「昼夜を問わず、ジャック・オー・ランタン被って走り回ってたら変な噂立ったわ。」
筆者
「当たり前だバカタレ。」
1994年3月20日PM20:30
夜空に舞うカボチャ頭の怪人、それが今の俺。
夜の散歩をしていると、最近怪異によく遭遇するようになった。
それと同時に怪異に襲われ腰を抜かしている人間も、だ。
大体は怪異を殴殺して呆けている間に姿を消してしまえば、ことは丸く収まる。
現実にありえないような化け物とそれを殴殺する奇抜な恰好をした怪人、この2種が目の前で喧嘩を始め両方が姿を消せば夢幻の如くに扱われること必至。
ただ、今日はそうもいかなかった。
何せ、怪異を見た少女が気を失ってしまったのだ。
春の気配が近づいているとはいえ、夜の気温は10℃前後。
人間にはまだまだ寒い時期だ。
交番は寝静まり、警察署は遠い。
しかたがないので家々を飛び回りながら、棲み処に連れ帰る事にした。
父と母にはなんと言い訳をしよう。
3年前の変調で怪異の存在をなんとなくは伝えたものの、未だにふわっとした感じである
最近はガイア連合の名声がこんな地方まで聞こえてきているが、未だになんぞ対応部隊が来ているという話も聞かなし、異界に俺や近所の連中が立ち入……俺以外が立ち入ってるな。
じゃあ、そいつらか。
いやでも、草刈り出来てる感じではないんだよな。
もしかして、あの仕組みまだ生きてるのか。
「ああ、このお嬢さんは紲星さんとこのか。」
乱雑な思考の中から、唐突に身元に関する情報がピックアップされる。
予定を変更、一路この子の家に向かう。
面倒事はすぐそこにあり。
「曲者だあ!?」
「であえ!であえ!」
「お嬢様を助けるんだ!」
まぁ、カボチャ頭でピッチリしたライダースーツの推定男が空から降り立ったらこうもなるか。
式札を適当にあしらいながら、刺股を掴み持ち主を半回転させ、勢いを得て体を宙に躍らせる。
コンバットアクション真っ只中だと言うのに、この子全然起きないな。(呆れ)
いや、アキヒロに入ってる時、熟睡の達人の気があるとは思っていたがここまでとは思ってなかったな。
するりするりと心持ち静かに動き、雲霞の如く相手から消え失せたかのような錯覚を覚えさせるように。
相手に行き先を悟らせず、なおかつ包囲させるでもなく、時にその包囲のど真ん中からも消え失せてみせる。
勝手知ったる他人の家、不躾ではあるがこの地域の名家の間取りは大体頭に入っている。
故に、この子の部屋にもこうしてたどり着けた。
「いらっしゃいませ、何方かは存じませんが娘に危害を加える気はないようで安心しました。」
「紲星の当主か。散歩中に拾ってな。途中で身元が思い当たって帰しにきたのだが、騒ぎになってしまってた。」
「ふむ、噂の怪人がこうも人間味があるとは。」
怪人とは、初耳であるがここは口に出さない方が良いだろう。
「いくつか、そう、いくつか気になっていることがあるのだが、いいかね?」
「納得頂けるかは分かりませんが、答えられることなら。」
「ここ最近、妙に怪異の被害が減っている気がしていてね。
まぁ、最近立った新興の組織……知っているかい?
知らないか、現実を直視していうならその新興の組織に比べるとかなり劣るのだけどね。
これでも調べたんだよ。」
えらく遠回しにお前の所業を知っていると伝えられた。
まぁ、うん。別に隠してる訳でもないし、治安維持目的で動いてるから悪意も罪悪感もないが。
「これくらいでは動揺もしないか。」
まぁ、はい。これでも海千山千の年月だけは無駄に経てますんで。
にしても、よくよく考え直せば現状も果てしなく面倒臭い事になっている。
偽アザトースの現界によるループに、あれとは別にクトゥルフ関係の怪異が跋扈する街、この街以外でも怪異が跋扈しているっぽい事から千年王国の終焉に見立てた世界レベルで何らかの神性の介入は確実。
神話系とか1+1=2が生まれた時点で揺らいで、化け学や科学の発展で死に体というか、ほぼ滅んだはずなのに俺も含め再起動している事自体が異常事態だ。
「聞いているかい?」
「あ、すまない。起こってる事態を分解していた。」
「む、なかなか不思議な事をしていたな。
最近はぱそこんや携帯電話から妖物を喚び出せるという話があってね。」
ぱそこん……パーソナルコンピュータか。
しかし、もうそれが生まれる時代になっているのか……。
「ちょっと待て、ちょっと待て。神秘性と科学の相性問題クリアしたのか?
なら、相当問題しかない
いつだ?!いつ世に出た!」
「ま、ちょ、く、苦しっ!」
「お、おう。すまん。」
無意識に紲星の当主の首を絞め上げていた。
いや、これでも理性は残っていた方か。
「さ、三年前だ。根願寺の使者からの話では今から三年前だと聞いている。」
過ぎた年数を聞いて膝から崩れ落ちた。
たかが三年、されど三年。
三年もの間、地獄の釜の蓋が開きっぱなしになっている。
その事実に、ただただ衝撃を受けた。
「待て、そのまま消えようとするんじゃない。」
ちっ、気づかれた。
っと、おお……なんだ、上か。
「LA-LA,LAAAAAA」
「讃美歌?」
「讃美歌?」
###########################
No.0【
〃 Activate
Modified standby
###########################
「No.0・No.1・No.8・No.9・No.11、オンステージ。」
一神教、違うな。
情報検索、応答なし、ノイズ。
暫定、Unknown。
タロットの意識が混ざったか。
だが、意見には同感だ。
天使の様に見えるが、中身が当然の様に違う。
が、中身が外見に、知性や思考が信仰に引っ張られているタイプと見た。
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警告:洗脳系精神干渉
状態:出力差により影響皆無
####
あっ、そう。
情報は取れそうにないなぁ。
衾を開けて廊下に出る。
空には繊月を背に闇夜に燐光を纏って浮かぶ天使……のなりをした怪異。
「モディファイド・ストレンジャー【マスク・ザ・パンプキン】」
###########################
Modified【マスク・ザ・パンプキン】!
Are you ready?
GO!GO!GO!
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被り物が首に吸い付く、これはもはや俺の顔だ。
ライダースーツも根元から構成物質が変質をする、もはや銃弾でも貫通は難しく、如何なる炎にも耐え抜くだろう。
元がカボチャ頭の怪人のだ、姿形はほぼ同じ。
平時であれば、平時の恰好であれば姿形の変容に警戒もしたかもしれない。
だが、今宵はこの姿のまま本質が変容した。
相手の体勢が整う前に、空へと跳ぶ。
ただの拳が、ただの蹴りが奔る。
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EXTRA・STRANGE・ACTION!
JACK・О・CRASH!
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足が速い、力が強い、この二つが極まればその一挙手一投足は凶器となる。
ただ、敵を打ち砕く、誰も幸せにしない俺にとっての悪を砕く飛び蹴りが己が善を絶対の正義とした天使に炸裂する。
断末魔はない、声など上げさせる猶予も与えない。
衝突音はない、元より出力に差があり過ぎるのだ。
ザン
玉砂利に着地する音が僅かに鳴る。
もう、何もない。
排斥の歌声は、夜に消えた。
カボチャ頭の怪人
テキスト
ジャック・オー・ランタンを被り、紫色のライダースーツを身に纏い、夜に舞う怪人。
大体の目撃例が空から降って来て怪異を叩きつぶしたとされている為、飛行能力もしくは跳躍能力に優れているモノと思われる。
××県■■市釣部町鈴蘭高校周辺50㎞圏内で目撃されているが、当該地域に該当する伝承は発見することが出来なかった。
1989年3月に根願寺への調査協力要請。
ガイア連合の活動
拠点構築に際して無制限投入くらいやってるだろうなぁって考えて、夜中は式の動員でさらに工期短縮して3年くらいで準稼働くらいには行っているだろうとテキトーに作ってます。
あくまでメインは不知火の主観なので