Luminous Archive 作:qwer2ppNT4.0
乾燥した空気、歩きにくい砂漠、息をするとたまに口に砂が入る、靴に砂が入る、暑い。
私にとって、この場所はほとんど嫌な記憶でしか残っていないけど、梔子先輩と出会えた最初の場所。
今になっても梔子先輩には感謝しても感謝しきれないくらいだ。
砂に埋もれた建物が恐ろしく見える。
まるで私がアビドスを置いて去った事を恨んでいるように見えた。
あれからもう2年経ったのか。
実感がわかない、アビドスの頃は1年間が2年に感じたのに、西ルミナスに転校してからは2年が1年しか経ってない気分だ。
相変わらず変わっていない景色、私がここを通学していた頃の姿を、今になって見てみたい。
どんな表情をしていたか、どんな事を考えていたのか。
私は。私は何故あの時孤立していたのに学校へ行っていたのか。
なぜ嫌な事の方が多かったのに学校を休まず行ったのか。
今じゃ分からない。
過去の私に聞かないと答えは返ってこない。
でも過去の私は消えた、いい思い出だけを残して。
「ユア、せっかくアビドスに来たんだからついでにアビドス高校寄ってみたら?」
ナツメがそう提案してきた。
「もうアビドス高校は廃校になってるんじゃないかな?まあ、私の後輩がいるなら見てみたいけど」
冗談混じりにそういうと、ナツメはしばらく1人でも大丈夫だから少し見に行ってきなと言ってきた。
なら、少し見に行ってみようかな。
「そうするよ、私が嫌いになりたかった母校を見に行ってみる」
そしてナツメとは別行動になった。
何かあればスマホがあるので大丈夫。
それに、私は高校以外特に行く場所がないから。
過去の自分の通学路を辿りながら高校へ向かっていると、当時の頃と何も変わっておらず、鮮明に記憶が蘇ってきた。
「ここで友人と出会って、一緒に話しながら学校へ向かって、こっちを左に、階段を登っていったら...」
階段を上がるとアビドス高校が見えてくる。
まあ、これは別校舎だけど。
校舎が視界に移り、無性に小走りになってしまう。
どうしてだろうか?もう梔子先輩はいないはずなのに。
気がつくと私はアビドス高校の校門に立っていた。
何も変わってない、当時のままだ。
門は閉まっていて、校舎にも人気がない。
やっぱり、廃校になってしまってるんじゃないか?私が去ったせいで?
恐る恐る門を引こうとしてみると、鍵はかかっていないらしい。
というか、鍵壊れてるんじゃなかったっけ?
記憶上では私が破壊したような、してないような...
キィキィと音を立てながら、人1人が通れるくらいに門を開け、私は無心に先走ってしまう。
「玄関にも鍵はかかっていないのかな?」
不審者のような独り言を言いながらドアに手をかける。
鍵はかかっていない、やっぱり廃校じゃないのかな?
扉を開けると、久しぶりの空気が私を包み込む。
正直心残りが何か分かった気がする。
無邪気に私は梔子先輩と遊んだり話したりした所とか行ったことのない他学年フロアを回った。
唯一、生徒会室は鍵が掛かっていて入れなかった。
ほとんど嫌な記憶が強いところが多かったが、梔子先輩と話した所とか、友人と遊んだ所は懐しくて感傷に浸りまくっていただろう。
最後に見る予定にした1年お世話になった私の教室。
この場所は本当にいい思い出しか残っていない。
多分、自分に嫌悪感を感じていた頃の私の記憶はあまりにも嫌で脳が消してしまったのだろう。
「こんな事言える立場じゃないけど、ただいま?」
そう言って教室の扉を開ける。
もちろんのことだが、誰もいない。
席が一つを残して全て後ろに移動されていて、真ん中にぽつんとたった一つだけ席が置いてある。
多分私の席だ。何一つ変わってない。
砂と埃っぽい匂いに包まれながらその机に近づいていく。
「ここで私は何を思って過ごしていたんだっけ?」
誰もいない学校の一つの教室で話し始める。
椅子に座ると当時のままの光景だった。
私は、ここの席でずっと俯いて自己嫌悪に襲われていたのか、もう、覚えてない。
梔子先輩がこの教室に来て、俯いていた私に話しかけてくれた。
そうか、ここは私の居場所でもあり、大切な場所だったんだ。
「あれ?なんか机の中に入ってる。手帳かな?「たのしいバナナとり」って書いてあるけど...」
梔子ユメと書かれている。
ということは、これは梔子先輩の?
どうしてこんな所に...持って帰っておこう。
手帳をポケットの中にいれると、少し人の気配がした。
その気配は何故か私に似ているような感じがした。
(ドッペルゲンガー?タイムスリップしちゃった?いや、それはないか)
徐々に近づいてくる足音、誰だ?
もしかしたら、チンピラの拠点になっているのかもしれない。
そう考えていると、廊下側の窓越しに人影が見えた。
(いや、チンピラじゃない。ああ、そうか、これは...)
この近づいてくる気配、髪型、足音。当時アビドス高校で孤立していた頃の自分、過去の姿。
私自身そのものだった。
「...誰?」
扉が開くと、アビドス高校の制服を着たピンクの髪をした子が立っていた。
間違いない、ここの子だ。
つまり後輩?っていう感じになるのかな。
「...私?私は東雲 ユア、西ルミナス高等学校3年生。あなたは...?」
そう言うとピンクの髪をした子は、銃口を私に向けていた。
目つきが怖い。
「教える必要ある?他校の生徒に」
一応私もグロック持ってるけど相手は多分ショットガンだし、戦闘だけはしたくないな...
誤解を解くには私もアビドス高校出身って言うべきか、でも裏切り者ってことでもっと怒るかな...
究極の選択肢を迫られた。
私はどっちを選べばいいんだろう?
確かに、戦闘はルミナスの授業で戦術をならっているので苦手ではない。
けど、ショットガン持ちにハンドガンで今は勝てないだろうし、この子は強いオーラが滲み出てる。
やっぱり逃げるべきか
(ピンク髪の子は今にも撃ちそう、)
仕方ない、正体を明かして隙をついて逃げよう。
それが一番適切な判断だろう?
「私は...2年前アビドス高校1年生だった。あなたは私を見たことないと思う、けど本当」
吉と出るか、凶とでるか、最悪撃たれても逃げれる気がするけど...
そんな考えが脳をよぎる。
「...本当に?」
銃身が少し下を向いた、ということは相手の心情が少し変わった。
今ならいける気がする、今からダッシュで行けば逃げれる、!
「う、うん本当だよ。嘘じゃない、私は後輩に危害を加えるつもりはない!」
そう言いながら後ろの扉めがけ私は走りだした。
扉を大きく開け、アビドス高校を出ようと走って、走って走った。
あの子は何か言っていた気がするけど、無視して玄関へと走った。
もっと遠くへ逃げないと、追いつかれるかもしれない。
息が上がっても私はとりあえず走った。
ナツメの所へ行こう、一緒に行動しないと殺されるかもしれない。