【カオ転三次】旅する者   作:ユズ猪肉

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「見つけた!」
「ここか、見た感じ向こうから引き込むタイプか。」
通学路の地蔵の前に複数人の男女が居た。
義弟が異界へと呑まれたという姉の要請によって集まった有志の連合関係者達だった。
開いた異界の入口に続々と侵入していく。
それを見送るは、カーブミラーの鏡面に潜んだ目であった。


なんか雰囲気のある寺

「いや、マジでなんだよここ。なんか来たなってなったけどさ。」

ノブ先輩と気の済むまで馬鹿笑いして落ち着いた頃、ようやく態勢を持ち直したのか周囲の気配もといここの住人たちが大挙して押し寄せてきた。

ノブ先輩も周りに何かが居る程度には感じていたようで、互いの感覚はどうも似通った域にあるようだ。

あの変質者があそこまで濃く見えたのは、さしずめ噂をベースとした今現在の旬真っ盛りの存在だからか。

では、俺たちが殴り飛ばしたこいつらは何なのか。

接近に伴って聞こえてきたのは足音と、羽根のこすれ合う様な音だったか。

両手を狐の形にし、表裏で重ね、人差し指を小指と薬指の間に差し込む。

指いてぇな。

中指をそれぞれ上下に開き狐の目のような窓を見据え、一息に。

「けしやうのものか ましやうのものか 正体をあらはせ」

狐の窓。

人に化けた化生の、人を惑わす魔性の、本性を露わにする呪を。

化生が、人外が、深淵が人を招いたのだ。

覗き返されても、文句はないだろう。

「お?おお、急に見えるようになったな!」

「人の噂というならば割と古いモノだけど、効果があって良かったのか悪かったのか。」

死屍累々、この四文字熟語がぴったりな光景が広がっていた。

いや、多少なりとも立ち上がろうとしているからトドメをさせてた訳じゃないか。

「こりゃあ、天狗ってやつか。」

「そうみたいですねえ。下っ端って感じですな。」

「下っ端ぁ?じゃあ、襲わせたやつが近くにいるか。」

ノブ先輩が声に喜色を滲ませながら周囲を見回す。

俺はとりあえず、その辺の棒を拾って木っ端天狗に添え木を当てて包帯で縛る。

うちの高校で何故か物凄く重要な科目にすらなっている応急処置技術。

包帯の巻き方と添え木の当て方は1年次から徹底的に叩き込まれるのだが、本当に何故なのだろうか。

『ク……カカカカカ。』

そんな顔されても分からんて、2年次の時点で怪我人見ると襲ってきた相手だとしても自然と治療しちまうようになっちまうんだ。

【No.9 隠者/インストール完了 待機中】

【No.20 審判/インストール完了 待機中】

「下っ端連中の細さもあるんだろうが、意外と包帯持つもんだな。」

「そっすねぇ。しばき倒したやつら全員巻くまで手持ちが持つとは思わんかったです。」

自分たちを最低限治療する量が残って良かった、とも思う。

致命傷には程遠いが、かまいたちみたいなものが来ていたから深くはないが細かい傷が多い。

飲料水で手と傷口を軽く洗い、タオルでふき取り軟膏を塗って包帯を巻く。

身体の方は絆創膏だ。

「……」

「浮かねぇ顔だな。なんか気になるのか?」

「いやね、今の手札じゃ手に負えないっていうのを感じるんですわ。」

「ああ、それか。先の方に居るな。下手すりゃ死ぬか。」

「かといって帰らせてくれそうにもない。」

「勝てる相手だけ引き込んだってとこか?」

ノブ先輩の舌打ちが微かに聞こえた。

前門の虎に後門の果て見えぬ森。

運命の分かれ道、に見えたどん詰まり。

薄布一枚隔てた先からよく見知った気配がする。

義姉だな、大方手練れを連れてきたか。

このまま待ち続けても合流は出来そうにない、勘が告げている。

むしろ、助けに来た影響でこっちの死の気配が濃くなったほどだ。

入った外敵の強さで相手の上限値が変動する類か、伝える術もないし遅かれ早かれ同じ結果だっただろう。

「行くか。」

「行きましょう。」

#######

覚悟を決めた男二人、隠者は己が内を見ることを止めた。

未来を見据えたのだ。如何な艱難辛苦があろうとも、諦めることなどしないと男が誓ったのだから。

審判はラッパを吹いた。

目覚めの音色だ。闇を祓い未来を掴む覚悟を決めた男たちへのせめてもの後押しとなるように。

隠者の未来への歩みは道となり、その道を目覚めの音色が駆け抜ける。

#######

【No.0 愚者(フール) 初回起動確認 実行中】

実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中 実行中

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実行エラー発生

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「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

野生の勘で動く二人の行動は単純明快、わざと相手に口上を言わせて……見下し侮り油断した間隙に殴りかかる。

ノブトミのジャブが相手の顎と鼻を正確に捉える連打を他所に、アキヒロが背後からベアハッグで拘束し肛門に連続的な膝蹴りを打ち付ける……標的は尾てい骨だが。

風が逆巻く、アキヒロはそれがあの下っ端も使っていたかまいたち的な術の前段階であると勘づくが膝蹴りはやめない。

数回に一回尾てい骨を直撃する膝の痛みで逆巻く風が霧散する。

息が続く限り殴りつけていたノブトミは、その一瞬で息を整え連打を続ける。

まだか、まだか、まだか、まだか、まだか、まだか、まだか、まだか。

倒れない、倒れない、倒れない、倒れない、倒れない、倒れない、倒れない、倒れない。

絶望的なまでの耐久性の違い、普通の人間なら死んでいても不思議ではない猛攻をこの大天狗は耐えきった。

そう、大天狗である。

個体としての名称を、愛宕山太郎坊という。

男二人が住んでいる場所とは縁も所縁もない、自分より弱い人間を甚振るような趣味もない、正真正銘この日ノ本における天狗の最上位。

その皮を被った悪魔・怪異・異形、太郎坊モドキ。

それがこの悪魔の名であった。

さりとて、日ノ本最強の天狗を模しただけのことはある。

男二人の猛攻を耐え凌いだのはこの悪魔の実力だ。

 

息の続く限りの連続攻撃とは、裏を返せば息が続かなくなれば何処かに不具合が生じるということである。

行動には結果が、行いには代償が、攻撃には反撃が。

始まれば終わる、勝てぬ戦だった。

代償たる結末は死をもって。

 

ぐしゃり

 

ノブトミの首から上が無くなった。




「けしやうのものか ましやうのものか 正体をあらはせ」
深淵を覗き込む時、深淵もまたこちらを覗き込んでいる。

#######
エラー原因特定
審判「愚者、原因は?」
愚者「単純なリソースの不足、この世界には既に我々に割り振られる余剰がない」
隠者「そう、か。」
#######

世界は切り札たる者を、一騎当千たる者を複数用意するリソースは本来ない。
ショタおじというイレギュラー的な準神格位によって、転生者という形で世界の一員として存在が捩じ込まれ、そのサポートが発生した時点で、自転車操業状態だった。
その微々たる残滓から生まれた突然変異体の強さなど、推して知るべし、である。


太郎坊もどき
異界性質∶濾過摂食・疑似餌・友釣り
テキスト
入れ子構造の複数階層異界。(現時点で合計階層245層)
通常の攻略では、本体にして主である太郎坊もどきの座す間には、辿り着くことはできない。
(最下層に辿り着くか、帰還の意志を見せた時点で多少の褒美を得て、異界外に排出される)
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