文字と「WIN」という文字が浮かんだ。

 すると、客たちの中で歓喜の声と落胆の声が上がる。

 

「ハッハー! 賭けは俺の勝ちだな! じゃ、約束通り金はいただくぜ!」

「クソ…… 瞬間移動はインチキだろ……」

 

 どうやら客同士で賭けを行っていたようで、女に賭けた客が相手の金をまとめて自分の懐に納めているようだ。

 バージルは賭けを行っていた2人の男性客のテーブルに向かうと、先ほどのテレビの内容について尋ねようと話しかける。

 

「すまない。少し尋ねたいことがあるんだが」

「あん? なんだい兄ちゃん?」

 

 バージルの顔を見て客の男達は普段見ない顔にやや警戒しながらも、賭けに負けたであろう男が受け答えをする。

 

「今テレビで流れている映像だが……あれは何だ?」

 

 すると2人の客はお互いの顔を見やった後、バージルをまるで変なものでも見るかのように視線を向けると、今度は賭けに勝った男が答える。

 

「何って……兄ちゃん。あれはKOKの試合だろうがよ」

「KOK……とは?」

「大丈夫か兄ちゃん。KOKってのは連盟の伐刀者(ブレイザー)同士の競技大会だぜ」

「ッ! 伐刀者(ブレイザー)……だと?」

 

 伐刀者(ブレイザー)――ナジームがこちらを指して言った言葉がここで出たことに目を見開く。

 ナジームは明らかに裏の人間。

 故に何らかの隠語なのかとも思ったが、ここにいる一般の人間が普通に言葉に出すほどありふれたものなのかと、驚きを隠せなかった。

 

「何だ? テレビ見ないのか? いや、だとしても伐刀者(ブレイザー)くらいは知ってるだろ?」

「……いや、ちなみにあの二人が手にしていた武器。あれは魔具か?」

「まぐ…? なんじゃそりゃ。あれは《固有霊装(デバイス)》だろ? 伐刀者(ブレイザー)の魂が具現化したとかなんとかだったはずだ。詳しくは知らねぇけどよ」

「――――」

 

 《固有霊装(デバイス)》の説明を聞き、バージルは言葉を失う。

 自らの魂を具現化するという明らかに普通の人間ではできないことをできる存在、伐刀者(ブレイザー)

 自分が世俗に疎いことを自覚はしているが、いかに自分とて、このような超常の存在がいるのならば絶対にどこかで見聞きした覚えはあるはずだ。

 

「……そうか。話を聞けて助かった」

「おう……って兄ちゃん本当に大丈夫か? 顔色悪いぜ?」

「あぁ……問題ない。最後に一つだけ聞きたい。この町で、本などを置いている場所はあるか?」

「本? あぁ、なら市立の図書館があるぜ。場所を教えようか?」

「……助かる」

 

 図書館の場所を聞いた後、客の心配をよそにバージルはその場を立ち去る。

 酒場から出たバージルは空を見上げ、一つの可能性に思い至る。

 

 ――この世界は自分の知っている世界ではないのではないか、という可能性だ。

 まだ完全にそれを認めきれない理由は伐刀者(ブレイザー)の存在がこの地域のみに知れ渡っているという可能性を捨てきれないからだ。

 故にバージルは先ほど聞いた場所を思い出しながら、早足で向かう。

 どうか元の世界であってくれ。そんな希望を抱きながら。

 

*********************

 

 結論から言うと、バージルの希望は完全に潰えた。

 今しがた読んだ本の中には、伐刀者(ブレイザー)のことはもちろん、この世界の常識が載っていたからだ。

 

 伐刀者(ブレイザー)――己の魂を《固有霊装(デバイス)》と呼ばれる武装として顕現させ、魔力を用いて異能の力を操る存在。

 どうやら千人に一人の割合で存在し、この世界においては至極ありふれた存在として受け入れられているらしい。

 

 バージルの世界にはもちろん、こんな人間はそもそも存在などしなかった。

 もし、このような存在がありふれていたのだとしたら、元の世界の悪魔は駆逐されていたのではないだろうかとも思う。

 

 更に極めつけは、この世界の歴史だ。

 元の世界では第二次世界大戦時、勝利したのはアメリカであるが、この世界ではどうやら日本が勝利したらしい。

 その後、アメリカを始めとした各大国は《大国同盟(ユニオン)》として同盟を結成し、世界の半分をその支配下に置いた。

 対する日本を含む小国は《大国同盟(ユニオン)》という巨大な力に対抗するため《国際魔導騎士連盟》という国際機関を設立。

 結果として世界は、二つの陣営に分かれることとなった。

 更には《解放軍(リベリオン)》と呼ばれる巨大な犯罪組織の陣営が存在し、《国際魔導騎士連盟》と《大国同盟(ユニオン)》から目の敵にされているとか。

 

 粗方、この世界の歴史の中身を理解したバージルは片手で本をパタンと閉じ、棚に戻す。

 その後、外に出たバージルは、ふと目に映った近場の公園のベンチへ向かい、腰を下ろした。

 そして、改めて先ほど読んだ本の内容を反芻するが、なおも現実を受け止めきれずにいた。

 

(どういうことだ……何故こうなった……)

 

 恐らくだが、この世界には悪魔が存在しない可能性が高い、というのがバージルの出した結論だった。

 歴史以外にも御伽噺の類を探していたのだが、その中に魔剣士スパーダ伝説が存在しなかった。

 

 スパーダとは、バージルとダンテの父親であり、二千年前、人間界に侵攻した魔界の軍勢を悪魔でありながら打ち倒した存在である。

 無論、元の世界でもあくまで御伽噺として語られる程度であり、本当に存在していることを信じているものはごく少数であったが、その話自体はありふれた存在として世間に認知されていた。

 それが全くもって見つからない。

 

 ということは人間界に侵攻したという出来事そのものがなく、悪魔というのは架空の存在でしか語られていないということ。

 本来それは喜ばしいことではあるのだが、こと今のバージルにおいては凶報だ。

 悪魔がいないということは元の世界に戻るための魔界への道筋が完全に途絶えているということなのだから。

 

(これからどうしたものか……)

 

 元の世界に帰るのを諦められないバージルは腕を組み、これ以上ないほど頭を回転させる。

 とはいえ、悪魔が存在しないというのは、まだ可能性の話。

 実際には伐刀者(ブレイザー)という強力な人間が存在するため、悪魔の肩身が狭くなっているだけという可能性も捨てきれない。

 であれば、もしかしたら元の世界に比べて、ただ単純に人間界で活動している悪魔の数が少ないだけなのではないか。

 そんな希望的観測がバージルの頭の中を駆け巡る。

 普段であれば、そんなか細い可能性に賭けたりなどはしないが、事ここに至ってはそんな小さな希望にも縋りたい気分だった。

 

 まずは、悪魔についての情報を持っている可能性の高い者をしらみつぶしに探すしかない。

 そんな可能性のあるものと言えば、やはり裏の人間。犯罪組織などの後ろ暗い存在だ。

 元の世界では組織が悪魔の力を用いていたこともあった。

 

 いくつか潰していけば、悪魔の手掛かりの一つや二つは見つかるかもしれない。

 そうと決まれば、この町の治安の悪い場所を探して情報収集を行うかと考える。

 バージルは、俯いていた顔を上げて立ち上がり、人気の少ない場所を求めて歩き始める。

 

(まさか、連中に会うのを焦がれる日が来るとはな……)

 

 バージルは胸中の焦りを押しつぶすかのように、そんなことを思っていた。

 

*********************

 

 三ヶ月後――

 ヴァーミリオン皇国・王城

 

 積み上がった報告書の山から、一枚だけ色の違う紙が覗いていた。

 ヴァーミリオン皇国第一皇女──ルナアイズ・ヴァーミリオンは、細い指でそれを抜き取り、静かに目を通していく。

 内容は単純だ。

 連盟国各地で暗躍していた犯罪組織が、ここ数か月のあいだに次々と壊滅。

 犯人は全て同一人物。

 圧倒的な戦闘力で歯向かうものは全て、一刀の下に斬り伏せられていた。

 報告書の末尾の一行が目に留まる。

 ――目撃証言多数。銀髪の黒い外套の男。名は、バージル。

 巷では《魔剣士(ダークスレイヤー)》と呼ばれ、魔導騎士連盟を悩ませている男だった。

 

「……また増えたな」

 

 ルナアイズは小さく息を吐き、机の端に並べられた同種の報告書の束へ視線を流す。

 どれも似たような文面だ。壊滅、全滅。

 目撃情報には、全て同じ容姿の特徴が書かれている。

 そして、この男は決まって同じことを組織の人間に問いただしていた。

 

――「悪魔はどこだ」と。

 

 「組織の中にはBランクの伐刀者(ブレイザー)も含まれていたというのに、どれも鎧袖一触。しかも単独で……か。それにしても、『悪魔』とは何を指している?」

 

 悪魔のような人間、などであればまだ分かるのだが、そのまま『悪魔』と来ている。

 伐刀者(ブレイザー)はよく二つ名で呼ばれることもあるため、『悪魔』と呼ばれる伐刀者(ブレイザー)がいないかを調査してみたのだが、それらしい人物もいなかった。

 

「悪魔……か。まさか本当に実在すると信じているのか?」

 

 小さく零し、ルナアイズは調査報告書を置く。

 銀髪、黒い外套、異常な戦闘力。そして犯罪組織だけを狙い、必ず同じ問いを投げかける男。

 放置すればいいかとも思ったのだが、目的が不明瞭かつ、その戦闘力からあまり無視できない存在だった。

 それに――

 

「ルナ姉! 仕事中悪いんだけど入ってもいい?」

「ッ! ステラか……入っていいぞ」

 

 許可を出すと一人の少女が扉を開けて入ってくる。

 紅蓮の髪を靡かせ、快活な笑顔を見せながらこちらに近づいてくる彼女は、ルナアイズの妹であるヴァーミリオン皇国・第二皇女──ステラ・ヴァーミリオンだ。

 彼女は僅か15歳にしてAランク騎士という破格の才能を誇る伐刀者(ブレイザー)であり、《紅蓮の皇女》として名を馳せている。

 

「見て見て! 破軍学園の制服! 結構センスいいと思わない?」

「あぁ、中々似合っているじゃないか」

 

 そう、彼女は今年から七つある日本の伐刀者(ブレイザー)養成学校の一つ、破軍学園に入学することが決まっていた。

 先ほど、その制服が届いたため、そのお披露目をしようと愛する姉に会いに来たのだ。

 姉に褒められ、嬉しそうに「ふふっ」と笑いながら、くるりと一回転するステラ。

 ふと、一つの報告書がステラの視界に映り込み、気になったステラは手を伸ばす。

 

「これ、最近噂になっている《魔剣士(ダークスレイヤー)》よね? また犯罪組織を潰したの?」

「あぁ……既に顔も割れているためか、ここ最近だと色々な組織に懸賞金も懸けられているらしい。向かったものは誰一人として帰ってきていないがな」

「ふぅん…… 悪魔を探してるらしいけど、本物の悪魔なんてこの世にいないでしょう? このバージルって人、ちょっとスピリチュアルな人なのかしら」

「そこが不気味なところだ」

 

 ルナアイズは腕を組み、椅子の背にもたれた。

 

「これほど異常な強さを持つ男が、空想の中にしか出てこないはずの『悪魔』を、犯罪組織まで潰して本気で探している。冗談や比喩で片付けられる範囲は、とうに超えているさ」

「……つまり、頭のネジが飛んでるか、本当に何か見えてるかのどっちかってことね」

「そういうことだ。更にだ――」

 

 ルナアイズは地図を取り出し、ステラの前に広げる。赤い印が点々と連なり、一つの線を描いていた。

 

「見ての通り、《魔剣士(ダークスレイヤー)》が潰してきた裏組織の拠点は、こうして並べると――徐々にだが、日本に寄ってきている」

「……本当だ。これ、次の進行方向の先って……」

「お前がこれから行く、日本だ」

 

 ステラは思わず息を呑む。

 

「ちょ、ちょっと待って。じゃあ、その人……今度は日本の裏社会を狙うつもりってこと?」

「恐らくな。今までの奴の行動パターンであれば、そうする可能性は高い」

「そんなのが動き回ってたら、連盟の日本支部も黙っていないんじゃない? というか何で今まで他の国でも野放しになってるのよ。連盟非登録の違法伐刀者(ブレイザー)なんて真っ先に捕らえないといけない犯罪者じゃない」

「既に奴を捕縛しようと動いたところもあるらしいが、全て逃げられるか、返り討ちにされたらしい。幸運なことに、多少は分別がつくのか、連盟側に死傷者は出ていないがな……。故に、今も奴は各国を我が物顔で渡り歩いているというわけだ」

「犯罪者だけじゃなく連盟の伐刀者(ブレイザー)も全部返り討ちって……そんなに強いの……?」

「……あぁ、噂によると《砂漠の死神(ハブーブ)》を撃退したという話も出ている」

「……!? 《砂漠の死神(ハブーブ)》って、あの世界最強と言われる傭兵の?」

 

 《砂漠の死神(ハブーブ)》のことは政界人であるステラも当然知っていた。

 依頼したものには必ず勝利を与えるという世界最強の傭兵。

 ただし、依頼主にも共に破滅をもたらすと言われる悪名高い存在だ。

 ここ最近、彼の仕業によって国が一つ消滅したとも言われているため、記憶に新しい。

 

「そうだ…… 真相は不明だが、奴と《砂漠の死神(ハブーブ)》が邂逅していたという情報が最近出回ってきてな」

 

 ルナアイズは報告書の山から一枚の紙を取り出し、机の上に置く。

 ステラは置かれた報告書を見やると、2人の男が向き合っている画像を確認する。

 

「《砂漠の死神(ハブーブ)》によって滅ぼされた街の監視カメラが対峙する二人の姿を捉えていたらしい。だがカメラ自体の損傷が激しく、復元できたのは、《砂漠の死神(ハブーブ)》が奴に踏み込もうとする瞬間だけだったそうだ。だから、肝心の結果は分からん。……それでも、あの《砂漠の死神(ハブーブ)》と相対して、奴は今も生きている。それだけで奴の異常さが分かるだろ?」

 

 そう、《砂漠の死神(ハブーブ)》は数多の戦争を生き抜いてきた、この世界の中でも有数の実力者の一人。

 それを相手に生き残ったのであれば、それだけで偉業だ。

 だが――

 

「でもそれってまずいことじゃない? いくら強くて犯罪組織を狙ってるからと言って、こんな好き放題に暴れまくられたら連盟としての威信がなくなるわ」

「その通りだ。だからこそ、今各国は情報規制を敷いて奴の情報をできるだけ封鎖している。こんなことが世間に広まってしまえば伐刀者(ブレイザー)を管理すると謳っている連盟の力が疑われるからな。とは言え、奴の行動はあまりにも大胆すぎるため、完全に抑え込むことはできていない」

 

 ルナアイズは小さく肩をすくめる。

 

「結果として、裏では《魔剣士(ダークスレイヤー)》の噂が一人歩きしている。犯罪組織からは恐れられ、一部の市民からは英雄扱い、連盟からは頭痛の種として扱われている、というわけだ」

「……厄介ね、色んな意味で」

「厄介極まりないさ」

 

 ルナアイズは指先で机をとん、と軽く叩きながら、静かに言葉を続ける。

 

「だからこそ、仮にお前が日本で《魔剣士(ダークスレイヤー)》に会うことがあった場合、間違っても“勝負しよう”だなんて言うなよ?」

「言わないわよ! ……多分」

「多分では困るんだがな。『悪魔』を探しているなどと言う怪しい男がいつまでも連盟の者にだけ手心を加えてくれるとは限らんのだからな」

 

 《砂漠の死神(ハブーブ)》に匹敵する存在となると今のステラには手に余る存在。

 それはステラも理解している。

 

「ちゃんと分かってるわよ。今のアタシじゃ、話にならないってことくらい。だから破軍学園で、誰にも文句言わせないくらい強くなってくる。こんな得体の知れないやつから、ヴァーミリオンの皆を守れる騎士になるためにね」

 

 ルナアイズはステラの頼もしい言葉に、ふっと表情を緩めた。

 

「……我が妹ながら、頼もしいよ」

 

 そう言いながら立ち上がり、ステラの頭にそっと手を置く。

 撫でられたステラは、子ども扱いされたと文句を言う代わりに、くすぐったそうに笑った。

 

「期待しているよ、ステラ。だからこそ――その前に、妙なところで命を落としたりはするな。学生騎士である以上、≪特例招集≫で実戦の場に駆り出される場合もあるんだ。いいな?」

「分かってるってば。ちゃんと帰ってくるわ。その時には、《魔剣士(ダークスレイヤー)》だろうと《砂漠の死神(ハブーブ)》だろうと、この国に何かしようとする奴はまとめて焼き尽くしてやるんだから」

 

 大言壮語とも言える約束を残し、ルナアイズの手が離れたステラは、少しだけ二人で何ともない雑談に興じてから元の部屋に戻る。

 ステラは自分の部屋に戻る最中、先ほどの会話の中で出てきた男について改めて思いを馳せていた。

 

(それにしても、一体何者なのかしら・・・・・・)

 

 まぁ、自分は学園で、相手は恐らく裏組織潰しに奔走するのだろうから会う機会もないだろう。

 そう、楽観的に考えていたのだった。

 

*********************

 

 一ヶ月後――

 破軍学園の教室

 

 ホームルームにて、ステラは目の前の光景に目を見開き、口をあんぐりとさせていた。

 その様子にルームメイトである、黒髪の少年、黒鉄一輝が隣の席から心配そうにこちらを見つめて来るが、それに気づく余裕すらない。

 なぜなら――

 

「特別講師のバージルだ。よろしく頼む」

 

 そこには、黒い外套でこそないが、紺色のスーツに身を包んだ銀髪の男。

 報告書で何度も目にした名前。そしてカメラに写っていた顔とも完全に一致している。

 それが、よりにもよって――

 

 自分たちの教師として、そこにいた。

 

 

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