『『『『『『『『『『『『サー!イエッサー!』』』』』』』』』』』』
『絶対に誰も死ぬことなく、最後の夜を越えるぞ!死んだとしても虚無の鍵もリザレクション・シーラムもある、誰も死なせない。お前たちに、哀しみなんて背負わせる気はないからな。』
『魔王!ちょっと語り合おうぜ?この大地に光を取り戻す夢物語をよう!』
『何が正義だ!八つ当たりに、大義名分に俺たちを使うんじゃねーよ!ボケエ!」
『生まれたか。なんだよ、俺だって笑うんだぜ?目出度い日はさ。』
『雛鳥ぃ!子供は寝る時間だコラぁ!』
誰かに従う俺が居た、誰かを鼓舞する俺が居た、誰かと夢を語らう俺が居た、誰かに怒りをぶつける俺が居た、誰かと新たな命の誕生を祝う俺が居た、世界の脅威に啖呵を切る俺が居た。
いずれの俺の誰一人として、未来を諦めなかった。
様々な俺の一つの可能性として俺があることを、俺は伝えられた。
『諦めるな。笑え。
お前が辛いならば笑え、世界を憂えたとしても笑え。
たまには空を見上げてやれ、空だって誰かに見られたいって思ってるだろうからさ。』
そろそろ起きる時間だ。
これを俺は覚えていないだろう。
もしかしたら、しかめっ面で朝を迎えるかもしれない。
だが、時間はもうないのかもしれないな。
割と平凡な人生だったと思う。
物心ついた時には天涯孤独だったこと以外は。
施設で何年か過ごし、養子として引き取られた家での生活。
朝起きて、朝飯食べて学校に行って、昼は雨と強風以外なら青空・曇り空の下で弁当を食べ、夕方には家族揃って夕食を取った。
その繰り返し。
その内、義姉と義弟が時々怪我をして帰ってくるようになったが義父も義母も何か分かっている風な様子だったので特に口にすることはなかった。
部屋で奇妙なカードを見つけた。
手に取った瞬間、脳裏に【No.9
その日からしばらく夢を見た。
徒手空拳で戦っている俺が居た、銃を使って戦う俺が居た、刀や剣を使って戦う俺が居た。
魔法を、忍術を、気を、時には工具さえも使って生き抜く俺が居た。
戦場で戦友たちと肩を並べて、突出する指揮官を追いかけている俺が居た。
あの人どうなってるんだ……、明らかに
了解!リーダー!
イエス・サー!コマンダー!
イエス・サー!キャプテ……ちょい待てや、人間は空飛べないんだぞ!
戦争が終わった。
リーダーであり、コマンダーであり、キャプテンだった男は、平然と行方不明をぶちかまして大量の始末書と功績を残して他全てのデータを抹消して軍から姿をくらませた。
しかし、夢は終わらない。
朝、目が覚めると身体が重く感じた。
夢見が悪かったからだと思いこみ、顔を洗い居間に向う。
「おはよーって、アキヒロなんて顔してるのよ。」
「なんのこっちゃ?」
「いつもぽややんとしてるのに」
どうも俺は普段ぽややん顔だと思われていたらしい。
「サヨ姉おはよー。」
そんなにおかしいだろうか。
【No.9 隠者/インストール 25%】
親父にもお袋にも顔のことを聞かれたが、夢見が悪かったとも言えない故に今日は早めに家を出た。
走る、走る、走る。
一歩足を出すたびに、一歩大地を蹴るたびに、身体の重さが消えていく。
今までトレーニングは体調管理を兼ねて多少していたが、そんなものではこの身体を維持することはできないぞと叱咤されているかのようだった。
いつも遅刻ギリギリで息も絶え絶えに潜る校門を走り抜ける。
解放されているが誰も使いたがらない冷水オンリーのプールのシャワーで汗を流し、水泳タオルで水気をふき取り、学生服に着替えて持ち込みの洗剤でと据え置きの洗濯板で洗って干す。
うん、完全に異常だ。
いつもこんな余裕無いからなあ。
昼飯を終え、校舎裏に何故かあるサンドバッグを叩く。
速さは二の次、そんなものは基礎が出来れば勝手に付いてくる。
コンパクトに、正確に。
食べたばかりで僅かに重いからだが5分10分過ぎる頃には温まり始め、打ち始めた頃からすれば体感早くなっているくらい。
なんか、サンドバッグはそれどころではない揺れ方をしているけど。
僅か30分のシャドー、異常を抱えた身体は汗もかいていない。
【No.9 隠者/インストール 30%】
体育の授業中、ちょっとしたハプニングはあったが概ね問題なく過ごせた。
ひたすらバービージャンプすることになったけど。
先生、1日で何があった……みたいな顔せんでください。
7限が終わり、掃除してSHを経て放下。
帰宅部であるが、今日は何故か身体が運動を求めている為ボクシング部の部室に入り込み、縄跳びとスピードバッグを借り気の済むまで続ける。
おそらく3年の先輩であろう人が何か獲物を見つけたような顔をしていたが、誰かを殴りたい訳ではないので丁重にお断りした。
明日スパークリングしようと約束させられてしまった。
外を見れば日は落ちて空には1番星以外も姿を見せている。
【No.9 隠者/インストール 45%】
家路を急ぐ、何故だろうか、肌が粟立ち、思考が研ぎ澄まされる。
夢の中のように、あの地獄が目の前にあるかのように。
『わたし、きれい?』
別の地獄が来た感じだな。
街灯がちかちかと明滅する。
『わ・た・し、き・れ・い?』
完全にロックオンされたようだ。
「すまないが、最近の流行りに疎く分からない。」
答えに期待した顔だった推定口裂け女の表情が消える。
興味を失った……そう思った。
思ってしまった。
だから、見落とした。
殺意を感じた時には、もう距離を取れる状態ではなかった。
だからこそ、
『……ハ?』
前に踏み出す。
顔に柄が当たる直前に腕を掴む。
前に踏み出しながら、相手を引き寄せる。
吊り目からは何も読み取れない。
瞳が無いのだから、生物的方法で感情を読むのは無理かもしれない。
しかし、掴んだ腕は強張り、引き寄せたことで見えた裂けた口は戦慄いている。
俺は、今どういう顔をしているだろうか。
若干変形であるが小内刈りで倒し、思考的な物か、性質から逸脱した状況故の空白かは判別するすべはないが、無防備な顔面にコンパクトで正確を心掛けた拳を打ちこむ。
パアン!
物体と物体がぶつかることで発生した音は、今宵の悪夢の終わりを告げる音でもあった。
頭部が消し飛んだ口裂け女は消え、暗闇にチーンという金属音が連続して響く。
街灯が復活したのか光を灯す。
何かの貨幣だった。
『武器を漁るのが癖になっててな。』
リーダーの声が聞こえた気がした。
何かに使えるかもしれないと思い、巾着袋に乱雑に突っ込んだ。
【No.9 隠者/インストール 65%】
「やっと帰ってきた。」
そんなことを義姉に言われた。
時計を見ると8時を過ぎており、いつもなら家にいる時間だった。
「最近は変質者の噂もあるから気を付けなさいよー。」
義母からもそんなことを言われ、アレも変質者の噂の一つなのだろうなと思った。
「なんか、アキ兄の鞄から音しない?」
義弟が耳ざとく巾着の中にあるブツを捉えた。
「帰ってくる途中に変な女に絡まれてさ、押し倒して顔面殴ったらこれ置いて消えてさ。」
自分で言っておきながら犯罪性ありまくりだなと思いながら巾着から貨幣を取り出す。
ちゃんとした灯りの下だと分かりやすいが、金貨だなこれ。
顔を上げると会話に参加していなかった義父までが唖然とした
察した、コレを家族は随分前から知っていたな……と。
別段ショックは受けない。
おそらく、家族は
その程度にはあの
巾着に金貨を仕舞い、鞄を部屋に置きに行く。
手を洗って、リビングに戻り、茶碗を取り白米を入れ何事もなかったように飯を食う。
無理に聞く気はないという無言の意思表示。
気まずげな家族を他所に片づけをし、家事が手に付かなくなった義母に代わって残りの家事をする。
そして部屋に戻れば、窓に張り付いたタロットカード。
【No.20 審判/インストール 15%】
【No.9 隠者/インストール 95%】
隠者……というか、これ100%になったらどうなるんだ。
流石に、精神的に疲れた。
肉体がなんかイキイキしてるが、精神が追い付いていない。
それを強く感じながら眠りについた。
No.9
テキスト
先の見えぬ闇とは己が内である。
ランタンが灯す光は己が魂、歩みを助ける杖は己が意思なり。
孤独に非ず、殻に閉じこもっている訳でもない、ただ今は外に目を向ける気が無いのだ。
いずれ己を振り返り、選択する時が来る。
No.20
テキスト
その音色は復活を告げる音。
しかし、目覚めるのは棺に入っているモノだけではない。
絶望を糧とするモノを打ち払うモノに、目覚めを告げる音でもあるのだ。
だが、天よりの目覚めの音色で起きたからと言って、天意に従うモノばかりではない。
覚えておけ。