EMIYA in Another Fate   作:イスタ

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Ⅱ 運命の夜、英霊召喚

 

 

 

「あ………つ」

 

 

吐き気と共に目が覚めた。

 

べっとりと血で濡れた制服が気持ち悪い。

朦朧とした頭のまま、自分が死に、生き返ったことをどうにか自覚する。

 

何が起こったのかは解らない。助けてくれた誰かの顔すら憶えていない。

 

血の海の他に唯一つこの場に残されたのは、同じく血の様に朱いこの宝石だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――帰宅できたのは日付が変わってからだった。

 

 

未だ罅の入った心臓を抱えて、それでも自力で帰ってこられたのは奇跡としか言いようがない。

 

 

 

 

「がっ、は――――――――!?」

 

 

 

 

だというのに、青い殺人者はここまで追ってきた。

 

 

奴の放った回し蹴りで俺は今、ボールのように空を飛んでいる。

 

強化した藤ねえのポスターは先刻の打ち合いでぐにゃぐにゃにひしゃげてしまった。

 

 

 

「ぐっ――――!」

 

 

背中から土蔵に激突し、崩れ落ちた。

背骨が砕けていないのは奇跡としか言いようがない。

だが砕けなかったところで、こんな体勢のままでは刺し貫かれるだけ。

 

 

「くそ……ッ!」

 

迫る槍の穂先に体を奮い立たせるが、膝が折れてみっともなく転がってしまう。

 

 

「チィ、男だったらシャンと立ってろ……!」

 

 

だがなんという悪運か。俺の首を抉る筈だった赤槍は鼻先を掠め、背にする土蔵の扉を弾き開けた。

 

 

 

 

 

(逃げ込んでも袋の鼠……いや、それでも、ここしか――――!)

 

 

僅かに繋がった活路。

今度こそ足に力を籠め、全力で土蔵に飛び込む。

 

何でも良い。工具、投影品、武器になるようなものがあれば―――

 

 

「そら、これで終いだ―――!」

 

 

「くっ……、こ――――のぉぉおおおおお!!!」

 

 

放たれた避けようのない必殺の槍を、四つん這いのままポスターを広げることで防ぐ。

 

―――だがそれで終わり。

 

一度きりの楯は破壊され、衝撃だけで俺は後方へと吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

(ぁ―――――、づ――――)

 

 

 

一瞬の思考停止。

 

心臓に喝を入れる代わりに、武器を手にする機会を失った。そこへ、

 

 

 

「詰めだ」

 

 

眼前には、槍を突き出した男の姿があった。

 

 

「今のはわりと驚かされたぜ、坊主。……しかし、分からねえな。機転は利くくせに魔術はからっきしときた。筋はいいようだが、まだ若すぎたか」

 

 

男の声など耳には入らない。ただ突き付けられた凶器を穴が開くほど見つめる。

 

だって、これは俺を殺すもの。既に一度殺されているのだから、その威力は折り紙つきだ。

 

 

 

 

「もしやとは思うが、おまえが七人目だったのかもな。ま、だとしてもこれで終わりなんだが」

 

 

―――迸る赤。

 

 

綺麗に心臓へ吸い込まれるだろうその名槍の味を知っている。

 

それをもう一度?本当に?理解できない。なんだってそんな目に遭わなくてはならないのか。

 

 

 

……ふざけてる。

 

そんなのは認められない。こんな所で意味もなく死ぬ訳にはいかない。

 

 

この身はもう二度も助けて貰ったのだ。

 

なら。命を拾われたからには、簡単には死ねない。

 

俺は生きて義務を果たさなければいけないのに。

 

 

 

月下の約束。あの尊い理想(ユメ)を叶える為に、衛宮士郎は生きて死ぬと決めたのではなかったか。

 

 

 

 

 

「ふざけるな、俺は―――」

 

 

俺は。

 

 

こんなところで意味もなく、何も判らず、何も叶えられないまま、

 

 

おまえみたいなヤツに、

 

 

殺されてやるものか――――――!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――…、え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、本当に。

 

 

 

 

「なに………!?」

 

 

 

 

魔法のように、巻き起こった。

 

 

 


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