Re:ゼロから始める陰の実力者になりたい異世界生活    作:零月隼人

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#4 陰と主と

エミリアとレムの一連の戦いを、シド━━否、シャドウはは上空に佇み観察していた。

やがてレムが倒れ、額から光の角のようなものが出てくるのを見た。

同時に、その上昇した気配(オーラ)を確認する。

「あれは・・・・・・魔力暴走かな?へえ、この世界にもあるんだね。」

(あの状態で理性を保てるなら、七陰くらいには及びそうだな。ただ・・・・・・)

ウルガルムを倒している光景を見ると、暴走しているように見えた。

シャドウはやれやれと息を吐き、そのまま地上へ降り立った。

 

「フハハハハ・・・・・・アハハハハ!魔獣!魔獣!魔獣!魔女!」

エミリアは、目の前に広がる鏖殺の光景に絶句していた。

鬼化。

たしかにロズワールから、ラムやレムの生まれ、種族の話は聞いていた。しかし、鬼化の実物を見たのは初めてであった。

エミリアは動けず、ただ呆然とその場へ座り込んだ。

そこへ・・・・・・

「魔獣!魔獣!魔獣!魔獣!魔━ッ⁉」

突如、黒い影が乱入し、レムの首筋を強打し、一撃で気絶させた。

「レム!━━━あなたはッ⁉」

エミリアは目を疑う。

そこに立っていたのは、先日王都で自分を助けてくれた、シャドウその人であったのだ。

「どうして・・・・・・」

シャドウは応えず、いつものように名乗る。

「我が名は━━」

しかし、普段とは、事情が異なった。

「「「「「「「━━シャドウガーデンッ‼」」」」」」」

「は?」

懐かしき、七人の声。

シャドウは、徐に空を見上げる。

そこには、自身が元の異世界で吸い込まれたものと同じような、ゲートが出現していた。

そこから、見覚えのある少女達が、次々とこの世界へ流入していた。

そして、シャドウの目の前に降り立ち、囲んだ。

「ようやく会えました、シャドウ様!」

「主様、会えることを心待ちにしておりました。」

「ボスゥ~、やっと会えたーーー!!!」

「主さま、覚えておられますか!イプシロンです!!」

「主、待ちわびた。すでに手筈は整っている。」

「マスター、イータ頑張ったー、褒めてー」

少し距離を取り、アルファが涙目を浮かべていた。

「シャドウ、もう会えないかと・・・・・・私は貴方がすぐ帰ってくると予想していた、でもまさか、この世界でここまで足留めを食らっているなんて。」

「・・・・・・」

シャドウは無言であったが、内心憤りつつも、動揺していた。

(おいー、一世一代の名乗りでシーンに乱入するなんてッッッ⁉

それにしても、なんで彼女らまでこの世界に?)

しかし、状況は変わらず、切迫詰まっていた。

依然として、ウルガルムの軍勢には取り囲まれていたのである。

アルファは後ろを振り返り、警戒感を露わにする。

一歩遅れて、七陰全員も緊張を共有する。

アルファがシャドウに言う。

「ここは私達が引き受けるわ。貴方は行って。その少女に、大いなる目的があるのでしょう?」

「・・・・・・ああ。抜かるなよ。」

(大いなる目的って何⁉まあ・・・・・・空気を読んでこの場から立ち去るかあ~)

シャドウは、すぐさまレムを抱え、そのまま飛び去った。

エミリアは状況が分からず、七陰達を見回す。

「ちょっと貴方達、一体⁉」

七陰の誰も、その問いには答えない。

ベータ、デルタ、イプシロン、ゼータは、瞬く間にウルガルムの殲滅に入る。

ガンマとイータは、邪魔にならない場所へ退避した。

アルファは悠然と歩みを進める。

「本当なら、デルタ一人でもなんとかなりそうだけど・・・・・・一体、厄介そうなのがいるわね。」

アルファはすでに、リーダー個体を目ざとく見つけていた。

━━次の瞬間には、アルファは上空へ飛んでおり、魔力で剣を造成した。

そしてその剣が光輝く。

「人に災いをもたらす魔獣よ、深き眠りにつきなさい。」

アルファは剣を振りかぶり・・・・・・膨大な魔力の剣撃が、リーダー固体を襲った。

目を貫くような光が一瞬辺り一面を照らし、そして再びその場は闇夜の暗黒が戻る。

アルファは徐につぶやく。

「なるほど、魔力の原理はあちらの世界と同じようね。造成に若干の難があるけど・・・・・・霧化はさすがに危険が伴いそうだからやめるとしても、普通の戦闘は問題なさそうね。」

一連の光景を見ていたエミリアは、絶句していた。

王都で見たシャドウの技は別格にしても、このアルファという女性の剣撃も大概だ。

それは脳裏に一瞬、ラインハルトの面影が映るほどの・・・・・・

それでも声を振り絞り、聞く。

「・・・・・・貴方達は、何者?」

アルファは一瞥して答える。

「観客は観客らしく、舞台を眺めているだけで満足していなさい。我ら、シャドウガーデンの邪魔をするな。」

周囲でも、魔獣の掃討は完了していた。

アルファは空を見上げる。

「さあ、あとはシャドウがどう締めくくるか・・・・・・」

 

当主の書斎にて、ロズワールとラムが会話する。

「時にラム、レムを連れ去ったとされるシャドウと、あの魔獣達を一網打尽にしたシャドウガーデンの足取りは掴めたのかなーぁ?」

「いえ、レムの消息が絶たれて以降、一度も姿を現わしていません。」

ラムは、やや暗い声色で答える。

ロズワールが肩を竦める。

「まーた王選絡みの連中かぁーな。シャドウにシャドウガーデン、厄介な連中に気に入られたものだよ。」

ラムは覚悟を変えない。

「たとえどれだけ強大な敵であろうと、シャドウガーデンはラムの大切な妹を奪いました。何があろうと、取り返す所存です。」

「うん、私もできる限りの協力を惜しまないつもりだーよ。・・・・・・おいで。」

ラムがロズワールの膝に座る。

「さぁーて、じゃあ始めようか。いつシャドウガーデンと接触することになるか分からないかぁーらね。」

「申し訳ありません・・・・・・お願いします。」

「・・・・・・星々の加護あれ」

 

儀式が終わり、ラムが書斎から出ていく。

ロズワールはニヤリと笑う。

「哀れな娘だ。故郷を滅ぼした男に、したくもない忠誠を誓ってまで縋らなければ、戦うどころか生きるのもままならない。本来の彼女であれば、魔獣ごとき、敵ではないであろうに。」

そして、椅子を立ち、歩みを進める。

「シャドウ、シャドウガーデン、そして━━シド・カゲノー。力は十分試せた。全て、私の目的のために、利用させてもらう。」

「やはり、貴方が黒幕だったんですね━━ロズワール・L・メイザース辺境伯。」

ロズワールがゆっくりと後ろを振り返る。

いつの間にか、窓枠にシドが座っていた。その手には、ベアトリスから強奪した本を持っていた。

「シド・カゲノー君・・・・・・なぜ分かった。」

シドが床に降り立ち、本を掲げる。

「全てこの本の記述通りですよ。サテラを襲う腸狩りも、魔獣のことも全て・・・・・・」

ロズワールは納得がいったように頷く。

「なるほど、全ては予言の示す通りか。」

なぜかシドは、若干怪訝そうな顔をした。

しかしすぐに表情を戻し、聞く。

「それで・・・・・・あのラムという少女はやはり・・・・・・」

「ああ。数年前のある夜、彼女の故郷の村は、魔女教徒の一団に襲われた。大人達が次々に倒れていく中で、彼女はただ一人、村と自身の妹を守るため奮闘した。やがて、魔女教徒は全て一掃できたものの、一瞬の油断を突かれ、角を折られてしまった。

その後私は、”全て”を失ったラムと、妹のレムを保護した。ラムは、私が故郷を滅ぼした一員であると知っていたが、今の彼女は、私を倒すどころか、私の儀式がなければ生きることができない。ただひたすら悲惨で、憐憫で、無力だ。」

シドは無表情を崩さない。

「怒ったかぁーな、シド・カゲノー君?」

「どうでしょうね。僕は自分にとって大切なものと、そうでないものを明確に分けているので。」

「可哀想な姉妹がどうなろうと構わないとぉー?」

シドは本を閉じる。

「そろそろ始めましょうか。のんびりしてると、あの桃髪メイドの邪魔が入りそうだ。」

「ほう、君も気づいたかね、ラムが近づいていることを。ただ、それとはまた別の、もう一人の気配もあるが。」

シドが、どこからか拾ってきたのであろう剣を構える。

そして、そのまま一直線に、ロズワールに迫った。

剣が接触する、その一瞬前。

ロズワールは小さく唱えた。

「ゴーア」

次の瞬間、ロズワールの手から火の魔法が発動し、シドに直撃。

シドはその衝撃で、窓の外に出され、落下した━━━

「さらばだ、予言(・・)に(・)記述(・・)なき(・・)異端者(・・・)よ。・・・・・・さて、あとは、シャドウガーデンさえ滅ぼせば、予言通りに・・・・・・」

「ならば都合が良かったな。」

「━ッ⁉」

ロズワールが後ろを振り返り、目を見張る。

先ほどシドを追い出した時に割れた窓、そこに、自らが追い求める者━━シャドウが座っていた。

ロズワールは、喜びを隠しきれない。

「よもや、私が今から狩ろうとしていた存在が、わざわざ目の前に現れてくれるとは。」

「・・・・・・」

シャドウは無言だ。

しかし、その圧倒的な気配に、ロズワールは気圧される。

そのプレッシャーを誤魔化すかのように、ロズワールは手の平へ、四色の魔法を出現させる。

「どうやら、手加減をしている余裕はなさそうだ。」

「・・・・・・」

「━━来たまえ‼」

次の瞬間、屋敷全体が爆発した。

 

ロズワールの書斎の襲撃を、ラムは千里眼で誰よりも早く認識していた。

すぐさま救援に走る。

しかしそこを、一つの黒い影が立ち塞がった。

「―ッ⁉どきなさい!」

「残念だけど、貴方を行かせるわけにはいかないわ。」

「チッ、誰よラムの邪魔をして。」

その黒のスライムスーツの少女は名乗りを上げる。

「シャドウガーデン『七陰』第5席、イプシロン。貴方の相手をさせてもらうわ。」

そして、魔力によって剣を具現化する。

一方ラムも、杖を構え、風魔法を唱える。

「エルフーラ!」

イプシロンは攻撃を避け、ラムに向け魔力の斬撃を飛ばす。

ラムは避け、再び「フーラ」を放つ。

同時に、その先の戦闘の影響であろうか、周囲は灼熱の炎に包まれた。

 

「アルゴーア‼」

ロズワールの魔法の業火の連撃がシャドウを襲う。

その攻撃を、シャドウは危なげなく回避する。

すでに周囲には、飛び火しており、辺りは惨状と化していた。

「フッ、なかなかやる。しかし、いつまで攻撃を避け続けられるかな⁉」

「・・・・・・」

シャドウは一切反撃しない。

ただ、自身の持つスライムソードで、炎を振り払った。

「やはりこの程度か。」

次の瞬間、ロズワールの肩に、刹那の一撃が加えられる。

しかし、ロズワールは動じない。

「ッ!まだまだぁー‼」

全方位に向かい、火の魔法を乱射する。

「たとえ私を殺せても、次なる私が必ず目的を成し遂げるであろう。私の野望に終わりはない!」

「・・・・・・滑稽だな。その程度で我を止められると思うとは。」

そして、シャドウの一撃が、ロズワールの胸元を襲う。

しかし、ロズワールは寸でで交わし、後ろへ下がった。

だが、シャドウの狙いは、ロズワールの命などではなかった。

「ッ⁉それはー‼」

シャドウの剣の先には━━ロズワールの叡智の書が突き刺さっていた。

「”全て”を失った貴様は、何を思い、どう生きる。」

シャドウはそれを、黒い炎で燃やす。

その光景を見、ロズワールは絶叫し、激昂する。

「━━シャドウッッッ!!!!!」

次の瞬間、ロズワールの最大火力の魔法が、当たり一面を焦土と化した。

しかし・・・・・・その一瞬前、シャドウはロズワールの目前まで近づいていた。

(・・・・・・ああ。)

ロズワールの目には、シャドウの刃が自身の心臓を貫くところが、スローモーションで映っていた。

 

ラムは、刻一刻と悪くなるロズワールの戦況を千里眼で感知していて、焦りを募らせていた。

しかし、前に立ち塞がるのは、ルグニカでも上位を張れるレベルの実力者。角がある時の自分であれば、吹けば飛ぶような羽虫であったとしても、今の自分の手には余る。

接近を許せば勝ち目はない。

ラムは、距離を取りつつ、ひたすら「フーラ」を唱え続けた。

ロズワールからのマナ供給を受けた直後であったことだけが幸いである。

「なかなかやるわね。」

イプシロンはひたすら魔力の斬撃を飛ばしつつ、接近を試みる。

このままではジリ貧である。そのためラムは、賭けに出た。

「ウルフーラ!」

「―ッ⁉」

次の瞬間、イプシロンの前に強靱な風の刃が襲いかかる。

イプシロンは寸でで避けるも、避けきれずスライムで盛っていた虚胸が切断されてしまった。

「ッ!よくもッ‼」

イプシロンが怒りを露わにするが、その一瞬隙ができる。

ラムはそこを駆け出し、ロズワールの書斎へ突入した。

 

━━しかし、ラムが見たものは。

シャドウのスライムソードによって貫かれた、主の姿だった。

「あ・・・あ・・・」

シャドウは無言で剣を引き抜き、そのままラムへ背を向け、ゆっくりとその場を後にする。

ラムは瞬時にシャドウへ杖を向けるが・・・・・・すでに先ほどの一撃でマナ切れであった。

シャドウはそのまま窓から出、飛び去る。

後に残されたのは、ロズワールの死体のみであった。

ラムは、先ほどの戦闘の消耗で崩れ落ちつつも、ロズワールに必死で駆け寄る。

「ロズワール様、ロズワァール様ぁーーー!!!!」

その声は、主には届かない。

しばらくの嗚咽の後、ラムは消えゆくシャドウを激しく睨む。

「シャドウ・・・・・・必ず私がッッッ!!!」

 

屋敷の自室で就寝していたエミリアであったが、火の手が上がるのを感知し、飛び起きた。慌てて火の元と思われるロズワールの書斎へと急ぐ。

しかし、書斎の一歩手前の所で、アルファが立ち塞がった。

「・・・・・・どういうつもり?」

「貴方が行っても、できることはないわ。」

「・・・・・・」

エミリアは押し黙る。

アルファは続けた。

「それより、村人達の避難をさせなさい。このままでは、火の手が村まで広がる。」

「―ッ⁉ ・・・・・・私が行っても、村の人達を説得できないわ。」

アルファが微笑む。

「それでも・・・・・・貴方はやるのでしょう?」

エミリアは、見透かされたようでやや気分を害したが、しかしこのまま問答を続けている余裕もない。

すぐさま屋敷を出、村へと駆け出した。




リゼロの魔法の強さって、(無し)<エル<ウル<アル なんですね。てっきりウルが一番上だと思ってた。
じゃあ、ヘクトールにやられている時のロズワールって、あの瀕死の状態で最大火力撃ってたのかよ。
白鯨戦のモブ魔術師達も、けっこう強かったんだな・・・・・・
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