Re:ゼロから始める陰の実力者になりたい異世界生活 作:零月隼人
エミリアとレムの一連の戦いを、シド━━否、シャドウはは上空に佇み観察していた。
やがてレムが倒れ、額から光の角のようなものが出てくるのを見た。
同時に、その上昇した気配(オーラ)を確認する。
「あれは・・・・・・魔力暴走かな?へえ、この世界にもあるんだね。」
(あの状態で理性を保てるなら、七陰くらいには及びそうだな。ただ・・・・・・)
ウルガルムを倒している光景を見ると、暴走しているように見えた。
シャドウはやれやれと息を吐き、そのまま地上へ降り立った。
「フハハハハ・・・・・・アハハハハ!魔獣!魔獣!魔獣!魔女!」
エミリアは、目の前に広がる鏖殺の光景に絶句していた。
鬼化。
たしかにロズワールから、ラムやレムの生まれ、種族の話は聞いていた。しかし、鬼化の実物を見たのは初めてであった。
エミリアは動けず、ただ呆然とその場へ座り込んだ。
そこへ・・・・・・
「魔獣!魔獣!魔獣!魔獣!魔━ッ⁉」
突如、黒い影が乱入し、レムの首筋を強打し、一撃で気絶させた。
「レム!━━━あなたはッ⁉」
エミリアは目を疑う。
そこに立っていたのは、先日王都で自分を助けてくれた、シャドウその人であったのだ。
「どうして・・・・・・」
シャドウは応えず、いつものように名乗る。
「我が名は━━」
しかし、普段とは、事情が異なった。
「「「「「「「━━シャドウガーデンッ‼」」」」」」」
「は?」
懐かしき、七人の声。
シャドウは、徐に空を見上げる。
そこには、自身が元の異世界で吸い込まれたものと同じような、ゲートが出現していた。
そこから、見覚えのある少女達が、次々とこの世界へ流入していた。
そして、シャドウの目の前に降り立ち、囲んだ。
「ようやく会えました、シャドウ様!」
「主様、会えることを心待ちにしておりました。」
「ボスゥ~、やっと会えたーーー!!!」
「主さま、覚えておられますか!イプシロンです!!」
「主、待ちわびた。すでに手筈は整っている。」
「マスター、イータ頑張ったー、褒めてー」
少し距離を取り、アルファが涙目を浮かべていた。
「シャドウ、もう会えないかと・・・・・・私は貴方がすぐ帰ってくると予想していた、でもまさか、この世界でここまで足留めを食らっているなんて。」
「・・・・・・」
シャドウは無言であったが、内心憤りつつも、動揺していた。
(おいー、一世一代の名乗りでシーンに乱入するなんてッッッ⁉
それにしても、なんで彼女らまでこの世界に?)
しかし、状況は変わらず、切迫詰まっていた。
依然として、ウルガルムの軍勢には取り囲まれていたのである。
アルファは後ろを振り返り、警戒感を露わにする。
一歩遅れて、七陰全員も緊張を共有する。
アルファがシャドウに言う。
「ここは私達が引き受けるわ。貴方は行って。その少女に、大いなる目的があるのでしょう?」
「・・・・・・ああ。抜かるなよ。」
(大いなる目的って何⁉まあ・・・・・・空気を読んでこの場から立ち去るかあ~)
シャドウは、すぐさまレムを抱え、そのまま飛び去った。
エミリアは状況が分からず、七陰達を見回す。
「ちょっと貴方達、一体⁉」
七陰の誰も、その問いには答えない。
ベータ、デルタ、イプシロン、ゼータは、瞬く間にウルガルムの殲滅に入る。
ガンマとイータは、邪魔にならない場所へ退避した。
アルファは悠然と歩みを進める。
「本当なら、デルタ一人でもなんとかなりそうだけど・・・・・・一体、厄介そうなのがいるわね。」
アルファはすでに、リーダー個体を目ざとく見つけていた。
━━次の瞬間には、アルファは上空へ飛んでおり、魔力で剣を造成した。
そしてその剣が光輝く。
「人に災いをもたらす魔獣よ、深き眠りにつきなさい。」
アルファは剣を振りかぶり・・・・・・膨大な魔力の剣撃が、リーダー固体を襲った。
目を貫くような光が一瞬辺り一面を照らし、そして再びその場は闇夜の暗黒が戻る。
アルファは徐につぶやく。
「なるほど、魔力の原理はあちらの世界と同じようね。造成に若干の難があるけど・・・・・・霧化はさすがに危険が伴いそうだからやめるとしても、普通の戦闘は問題なさそうね。」
一連の光景を見ていたエミリアは、絶句していた。
王都で見たシャドウの技は別格にしても、このアルファという女性の剣撃も大概だ。
それは脳裏に一瞬、ラインハルトの面影が映るほどの・・・・・・
それでも声を振り絞り、聞く。
「・・・・・・貴方達は、何者?」
アルファは一瞥して答える。
「観客は観客らしく、舞台を眺めているだけで満足していなさい。我ら、シャドウガーデンの邪魔をするな。」
周囲でも、魔獣の掃討は完了していた。
アルファは空を見上げる。
「さあ、あとはシャドウがどう締めくくるか・・・・・・」
当主の書斎にて、ロズワールとラムが会話する。
「時にラム、レムを連れ去ったとされるシャドウと、あの魔獣達を一網打尽にしたシャドウガーデンの足取りは掴めたのかなーぁ?」
「いえ、レムの消息が絶たれて以降、一度も姿を現わしていません。」
ラムは、やや暗い声色で答える。
ロズワールが肩を竦める。
「まーた王選絡みの連中かぁーな。シャドウにシャドウガーデン、厄介な連中に気に入られたものだよ。」
ラムは覚悟を変えない。
「たとえどれだけ強大な敵であろうと、シャドウガーデンはラムの大切な妹を奪いました。何があろうと、取り返す所存です。」
「うん、私もできる限りの協力を惜しまないつもりだーよ。・・・・・・おいで。」
ラムがロズワールの膝に座る。
「さぁーて、じゃあ始めようか。いつシャドウガーデンと接触することになるか分からないかぁーらね。」
「申し訳ありません・・・・・・お願いします。」
「・・・・・・星々の加護あれ」
儀式が終わり、ラムが書斎から出ていく。
ロズワールはニヤリと笑う。
「哀れな娘だ。故郷を滅ぼした男に、したくもない忠誠を誓ってまで縋らなければ、戦うどころか生きるのもままならない。本来の彼女であれば、魔獣ごとき、敵ではないであろうに。」
そして、椅子を立ち、歩みを進める。
「シャドウ、シャドウガーデン、そして━━シド・カゲノー。力は十分試せた。全て、私の目的のために、利用させてもらう。」
「やはり、貴方が黒幕だったんですね━━ロズワール・L・メイザース辺境伯。」
ロズワールがゆっくりと後ろを振り返る。
いつの間にか、窓枠にシドが座っていた。その手には、ベアトリスから強奪した本を持っていた。
「シド・カゲノー君・・・・・・なぜ分かった。」
シドが床に降り立ち、本を掲げる。
「全てこの本の記述通りですよ。サテラを襲う腸狩りも、魔獣のことも全て・・・・・・」
ロズワールは納得がいったように頷く。
「なるほど、全ては予言の示す通りか。」
なぜかシドは、若干怪訝そうな顔をした。
しかしすぐに表情を戻し、聞く。
「それで・・・・・・あのラムという少女はやはり・・・・・・」
「ああ。数年前のある夜、彼女の故郷の村は、魔女教徒の一団に襲われた。大人達が次々に倒れていく中で、彼女はただ一人、村と自身の妹を守るため奮闘した。やがて、魔女教徒は全て一掃できたものの、一瞬の油断を突かれ、角を折られてしまった。
その後私は、”全て”を失ったラムと、妹のレムを保護した。ラムは、私が故郷を滅ぼした一員であると知っていたが、今の彼女は、私を倒すどころか、私の儀式がなければ生きることができない。ただひたすら悲惨で、憐憫で、無力だ。」
シドは無表情を崩さない。
「怒ったかぁーな、シド・カゲノー君?」
「どうでしょうね。僕は自分にとって大切なものと、そうでないものを明確に分けているので。」
「可哀想な姉妹がどうなろうと構わないとぉー?」
シドは本を閉じる。
「そろそろ始めましょうか。のんびりしてると、あの桃髪メイドの邪魔が入りそうだ。」
「ほう、君も気づいたかね、ラムが近づいていることを。ただ、それとはまた別の、もう一人の気配もあるが。」
シドが、どこからか拾ってきたのであろう剣を構える。
そして、そのまま一直線に、ロズワールに迫った。
剣が接触する、その一瞬前。
ロズワールは小さく唱えた。
「ゴーア」
次の瞬間、ロズワールの手から火の魔法が発動し、シドに直撃。
シドはその衝撃で、窓の外に出され、落下した━━━
「さらばだ、予言(・・)に(・)記述(・・)なき(・・)異端者(・・・)よ。・・・・・・さて、あとは、シャドウガーデンさえ滅ぼせば、予言通りに・・・・・・」
「ならば都合が良かったな。」
「━ッ⁉」
ロズワールが後ろを振り返り、目を見張る。
先ほどシドを追い出した時に割れた窓、そこに、自らが追い求める者━━シャドウが座っていた。
ロズワールは、喜びを隠しきれない。
「よもや、私が今から狩ろうとしていた存在が、わざわざ目の前に現れてくれるとは。」
「・・・・・・」
シャドウは無言だ。
しかし、その圧倒的な気配に、ロズワールは気圧される。
そのプレッシャーを誤魔化すかのように、ロズワールは手の平へ、四色の魔法を出現させる。
「どうやら、手加減をしている余裕はなさそうだ。」
「・・・・・・」
「━━来たまえ‼」
次の瞬間、屋敷全体が爆発した。
ロズワールの書斎の襲撃を、ラムは千里眼で誰よりも早く認識していた。
すぐさま救援に走る。
しかしそこを、一つの黒い影が立ち塞がった。
「―ッ⁉どきなさい!」
「残念だけど、貴方を行かせるわけにはいかないわ。」
「チッ、誰よラムの邪魔をして。」
その黒のスライムスーツの少女は名乗りを上げる。
「シャドウガーデン『七陰』第5席、イプシロン。貴方の相手をさせてもらうわ。」
そして、魔力によって剣を具現化する。
一方ラムも、杖を構え、風魔法を唱える。
「エルフーラ!」
イプシロンは攻撃を避け、ラムに向け魔力の斬撃を飛ばす。
ラムは避け、再び「フーラ」を放つ。
同時に、その先の戦闘の影響であろうか、周囲は灼熱の炎に包まれた。
「アルゴーア‼」
ロズワールの魔法の業火の連撃がシャドウを襲う。
その攻撃を、シャドウは危なげなく回避する。
すでに周囲には、飛び火しており、辺りは惨状と化していた。
「フッ、なかなかやる。しかし、いつまで攻撃を避け続けられるかな⁉」
「・・・・・・」
シャドウは一切反撃しない。
ただ、自身の持つスライムソードで、炎を振り払った。
「やはりこの程度か。」
次の瞬間、ロズワールの肩に、刹那の一撃が加えられる。
しかし、ロズワールは動じない。
「ッ!まだまだぁー‼」
全方位に向かい、火の魔法を乱射する。
「たとえ私を殺せても、次なる私が必ず目的を成し遂げるであろう。私の野望に終わりはない!」
「・・・・・・滑稽だな。その程度で我を止められると思うとは。」
そして、シャドウの一撃が、ロズワールの胸元を襲う。
しかし、ロズワールは寸でで交わし、後ろへ下がった。
だが、シャドウの狙いは、ロズワールの命などではなかった。
「ッ⁉それはー‼」
シャドウの剣の先には━━ロズワールの叡智の書が突き刺さっていた。
「”全て”を失った貴様は、何を思い、どう生きる。」
シャドウはそれを、黒い炎で燃やす。
その光景を見、ロズワールは絶叫し、激昂する。
「━━シャドウッッッ!!!!!」
次の瞬間、ロズワールの最大火力の魔法が、当たり一面を焦土と化した。
しかし・・・・・・その一瞬前、シャドウはロズワールの目前まで近づいていた。
(・・・・・・ああ。)
ロズワールの目には、シャドウの刃が自身の心臓を貫くところが、スローモーションで映っていた。
ラムは、刻一刻と悪くなるロズワールの戦況を千里眼で感知していて、焦りを募らせていた。
しかし、前に立ち塞がるのは、ルグニカでも上位を張れるレベルの実力者。角がある時の自分であれば、吹けば飛ぶような羽虫であったとしても、今の自分の手には余る。
接近を許せば勝ち目はない。
ラムは、距離を取りつつ、ひたすら「フーラ」を唱え続けた。
ロズワールからのマナ供給を受けた直後であったことだけが幸いである。
「なかなかやるわね。」
イプシロンはひたすら魔力の斬撃を飛ばしつつ、接近を試みる。
このままではジリ貧である。そのためラムは、賭けに出た。
「ウルフーラ!」
「―ッ⁉」
次の瞬間、イプシロンの前に強靱な風の刃が襲いかかる。
イプシロンは寸でで避けるも、避けきれずスライムで盛っていた虚胸が切断されてしまった。
「ッ!よくもッ‼」
イプシロンが怒りを露わにするが、その一瞬隙ができる。
ラムはそこを駆け出し、ロズワールの書斎へ突入した。
━━しかし、ラムが見たものは。
シャドウのスライムソードによって貫かれた、主の姿だった。
「あ・・・あ・・・」
シャドウは無言で剣を引き抜き、そのままラムへ背を向け、ゆっくりとその場を後にする。
ラムは瞬時にシャドウへ杖を向けるが・・・・・・すでに先ほどの一撃でマナ切れであった。
シャドウはそのまま窓から出、飛び去る。
後に残されたのは、ロズワールの死体のみであった。
ラムは、先ほどの戦闘の消耗で崩れ落ちつつも、ロズワールに必死で駆け寄る。
「ロズワール様、ロズワァール様ぁーーー!!!!」
その声は、主には届かない。
しばらくの嗚咽の後、ラムは消えゆくシャドウを激しく睨む。
「シャドウ・・・・・・必ず私がッッッ!!!」
屋敷の自室で就寝していたエミリアであったが、火の手が上がるのを感知し、飛び起きた。慌てて火の元と思われるロズワールの書斎へと急ぐ。
しかし、書斎の一歩手前の所で、アルファが立ち塞がった。
「・・・・・・どういうつもり?」
「貴方が行っても、できることはないわ。」
「・・・・・・」
エミリアは押し黙る。
アルファは続けた。
「それより、村人達の避難をさせなさい。このままでは、火の手が村まで広がる。」
「―ッ⁉ ・・・・・・私が行っても、村の人達を説得できないわ。」
アルファが微笑む。
「それでも・・・・・・貴方はやるのでしょう?」
エミリアは、見透かされたようでやや気分を害したが、しかしこのまま問答を続けている余裕もない。
すぐさま屋敷を出、村へと駆け出した。
リゼロの魔法の強さって、(無し)<エル<ウル<アル なんですね。てっきりウルが一番上だと思ってた。
じゃあ、ヘクトールにやられている時のロズワールって、あの瀕死の状態で最大火力撃ってたのかよ。
白鯨戦のモブ魔術師達も、けっこう強かったんだな・・・・・・