鍛え方が足りなかったのか?
結末に至る前に、何か別の視点が必要だったのか?
足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない
足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない
足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない
足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない
足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない、足りない
死んだ、割とあっけなく、断末魔を上げる暇などなくノブトミは死んだ。
アキヒロは拘束を止め、ノブトミの死体の側による。
太郎坊もどきは、それを愉悦とも嘲りとも取れる表情で観る。
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愚者「マスターより、根源接続申請。」
隠者「立ち止まる気はない、という事か。承認する。」
審判「承認」
愚者「最大出力上限は、全盛の2割未満。」
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ノブトミの死体が揺らめいた。
陽炎のようにゆらゆらと。
アキヒロはノブトミの記憶を見ていた。
生まれ、両親の愛情を糧に育ち、学友との青春を、初恋と失恋を、その奥底に、1枚のタロットを見出す。
【No.8
信念が揺らぐどころか死んでいるのだから、当然と言えば当然である。
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愚者「ストレングスの収容を確認。」
力 「ノブのやつを守れなかった身だが、世話になる。」
隠者「いうな。この宿主はまだ諦めてはいない。」
力 「信念なくば……」
審判「あれはもうこの程度では止まらない。」
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野生の勘とは、一般的に本能のように語られるが実のところ知識の裏打ちがなければ意味を成さない。
知識が無いならそもそも動きようが無いのだ。
知識があるからこそ、それを活かすための最善行動を取っているに過ぎない。
故に、隠者のタロットは時折動物の姿で描かれる。
知識を、経験を表す側面が、最善の行動を支える。
如何に非道と誹られようと、冒涜と詰られようと。
仇を殺すと決めたのならば、アキヒロはただそれを成す以外の道徳を捨てられる。
切り替えられるように、今、成った。
【死】とは情報の塊である。
それ以上進むことが無いのだから情報などないと思われるかもしれないが、違う。
【死】が訪れなければ先に進む筈だった可能性が途切れたのだ。
【死】には、先に進めなくなったリソースが大量に保管されている。
人が最長約100何十年かを歩むためのリソースが、消費分を除き丸々残った状態が【死】という情報体だ。
だが、同時に通常【死】という情報体のリソースを生者が使うことはできない。
食べられるならば、食という形で情報体の性質を変更してわずかばかり取り込むことは可能だろう。
だが、100%取り込むことは無理だ。
生者は生きるために必要な量しか取り込めない。
直後、アキヒロの各所から血が滲み始める。
未熟な身体、未熟な精神、不安定な状態で根源へ接続した反動だ。
滲みは流れとなり、血だまりを形成する。
血が、命の通貨が地に満ちる。
ちゃぽん
と石か何かが水面に落ちた音がした。
周囲を見渡せど、か弱き獲物は何処にも姿が見えず、否。
音を立てたのは己だと気づいたが時既に遅し。
ふるべゆらゆら、因果の根源は腹の中。
世界は巻き戻る。
ゆっくりと、ゆっくりと腹の中の獲物を煮溶かしながら。
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ファーストループ、フェイズ1終了
フェイズ2へ移行
アカシックレコード干渉開始
インストール状況・・・送信完了
義体名:アキヒロ ステータスオーバーライド
記憶状況・・・セーブデータよりロード完了
記憶改竄完了
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「今度は、ここからか。」
目を開ければ、見慣れた天井。
茹だる様な熱気は、とうの昔に過ぎた懐かしき中学生最後の夏休みの始まりの日。
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記憶改竄の痕跡を確認、ステータスオーバーライド
統合戦闘支援プログラム:タロット 再起動中
統合観測支援プログラム:カグツチ 観測再開
個別技能記録プログラム:■■■■ 再起動中
タロット【No.13
観測者 コード【アザトース】への偽装情報を送信・・・完了
現在の日時は1986年7月26日です。
おはようございます。エージェント。
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今から2年と3か月後、大体の確率で行動は外部から接続されたタロットによって制御され、【死】という結末に可能性は収束する。
タロットが俺を過去に飛ばすのはささやかな抵抗、俺が未来に進みたいと願うことに対する行動。
この猶予で対抗策を見出せということなのだろう。
都合6度の終わりを経験し、肉体の上限値が僅かに上がった程度だが。
「また、鍛え直しだな。」
タロットは増えるのか、試したこともあった。
だが、ある時期を境にインストール状況はオーバーライドされ、協力者の記憶も白紙化され、孤立無援で太郎坊もどきに挑む事三度。
どれだけ絶望しようと外部からインストールされたタロットで前を向かされ挑み死に、今度は知人の死を使って太郎坊もどきを食ったときた。
明らかに遊ばれている。
だけども、いつか糸口が掴めると信じて、また一から始めよう。
「何処までが夢で、何処までが現実なのか知らんが、始まれば終わる。だろ?リーダー。」
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『『『『『『『ブフ!』』』』』』』
迫りくる氷雪、7つも合わされば局所的な吹雪とも取れる様相のソレにアキヒロは飛び込む。
僅かばかり氷雪が皮膚を裂き、赤い筋を残しながら吹雪を突き抜ける。
『ヒホブ!?』
雪だるまのような頭部に拳を打ちこまれた異界の悪魔は、高強度の情報体に耐えきることが出来ずに蒸発するように爆散する。
背後の悪魔を踏みつけて打撃を跳躍回避、コンバットロールで衝撃を和らげながら次発投射をしようとする個体から始末する。
雪の悪魔はあの魔術を吸収する性質らしく、最悪掴んで盾にすれば直撃は避けられる。
うちの両親、里親だが妙にこういう生傷には寛容なとこあるんだよな。
腹に一物あるような気配はあるが、義姉も義弟も似たような感じだし、俺自体が異物ってとこだろう。
深入りする気もないが、いずれ真正面から受け止める必要がありそうな問題でもある。
漏れ出る気配的に、同類か近縁かだろうし。
『マガツヒ』
ああ、油断した。
慢心も油断も出来るほど、この身体はまだ強くないのに。
「いってぇなあ!」
救急箱を開く、怪我を治療する概念が働き、常識外れの再生力と合わさって焼かれた皮膚が新品同様までに蘇る。
アドレナリンのサポートもあって、痛みで悶えるよりも攻撃に走れるくらいには元気がある。
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テンションがちょっと暴走したけども、少しは力が戻ってきた感じだ。
右腰に手をやり、ホルスターから銀玉鉄砲の形態の消滅銃を引き抜く。
撃つ気はない、気はないが時折重さに慣れていないとと思うことがある。
これを使ったのは2度、いずれも”一時的な”対抗は出来たものの、結局は封印をぶち抜かれて死へ収束した。
義両親に口を滑らせた事もあったか、向こうのネットワークで手練れが集まったが、ほぼ死んだっけな。
結局のところ、消滅銃も転生者も対応可能な上限はある訳だ。
装備を充実させたいところだけど、この歳で武器の入手経路・保管場所なんて限られるしバレた時の言い訳を考えるのも面倒くさい。
武器にしたって反動の強い武器は制御するのも大変で、重い武器も扱うための筋力がそもそも足りない。
そもそもだ、特段変化が無ければスケジュールが過密すぎる。
あの子たちが致命傷を負う前に、カルト連中叩きのめさないといけないって時点でさあ。
無理ゲーじゃないですか。
ワンオペでやるもんではないけど、精神的被害が割とヤバい。
狂えない自分が率先して動くのが一番被害が少ない、少ないが、手札が足りていないのも確かだ。
統合戦闘支援プログラム:タロット
アキヒロにインストールされているタロットたちの中枢制御系に当たるプログラム
No.0~No.21までがプリインストールされている。
テキスト
戦闘準備完了!
やるぞ!やるぞ!やるぞ!
手が届き、脚が届く範囲はすべて守るぞ!縁も故もないならば、誰かの明日を、誰かの笑顔を、守るだけだ!
統合観測支援プログラム:カグツチ
あらゆる可能性を見ている、またあらゆる並行世界から見られている。
相互観測、多角観測、常にオールグリーン
テキスト
俺はお前を忘れない、俺もお前を忘れない。
この魂が繋がっている限り、縁は途切れはしない。
だから、惜しむな。
お前の背中は俺たちが支えてるから。
個別技能記録プログラム:■■■■
培ったノウハウを記録し、アップロードする。
テキスト
今は届かなくとも、いつかきっと届く。
今が無力であったとしても、未来で無力とは限らない。
進め進め、進み続けろ。
歩みを止めるな、あきらめるな。
前を向け、たまには空を見ろ、俺たちゃ不死身不滅の怪物だ。