EMIYA in Another Fate   作:イスタ

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Ⅶ ミッドナイト・イントルーダー

 

 

 

 

時刻は午前零時。

 

セイバーに抱えられて、冬木の空を駆け抜ける。

 

 

 

「ああ、本当に――――まったく、何て迂闊………!!」

 

 

 

あれから三時間。

 

あれだけのコトをして助けておいて、間に合いませんでしたなんて結果はお粗末に過ぎる。

 

記憶の操作もせず、生徒とランサーの両方を野放しにした己の馬鹿さ加減に腹が立つ。

 

 

ランサーが―――いや、そのマスターが、あの死に損ないを生かしておく筈はないというのに。

 

 

幸い、アイツの家は知っていた。

 

私が調べたわけじゃなくて、たまたま知り合いがよく遊びに行く家だっただけで、今まで一度も行ったことはないけれど。

 

 

「セイバー、お願い。急いで……!」

 

 

既に殺されている可能性も高い。

 

父の形見で塞いだ心臓の孔は再び開かれていて、この先で待っているのは朱い華を咲かせた屍かもしれない。

 

 

分かっている。これは全て私の責任。

 

一度ならず二度までも―――ああ、本当に。今日に限って私は、どうしてこんなにも致命的なミスを犯してしまったのか。

 

 

……唇を噛む。吐く息が白い。風が出てきた。よほど強いのだろう、雲がごうごうと流れていく。

 

暖かい筈の冬木の風は背筋を震わせて、ぶるりと、全身が痙攣した。

 

 

 

「あれよ!セイバー、そろそろ降りて!」

 

 

ビル群を足場に跳ぶセイバーを急かし、漸く屋敷を視界に収めることのできる位置にまで辿り着いた。

 

向かう先にサーヴァントがいる以上彼女にも分かっているだろうが、それでも私は声を張り上げる。すると、

 

 

 

「……リン。ランサーの気配が消えました」

 

「えっ。それって―――つまり」

 

 

間に合わなかったのか。

 

 

最悪の想像に、冷たいものが背筋を伝う。

 

………私は、あの馬鹿を二度も殺してしまったのか。

 

 

 

「まだ判りません。しかし、もう一つ報告すべきことが。―――つい今し方、同じ場所に、新手のサーヴァントが現れました」

 

 

「はぁっ!?」

 

「それがランサーを撃退したものと思われ、新たな気配は現在その場に留まっています。どうしますか」

 

「―――、」

 

 

あの屋敷内にタイミング良くサーヴァントが現れた。そしてランサーを撃退。

 

事実だけを見れば、仮説はすぐに立てられた。

 

 

けれどそれを真っ向から否定する。あの男にそんなことが出来る筈は無い。だって、アイツは只の一般人で―――

 

 

 

「……決まってるじゃない。その顔を拝みに行くわよ。衛宮君の安否は勿論、何が起こっているのか確認だけでもしないと収まらないわ」

 

「了解しました。マスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うそ。これって」

 

 

到着した衛宮邸。

 

 

一目散に門へと向かい、敷居を跨ごうとして違和感に気付いた。

 

セイバーに警戒させたまま壁に手を当て、急ぎ探査魔術を行使する。

 

 

―――有り得ない。

 

 

こんな馬鹿みたいに解放的な武家屋敷に、魔術結界が張られている。

 

しかも、ここまで近づかなければ分からないほどお粗末なもの。おそらくは警報程度の効果しか無いのだろう。

 

気を張っていたとはいえ、気付けたのは本当にたまたまだ。

 

 

元々張られていたのか、それとも新たなサーヴァントが張ったのか。

 

前者ならこの家の主が魔術師である確かな証拠であり、後者ならば召喚されたサーヴァントはキャスターということになる。

 

 

けれど先刻あのランサーを退けている以上、この先にいるのがキャスターである確率は低い。

 

 

―――いよいよ以ってあの男の正体が怪しくなってきた。まさか、本当に?

 

 

「結界が張られているのですか?ならば我々は敵の懐に飛び込むも同じ。リン、気を付けて」

 

「……ふん、上等じゃない。さっさと行くわよセイバー」

 

 

 

 

 

 

 

―――突入して先ず、目の前に広がっていたのは殺風景な庭。

 

 

結界はやはり警報用だった。カランカランと耳障りな鐘の音が母屋から聞こえてくる。

 

宝石を数粒掴み侵入者への迎撃を警戒したけれど、見渡す限り敵の姿は無い。

 

 

「いないわね。ちっ、家の中に入ったか……」

 

 

「いえ……リン、あそこです―――!」

 

 

セイバーの声に目を向ける。

 

 

母屋から離れた古めかしい土蔵。その中からのっそりと一つの人影が姿を現した。

 

 

―――突然の侵入者に驚いた様子はない。

 

どころかまるで来ると分かっていたかの如くこちらを見据える、月明かりに照らされたその顔は紛れもなく―――

 

 

 

「―――衛宮君!」

 

「………」

 

 

 

 

「無事!?ランサーが―――」

 

 

つい今し方”戦うのも已む無し”と決意した筈なのに、その男の存命を確認した私の口から出たのはこんな言葉だった。

 

けれど、来たでしょう、と続けようとして思考が止まった。

 

 

 

……何かがおかしい。

 

 

向かい合っているのは良く見知った顔。

 

生徒会長のお気に入りにして、"穂群原のブラウニー"とかいうふざけた二つ名を持つお人好し。

 

詳しくは語らないけど、諸事情でこの一年目にする機会が多かったから、そいつの事はよく知っていた。

 

 

だからこそ、どうしようもなく違和感を感じてしまう、その首から下。

 

 

 

 

 

「―――え。デカっ」

 

 

思わず零れた言葉にがくりと肩を落とす筋肉だるま。ていうか。

 

一体何なのよ、そのカッコウ―――!?

 

 

 

 

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