Re:ゼロから始める陰の実力者になりたい異世界生活    作:零月隼人

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#3 消失と魔獣と

しばらくして、レムがその場から立ち去ったのを確認すると。

僕はノソリと身体を起こした。

鉄球の直撃を受けたが、大した傷ではない。

それどころか、落下時とその後の気絶フリ時間で、ついでに患っていた“風邪”を治した。

まあ、どうやらウイルス性のものではないらしく、完治はできなかったけれど・・・・・・症状は完全に体内に押さえ込めた。

風邪をひくなんて、いつ以来だろう?陰の実力者になるため、身体を鍛えていたおかげで、元の異世界でも、あるいは地球での10代になってからくらいは、全く風邪を引くことなどなかったから。

ジョン・スミス時代はノーカンね。

それよりも、あのレムという青髪メイド。

まさかとんだサディスト嗜好の持ち主だったとは・・・・・・

残念ながら、僕にマゾ気質は持ち合わせていない。

そういうことは、自ら叩かれる為に生まれた脆弱な豚と一緒にやっていてくれ。

狂犬二人に、SMプレイメイド・・・・・・この屋敷は一体どうなっているんだ?

ロズワールさんの気苦労が思いやられる。

 

僕は屋根の上に登り、屋敷全体を見渡す。

さてと。ここからどう動くべきかな。

モブなら消えても、誰にも気づかれないっていうのを目指したいけど・・・・・・

さすがに無理だな。

まあ、僕の好感度はなぜかみんなからだだ下がり中だから、いなくなったとしても、誰も心配しないでしょ。

ということで、とりあえず結界の外に出て、森に入ることにした。

もしかしたら、強い盗賊とか、巨大な獣とかに会えるかも。

考えたら即行動。

僕は、屋根から空中へ一歩踏み出した。

━━屋敷から華麗に飛び降りる僕、やりたいことリスト、もう一つ達成‼

 

森に入ってしばらくした時━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「―ッ、来る‼」

僕がカッコよく言って瞬時に避けると、僕の腕があった場所に、大型の獣が噛みついてきた。

大きさは1mちょっと、背は黒で腹は茶色、強暴そうな牙を持った・・・・・・犬。

僕は犬に威嚇しながら、周囲を警戒するフリをした。(相手はそんな強くなさそうだからね。)

そして僕は同時に、七陰の、ある犬耳少女のことを思い出していた。

デルタ、元気かな・・・・・・

今ここにフっと現れたら、大喜びして狩りをしそうだ。

そんなことを考えていたら、周囲から気配がした。

すでに僕は10匹の犬に取り囲まれていた。

・・・・・・とはいえ、所詮、犬。

僕は飛びかかってきた犬の牙を掴み、そのまま投げ技でひっくり返し気絶させる。

さらに、他の九体が同時に飛びかかってきたが、僕は右手にスライムソードを造成し応戦。

「なんでこんなに犬が・・・・・・誰だよ、森に野良犬を放ったヤツは?」

一閃。素早い攻撃で、全ての個体を一刀両断させた。

僕はキメ顔で、一言呟く。

「弱い。我の敵ではなかったな。」

 

 

翌日。

シド・カゲノーの失踪により、屋敷は大騒ぎとなっていた。

朝、エミリアがシドの客室に行ったら、もうそこには彼はいなかった。

慌てふためいたエミリアは、屋敷中を走り回り、探し回った。

そんな折り。

「エミリア様、ロズワール様がお呼びです。すぐ書斎へお越しください。」

エミリアは、捜索作業を一時中断せねばならないことに苛立つも、その言葉に従った。

そして、開口一番、ロズワールの口から、衝撃の事実が述べられた。

「シド・カゲノーは、王選敵対候補者の間者でーした。」

その言葉に、エミリアは耳を疑う。

「嘘よ!シドに限ってそんなこと、あるはずがないわ!」

「おや、てっきり昨日の諍いを見るに、エミリア様は彼のことを嫌っているとばかり思っていましたが?」

ロズワールに続けて、ラムとレムからも淡々と述べられる。

「昨晩、レムが”ドシ”の裏切りを見抜き、尋問しました。」

「シド君は、昨日屋敷を抜け出そうとしました。問いただしましたが、疑惑は判然とせず、逃走を試みたため、やむなく制圧しました。窓から落下させ、死亡させたはずなのですが・・・・・・遺体はまだ見つかっておりません。」

エミリアの顔が強ばる。

「どうして!シドが悪い人だとは思えないわ。なんでもっと、ちゃんと事情を聞こうとしなかったの!?」

「エミリア様、すでに事態に重きを置くべきはそこにありません。彼は屋敷を抜け出そうとした。それこそが、彼が間者であるという、唯一にして絶対の証拠なのです。」

エミリアは、必死にロズワールに詰め寄る。

「シドは!王都で私を守ってくれたのよ?

本当に間者なら、あそこで私を守るなんて真似、するはずがないわ‼」

その言葉を聞き、ロズワールはため息をついた後、薄ら笑みを浮かべて言った。

「そう言って・・・・・・過去にも我らを裏切った者がいましたねぇー」

「―ッ⁉」

「ナツキ・スバル。

彼もまた、エミリア様を助けた後、我らを裏切った。彼を引き込んだ貴方には、すでに前科が一つあーるのですよ。」

次の瞬間、エミリアは、強烈な気配(オーラ)を纏った。

ラムとレムは思わず気圧されるが、ロズワールは動揺しない。

「・・・・・・言ったわよね。その名を二度と、口にしないでって。」

「・・・・・・」

しばらく両者は睨み合った。

やがて、ロズワールが折れた。

「はいはい、すーみませんでした。」

『ナツキ・スバル』の名前は、エミリアにとって一番の地雷であった。それは、彼女が「サテラ」と揶揄され、迫害されること以上に・・・・・・

エミリアは、黙って回れ右し、部屋を出て行く。

その背中を、ロズワールはヤレヤレと肩をすくめた。

 

エミリアは、そのまま屋敷を出て、村へと向かう。

後ろ髪より、パックが姿を見せる。

「本当にいいの、リア?彼は、君にあんな非道いことを言い続けた男だよ?わざわざ君が探しに行くことないと思うけど・・・・・・」

エミリアの決意は変わらない。

「それでも・・・・・・彼は命の恩人だもの。たしかに『サテラ』呼びはやめてほしいけれど、それが、助けない理由にはならないわ。少なくとも、借りを返すまでは。」

パックはため息をつく。

「やれやれ、そういうお人好しなところは、森にいた時から変わらないね。」

そして、真剣な眼差しに変わり、忠告する。

「・・・・・・あんまり人を信じすぎるのもよくないよ。信じた分だけ、裏切られた時、悲しみが増す。」

「・・・・・・」

エミリアは沈黙する。

かわりに、背後から声が掛かる。

「大精霊様のおっしゃる通りですよ。」

エミリアがばっと振り返る。そこにいたのは、レムであった。

「レム⁉どうして・・・・・・」

「エミリア様、貴方は当屋敷において、最もお守りしなくてはならない要人です。村に・・・・・・ましてや結界の外に行かれようとされることは、許容できません。」

「・・・・・・」

エミリアはしばし考えた後、答えた。

「それでも・・・・・・私は行くわ。この国の王様になろうとしてるんだから、ここで見捨てる私でいたくない。」

「・・・・・・どうして、貴方はいつも・・・・・・」

「悪いわね、レム。どうしても、これだけは譲れない。」

レムはしばし思巡した後、一歩前に出る。

「・・・・・・それでは、私も御供致します。大精霊様がいらっしゃるとはいえ、エミリア様を一人で危険な地に赴かせるわけには参りません。」

その言葉を聞き、エミリアは嬉しいような申し訳ないような表情をしたが、やがて決意を固めたような表情をした。

「分かったわ。じゃあ、行きましょう。」

 

エミリアとレムは、まず付近の村へ直行した。

もしシドが無事であるとするなら、結界内の村を頼りにする方が自然だ。

エミリアは、数件の家を巡り、村の大人達に聞いて回る。

しかし、目ぼしい情報は得られない。

そもそも、エミリアの容姿も相まって、あまり協力的な相手をされなかった。

あっという間に日暮れが近づき、日も落ちてくる。

レムは潮時だと思い、エミリアに声を掛ける。

「エミリア様、やはりシド君は、この村には来ていないんじゃないでしょうか。まもなく夕暮れ時です。そろそろお屋敷へと戻りましょう。」

エミリアは、悔しそうに歯を食いしばる。

その時、エミリアの服の裾を、小さな手が掴んだ。

後ろを振り返ると、青髪のワンピースの少女が俯きぎみに立っていた。

エミリアは怖がられないように、内心を隠して笑顔を浮かべ、少女へ目線を合わせた。

「あら、どうしたの?」

「・・・・・・えっとね・・・・・・あっち。」

その少女は躊躇いつつも、ある方角を指刺した。

そちらは、森のある方角であった。

少女は、さらに言葉を続ける。

「あっちに、見たことないおにいさんが、行った」

その言葉を聞き、エミリアとレムは、顔を見合わせた。

 

エミリア達は、指刺された方角へと走る。

そこは柵で行き止まりとなり、その先は森であった。

レムが目を閉じ、前方を感知する。

「・・・・・・結界が、切れてる。」

「えッ⁉」

エミリアは驚き、レムの方を見る。

「それじゃあ、魔獣が・・・・・・ッ!」

エミリアは、柵を跳び越える。

「待ってください!これがお屋敷を狙った陽動の可能性も・・・・・・」

「だとしても、行くしかないわ!少しでも手がかりがあるというなら‼」

エミリアは、そのまま森へと走り出した。

仕方ないのでレムも付いていく。

エミリアは心の中で祈る。

(シド、どうか無事で居て・・・・・・!)

一方のレムは、別のことを考えていた。

(結界を切断するとは、シド・カゲノー、やはり間者で間違いないか。なら、ここでエミリア様を追って彼にたどり着くとすれば、この行動は決して悪くない。)

 

森に入ってしばらくの後。

エミリア達は、魔獣・ウルガルムの集団に襲われた。

「大きい!なんでこんなのがたくさんも!」

「明らかに様子が不自然だけど・・・・・・とりあえず倒してからだねー」

パックの言葉に、エミリアとレムは頷き、戦闘が始まる。

一匹一匹はそこまで大した強さではない。エミリアとパックの氷魔法や、レムのモーニングスターで、瞬く間に薙ぎ払われる。

しかし・・・・・・如何せん数が多い。

倒しても倒しても、一向に数が減らない。

三者でなんとか抑えられている状況だった。

だが、空がさらに暗くなり、17時を回る。

エミリアは、パックの方を見る。

「パック、まだいける?」

パックはあくびをしながら答える。

「ごめん、すごい眠い。ちょっと舐めてかかってた・・・・・・マナ切れで消えちゃう・・・・・・」

パックは最後にマナを振り絞り、可能な限り最大の魔法で当たり一面を凍らせる。

この攻撃にて相当数のウルガルムが凍ったものの、全滅には追い込めていない。

パックはそのまま姿が透明になり、消える。

「大丈夫、あとはこっちでやっとくから・・・・・・レム!」

「分かっています‼」

エミリアとレムは、再び覚悟を決める。

(シド・・・・・・一体どこにいるの?)

 

エミリアが遠距離から魔法で援護し、レムがモーニングスターで仕留める。

二人の連係によって、必死に魔獣を殲滅するが、無限増殖するウルガルムには、あまりに分が悪い。身体は傷だらけとなり、あちらこちらに流血が見られる。

そして、ウルガルムの軍団の奥に、それらより一際大きいリーダー個体が、土の魔法を発動、その場に土砂崩れを起こした。

「―ッ!しまっー」

魔獣側に意識を向けていたエミリアは、うっかり足を取られてしまう。

そして、その被害に巻き込まれる一瞬前━━レムが庇い、エミリアの身体を押し出しその場から離脱させた。

「レムー!」

結果、レムは攻撃をもろに受けてしまい、そのまま跳ね飛ばされた。

地面へ頭から落下し、血を流して気絶する。

「あっ・・・・・・」

エミリアはレムへ駆け寄ろうとするも、すぐ後ろにはウルガルムの集団が迫っていた。

その時、レムの額から光が漏れた━━━

 




このウルガルム編、もう原作以外のルートでは攻略不可能になってますね。
回収すべき伏線が多すぎる。
なるべく齟齬の起きないように努めたのですが・・・・・・もしかしたら、一部誤解してる設定があるかも。
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